キヤノン「RF45mm F1.2 STM」は、リーズナブルな価格ながら開放絞り値「F1.2」の明るさを実現した、人気の大口径・単焦点レンズ。ここでは、定番レンズ「RF50mm F1.8 STM」と描写を比較しながら、その特徴に迫っていきたい。
フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5 Mark II」に「RF45mm F1.2 STM」を装着したイメージ
掲載する写真作例について
写真はすべてJPEG形式(最高画質)で撮影しています。周辺光量補正:オン、歪曲収差補正:オン、デジタルレンズオプティマイザ:標準に設定しています。
「RF45mm F1.2 STM」は、2025年11月に発売された「RFマウント」用の単焦点レンズ。価格.com最安価格で6万円を切るプライス(2026年8月6日時点)ながら絞り開放F1.2の大口径を実現し、標準域の画角(焦点距離45mm)で大きなボケのある写真撮影を気軽に楽しめるのが最大の特徴だ。
興味深いのは、「EFマウント」用のLレンズ「EF50mm F1.2L USM」(2007年発売)を参考にして設計したという描写特性だ。ミラーレスカメラ用のメーカー純正レンズは一般的に、色収差を抑えて高解像・高コントラストを追求する傾向にあるが、本レンズは、絞り開放時に大きなボケ味とともにやわらかな描写が得られるようになっている。
ほかにはないユニークな特徴のレンズとして発売当初から人気が高く、2026年8月6日現在でも価格.com「レンズ」カテゴリーの単焦点レンズの人気売れ筋ランキングにおいて3位につけている。一時期は店頭から在庫がなくなり予約待ちの状況が続いていたが、今では在庫は潤沢なようだ。
「RF50mm F1.8 STM」や「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」など、キヤノンは、「はじめての単焦点レンズ」として選びやすい価格帯のレンズを豊富に用意している。その充実したラインアップにまた魅力的な1本が加わったと言ってよいだろう。
では、「RF45mm F1.2 STM」の詳細を見ていこう。
開放F1.2の大口径レンズと聞くと大きくて重いレンズを想像するかもしれないが、本レンズは違う。サイズは約78(最大径)×75(長さ)mmで、重量は約346g。鏡筒はやや太めだが、開放F1.2の大口径レンズとしてはとても軽量だ。重量約305gの「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」より少し大きい程度に抑えられていると考えると、その軽量感に驚くはずだ。
開放F1.2の大口径だけあって最大径は78mmと少し大きい。しかし、全長と重量は抑えられている
操作性では、コントロールリングとフォーカスリングに加えて、筐体左手側にAF/MFの切り替えスイッチを搭載。直感的にマニュアルフォーカスが利用できるのはうれしい。ちなみに、レンズ名にある「STM」とはギアタイプのフォーカス機構を示すステッピングモーターの略。この機構を採用することで高精度なAFレンズ駆動と小型・軽量化を実現している。
鏡筒の先端側に独立したコントロールリングを搭載。感度や露出補正などの機能を割り当てておける
「RF45mm F1.2 STM」に注目する際に比較したくなるのが、同じ標準域の画角の「RF50mm F1.8 STM」だ。「RF50mm F1.8 STM」は開放絞り値F1.8の大口径・標準レンズ。価格.com最安価格は3万円程度(2026年8月6日時点)で、キヤノンの単焦点レンズのなかでも手に入れやすい1本である。
左が「RF45mm F1.2 STM」で、右が「RF50mm F1.8 STM」。比べると「RF45mm F1.2 STM」はどうしても大ぶりに見えるのだが、開放絞り値が1段違うことを念頭に入れれば、この比較はあまり意味をなさない。むしろ、この軽量感が見た目以上のすぐ優れた携行性を実感させてくれるはずである
焦点距離は「RF45mm F1.2 STM」が45mm、「RF50mm F1.8 STM」が50mm。50mmに対して45mmのほうが人間の目に近いとされることもあるが、実際に使い比べてみて感じたのは、「RF45mm F1.2 STM」のほうが撮っていて開放感があるということ。これは広角寄りの遠近感の影響もあるのだろう。「5mmしか違わないのでほとんど画角は同じ」と考えるのは間違いで、「5mmも違う」のだ。「RF45mm F1.2 STM」のほうが、よりダイナミックにバリエーションを撮影できるように感じた。
以下に、両レンズの絞り開放で同じ被写体を撮影したサンプルをいくつか掲載する。比較してみると違いは一目瞭然で、ボケ具合は「RF45mm F1.2 STM」と「RF50mm F1.8 STM」で大きく異なる。「RF45mm F1.2 STM」のほうが、よりピントを合わせた主題にだけしっかり焦点を当てて写せていることがわかるはずだ。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:ディテール重視
撮影写真(8192×5464、16.6MB)
EOS R5 Mark II、RF50mm F1.8 STM、F1.8、1/640秒、ISO100、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:ディテール重視
撮影写真(8192×5464、17.9MB)
同じ立ち位置からそれぞれ開放値で比較した。焦点距離は5mm違うだけだが、前後で遠近感が出て、「RF45mm F1.2 STM」のほうが数値以上により広く周囲を取り込んでいる印象がある。ピントを合わせた主題に対し、前後のボケも「RF45mm F1.2 STM」のほうがより豊かでダイナミックだ。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/1600秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:ポートレート
EOS R5 Mark II、RF50mm F1.8 STM、F1.8、1/800秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:ポートレート
こちらも立ち位置を変えずに撮影。この2本は明るい単焦点レンズという意味では、ポートレートでも非常に重宝するレンズ群だ。いずれもやや口径食は見られるが、玉ボケは美しくピント面から滑らかなグラデーションで被写界深度が変化していて印象的だ。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/1000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、12.6MB)
EOS R5 Mark II、RF50mm F1.8 STM、F1.8、1/500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、12.6MB)
今度は被写体のサイズを揃えて(両レンズで撮影距離を調整して)花々を寄りで切り取った。「RF45mm F1.2 STM」のF1.2での大きなボケを実感できる比較になっているが、ここではピント面の画質にも注目してほしい。接写時は収差が生じやすくなる。「RF45mm F1.2 STM」はF1.2にも関わらず、非常にシャープでコントラストがある。「RF50mm F1.8 STM」は多少の滲みが見られた。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、22.2MB)
EOS R5 Mark II、RF50mm F1.8 STM、F1.8、1/640秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、22.9MB)
「RF45mm F1.2 STM」を使っていて少し注意したいと感じたのがフリンジだ。逆光下など明暗差のあるシーンで、輪郭部にパープルフリンジやグリーンフリンジが散見された。上の作例でも、樹木の間や玉ボケにフリンジや軸上色収差が生じている。「RF50mm F1.8 STM」のほうがやや軽減されて見える。
ただ、このあたりは小型・軽量を目指した結果でもあり、何より手に取りやすい価格に抑えたことによる影響もある。正直、割り切って考えたいところだ。フリンジはRAW現像でも軽減できる。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F8、1/80秒、ISO400、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(8192×5464、36.4MB)
EOS R5 Mark II、RF50mm F1.8 STM、F8、1/80秒、ISO400、ホワイトバランス:くもり、ピクチャースタイル:風景
撮影写真(8192×5464、34.8MB)
絞ったときの写りを確認すべく、風景をF8の絞り値で撮影してみた。どちらのレンズも、画面中心から周辺に至るまで、しっかり解像感があって画質は良好だ。このあたりはさすがキヤノン。リーズナブルな価格帯だからといって基本的なクオリティは決して落とさない。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:太陽光、ピクチャースタイル:ポートレート
ローアングルから逆光を取り込んで撮影。「RF45mm F1.2 STM」はフレアやゴーストが生じやすいが、逆にそれが味になる。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F2、1/250秒、ISO100、WB:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、12.4MB)
「RF45mm F1.2 STM」の最短撮影距離は0.45m、最大撮影倍率は0.13倍。そこまで接写に対応できるわけではないが、これだけ大きく被写体が写せれば十分であるように思う。スナップからポートレート、自然風景まで幅広く適用できる。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/6400秒、ISO100、WB:太陽光、ピクチャースタイル:ポートレート
45mmという焦点距離は、寄り引きの仕方で広角っぽくも望遠っぽくも撮れる。奥行きのある背景を使い、ドラマチックな前後ボケを演出してみた。こうしたボケ感もF1.2ならば気軽に表現できる。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/1000秒、ISO100、WB:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード
撮影写真(8192×5464、15.8MB)
背景の二線ボケが目立ちそうなシーンで撮影。二線ボケや輪郭の色収差は完全には抑えられておらず、周辺の流れもあって独特の味のある描写になっている。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/4000秒、ISO100、WB:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:ディテール重視
撮影写真(8192×5464、20.9MB)
やや周辺減光が目立つシーンだが、逆に写真の味になっていると思う。大きな前ボケも印象的だ。
EOS R5 Mark II、RF45mm F1.2 STM、F1.2、1/1600秒、ISO200、WB:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:ディテール重視
撮影写真(8192×5464、20.4MB)
煩雑な背景のシーン。それほど強い光が当たる状況ではないものの、細かいところに色収差が残っている。球面収差が多少目立つもののピント面のコントラストは十分に高い。
「RF45mm F1.2 STM」は、“F1.2の世界”をより身近に引き寄せる意欲的な1本だ。6万円を切るプライスで手に入れられることを考慮すると“唯一無二”の純正レンズと言っていいだろう。
確かに、色収差を極限まで抑えたプロ向けの高級「Lレンズ」のような完璧な描写性能とは方向性が異なり、収差やフリンジが残る場面もある。しかし、絞り開放時の豊かなボケ味や味のある描写、そして何より約346gという軽さは、それを補って余りある撮影のよろこびをもたらしてくれる。今回試用した「EOS R5 Mark II」はもちろん、「EOS R8」のような小型・軽量ボディと組み合わせれば、F1.2の大口径を生かした軽快な撮影を楽しめるだろう。
「とにかくコンパクトに単焦点を楽しみたい」という人には、今回比較用として使用した「RF50mm F1.8 STM」も魅力的だが、「F1.2の表現を手軽に味わいたい」と願うなら、「RF45mm F1.2 STM」を選んで後悔はない。日常の撮影に“F1.2の世界”を連れ出せる本機は、写真表現の幅を一気に広げてくれるだろう。