図1:「液晶テレビ」カテゴリーのアクセス数推移(過去3か月)
2016年8月6日(土)より始まったリオ五輪。連日熱戦が繰り広げられているが、その様子を見るために必要になるのが、テレビやレコーダーといった映像機器だ。そのため、これまでは一般的に、オリンピックイヤーにはテレビやレコーダーが売れるとされてきたわけだが、今年はどのようになっているのだろうか。
図1は、価格.comの「液晶テレビ」カテゴリーの過去3か月間におけるアクセス数推移を、「価格.comトレンドサーチ」で示したものだ。これを見ると、「液晶テレビ」カテゴリーのアクセス数のピークは7月3日で、それ以降はほぼ下降トレンドに移っていることがわかる。8月に入ってからも特に伸びた様子はなく、リオ五輪の開始と液晶テレビの売れゆきとの間に、直接的な関係性は確認できない。
図2:「液晶テレビ」カテゴリーのアクセス数推移(過去2年)
図3:「液晶テレビ」カテゴリーの閲覧者数推移(過去2年)
なお、図2は、過去2年間の「液晶テレビ」カテゴリーのアクセス数推移を示したものだが、こちらを見ると、昨年8月第1週よりは、今年の8月第1週のほうがアクセス自体は約34%ほど上がっており、昨年対比では、液晶テレビへの注目度は高まっていると言える。ただ、図3の「閲覧者」というグラフを見てもらうと、昨年と今年の第1週では、その数字がほとんど変わっていない。「閲覧者」のほうがより実購買に近い数字のデータであるため、注目度こそ昨年より高いものの、実際の購買についてはさほど変化がない、というのが、今年の液晶テレビ市場のトレンドと言ってよさそうだ。
図4:「ブルーレイ・DVDレコーダー」カテゴリーのアクセス数推移(過去3か月)
なお、図4は、過去3か月における「ブルーレイ・DVDレコーダー」カテゴリーのアクセス数推移を示したものだが、こちらも今夏のピークは7月18日で、それ以降は下降トレンドにある。液晶テレビの場合も同じだが、リオ五輪に合わせて、テレビやレコーダーを新調しようとしていた消費者の購買のピークは、7月の初旬から中旬にかけてであり、そのピークも、さほど大きなものとは言えなかった、と見ていいだろう。
このように、リオ五輪開催の影響で、この夏、液晶テレビやレコーダーを購入する人は思ったより少なかったという印象だが、実際に購入されている製品の内訳を見ると、実は、期待されていた大画面4Kテレビの販売が思わしくなく、むしろ、小型・低価格のHDあるいはフルHD(2K)モデルのほうが売れてきているという状況も垣間見える。
図5:「液晶テレビ」カテゴリーにおける人気5製品の売れ筋ランキング推移(過去3か月)
図5は、「液晶テレビ」カテゴリーにおける人気5製品の売れ筋ランキング推移を示したものだ。これを見ると、現在1位のシャープ「AQUOS LC-50W30」(50V型)、2位の東芝「REGZA 32S10」(32V型)、さらに4位のパナソニック「VIERA TH-32D300」(32V型)などが、安定した人気を維持しており、これに加えて、6月くらいから徐々に人気を上げてきた現在3位のソニー「BRAVIA KJ-40W730C」(40V型)と、5位のパナソニック「VIERA TH-49D300」(49V型)が、7月後半からトップ5にランクインしてきていることがわかる。画面サイズで見ると、32V型が2製品、40V型が1製品、49V/50V型が2製品ということでバラバラだが、いずれの製品も比較的低価格である点は共通している。
図6:「液晶テレビ」カテゴリーにおける人気5製品の最安価格推移(過去3か月)
図6は、上記の人気5製品の最安価格推移を示したものだが、このうち、40V型モデルのソニー「BRAVIA KJ-40W730C」は65,000円程度、50V型モデルのシャープ「AQUOS LC-50W30」は81,000円程度とそこそこハイエンド系だが、32V型モデルの価格は32,000〜35,000円程度とかなり安く、49V型のパナソニック「VIERA TH-49D300」も74,000円程度と、画面サイズを考えればかなり安めだ。当然ながら、4Kモデルは1製品もベスト5に入っておらず、7月後半以降の液晶テレビ市場は、主にこうした低価格モデルが中心に動いている状態になっている。これらの製品を購入した理由も、「以前使っていた液晶テレビ(プラズマテレビ)が壊れたから」というものが多く、故障による買い換えでは、あまり大画面の高級モデルには結びつかないということも明らかになってきている。
図7:「液晶テレビ」カテゴリーにおける4Kテレビ人気5製品の売れ筋ランキング推移(過去3か月)
では、4Kテレビのほうはどのような状況になっているのだろうか。図7は、「液晶テレビ」カテゴリーにおける、4Kテレビ人気5製品の売れ筋ランキング推移を示したものだが、いくつかの製品は、6月から7月中旬までは、売れ筋のベスト5に入っていたものの、その後は失速しており、現状では、最大でも6位という状況になっている。ベスト10以内に入っているのは、わずか2製品だ。
人気になってきている製品の顔ぶれも若干変わりつつある。6月〜7月中旬まで人気があったのは、パナソニックの「VIERA TH-49DX750」(49V型)や「VIERA TH-43DX750」(43V型)、あるいは東芝「REGZA 49Z700X」(49V型)だったが、7月後半からは、ソニー「BRAVIA KJ-49X8500C」(49V型)や、東芝「REGZA 49G20X」(49V型)が浮上してきている。
図8:「液晶テレビ」カテゴリーにおける4Kテレビ人気5製品の最安価格推移(過去3か月)
このように4Kテレビの売れ筋モデルが変わってきているのには、価格変動が大きく影響している。図8は、「液晶テレビ」カテゴリーにおける4Kテレビ人気5製品の最安価格推移を示したものだが、この中でもっとも安い価格をつけているのが、現在売れ筋ランキングで6位につけている東芝「REGZA 49G20X」(49V型)。本製品は8月9日時点では111,800円という、もうぐ11万円を切りそうなプライスをつけている。また、同様に人気が高まってきているソニー「BRAVIA KJ-49X8500C」(49V型)については、元々は昨年発売の高価格帯製品であるが、8月9日時点の最安価格では136,399円というプライスをつけており、ここ1か月程度の下落幅としては5製品中もっとも高い。4Kテレビは、そこそこ高額であるだけに、じっくり選んで購入する人が多いが、49〜50インチクラスの製品でも今や11〜13万円台で購入できるようになってきており、このレベルまで安くなってきたところで購入するという人が多いように思われる。
図9:「液晶テレビ」カテゴリーにおける主要4メーカー別のアクセス推移(過去3か月)
なお、図9でメーカー別のアクセス推移を見ると、人気の東芝がここに来てかなりアクセスを減らしているいっぽう、2位グループからは、パナソニックがやや抜けてきた感がある。パナソニックは、リオ五輪のオフィシャルスポンサーであるが、同社の液晶テレビがそこそこ売れてきているのは、以前にもお伝えしたように、4Kテレビの新モデルの値崩れがかなり激しく、割安感が出ていることによる。しかも、上で見たように、HD/フルHDモデルにおいては、「D300」というボトムラインの低価格モデルが売れてきており、全体的に2Kも4Kも割安感が高いということが、大きく影響しているものと思われる。