留守中のペットや家族の様子を、室内用のセキュリティカメラ(見守りカメラ)で確認している人は多いでしょう。ただ、これまで見守りカメラが自動で教えてくれたのは「人物を検知しました」「動物を検知しました」といった程度。何が起きたのかを知るには、スマホでアプリを開いて映像を見返す必要がありました。そんな手間を減らしてくれそうなのが、Googleのスマートホーム製品で使えるようになったAI機能。なんと、カメラに映った人やペットの行動を、AIが文章で説明してくれるんです。そこで、本当に映像を見ずにどれくらい家の様子がわかるのか、実際の生活のなかで試してみました。
Googleの見守りカメラとスマートスピーカーを使い、AIによる見守り機能を検証しました
照明やエアコン、カメラなどの機器をインターネットにつなぎ、スマホや声で操作・確認できるようにした「スマートホーム」。Googleはこの分野で「Google Home」というサービスを展開しており、専用のGoogle Homeアプリを使えば、見守りカメラやスマートスピーカー(話しかけて操作するスピーカー)などをまとめて管理できます。
そのGoogle Homeで新たに使えるようになったのが、Googleの生成AI「Gemini」を家庭向けにした「Gemini for Home」。日本では2026年4月から早期アクセス版(先行提供版)として利用できます。特徴は、決まった言い回しでなく普段の話し言葉を理解してくれること。今回注目したのは、そのなかでもカメラの映像をAIが読み取り、「誰が、どこで、何をしていたか」を文章で伝えてくれる機能です。
カメラが撮影した映像をAIが理解し、質問への回答をアプリに文章で表示。同じGoogle Homeに登録したスピーカーがあれば、声で質問をし、回答を音声で聞くこともできます
使用したカメラは、屋内向けの見守りカメラ「Google Nest Cam Indoor(電源アダプター式/第3世代)」です。2K HDRの高画質な映像に加え、部屋の隅に置けば室内全体を見渡せる対角152度の広い画角を備えています。明かりのない場所では赤外線のナイトビジョンで撮影を続けられ、1日中監視を続けられるのもポイントです。なお、映像の解析はカメラ本体ではなくGoogle側のAIが担い、結果はGoogle Homeアプリに文章で表示される仕組み。見守り自体はカメラとスマホがあれば始められます。
今回あわせて使ったのが、2026年6月25日発売の「Google Home スピーカー」です。Gemini for Homeに合わせて開発されたスマートスピーカーで、カメラの記録について声で質問できます。また、スピーカーを家電の中継役(ハブ)として置けば「カメラが人を検知したら照明をつける」といった自動化の設定も可能。さらに「ソファに人が座ったらテレビをつける」といった「人の行動」をトリガーにした設定もできるようになっています。なお、今回は新モデルを使用しましたが、従来品のGoogle製スマートスピーカーでもGemini for Homeは利用できます(古い機種では一部機能に制限あり)。
今回使用したGoogle Nest Cam Indoor(左)とGoogle Home スピーカー(右)
カメラのAI機能を使うには、Google Homeの有料サービス「Google Home Premium」の契約が必要です。プランは、月額1,000円(年額では1万円)の「Standard」プランと、月額2,000円(年額では2万円)のAdvancedプランの2種類。契約しなくても人物・動物・車両を見分けた通知や、6時間分の短い動画プレビューは利用できます。ただし、映像の内容をテキストで説明する機能や、映像を言葉で探せる検索機能、その日のできごとをまとめる「一日の要約」を使えるのはAdvancedプランのみです。
なお、仕事などでGeminiを使うために「Google AI Pro」を契約していると、Standardプランを追加料金なしで利用でき、従来の費用に月額1,000円を足せばAdvancedプランにアップグレードできます。筆者もこの方法でAdvancedプランを契約しています。
Advancedプランでは、60日分の動画履歴と10日間の連続録画も利用できます
Nest Cam Indoorをリビングに設置し、愛猫と筆者、家人が普段どおり過ごす様子を記録しました。なお、玄関には以前から使っているGoogleのビデオドアホン「Google Nest Doorbell(Battery Type)」(こちらもGemini for Homeに対応)も設置しています。
まず驚いたのが、説明の具体性です。猫がソファから箱を踏み台にしてキャットタワーに上った場面は「白い猫が箱に飛び乗り、キャットタワーでくつろいでいる」と表示。別の映像では「白い猫がソファを横切り、ベッドに腰を下ろした」という説明もあり、ソファやベッド(リビングの隣の寝室も映っている)、キャットタワーといった家具をきちんと区別できていました。人の行動も同様に説明され、登録した人物は顔がカメラに映れば名前で表示されます。誰が何をしていたのかが、通知だけでわかるんです。
照明を消した夜間の赤外線映像でも「人が寝ているベッドの上で猫が動き回っている」と行動の説明は正確でした。ただし、暗いと顔の判別が難しくなるのか、登録済みの人物でも名前が出ない場面がありました。
映像ごとにAIの説明文が並び、再生しなくても猫の居場所や人の動きを把握できます
赤外線映像でも、猫とベッドで寝ている人の様子を正しく説明していました
ドアホンの映像でも、AIによる説明が表示されました。顔が見えないと名前は出ませんが「リュックサックを背負った人がドアの鍵を開けて階段を下りていく」のように、動きや持ち物まで説明してくれます。荷物が置かれた場面では、配達員が置いて立ち去ったことがわかる内容に。子どもの帰宅や家族の外出を把握したいときに役立ちそうです。なお、コンビニのレジ袋を「バッグ」と表現するなど、持ち物の判断には多少のブレもありました。
人の動きや持ち物を説明してくれます
Advancedプランでは、スマホからカメラの記録についての質問もできます。方法は、Google Homeアプリにある質問欄「自宅に相談する」に文字で入力するか、Google Home スピーカーに話しかけるかのどちらか。筆者の名前を入れて「リビングに出入りしたのはいつ?」と尋ねると、「今日午前5時58分からリビングルームに出入りし始めました」と、該当する映像の候補とともに答えてくれました。猫の名前「はちこ」と呼び名「はっちゃん」を伝えておけば「9月6日のはっちゃんの様子を教えて」といった質問にも時刻を交えて回答してくれます。また、映っていないことを無理やり答えない点にも感心しました。水を飲んだ時間を尋ねた際は、履歴から確認できなかったと正直に回答しています。
ちなみに、スピーカーの音声回答はアプリの文章とほぼ同じ内容で、質問の聞き間違いもありません。ただ、回答が長いと聞き終わるまでに時間がかかり、必要なところだけを拾い読みすることはできません。作業中など手が離せないときには便利ですが、素早く確認するならアプリやNest Hubなどのスマートディスプレイで読むほうがよさそうです。
人の出入りを尋ねると、時刻とともに該当する映像の候補を示してくれます
映っていないできごとについては、確認できなかったと回答しました
その日カメラがとらえたできごとをAIがまとめる「一日の要約」(「ホームブリーフ」)も便利でした。筆者宅では、家人がソファで過ごすことが多く、猫がひんぱんにそばに来ていたこと、午後に荷物の配達があったことなどが数行に整理されていました。通知を1件ずつ開かなくても、その日の流れがざっとつかめます。いっぽう、「誰かが後ろで休んでいました」のように、誰をさすのかわかりにくい表現が混じることもありました。
家族やペットがどう過ごしていたかが、数行の文章にまとめられています
見守りで最も知りたいのは家族の異変。そこで、高齢者の見守りを想定して、倒れる、痛がる、転倒するといった場面を演技で再現してみました。頭を押さえて床に倒れ込み、座椅子の縁につかまって起き上がろうとした場面の説明は「人が床に横たわりながら椅子に頭を乗せている」。横になっていることはとらえたものの、苦しんでいる様子は読み取れていないようです。「倒れた」瞬間ではなく、横たわった状態として説明される点にも注意が必要。お腹を押さえて痛がる演技は「服を整える」とされ、物につまずいて転倒し、足を痛がる様子も認識されませんでした。
普段の生活でも、テーブルの下の物を探して低い姿勢になった場面が「床で腕立て伏せをする」と説明されるなど、誤認が見られました。テレビに映った人物を「見慣れない顔」と判断することもあります。さらに、猫のトイレはカメラに映るよう家具を設置しても、トイレとして説明されませんでした。なお、無人のリビングで赤ちゃんの泣き声の動画を流したら、通知は一度もなし。音だけを監視する用途には向かないと考えたほうがよさそうです。
倒れて起き上がろうとする演技は「椅子に頭を乗せている」と説明されました
テーブルの下の物を探していた場面が、「腕立て伏せ」と説明されました
テレビに映った人物を「見慣れない顔」と判断した例
これまでの見守りカメラは、映像をリアルタイムで見るか後から見返すのが基本で、通知で知らされるのは人やペットが「いる」ことくらいでした。Gemini for Homeでは、それが「誰が、どこで、何をしていたか」を伝える文章に変わります。カメラのアプリを開かなくてもある程度の様子がつかめるのは、見守る側にとって大きな安心材料になります。猫の居場所や家族の様子を知るといった日常的な見守りなら、通知と一日の要約だけでもかなりの情報を把握できます。
いっぽうで、転倒や体調の急変など、いちばん知らせてほしい異変を的確に判断できる段階にはいたっていません。現状ではAIの説明はあくまで手がかりと考え、気になる通知があれば元の映像を確認するのがよさそうです。また、見守りは家族のプライバシーに関わるため、事前に家族に目的を共有しておくこともお忘れなく。
なお、日々のできごとの記録であるアクティビティ履歴については、個別/一括で削除できます。また、録画映像をAIの学習に利用されたくない場合は設定でオフにすることが可能です。プライバシー面でこれらが気になる場合は、運用を始める際に操作・設定方法を確認しておきましょう。ちなみに、Google Cloudサーバーに保存される映像やアクティビティのデータは、暗号化された状態で格納されるとのことです。
料金面では、Advancedプランの月額2,000円は見守りカメラの録画プランとして高めの部類。「映像を文章にしてくれるだけでその金額は……」と感じる人も少なくないでしょう。しかし、手が離せない時間に家族の様子が気になるなど、見守りの必要性が高い人ほど得られる価値は大きくなります。自分にとってどれだけ必要な機能かを基準に、導入を検討してみてください。