自動車ライターのマリオ高野です。
古くから、自動車メディアにおける「俯瞰(ふかん)」とは、カメラマンが脚立に乗る程度のもので、今でもそれが主流です。しかし、テレビ番組やPV動画などでドローンによる空撮映像がすっかりおなじみとなった昨今、ついに自動車メディア業界でもドローンを使用する人が見られるようになりました。人が使っているのを見ると、自分もやってみたくなるもの。ググってみると、安いものでは数千円から買えるようになっているではありませんか!
去年、電動ラジコンでレースデビューして、ラジコンの楽しさに目覚めた経験から、空を飛ぶラジコンのようなものでもあるドローンもきっと楽しいに違いない! そう思うようになったので、自分もドローンデビューをすることに。
本格的なドローンは高額だし、航空法の適応を受けるなど、使いこなすにはハードルが高そうなイメージがありますが、トイドローンと呼ばれる小型のドローンは数千円から買えるほど値段が安く、誰にでも簡単に扱えそうな雰囲気です。
トイドローンにも法的な規制はあるのかないのか、問題なく使える場所はどこなのかがよくわからないなど、やはり判断がむずかしいところがあります。ネット上にはさまざまな情報が上がっており、解説本なども売られているので、正しい使用法を理解するのはそう難しくありませんが、より安心して使うためには専門家に直接聞くのが一番。そこで今回は昨年11月に開校し、すでにドローンのプロフェッショナルを数多く輩出しているドローンスクール佐賀大和校の小室光春氏を訪ね、オススメの機種や知っておくべき知識など「正しいドローンの楽しみ方」を教えてもらいました。
小室氏によると、トイドローンのオススメ機種はRyze Technology社の「TELLO」とのこと。Wi-Fiで接続したスマートフォンやタブレット端末で、比較的簡単にコントロールできます。
重量は約80gと軽量ながら安定したホバリング性能と、高画質の撮影が魅力。自動撮影モードや、360回転しながらの撮影、宙返りなど、トイドローンとしては最高レベルの性能と機能を誇ります。数千円で売られるトイドローンは飛行中の安定性があまり高くなく、撮影機能やクオリティも今ひとつとのことですが、本機はそのあたりの心配はほとんどないそうです。
さっそく「TELLO」を購入して、さまざまな状況で撮影してみました。
透明のカバーは、移動用のケースとしても使い勝手がいいです。初期不良があった場合、箱やケースが損傷していると保証されない可能性があるため、製品が正常に作動するかどうか確認できるまでは、ていねいに扱ってください
各部の作り、質感はかなり高いレベルにあります。バッテリー、充電用USB、予備のプロペラが付属。スマホかタブレットがあれば操縦できます
まずは4つのプロペラが正常に作動するかチェックを。異常なら保証で交換、または無償修理してもらえます
フル充電からの飛行可能時間は約13分。バッテリー残量が少なくなると、宙返りなどフライトモードの一部ができなくなります
500万画素のカメラを搭載。最大高度の10mからでもSNSに載せる程度なら問題なく使えます
まずは、自分以外に誰もいない室内でテスト。一般的な住宅の部屋でも、天井近くからなど、普段は撮れないアングルから撮影した画像や動画は新鮮なものです。
フライトモードのひとつ「Bounce」は、地上30cmから1mの高さを自動で上下しながら撮影できる機能で、天井の低い屋内でもひと味違った自撮りや記念写真的な動画などが楽しめます。
低速と高速のモード切り替えがあるので、両方を試してみて、それぞれの感覚を把握しておきましょう。低速モードでは手ブレ補正が効きます。
温泉宿の一室、天井スレスレから撮った様子です。工夫次第で、もっと創造的な画像が撮れるはず!
TELLOの飛行の様子は動画をご覧ください。
屋外デビューは、自治体に申請をして借りた(占有した)グランドで実施。草野球の練習をした後、チームメイトと記念写真を撮りました。連続飛行が可能な時間は13分ほどと短いのがやや残念ですが、自分のプレーを俯瞰から見て問題点を発見することにも活用しようと思います。
草野球の練習で借りたグランドに許可を得て、練習後の記念撮影を。野球用のグランドは周囲が高いネットに囲まれているので、道路近くに飛び出すなどのリスクが低いので安心です
個人的にもっとも楽しめたのは、ラジコン専用サーキットでの俯瞰動画撮影です。
行きつけのラジコンショップ「スーパーラジコンさいたま大宮店」の村井店長さんの許可と協力を得て、ほかのお客さんがいないときに、愛車(電動ラジコンカー)の走りを空撮!
ラジコン操縦のエキスパートである村井店長の模範的な走行ラインを把握、運転テクニックを研究するのに最適な動画が撮れたのです!
スーパーラジコンさいたま大宮店さんにて、ほかのお客様が走っていないタイミングで愛車の走りを空撮! もちろん、村井店長に相談して許可を得ています
「実車の走行シーンを空撮したい」という願望は、公道では絶対に封印しましょう。サーキットでも禁止している場合が多いです
狙った位置でホバリングさせておけばひとりでも撮影可能ですが、今回は村井店長に愛車の操縦を委ね、模範的な走りを撮影しました
風のない屋内は安定しやすいですが、壁などに当たると墜落するので、過信せず慎重に操縦しましょう
個人的に、もっとも苦手なS字コーナーの走り方を空撮。やはり、真上から見たほうがライン取りがわかりやすいです
個人的には、スマホよりも画面が大きくカメラアングルが確認しやすいタブレットが一番使いやすいと感じます。「TELLO」の操縦アプリは無料でダウンロードできます
スマホに取り付けるタイプのコントローラーも販売されています。プレステなどのゲーム機と同じ感覚で操縦できます
風の影響を受けない屋内では、やはり高度や向きの微調整がやりやすいです。作動音はそこそこ大きいので、深夜に自宅内で飛ばす際は、場合によってはご近所への配慮が必要かも
こちらがその動画。徐々に高度を上げていくと印象的な映像が撮れました。慣れてくると、大型のドローンを屋外で飛ばしてみたくなりますが、手続きや金額などを考えるとTELLOで十分楽しめると思いました。
最後、私の操縦ミスで壁に当たって墜落してしまいましたが、機体に異常はありませんでした(笑)。
「TELLO」はラジコンショップでも取り扱われる場合が多いです
このように、不特定多数の人が出入りをしない場所に限られるとはいえ、ワタシの場合は想像していた以上に自分の趣味に合わせた撮影ができて大満足!
「TELLO」での撮影は、自分の趣味の楽しみと幅をさらに広げてくれるのでありました!
ドローンを飛ばすためには、基本的な知識を得ておく必要があります。前述の小室氏に、そちらを教えてもらいました。
まず、ドローンの中でも機体重量が200g以下のものは「トイドローン」に分類されますが、一部の法的規制を受けます。機体重量200g以下のトイドローンは、200g以上のドローンで求められる「飛行申請」は不要ですが、だからといってどこでも飛ばしていいわけでは決してなく、小型無人機等飛行禁止法や電波法、公園条例などさまざまな法的規制を受けます。
たとえば私有地の上空を飛ばしたら、上空権にも抵触してしまうので、もし地主に訴えられると敗訴することになるなど、法律による規制を常に意識して扱うことが重要です。
現状のトイドローンの最大高度は10m程度(場合によっては最大30m)とはいえ、空港やその周辺でも使用できず、仮に最大高度の性能が向上しても、地表や水面から150m以上の高さで飛ばすこともできません。
トイドローンとはいえ、回転するプロペラ部分は刃物のように鋭利なので、人に当たると重傷を負わすリスクがあることを常に忘れないでください。人や物に当たった際の被害を最小限にするためのカバーも販売されています。
また、トイドローンはハイスペックな機種でも、風にはめっぽう弱いということも忘れてはいけません。風速1〜2m程度の風でも影響を受けやすいので、「無風」か、無風に近い状況でなければ使用を控えましょう。
無風であっても、周辺の電波状態によっては突然コントロールを失うこともありえるので、電波状況やバッテリー残量は常にチェックしてください。
トイドローンを安全に飛ばせる場所であるかどうかについては、基本的には一般常識の範囲で判断すべきということで、曖昧なものではありますが、大きなポイントとなるのは、
トイドローンを安全に飛ばせる場所であるかどうかについては、基本的には一般常識の範囲で判断すべきということで、曖昧なものではありますが、大きなポイントとなるのは、
「墜落したりコントロールを失ったりしても問題のない場所や状況」であるかどうかです。
「墜落したりコントロールを失ったりしても問題のない場所や状況」であるかどうかです。
・不特定多数の人がいる場所(市街地や住宅街、駅など)
・自動車や鉄道、飛行機が通る場所や、それらに近い場所
は完全にNGであると認識しましょう。
また「ドローン禁止」と警告されている場所では、機体重量200g以下のトイドローンも含めて飛行NGなので注意してください。
トイドローンを安心して使う場所としてよさそうなのは、
・特定の人しか出入りしない状況にある広場や公園
・屋内で行われるイベント会場
などです。その場にいる人や、その場所の管理者にあらかじめ相談をして、許可や同意を必ず得たうえで飛ばしましょう。
今後、ドローンの専門知識や技術を習得した人材はますます必要とされることから、ドローンスクールの重要性も高まっています。ドローンスクールはプロフェッショナルを目指す人ばかりではなく、趣味の範囲でドローンを深く楽しみたいという生徒も多いということで、ドローンをもっと深く楽しみたい人は、今時の習い事として受講してみてはいかがでしょうか?
ドローンスクール佐賀大和校を経営する小室光春氏。災害時の捜索や、農業現場での人手不足解消など、ドローン操縦のプロを増やすことは社会貢献にもつながると注目されています
<取材協力>
ドローンスクール佐賀大和校
スーパーラジコン大宮店
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。