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いま注目の「ノールックAI家電」とは? ディープ・ラーニングからAmazon Alexaまで解説

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より快適な生活と、省エネルギーな社会の実現に向けて、家電へのAI(人工知能)応用が進んでいる。具体的には、「Amazon Echo」や「Google Home」といった“言葉を理解する”製品が登場し、ヒトが話しかけることで家電を操作できる時代が始まった。操作はリモコンを使うより簡単であり、そして動き出す家電はもはや人間よりも賢い。今回は、声だけで操作できる“ノールック”な「AIアシスタント家電」(以下、AI家電)をキーワードに取り上げ、基礎となる知識から具体的な製品やサービス、そしてAI家電のある便利な暮らしを紹介する。

AIって何? 今は第3次AIブーム! 鍵は「ディープ・ラーニング」

そもそも「AI」とは「Artificial Intelligence」の略で、人間のような知能をコンピューターで実現しようという概念。明確な定義はなく、時代とともに意味合いも大きく異なる。電卓のような計算機も、あらかじめプログラムされた想定問答ができるコンピューターも、登場当時は人工知能と考えられていた。

そして今、家電、医療、自動車、ロボットなど、あらゆる分野で話題になっている“AI”とは、「第3次AI」と呼ばれるものだ。そのポイントは「ディープ・ラーニング」(深層学習)。人間の脳をヒントにした、何層にも深い神経回路を模した構造を持ち、コンピューターが“みずから学習して”賢くなるシステムである。たとえば、ヒトが猫を見たとき、瞬時に「あれはネコだ」とわかる。しかし、コンピューターを用い、画像認識させようとすると、「ネコ」と特定できる特徴をこと細かにコンピューターに教えなくてはならない。あなたは、猫と犬の違いを、きちんと説明できるだろうか?

その点、ディープ・ラーニングなら、コンピューターに大量の猫の写真を見せると、コンピューターがみずから“特徴”を学習していき、判断を下せるように進化していく。また、その“特徴”は、人間の判断基準とまったく異なる可能性があり、人間よりもすばやく高精度な判断を下せる可能性をも秘めているのだ。こうした学習が可能になったのは、実用的なディープ・ラーニングを実現できるレベルまでコンピューターの処理速度が向上したことに加え、インターネットの発達により、学習に必要な情報を低コストで大量に得られるようになったことが大きい。

ディープ・ラーニングでは、人間の神経回路を模した何層にも深い構造(ニューラルネットワーク)を持ったコンピューターが、入力されるデータから自分で学習していく

以前は、コンピューターにヒトの話し言葉を理解させること自体が困難だった。言語の判別、文法の揺らぎ、イントネーションの個人差など、無限の組み合わせが存在するので、画一的なプログラムでは対応できないからだ。さらに、もし聞き取れたとしても、内容をどう判断するかはまた難題である。しかしディープ・ラーニングを用いると、コンピューターがみずから学習するため、認識率も判断力も成長を続ける。放っておいても、どんどん賢くなるのだ。

「Amazon Alexa」がAIシステムのスタンダードに? 視覚がいらないインターフェイスの世界へ

現在、先進性と実用性の両面で脚光を浴びているAIシステムが、米Amazonの「Amazon Alexa」である。Amazonは、画面とキーボード&マウスの組み合わせに代わる究極のインターフェイスとして「音声」をあげている。人間が声で意思を発し、それをAIが適切に理解して処理し、AIからの返答も音声になるシーンを見据えているのだ。そうなるとノールック、つまり、視覚がいらないインターフェイスの世界になる。まるで自分のそばにアシスタントがいるかのように便利に違いない。

AmazonのAIシステムの頭脳と言える「Amazon Alexa」はクラウド上に存在するが、Wi-Fi対応の音声認識デバイス「Amazon Echo」や、その派生モデルと言える「Amazon Dot」「Amazon Tap」が製品化されており、我々はこれらを通して「Amazon Alexa」と対話できる。製品を通して最終的に何ができるかは、ユーザーが選択した「Amazon Alexa」対応サービスで決まる。たとえば、Amazon.comを含むネット通販の利用、天気やスポーツ速報といった情報の取得、Spotifyのような音楽配信のコンテンツ選択、家電の操作などが可能だ。

さらに「Amazon Alexa」はオープンなシステムのため、サードパーティー(第三者)が対応製品やサービスを自由に続々と開発できることが特徴として大きい。家電メーカーや自動車メーカーも、「Amazon Alexa」への対応を進めている。Amazonは、こうしたオープンなスタンスで、第三者の参入を促し、利便性を飛躍的に向上させ、「Amazon Alexa」の価値を高めようとしているようだ。Amazonが「Skill」(スキル)と呼ぶ “できること”は、すでに3,000を超えると公表されていて、「Amazon Alexa」が音声操作によるオートメーションのデファクトスタンダードになるとの見方も多い。

「Amazon Echo」などの音声認識デバイスを使って、ユーザーは「Amazon Alexa」との対話により家電の制御などを行うことができるようになる。なお、「Amazon Alexa」は残念ながら日本語にはまだ対応していない。言語学の分野も関わってくると思われるのでいろいろと難しいのかもしれないが、もし日本語版が登場したらインパクトは強そうだ

今年の「CES2017」では、米フォードの車が「Amazon Alexa」への対応を計画していることが発表された。車の中から自宅の家電を音声制御できる機能を搭載するという。英語版だが、以下の公式動画も参照されたい

同様の取り組みとしては、米Google社の音声認識デバイス「Google Home」がある。いわば「Amazon Echo」の対抗馬であり、こちらは「Google Assistant」という対話型AIを搭載している。Wi-Fi対応のマイク内蔵スピーカーがインターフェイスとなっており、ユーザーが「OK Google」と話しかけることで、家電の操作等を行えるようになる。ユーザーが話しかけた内容がクラウドで高度に処理される点など、上述の「Amazon Echo」と同じだ。

米Googleも、「Amazon Echo」の対抗馬となる音声認識デバイス「Google Home」を展開している

米Googleも、「Amazon Echo」の対抗馬となる音声認識デバイス「Google Home」を展開している

今後、「Amazon Echo」や「Google Home」に似た音声認識デバイスは各社から登場する見込みだが、実用性を高めるには、音声をクリアに拾える技術も大きなポイント。また、雑音を低減する技術や、“誰”が“どこ”で話しているかの特定も鍵になると言われている。

Qualcomm社のスマートオーディオ/スマートホーム用リファレンスプラットフォーム。ハードウェア技術がない企業も、こうしたプラットフォームを利用することで、「Amazon Echo」や「Google Home」のような製品を比較的短期間で世に送り出すことができる。今後、各社から、同様の製品が続々と登場する可能性がある

家電メーカー「シャープ」の取り組みに注目!

さて、AIをキーワードにした場合、日本でなじみのある家電メーカーとして、特に注目したいのはシャープだ。ユニークな取り組みで知られる同社だが、「人に寄り添う」ことを目指したAI技術を「ココロエンジン」と命名して、家電製品に続々と搭載している。

エアコンは各家庭の地域や使い方を学習し、快適かつ省エネな最適運転を、ウォーターオーブン「ヘルシオ」は音声対話を通じ、残りの食材からレシピ提案を、液晶テレビと組み合わせて使うネットプレーヤー「AQUOSココロビジョン」は、視聴者の好みを学習して出会ったことのないコンテンツをレコメンドしてくれる。このほか、ロボット掃除機「ココロボ」は、挨拶やお礼といった言葉によるコミュニケーション機能も備えており、遊び心の面でも面白い取り組みだ。

音声で室内温度を提案してくれるエアコン「AY-F56X2」

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会話でレシピを提案してくれるウォーターオーブン「ヘルシオ AX-XP2WF」

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使えば使うほどユーザーの好みのコンテンツを学習する「AQUOSココロビジョンプレーヤー」

使えば使うほどユーザーの好みのコンテンツを学習する「AQUOSココロビジョンプレーヤー」

ロボット掃除機「ココロボ(COCOROBO) RX-V200」を通して、外出先から家電のON/OFF操作が行える

ロボット掃除機「ココロボ(COCOROBO) RX-V200」を通して、外出先から家電のON/OFF操作が行える

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モバイル型ロボット電話「ロボホン(RoBoHoN)」も、対話でさまざまな機能を使えるデバイスだ

モバイル型ロボット電話「ロボホン(RoBoHoN)」も、対話でさまざまな機能を使えるデバイスだ

さらに同社は現在、家中の家電をコントロールするハブとして、「ホームアシスタント」ロボットを開発中だ。ユーザーがロボットと“自然に”対話するだけで、自宅にある家電がスマートに連携し、快適な住空間を作り上げてくれるようになるかもしれない。もちろん、インターネットを利用し、屋外の情報も取り込んで賢く自動で動く「IoT家電(関連記事はこちら)」の要素も含まれる。

シャープは「CEATEC JAPAN 2016」で、「ホームアシスタント」ロボットのコンセプトモデルを展示。ロボットとの会話を通じ、テレビやエアコンの操作ができる様子をアピールしていた

AI家電のある便利な暮らしとは?

ではここから、世界中で話題の「Amazon Echo」に対応する製品を例に、「AI家電のある便利な暮らし」をのぞいてみよう。

たとえばキッチンで。パスタをゆでる際、タイマーを使いたいところだが、すでにパスタを握っていて手を放したくないという状況になるときがある。そんなときは「Amazon Echo」に、「タイマーを10分セットして」と声をかければよい。音声操作ができるおかげで、調理作業を中断する必要がなく、日々の料理もスムーズに行える(なお簡単なタイマー設定だけなら、iPhoneのSiri機能等でも可能)。

具体的に言うと、キッチン家電では、米大手家電メーカーGEが積極的に「Amazon Echo」(Alexa)との連携を進めている。「Geneva」と名づけられた「Amazon Alexa」対応システムを家電製品に組み込み、「Amazon Echo」からの指示を家電側で受け取れるようにしているのだ。「Alexa、Genevaにコーヒー用のお湯を頼む」と声をかければ、Genevaを搭載する冷蔵庫がお湯を用意してくれる。料理の最中に「Alexa、Genevaにオーブンの予熱350℃を頼む」と声をかければ、Genevaを搭載するオーブンが自動で350℃の余熱をスタートしてくれるといった具合だ。

次に、たとえばリビングで。外出するときに電気を消す操作も、「Amazon Echo」(Alexa)との会話だけで実現できたらどうだろうか? いちいち電灯スイッチを探す必要がなくなって便利だ。すでに「Amazon Echo」(Alexa)と「Google Home」の両方に対応しているのが、フィリップスのスマートLED電球「Hue」。声をかけることで点灯と消灯が可能で、さらに明るさもパーセンテージで指定できる。

深夜に帰宅したとき、真っ暗な室内でも、話しかければ明かりをつけることができる。暗闇で照明のスイッチを探す必要はない。そしてそれは、寝室でも同じだ。ベッドに潜り込んでから照明の消し忘れに気が付いても、話しかければ消灯できるので、いちいちベッドを出る必要はなく快適に眠りにつける。

「Amazon Echo」や「Google Home」に対応するフィリップスのスマートLED電球「Philips Hue White A19 Starter Kit」(画像はフィリップス公式サイトより)

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なお、残念ながら現時点では「Amazon Alexa」が日本語に対応していないため、上であげた使い方を日本国内で実現するのは難しい。今後、「Amazon Alexa」の日本語バージョンがリリースされ、対応する家電製品が日本でも展開されるのを待ち望みたいところだ。

さいごに

最新のAIは、ディープ・ラーニングとクラウド化によって、日々賢くなっていくのがポイントだ。最初からパーフェクトな動作は望めないが、世界中で膨大な数のユーザーが対応製品を日々利用すれば、賢くなるスピードも速くなる。そう考えると、先手を打ってオープンなAIシステムを打ち出したAmazonの戦略は理にかなっている。AIの発達によって人間の仕事がなくなるとも言われているが、むしろ私たちの仕事が軽減されて余暇が増え、さらにAI家電で日々の生活がより快適になる……と、そんな楽しい未来を期待したい。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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2017.3.25 更新
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