レビュー
ホワイトアウトも発生する極寒の地で体感した驚愕の技術

リーフもノートe-POWERも“電子制御”で雪道は楽勝!? 厳冬期の北海道で試乗

日産の雪上試乗会で“自然の厳しさ”の片鱗を味わう

都市部で安穏と暮らしている身としては、雪にはめっぽう弱い。基本、雪が降るときは「クルマに乗らない」。これもひとつの選択肢だが、降雪地に住んでいる方にはそんな理由(言い訳)は通用しない。

2月初旬に開催された日産の雪上試乗会は、そんな筆者に対して「自然の厳しさ」の片鱗を味わわせてくれる、ドンピシャの機会であった。

日産はこれまで、信州エリアの凍結した湖上で氷上試乗会を開催してきたのだが、2019年は一転して、その場所を北海道へと移した。同時期には、三菱自動車の雪上試乗会が開催されているが、両社のアライアンスから考えれば合点がいくものだろう。

なんと、悪天候で一般道試乗は中止! 我々はいったいどうなるのか……

試乗会当日、北海道江別にある特設コースに到着した我々は思わず「絶句…」。悪天候である。

日産 雪上試乗会の当日は、一般道の試乗が中止になるほどの悪天候に見舞われた

日産 雪上試乗会の当日は、一般道の試乗が中止になるほどの悪天候に見舞われた

きっと、北海道に住んでいる方からすれば「何を言うか、こんなものじゃねえ」とお叱りを受けてしまうかもしれないが、前述したように雪には弱いのである。正確に言えば、雪道の運転はそこそこできても、その気象環境の変化についていけない、というのが現実だろう。

今回の日産 雪上試乗会では、一般道と特設コースの2つの試乗コースが用意されていた。これは、日産車の雪上性能、もう一歩突っ込んで言えば、同社が提唱する「ニッサン インテリジェント モビリティ」に基づいたクルマ作りが、冬の厳しい環境下でどう働くのかを体感してもらおうというのが狙いだった。

だが、悪天候はまったく収まる気配がない。外気温はすでにマイナス8°である。そしてこの日、一般道での試乗は危険との判断で、ほぼ全滅となってしまった。さらに、特設コースも半分がコース途中でホワイトアウトしてしまうために使えなくなったのだ。もちろん日産が悪いのではなく、天候の問題だ。実際、前日などは非常にコンディションがよく、格好の試乗日和だったそうだ。

日産 雪上試乗会には、「ノート」「セレナ」「エクストレイル」などのほか、「GT-R」「スカイライン」といったスポーツカーやセダンまで用意されたのだが、天候不良のためにすべての車種に試乗することはできなかった

用意された車両は、ピュアEVである「リーフ」、販売絶好調の「ノートe-POWER(4WDモデル&NISMOも含む)」「セレナe-POWER」。さらに、インテリジェント4×4を搭載する「エクストレイル」や「ジューク」、FR駆動の「スカイライン」「フェアレディZ」、そして世界に誇るスーパースポーツモデルである「GT-R」まで持ち込まれていた。とはいえ、前述の悪天候のため、すべてに試乗することはかなわなかった。

それでも、いまの日産を象徴するであろう「リーフ」と「ノートe-POWER」は全メディアに試乗枠が設定され、筆者はプラスαで「スカイライン」「ジューク」に何とか試乗することができた。

“現代の名工”も「無理」

この悪天候の中、特設コースでは日産のテストドライバーの頂点であり、卓越した技術者として表彰される「現代の名工」にも選ばれた加藤博義氏の運転する「エクストレイル」に同乗する機会を得た。

本来であれば、自分たちがステアリングを握るはずだったのだが、刻々と悪化する環境下においては、たとえ「現代の名工」でも運転には慎重を期していることを理解してほしい、という日産側の計らいであろう。

加藤博義氏の運転する日産「エクストレイル」に同乗試乗させてもらったが、そのドライビング操作は猛吹雪の雪上においても実にスムーズであった

正直に言えば、加藤氏の隣で実際の運転を間近で見られることは幸せであった。緊張しながら、そのステアリング操作などを興味深く拝見させてもらったのだが、その動作はやはりスムーズだ。コースの先を読む適切な加減速は、同乗者に不快な気持ちを起こさせない。一流のドライバーは、普段の運転からしてクルマの性能を引き出す“一流”なんだ、ということを改めて感じた次第である。

ただし、コースを数回走っている内に視界がほぼゼロになる「ホワイトアウト現象」に遭遇した。加藤氏いわく「もう、これ以上は無理!」とのことで減速。猛吹雪がやむまで停止せざるを得なくなったほどだ(クローズドコース内で後続車は来ない状況)。

日産「エクストレイル」に搭載されている電子制御4WDシステム「インテリジェント4×4」には、「2WDモード」「AUTOモード」「LOCKモード」と3つのモードが設定されている。その中でAUTOモードを選べば、雪道や未舗装路などで前後輪の駆動力が自動的に配分され、滑りやすい路面でも安定して走行することができる

加藤氏のドライビングテクニックも見事だが、エクストレイルの車両安定性も見事だった。エクストレイルに搭載されている4WDシステム「インテリジェント4×4」は、前後100:0から最大で約50:50までトルク配分を行うもので、その構造自体は珍しいものではない。だが、VDC(ビークルダイナミクス コントロール)の制御がうまく、コーナーリング時の車両挙動に唐突感が少ないことで、エクストレイルの雪上における実力を十分に堪能することができた。

日産「ジューク」の4WDモデルに搭載されている4WDシステム「インテリジェント4×4」では、前後および後輪左右に配分される駆動力を制御することで、滑りやすい路面でも安定した走行が可能となっている

また、筆者がステアリングを握った「ジューク」は、1.6L直4ターボエンジンを搭載する「16GT FOUR」。こちらも、エクストレイルと同様にインテリジェント4×4が搭載されているが、ボディサイズが小型ということもあって雪上でも「ヤンチャ」な印象だ。ただし、言い換えればトルクベクタリング機構が効いているのか、少なめの操舵量でも車両はインを積極的に向こうとするし、動き自体も軽快な部類に入ると思う。

コントロールのしやすさはやはり一級品「スカイライン」

このほかにも、FRモデルとして用意された「スカイライン」にも試乗した。正直に言えば、日本におけるセダン市場の縮小傾向は顕著で、一時代を築いたスカイラインと言えども、その流れに逆らうことはできない。

また、日産という会社へ個人的に感じているのは“技術の日産”を標榜する割にはどのメーカーも真似できない技術があるのに、そこから「磨き込んで進化させる」という点にあまりリソースを割かない傾向を感じている。スカイラインに搭載された、世界初の「ダイレクトアダブティブステアリング」などはいい例かもしれない。

とはいえ、VDCがオンの状態であれば、無理をしなければセーフティーマージンは十分に取られているし、あえてオフにした場合でもコントロール性は十分に高い。前述した加藤氏のステアリングさばきではないが、クルマの挙動は非常に掴みやすく、ゆっくりと修正舵を当てることでオーバーステアの状態からの回復も筆者レベルで対応できた。もちろん、車速が低くスタッドレスタイヤの恩恵もあるのだが、リアサスの動き(自分の中で接地感の高さ)がわかりやすく、無理な操舵を必要としないのだ。

やはりすごかった「ノートe-POWER」の4WD

特設コースに用意された、今回の目玉(本命)の1台が「ノートe-POWER」である。幸いなことに、今回はその中の4WD車に試乗することができた。

2018年7月にグレード追加された、日産「ノート e-POWER」の4WDモデル。これまで前輪に搭載されていた駆動モーターを後輪にも搭載し、0km/hからの発進やスリップ、空転時に4WD走行に切り替わることで、滑りやすい路面においてもスムーズかつ安定した走行を実現する

2018年の登録車販売台数No.1というスマッシュヒットとなった「ノート」だが、このヒットは何よりも「e-POWER」の恩恵によるものであることは誰もが認めるところだろう。

e-POWERは、モーター駆動によってきめ細かな出力制御が可能だ。たとえFF車であっても、スタッドレスタイヤを装着していればスリップに対して制御を行ってくれる。つまり、降雪地でもFF車で十分な性能を持つわけだが、それでもビジネスも含めて4輪駆動車の要望が高かったために、2018年7月に4WD車が発売された。

ノートe-POWERの4WDモデルは、前輪がモーターで駆動するe-POWERの後輪側にもモーターをプラスすることで、緻密な制御はもちろん、前輪が滑った際に1/100秒単位で後輪にトルクを配分する。ドライブシャフトで前後が繋がれた4WDシステムも昨今では緻密な制御は行っているが、さすがに電気制御の塊であるモーターにはかなわない。

もちろん、この4WDシステムは雪道や滑りやすい路面などでの発進、加減速などで介入するようになっており、一定速度を超えるとFFになるという、いわゆる「生活4駆」と呼ばれるジャンルに入る。

滑ったと感じる前に4WDが瞬時に介入してくれるので、不安を覚えることがなく、とても安定していて走りやすい

試乗コースはかなりコンディションが悪く、路面も圧雪のほか、ミラーバーン状態になっている部分が存在した。だが、ゆっくり加速を始めるとともに驚いた。かなり滑る路面にもかかわらず、クルマはスリップすることなくスルスルと前に出て行くのだ。理論的には時速0kmから瞬時に4WDになるわけで、人間が「滑りそう」と感じる前にすでに4WD状態になっているわけだ。この4WDは、とにかく走りやすいのが特徴だ。もちろん過信は禁物だが、路面μの低い場所での発進でも実に安定している。

また、同社独自の「e-Pedal」が、こういった環境でも効果的であることも実感した。e-Pedalは、ブレーキペダルと同等の減速Gを発生することができる。雪道では、ブレーキの踏力が強すぎるとABSがきくのはもちろんだが、車両姿勢にも影響を及ぼしてしまう。だが、ノートe-POWERのe-Pedalは、「ECO」と「S」モードの場合、最大0.15という強い減速Gを発生させることで、完全停止こそしないがブレーキ操作に過敏にならず、安心してクルマを走らせることができる。

ライバル車をリードする仕様

前述したように、降雪地でもノートe-POWERのFF車+スタッドレスタイヤの組み合わせは、十分に実用性が高い。しかし、家の前にミラーバーンの坂道があるなど、道路環境によってはノート e-POWERの4WDは非常にありがたい。もちろん、ライバル車のひとつであるトヨタ「アクア」に4WD車がないことも、アドバンテージになっているだろう。

FFと4WDのノートe-POWERを比較すると、大人約1名強の80kgの重量増になる。カタログ燃費も、FFの34.0km/Lから4WDでは28.8km/Lと、約16%低下。過去に計測した実燃費では、FFの場合には約21km/Lであったので、単純計算すると4WDの実燃費は約17km/Lほどと予想できる。また、4WDは価格も21万1,600円高い。ゆえに、降雪地かつ悪条件下に家があるような場合でなければ、FFのe-POWERでも十分と言えるのではないだろうか。

「リーフ」の1万分の1秒はダテじゃない!

そして、最後は電気自動車の「リーフ」である。用意された40kWhのGグレードにスタッドレスタイヤを装着してコースイン。

日産「リーフ」雪上の走行イメージ

日産「リーフ」雪上の走行イメージ

ピュアEVであるリーフの出力制御は、エンジン車とは比較にならないほどきめ細かく設定されている。その速度はなんと1万分の1秒(!)とのことで、その“効き具合”をすべて身体で理解することは到底無理な話である。

それでも、アクセルを多めに踏んだ際に車両側がスリップを検知すると即座に出力をコントロールしているのだろうな、といったことは、今回のような悪条件でも極めてスムーズに走れたことからも納得できる。

日産「リーフ」雪上の走行イメージ

日産「リーフ」雪上の走行イメージ

また、ノートe-POWERのときでも触れたが、リーフにもe-Pedalが装着されている。こちらは、e-Pedalがさらに進化したバージョンで、Dレンジ、Bレンジいずれもアクセルオフにすると最大で約0.2Gの減速度が発生する。さらに、ノートe-POWERとは異なり完全停止するのが大きな違いだ。

また、コース内に設置された「定常円旋回路」(円のようにクルクル回るコース)を走って実感したのは、いくら緻密な制御とはいえ回生ブレーキは前輪にしかきかないのだが、これを油圧ブレーキと協調制御させることでスムーズに減速できるということだ。過去に雪上でノートに試乗した際には、同じような環境では少し前輪がロックしそうになる傾向を感じたが、リーフの場合にはそれを感じることがほとんどなかったのは、走りやすさに寄与していると感じた。

「リーフe+」も登場し、インテリジェントモビリティはさらに面白くなりそう

日産「リーフ」のハイパフォーマンスモデルである「リーフe+(イープラス)」の登場に、リーフの進化を感じた

日産は、雪上試乗会の直前に、モーター出力を向上させて航続距離を大幅にアップした「リーフe+」をリリースしている。残念ながら、雪上試乗会に車両は間に合わなかったそうなのだが、その後の一般道で試乗した際には、高速域での中間加速のよさなどが体感できた。リーフ自体、その走行性能の高さは改めて評価できるものだ(インフォテインメントシステムのディスプレイが時代遅れの7インチなことや、各部の質感をもう少し上げてもよいのでは、とは思うのだが……)。まだまだ続くはずの、リーフの進化に期待したい。

今回の日産 雪上試乗会では、リーフやe-POWERなどのモーター駆動のクルマは、すぐれた電子制御によって厳冬期の北海道のような厳しい環境下であっても安心して走行できることを改めて感じた次第だ。

高山正寛

高山正寛

ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ会員/18-19日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。1959年生まれ。自動車専門誌で20年以上にわたり新車記事&カーAVを担当しフリーランスへ。ITSや先進技術、そしてカーナビ伝道師として純正/市販/スマホアプリなどを日々テストし布教(普及)活動を続ける。

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