レビュー
新機能「オフロードトラクションアシスト」も試してみました!

マツダのSUVは悪路もイケる!「CX-5」「CX-8」「CX-30」をオフロードで試乗

いま、SUV市場は大きく成長しており、本格的なクロカン四駆と呼ばれるものから都会的なクロスオーバーまで、あらゆるタイプのSUVが投入されている。そんな中で、マツダも数多くのSUVをラインアップしているのだが、スタイリッシュなデザインを特徴とするマツダのSUVのオフロード性能がどれほどのものなのか、以前から気になっていた。

今回、マツダ「CX-5」「CX-8」「CX-30」3台のSUVに乗って、さまざまなオフロードを試した

今回、マツダ「CX-5」「CX-8」「CX-30」3台のSUVに乗って、さまざまなオフロードを試した

マツダは、「MAZDA2」から「CX-8」まで、「ロードスター」を除く全機種にAWD(4輪駆動)モデルが設定されている。そして、その中でも走破性の高い、最低地上高が175mm以上の主力SUV「CX-5」「CX-8」「CX-30」に、悪路走破性が高められた「オフロードトラクションアシスト」機能が追加された。この機能は、悪路などで片輪が浮いてしまうような状況下に陥ってもスムーズに脱出することができるという。

今回、そのCX-5、CX-8、CX-30の3台をオフロードコースで試乗する機会が得られた。また、オフロードトラクションアシスト機能についてもテストすることができたのでレビューしよう。

乗用SUVにも悪路走破性を求める声が次第に高まってきた

マツダ開発者によると、「CX-5」のような乗用SUVにも悪路走破性の高さを求める声が次第に上がってきたという

2010年代の中盤あたりから、アメリカやオーストラリアといったオフロード環境が身近な地域において、CX-5のような「乗用SUV」と呼ばれるクルマと、本格的な「クロカン4WD」というクルマの垣根が曖昧になってきていたという。

マツダ 統合制御システム開発本部 電子基盤開発部の今村泰理さんは、「アメリカメディアの中では、CX-5のような乗用SUVと、『ジープラングラー』のようなクロカンが同じ土俵で比較される時代に変化してきたのです。たしかにお客様にとっては同じ4WDですし、昨今のアウトドアブームということもあって、CX-5にもオフロード性能を求める声が年々大きくなってきたのです」と話す。そこで、CX-5の特徴である「オンロードでのハンドリング性能を維持したまま、悪路におけるスタック脱出性能をはじめとしたオフロード性能の向上に取り組んだのです」と、オフロードトラクションアシスト開発の背景を語った。

オフロード性能を評価するに当たっては、重要なファクターが3つあると言う。ひとつめは、路面の凹凸を避けるための「最低地上高」。次に、タイヤを接地させるために必要な「サスペンションストローク量」。最後は、「トラクション性能」だ。

では、この3つをCX-5などにあてはめてみよう。まず最低地上高だが、CX-5は乗用SUVの中ではトップクラスの210mmを有している。

「CX-5」の最低地上高は 210mmと、同クラスのSUVの中でもトップクラスを誇る

「CX-5」の最低地上高は 210mmと、同クラスのSUVの中でもトップクラスを誇る

今村さんは、「見た目からはあまり想像がつかないかもしれませんが、このクラスのSUVでは200mm前後の最低地上高が一般的。そのなかで、CX-5は210mmという最低地上高を有しており、十分な競合力があるでしょう」と言う。また、「CX-30も小型SUVでありながら、ちょっとしたオフロードであれば十分な走破性のある175mmという最低地上高を有しています」と話す。

次に、接地性だ。CX-5のサスペンションストローク量を競合他社と比較すると、「CX-5の、フロント側のサスペンション総ストローク量は競合車の中で一番長く、リア側も特に伸び側は競合車と比較しても長いストロークを有しています。オフロードにおける接地性の観点、そして他社との比較においても有利です」と述べる。

そして最後に、トラクション性能だ。オフロードを走行する際に有用な技術のひとつとして、「デフロック」機構があげられる。これは、主にクロカンなどの本格的な4WD車に装備されており、左右の車輪を連結することによって強力な駆動力が得られるというメリットがある。だが、いっぽうでシステムが重く大きいので、重量の大幅な増加、レイアウト、コスト、燃費などのデメリットも数多くあるのが実情だ。また、「リミテッドスリップデフ」、通称「LSD」については、連続的に左右のスリップを抑制してトルクを伝達できるというメリットがあるが、左右のトルク比の設定次第ではオンロードで曲がりにくい特性になってしまったり、逆にオフロードで高い(左右輪の)締結力を得ようと思うとシステム的に無理が生じてしまう。

そこでマツダでは、トラクションコントロールシステム(TCS)の拡張機能である「オフロードトラクションアシスト」を採用した。

「オフロードトラクションアシスト」で悪路でも人馬一体の走り

オフロードトラクションアシストは、走行状態に応じて最適な駆動力を発揮できるように、四輪ブレーキやエンジントルク、AWDのカップリングにそれぞれ指示を出して接地輪に駆動力を伝達するというシステムだ。

具体的な走行シーンで説明すると、たとえばオフロードトラクションアシストがオフの場合には、オンロードの走行パフォーマンスや燃費を優先し、i-ACTIV AWDはタイヤのスリップの予兆を検知してAWDを制御する。TCS(トラクションコントロールシステム)は、オンロード性能をじゃましない程度にブレーキ圧をコントロールすることで、スムーズなハンドリングを実現する。だが、この状況で対角輪が空転してしまう状況になると、接地輪に駆動力が伝達されない。

赤丸部分が「オフロードトラクションアシスト」のスイッチ。画像は「CX-8」のもので、運転席右下の集中スイッチ内に配置されている

そこで、オフロードトラクションアシストをオンにすると、AWDとTCSが協調制御し、AWDは積極的にトルク配分を行って車輪のスリップを抑制する。万が一、車輪がスリップした場合には強いブレーキを空転輪にかけることによって、接地輪にしっかりと駆動力を伝達して脱出することが可能となる。

今村さんは、「オフロードトラクションアシストは、いわゆる『ブレーキLSD』と呼ばれる技術です。日常域の走りや燃費を悪化させずに、必要なときに必要な分だけ制動力を与えることで、しっかり空転を止めて接地輪に駆動力を伝えることができます。これが、乗用SUVにベストなソリューションだと思います」と強調した。

確実に効く「オフロードトラクションアシスト」

今回の試乗コースは、大きく3つだ。モーグル、ヒルクライム、そしてオンロード&林道の複合コースで、モーグルは「CX-8 XD L Packge」、ヒルクライムは「CX-5 XD Exclusive Mode」、オンロード&林道は「CX-30 XD L Package」と、すべてクリーンディーゼルエンジンを搭載したモデルで試乗した。

「CX-8」によるモーグルの試乗イメージ。画像では左後ろのタイヤが浮いており、この状態で「オフロードトラクションアシスト」がオフだと接地輪に駆動力がかからず、前に進めない

モーグルコースは、対角線上に小山を作ることで片輪が浮くようなコースがレイアウトされている。そこを走行することで、オフロードトラクションアシストの有効性をテストしてみた。まずは、オフロードトラクションアシストをオフにして、ディーゼルの豊かなトルクを使ってゆっくりと進んでいくと、ふっとフロントが沈みリアが浮き上がる姿勢に陥る。するとリア片側のタイヤの接地がなくなり、そこから駆動力が抜けてまったく前に進めなくなった。

画像のように片輪が完全に浮いている状態でも、「オフロードトラクションアシスト」をオンにしてアクセルを踏み込めば、接地しているタイヤに駆動力がかかってググッと前へと進んでいく

そこで、オフロードトラクションアシストをオンにすると、一瞬のためらいののち、ぐいぐいと前に進もうともがき始め、スタック状態を脱出。続いて、フロントが浮いて同じ状態になったのだが、オフロードトラクションアシストがオンの状態なので、リアと同様に難なくクリアすることができた。

うまくモーグルを抜けるコツは、あまりちゅうちょせずにアクセルを踏み込み、トルクを駆動輪にしっかりとかけることにある。アクセルをしっかり踏み込まないとトルクがタイヤに伝わらず、スタック状態から抜けられないので、姿勢変化に注意しながらアクセルを踏み込むことが重要だ。

試乗したCX-8はホイールベースが長いために、モーグルでは床を擦りそうになることもあったのだが、逆に姿勢変化はつかみやすかった。そして、さらに驚いたのが乗り心地のよさだ。

モーグルのような凹凸の激しい悪路を走行しても、CX-8の乗り心地がいいことに驚く

モーグルのような凹凸の激しい悪路を走行しても、CX-8の乗り心地がいいことに驚く

片輪が浮いた状態からゆっくりと進むと、浮いたタイヤが接地するとともに今度は対角線上のタイヤが浮くというシチュエーションなのだが、通常そういった瞬間には結構なショックが伝わってくることが多い。だが、CX-8はその衝撃をしなやかにいなしてくれるので、衝撃があると身構えていた筆者は少し肩透かしを食らってしまった。しかし、それくらいしなやかなのだ。これには、十分なサスストロークが確保されているということも、大きな要因のひとつとしてあげられる。

勾配の激しい道であっても、「CX-8」はディーゼルならではのトルクの太さでぐいぐいと登っていける

勾配の激しい道であっても、「CX-8」はディーゼルならではのトルクの太さでぐいぐいと登っていける

また、CX-8ではすり鉢状のくぼみを斜めに下りて駆け上がるというコースもあった。そこではトラクション云々というより、分厚いエンジントルクとアクセルワークに対するエンジンの素直な応答性が好感触で、サイズを感じさせない乗りやすさが印象的であった。

ステアリングに関しても、不必要なキックバックはない。適度なフィードバックを感じつつ、そのステアリングを手のひらの中で遊ばせながらクルマの行きたい方向へと進ませ、必要に応じてステアリングで向きを整えるというオフロードでの操作性も十分満足のいくもので、乗用SUVといえどもオフロードでの走行性能も非常に高いことがうかがえた。

ところで、オフロードトラクションアシストを常にオンにしておいても問題はないのだろうか。同乗してくれたエンジニアに確認したところ、基本的には問題ないとのことだった。ただし、何らかの状態でこのシステムが作動した際、たとえばちょっとスリップしたときなどに滑ったタイヤに強めのブレーキングがかかることがあるため、それが気になる場合には非常時のみオンにすることがおすすめとのことで、オンロードではオフにしておくことが望ましいようだ。

ヒルクライムで光る、ブレーキのコントロール性の高さ

次にトライしたコースは、ヒルクライムだ。CX-5で、およそ25°の傾斜を上り下りしながら、荒れた道を進んでいく。登りは30km/hくらいで一気に駆け上り、下りは10〜20km/hほどで走行した。

「CX-5」における悪路の試乗で感じたのが、CX-8と同様の乗り心地のよさだ

「CX-5」における悪路の試乗で感じたのが、CX-8と同様の乗り心地のよさだ

ここでのCX-5の印象はCX-8とほぼ同様で、乗り心地がよく快適でありながら、ステアリングへの路面からのフィードバックは適切で、どういった路面環境なのかをドライバーに明確に伝えてくれる。

このシーンで非常に感銘を受けたのは、ブレーキングのコントロール性の高さだ。ヒルディセントコントロールが装備されていないので、25°以上の傾斜を下るのはなかなか勇気がいる。だが、CX-5はブレーキ踏力の強弱を敏感にブレーキシステムに伝えてくれて、ドライバーが望むだけの制動力を発揮する。さらに、ロックするポイントもつかみやすいので、ほとんどABSに頼ることなく微妙な速度調整をしながら下りきることができた。

画像のように狭く急登の場面においても、マツダ車ならではの“人馬一体”の感覚、運転のしやすさによって容易にクリアできる

また、登りも同様で微妙にアクセルコントロールしながら進むのだが、ここでもディーゼルの分厚いトルクとアクセルコントロールのしやすさから思いどおりの加減速を手に入れることができ、姿勢変化にも十分対応できたのは見事であった。

オンロードだけでなく、オフロードにおいてもマツダのSUVは運転しやすい

オンロードだけでなく、オフロードにおいてもマツダのSUVは運転しやすい

もうひとつ評価したい点は、ドライビングポジションだ。もともと、マツダ車は人間が乗るにふさわしいドライビングポジションが提供されるように設計されている。それが、こういったオフロードでも十分に体感できるのだ。たとえば、大きな凸凹を超えるときなどにドライビングポジションが狂っていると、ドライバーの姿勢変化が大きくなって、不必要なペダルコントロールやステアリング操作を生んでしまうのだが、そういったことは一度もなく、最後まで同じポジションを取り続けることができた。

CX-30のようなクロスオーバーSUVでも、オフロードを楽しめる

最後は、CX-30でのオンロード&林道走行だ。前半は、片道10分くらいのオンロードとワインディングのセクション。その後、林道セクションで未舗装路と30°ほどの急勾配を上り下りした。

「CX-30」のオンロード路では、コーナーリングをとても気持ちよく旋回しながら走ることができる

「CX-30」のオンロード路では、コーナーリングをとても気持ちよく旋回しながら走ることができる

CX-30のオンロードにおける印象は、足がしなやかであるいっぽう、ロードノイズが少し大きめなことだ。細かな点では、電動シートスライドのモーターがほかのマツダ車とは違い、非常にスムーズであったことがあげられる。

そして、ワインディングでは人馬一体、気持ちのいいハンドリングによって、ひらひらとコーナーを楽しむことができる。ただし、ステアリングの取り付け剛性が少し低い印象で、段差などを超えるとわずかにぶるぶるとステアリングが震えることがあった。これは、ほかのマツダ車も同様で、高速走行での直進安定性が危惧される。

これまでのマツダ車との違いでいえば、CX-30のブレーキング時の効き味が変わったことがあげられる。ブレーキペダルの剛性フィールが高くなったことから、これまでのマツダ車よりも、効き始めが甘く感じられるのだ。ただし、これは慣れの問題で、それが普通になればこれまで以上にコントロールが容易になる印象だ。つまり、オフロードでのダウンヒルなどで、これまで以上にロックポイントがつかみやすくなったのだ。

「CX-30」は、他のマツダ車と比べてブレーキング感覚が異なるので、最初は少し注意が必要だが、慣れると扱いやすい

オフロードでは、どんなシチュエーションであってもコントロールは容易で、ドライバーの意のままに操ることができる。また、走行する際に特別なテクニックは必要なく、自分が望んだとおりのトルクや制動力が得られるという、オンロードと同様の人馬一体の感覚が味わえた。

ぬかるんだ登り坂でも、「オフロードトラクションアシスト」による効果を試すことができた

ぬかるんだ登り坂でも、「オフロードトラクションアシスト」による効果を試すことができた

オフロードトラクションアシストに関しては、登り坂で違いを感じることができた。かなりぬかるんだ急坂のところでオンにすると、足がバタつかず、どちらかいっぽうの車輪が滑ってもすぐに反対側にトルクがかかるため、どちらかにノーズが持っていかれるようなことが少なくなり、より容易に走ることができる。

つまり、オフロードトラクションアシストは片輪が浮くようなシチュエーションがもっとも効果を発揮するとはいえ、このようにどちらかいっぽうの車輪がスリップするようなシーンにおいても効果を発揮することがわかった。

気になるのは、改良前のモデルにオフロードトラクションアシストを装備できるかどうかだ。開発者へ聞いてみると、スイッチの配置やメーター上の表示などインターフェイスが違ってくるため、既存のモデルへの搭載は難しいとの回答だった。しかし、別の見方をするとシステム的には搭載可能、つまりプログラムのロジックを書き換えるだけなので、インターフェイスさえ対応ができれば可能ということになる。ぜひ、このあたりは全ユーザーにもこのメリットを享受できるよう対応してほしいところだ。

マツダ車の「人馬一体」は、これまでオンロードのみと思っていたが、オフロードにおいてもしっかりと有効性を確認できた

最後に、マツダのSUV全体の印象を記しておきたい。今回試乗した、いずれのモデルもオフロードでも乗りやすく、大きな差が見られないのは優秀だと思う。それだけ、統一した乗り味を持たせているからだ。たしかに、CX-30はややオンロード向けと取ることもできるが、それでも最低地上高さえ気にかけていれば、今回のコースもほとんど走破することができるだろう。そして、何よりも驚いたのがコントロール性の高さだ。マツダが目指す人馬一体と聞くと、ついついオンロード、特にワインディングなどを想像しがちだったのだが、オフロードにおいても人馬一体はとても有用であると感じた試乗だった。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
ページトップへ戻る