レビュー
イタリア生まれの最新DACが大幅に進化!

M2TECHのUSB DAC「Evo DAC Two Plus」に専用クロックを入れて聴いてみた!

イタリアのピサに本拠を置く「M2TECH」はデジタルオーディオ機器の新興ブランドだが、ハイレゾという言葉が一般に広まる前から、PCオーディオ向けの高音質な製品をリリースしている。2010年に登場したUSB D/Dコンバーター「hiFace」は、当時としては珍しいUSBメモリーのようなスティック型でありながらも高音質ということで、PCオーディオファンを中心に人気を集めた。そんな同社の現在の主力製品とも言える「Evo」シリーズが、「Evo Two」シリーズへと一新したのだ。

前シリーズと同様に、「Evo Two」シリーズは、キューブ型のコンパクトなルックスをした、コンポーネントオーディオシステムだ。D/Dコンバーターの「hiFace Evo Two」、D/Aコンバーターの上位モデル「Evo DAC Two Plus!」とその下位モデル「Evo DAC Two」、クロックジェネレーター「Evo Clock Two」の4製品がラインアップされている(専用の外部電源ユニット「Evo Supply Two」もあるが、日本での発売は未定)。

「Evo Two」シリーズ。ラインアップは、D/Aコンバーターの上位モデル「Evo DAC Two Plus!」(左上段)とその下位モデル「Evo DAC Two」(左下段)、D/Dコンバーターの「hiFace Evo Two」(右上段)、クロックジェネレーター「Evo Clock Two」(右下段)の4製品。積み重ねて使えるよう筺体サイズは同一にそろえられている

ラインアップのうち、クロックジェネレーターを除けば、いずれもUSB入力を搭載し、高音質なPCオーディオ環境が構築できる製品だ(いずれも単品販売)。今回はそれらの中でも、特にEvoシリーズ初のUSB DACとなる「Evo DAC Two Plus!」と、その音質をさらに向上できるクロックジェネレーター「Evo Clock Two」をあわせて使用し、M2TECHの最新モデルの音をチェックしてみた。

多彩なデジタル入力を備えたD/AコンバーターがUSB DACに進化

「Evo DAC Two Plus!」は、USB Audio Class 2.0に準拠した、据え置き型のUSB DAC。前モデルの「Evo DAC」にはなかったUSBインターフェイスを新たに搭載し、PCとダイレクトに接続できるようになったモデルだ。今でこそ一般的になったUSB DACだが、前モデルの「Evo DAC」では、高音質化のためにPCとの間にD/Dコンバーターを経由させる必要があり、PCではやや使いにくい仕様になっていた。この点が「Evo DAC Two Plus!」では改善されている。Macではプラグアンドプレイで認識。Windowsでは専用のASIOドライバーが提供されている。ACアダプターが付属しているが、USBバスパワーでも動作可能だ。ハイレゾ再生ソフトはこれまでどおり別途設定が必要だが、それ以外のセットアップは簡単に済む。

USB Audio Class 2.0に準拠した、据え置き型のUSB DAC 「Evo DAC Two Plus!」。前モデルの「Evo DAC」にはなかったUSBインターフェイスを新たに搭載している。Macで使うなら、USBケーブルをつなげるだけですぐ使用できる

次に注目したいのが大幅に向上した再生能力。対応する音声フォーマットとして、新たにDSDが追加されたうえ、現行最高クラスの11.2MHzまで再生可能。さらにリニアPCMは最大384kHz/32bit(従来は192kHz/24bit)をサポートするに至っている。USB入力ならこれらのハイレゾ音源をフルで出力できるのだ。搭載するDACチップはESS社製の「Sabre ES9018K2M」だ。

さらに本体背面には、多彩なデジタル入力を装備。前モデルのと同様に、同軸端子や光角型端子のデジタル音声入力端子のほか、内部配線向けの「I2S(The Inter-IC Sound)」用のHDMIポートも用意されている。ここで重要なのは、DACの再生能力の向上にともない、I2Sに入力できる音声フォーマットの上限も拡大しているということだ。

IC間でデジタル音声データを伝送するのを目的に作られたI2Sは、同軸端子や光角型端子といったS/PDIF経由で入力される音声信号に比べて音質劣化を招くジッターを低くできるうえ、それらの伝送では不可能な11.2MHzのDSDや384kHz/32bitのリニアPCMも、そのまま送れるのが大きな魅力となっている。I2S出力が可能なプレーヤーやD/A(またはD/D)コンバーターと、「Evo DAC Two Plus!」を組み合わせれば、高音質のままアナログRCAで出力できる。玄人向けの仕様だが、このクラスのフォーマットに対応した製品はとても希少な存在だ。

「Evo DAC Two Plus!」の背面。デジタル入力として、USB、同軸、光角型、I2Sの各インターフェイスを備えている。アナログ音声出力はステレオRCAのみ。そのほかに、クロック信号を同期させる光角型とクロック入力用の端子も装備する。なお、I2S用にはポートがLAN端子(RJ-45)から、PS Audio社が採用するHDMIに変更されている

「Evo DAC Two Plus!」は、アナログ音声出力がRCAステレオ1系統に絞られている半面、デジタル入力に振り切っている分、手軽に扱えるUSBから、マニアックなI2Sまで対応するなど、手軽な使い方も、ハードな使い方もできる、拡張性に富んだDACとなっている。

最適なクロックを自動で選択するクロックジェネレーター

その「Evo DAC Two Plus!」の性能を生かしきるなら、別売のクロックジェネレーター「Evo Clock Two」もあわせて使いたい。クロックジェネレーターとは、DAC内部のインターナルクロックより高精度なクロックを出力できるもので、高音質なアナログ音声出力が行える。最近ではポータブルプレーヤーでも高品質なクロック生成ユニットが搭載されるなど、ハイレゾ音源を忠実に再現するためには欠かせない装置となってきている。

クロックジェネレーターの「Evo Clock Two」。外観は特徴的な、フロント右下に設けられたスイッチだ

クロックジェネレーターの「Evo Clock Two」。外観は特徴的な、フロント右下に設けられたスイッチだ

前世代の「Evo」シリーズにも、「EVO Clock」というクロックジェネレーターはあったが、性能と操作感が大きく進化している。その性能の肝になるクロック発振器には、高精度な温度補償水晶発振器(TCXO)をデュアルで採用。音質に悪影響を及ぼすジッターを、きわめて低く抑えているという。さらにクロック生成部に供給される電力は、超低ノイズ・レギュレーターを通しており、電源部でのノイズ混入も防いでいるという徹底ぶり。

2つめのポイントは、標準的な10MHzクロックを採用したこと。本機では新たに、多くのD/AやD/Dコンバーターが対応している10MHzクロックを追加することで、他の機器でも使用できるようになっている。さらに、DSD音源をより高音質で楽しめるように、DSD伝送に適合したクロックを新たに用意しているのも大きな特徴だ。WAVやFLACといったフォーマットに限らず、DSDもよりよい音で楽しめるのだ。

「Evo DAC Two Plus!」に「Evo Clock Two」を接続したときの背面の様子。ケーブルが硬く太めのタイプだと本体が動いてしまうことも

実際に操作して使いやすいと思えたのが、外部クロックに対応したEvo Two同士なら、再生する音源にあわせて最適なクロックに自動で変更してくれること。「Evo Clock Two」と「Evo DAC Two Plus!」の本体背面に備わる光角型端子をケーブルで接続するだけでクロック周波数をやりとりし自動で選択してくれるのだ。前世代のクロックジェネレーターでは都度手動で切り替える必要があり面倒だったが、そこが大きく改善されているわけだ。また、出力されているクロック情報は、本体前面の液晶パネルに表示され、ひと目でわかるようになったのもうれしい。

駆動時の「Evo Clock Two」(上段)。液晶パネルには、再生されている音源にあったクロックが表示されている。この時点でのクロックは22MHzだ

音質インプレッション

最後にいよいよ音質インプレッションをお伝えしよう。使用機材は、13インチの「Macbook Air(Mid 2011)」、ハイレゾ再生ソフト「Audirvana」、Cary Audio Designのプリメインアンプ「CAI 1」、B&Wのスピーカー「802D」だ。「Evo DAC Two Plus!」にクロックを入れた状態で試聴した。

まずはYESの「Roundabout」(96kHz/24bit)。印象的なのが、イントロ部の徐々に音が大きくなるところ。ノイズフロアが低く、S/Nの高さもあいまって、小さい音でもくっきりはっきりと聴こえてくる。そのあとのスティーヴ・ハウのギターソロの響きも、アコースティック楽器のやわらかさがよく出ている。さらにベースの音が加わるタイミング。このベースの音がスゴい。ゴリゴリとした力強さを感じつつも、そのキレのよさが十分に出ている。ハイレゾ機器だと音が全体的に落ち着く(静かな)傾向にあるといわれるが、迫力に不足はない。ドラマチックな展開の楽曲だが、その雰囲気のまま鳴らしている感じだ。

次にHOFF ENSEMBLEの「Quiet Winter Night」(DSD 5.6MHz)も聴いてみた。教会の中で収録したという、独特な残響音が生み出す神秘的な雰囲気が印象的な音源であるが、楽器やボーカルがはっきり出ているのも特徴。この音源を聴いて感じたのは、その雰囲気が余さず出ていることだ。しかも空間を感じさせる響きと音の緻密さが両立している。緻密さに偏ればモニターライクな音になってしまうが、そういう一辺倒なところがない。音の細やかさと空間のスケール感をしっかり合わせ持った音を再現しているのだ。

なお、クロックを入れないで聴いてみたところ、迫力が若干落ち、ディティールも少しあまくなった。絶対的な音の変化量はさほどではないものの、音質を追い込みたいなら、クロックジェネレーターはぜひ組み合わせたいところだ。

まとめ

「Evo DAC Two Plus!」は、新たにUSB入力を加えたことで、PCと組み合わせて手軽に高音質を得られるようになった。USB Audio Class 2.0に準拠していることもあり、PCとのセットアップもカンタン。手軽に高音質を楽しめるようになっている。気になるのはアナログ音声出力がRCAステレオの1系統である点。イヤホンやヘッドホンを直接接続できないのは、やや残念だ。

ただそういう割り切った仕様だからこそ、豊富なデジタル入力を備えた拡張性の高さと、10万円台のDACとしてはトップクラスのサウンドクオリティを実現している。価格.com最安価格で108,000円(2016年5月11日時点)という価格も決して大げさではない。逆にI2Sやクロック入力が不要であれば、20,000円ほど安い下位モデル「Evo DAC Two」(価格.com最安価格は75,600円)を選べばいい。そういう選択肢が用意されているのもありがたい。

クロックジェネレーター「Evo Clock Two」を組み合わせることで、音の変化はさほど大きくはないものの、明らかな違いは実感できる。汎用的に使える10MHzクロックをサポートしており、前モデルの「Evo Clock」に比べて、対応できる機材が広がったのは好印象だ。けれども価格.com最安価格で81,000円とやや高額で、DAC単体でも十分いい音が得られるため、とりわけハイエンドユーザー向けのアイテムであることは否めない。迷うのであればまずDACを単品で買い、そのあとにクロックジェネレーターを追加という流れでも問題ないだろう。

銭袋秀明(編集部)

銭袋秀明(編集部)

編集部の平均体重を底上げしている下っ端部員。アキバをフィールドワークにする30代。2015年4月、某編集部から異動して価格.comマガジン編集部へ。今年こそ、結果にコミット!

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