2018年10月25日に発売された、キヤノン初となる35mmフルサイズCMOSセンサー搭載のミラーレスカメラ、「EOS R」。
キヤノン初のフルサイズミラーレスカメラ「EOS R」に、「RF24-105mm F4L IS USM」レンズを装着した例
メーカーによれば、スペック的には「EOS 6D Mark II」と同等の性能ということですが、3,030万画素の有効画素数はむしろ上位機種の「5D Mark IV」に近く、連写速度は最大で秒間8コマと、5Dをもしのいでいます。また、EOS Rにはフルサイズ機では初の新映像エンジン「DIGIC8」が搭載されていたり、測距点はAFフレームのほぼ全面となる5655ポジションという広大なAFエリアから選択可能であることなど、見どころも満載。さらに、暗くてもピントが合うと多くのプロカメラマンが感嘆する、暗所に強いAF性能などを踏まえれば、もはや期待するなと言うほうが無理でしょう。
キヤノン「EOS R」を使って、東京オートサロンの展示車やキャンギャルを撮影してみました
そんなEOS Rを試す場所として選んだのは、2019年1月11日〜13日にかけて開催された「東京オートサロン2019」。昨年の「オートサロン2018」では、キヤノン初のAPS-Cコンパクトデジタルカメラ「PowerShot G1 X Mark III」を使って東京オートサロンを撮影してみたのですが、今年はEOS Rを用いて、撮影取材を実施しました。
キヤノン「EOS R」に「RF24-105mm F4L IS USM」レンズ、「スピードライト580EX II」ストロボを装着した例
EOS Rに装着したレンズは、標準ズームレンズの「RF24-105mm F4L IS USM」で、そこに「スピードライト580EX II」ストロボを追加しています。スピードライトには、外部電源としてコンパクトバッテリーパック「CP-E4N」に単三乾電池8本を投入して使用しました。余談ですが、スピードライトとバッテリーパックは筆者の私物を使用しています。
「ROHAN」ブースのシボレー「インパラ」
33mm 、f4.5、1/80秒、ISO250、+1EV、WB:オート
撮影写真(6720×4480、3.53MB)
東京オートサロンといえば、カスタムカーのイベントとして日本一の規模を誇ります。その中でも、「ドレスアップ」と呼ばれるクルマの見栄えをカッコよくするカスタムは、多くの注目を集めます。写真のシボレー「インパラ」は、ドレスアップを極めた1台として東京国際カスタムカーコンテストのインポートカー部門で最優秀賞に輝いたクルマです。このインパラを撮影した写真が、EOS Rの基本性能のすべてを物語っていると言っても過言ではないでしょう。エングレービング、すなわち彫金された美しいボディのフロント部を拡大して見ていただければ、その精密な彫金の様子を余すところなく写しきっていることがおわかりいただけるはずです。
今回、EOS Rに装着した標準ズームレンズ「RF24-105mm F4L IS USM」の上位には、「RF28-70mm F2L」という大口径のRFマウントレンズが控えているのですが、まずは「24-105mm F4L IS USM」でRFマウントレンズのキャリアをスタートしてもまったく問題はないでしょう。実際、「EOS 5D Mark III」に「EF24-105mm F4L IS USM」レンズを装着したときよりもAFの反応は圧倒的に速く、そしてこの解像力の高さなら十分におすすめできます。撮影中に、筆者もこのレンズが欲しくなったほどです。
「ホンダアクセス」ブースの「S660 Neo Classic Racer」
24mm、f8、1/80秒、ISO8000、+1EV、WB:オート
撮影写真(6720×4480、2.88MB)
EOS Rはフルサイズミラーレス機ということで、高感度特性の実力が気になります。EOS Rのスペックを見ると、ISO感度は常用で100〜40000を設定でき、拡張では102400相当の設定が可能となっています。上の写真は、ホンダアクセスブースの「S660 Neo Classic Racer」を、ISO8000、1/80秒、f8で撮影したものです。ストロボなしで、フロントからリアまでフォーカスを合わせることでこの設定としましたが、縮小画像で見るかぎりは粒状性に問題があるようには見えません。また、拡大してみても多少の粗さは感じますが、Aピラー下の「Modulo」のロゴもしっかりと読み取ることができ、ミラー機の2400万画素クラスと比べれば、高感度での常用性もしっかりと担保されているという印象を受けます。
「3D Design」ブースにて、カーボンパーツをあしらったBMWのステアリング
24mm、f4.5、1/100秒、ISO500、+1EV、WB:オート
撮影写真(6720×4480、1.81MB)
また、上の写真のようにストロボを併用したISO感度500であれば、粒状性の粗さなどみじんも見えません。商品撮影でも十分な威力を発揮するこの解像力は、EOS RとRFレンズの組み合わせがなせる業ではないでしょうか。
キヤノン「EOS R」には、被写体の瞳を検知してオートフォーカスしてくれる「瞳AF」機能が搭載されています。被写界深度が浅い状況でも、瞳にピンポイントでフォーカスしてくれます
EOS Rの機能の中でも特に優秀と言えるのが、被写体の瞳を検知してピンポイントでフォーカスを合わせてくれる「瞳AF」機能です。この瞳AFは、「ワンショットAF」と「顔+追尾優先AF」の設定をオンにしたときに使用できる機能で、展示会イベントなどでの人物撮影にはかなり有効な機能と言えます。
東京オートサロン2019「ダイハツ」ブースの清瀬まちさん。キヤノン「EOS R」の「瞳AF」機能を使って撮影
上の写真は、ダイハツブースの清瀬まちさんを撮影したものですが、向かって右側の瞳に正確にピントが合っています。瞳AFは、撮影時には特に意識することなく、レンズを向ければシャッターを切る瞬間までしっかりとピントを合わせてくれます。この便利さが、多くのプロカメラマンを魅了しているのでしょう。
東京オートサロン2019「MONZA JAPAN with AWESOME」ブースの宮越愛恵さん。キヤノン「EOS R」の「瞳AF」機能は、この距離が作動の限界でした
上の写真は、MONZA JAPAN with AWESOMEの宮越愛恵さんを撮影したもので、瞳AFがフレームに対してどの程度まで追従するかの目安としてご覧ください。この写真の、フレームに対しての人物の瞳の大きさが、瞳AFの限界です。瞳の大きさの比率がこの写真よりも小さいと、顔追尾AFに切り替わります。切り替わると言っても特に大きな違和感はなく、何か操作が必要であるということもありません。また、被写体に対してズーミングするか近づけば、再び瞳AFが作動します。
東京オートサロン2019「ダイハツ」ブースの清瀬まちさん。キヤノン「EOS R」の「瞳AF」機能を使って撮影しましたが、ダイハツ「ミラトコット」のヘッドライトを瞳として認識してしまいました
非常に便利で高精度な瞳AFですが、実は多少の弱点も持っています。瞳の形に似たものを瞳として認識してしまうのです。上の写真は再びダイハツブースの清瀬まちさんを撮影したものですが、EOS Rは横にあるクルマ「ミラトコット」のヘッドライトを瞳として認識してしまったのです。このフレーミングでモデルさんの顔を認識すれば、顔追尾AFでフォーカスしますが、ヘッドライトを瞳として認識してしまったがために瞳AFが優先されて、ヘッドライトにフォーカスし続ける状態になりました。解決策として、ヘッドライトを外してフレーミングし、顔追尾AFでモデルさんにフォーカスを合わせ、その後にミラトコットを含めたフレームでシャッターを押しました。
東京オートサロン2019「VOLTEX」ブースの大谷芽衣さん。EOS Rの広いAFエリアを活用することで、被写体が画面の隅にいるような構図でも、すぐにフォーカスを合わせて撮影することができます
フォーカスと言えば、冒頭でも述べた5655ポイントという、フレームのほぼ全面におよぶ広範囲なAFエリアも見逃せません。上の写真は、VOLTEXブースの大谷芽衣さんを撮影したものです。ミラー機であれば、縦位置の写真の顔の部分が測距点一番端の部分になります。横位置の写真の顔の位置にフォーカスしたい場合は、ミラー機であればフォーカスしたうえでフレーミングを直すことになりますが、EOS Rの場合はこの位置もAFエリアの範囲内なので、フレーミング即フォーカスということができます。これは、フレーミングの自由度という面で大きな進化であり、シャッターチャンスを逃しにくいというメリットにもつながります。
上の写真は東京オートサロン2019「T-DEMAND」ブースのはるまさん、下の写真は「CSO」ブースの霧島聖子さん。これまで、露出を白い衣装に合わせると黒い部分が飛びがちであったのが、EOS Rではしっかりと描写されています
映像エンジンがDIGIC8となったことにより、さまざまな部分が進化したと言われますが、筆者が進化を感じた部分のひとつとして、明暗混在での階調表現の進化をあげたいと思います。左の写真はT-DEMANDブースのはるまさんを、右の写真はCSOブースの霧島聖子さんを撮影したものです。衣装に白い部分がある場合、白トビを抑えた露出設定をすると黒くつぶれがちだった暗部の階調が、EOS Rでは豊かに表現されています。また、黒部分の階調表現の豊かさは、チャイナドレスのスカート、レース生地の部分にも見てとれます。埋没しがちだった黒系の表現力の進化は、撮影した写真にこれまでとは違った美しさを与えるのではないでしょうか。
東京オートサロン2019「Project μ」ブースの川村那月さん。画面上部のブース名の部分は完全には白飛びしておらず、わずかですが映り込んでいます
明暗混在でも、ハイライト部分が強い場合はどうでしょう。上の写真はProject μブースの川村那月さんを撮影したものですが、人物に露出設定を合わせた場合のハイライト部分の処理も強化されている印象で、これまでは上部看板の文字が輪郭のシャドウだけしか写らなかったところを、Project μのコーポレートカラーのライトグリーンが多少なりとも写り込んできています。今回はすべて撮って出しのJPEG画像で掲載していますが、RAW撮影で現像処理をしっかりとすればハイライト部分の表現はもっと豊かになることでしょう。