レビュー

新登場「ノートオーラニスモ」4WDに試乗!実感した旋回性と運転の楽しさ

日産「ノート」と上級モデルの「ノートオーラ」は、どちらも人気のコンパクトカーだ。「ノート」「ノートオーラ」のパワーユニットは、e-POWERのハイブリッド車のみで、ガソリンエンジン車は用意されていない。それでも、「ノート」と「ノートオーラ」の登録台数を合計すると、2024年1〜6月の日本国内における登録台数ランキング(乗用車)は、4位に入っている。

また、「ノートオーラ」をベースとしたスポーツタイプの「ノートオーラニスモ」の人気も高く、「ノートオーラ」全体のおよそ18%を「ノートオーラニスモ」が占めている。スポーツモデルとしては、販売比率が高い。人気の背景には、外観や内装がカッコ良くて走行性能が高く、価格も割安に抑えられていることにある。

マイナーチェンジされた「ノートオーラニスモ」のフロント、リアエクステリア。外観は、フロントグリルやリアバンパー、ホイールなどに変更が施されている(詳しくは後述)

マイナーチェンジされた「ノートオーラニスモ」のフロント、リアエクステリア。外観は、フロントグリルやリアバンパー、ホイールなどに変更が施されている(詳しくは後述)

2024年7月18日、「ノートオーラニスモ」がマイナーチェンジを受けて販売が開始された。今回は、「ノートオーラニスモ」のマイナーチェンジモデルに試乗したのでレビューしたい。

■日産「ノートオーラニスモ」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込
(2WDグレード)
NISMO:3,072,300円
(4WDグレード)
NISMO tuned e-POWER 4WD:3,473,800円

■日産「ノートオーラニスモ」の主なスペック
全長×全幅×全高:4,120×1,735×1,505mm
ホイールベース:2,580mm
最低地上高:130mm
車重:1,280kg[2WD]、1,390kg[4WD]
最小回転半径:5.2m
搭載エンジン:1.2L DOHC水冷直列3気筒(HR12DE)
フロントモーター 最高出力:100kW(136PS)/3,183-8,500rpm
フロントモーター 最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3,183rpm
リアモーター 最高出力(4WDのみ):60kW(82PS)/3,820-10,024rpm
リアモーター 最大トルク(4WDのみ):150N・m(15.3kgf・m)/0-3,820rpm

リアモーターをパワーアップした4WDグレードを追加

まず、「ノートオーラニスモ」のマイナーチェンジで最も注目したいのが、これまで前輪駆動の2WDのみであった駆動方式へ、新たにニスモ専用チューニングを施した4WDが加わったことだ。

ベースの「ノートオーラ」には、以前から前輪と後輪にそれぞれモーターを搭載する4WDがラインアップされていた。「ノートオーラ」4WDのリアモーターは、最高出力が68PS、最大トルクは10.2kgf・m。それが、今回追加された「ノートオーラニスモ」4WDのリアモーターは、同82PS、15.3kgf・mへとアップされている。

ちなみに、前輪モーターのスペックは136ps、30.6kgf・mと、現行の「ノートオーラ」やこれまでの「ノートオーラニスモ」と変わらない。

マイナーチェンジによって、「ノートオーラニスモ」初の4WDグレードが新設定された。「ノートオーラ」の4WDグレードと比較して、リアモーターの出力とトルクを向上させるとともに、前後駆動配分などの専用チューニングが施されている

マイナーチェンジによって、「ノートオーラニスモ」初の4WDグレードが新設定された。「ノートオーラ」の4WDグレードと比較して、リアモーターの出力とトルクを向上させるとともに、前後駆動配分などの専用チューニングが施されている

外観は空力アップ、内装は使い勝手を向上

マイナーチェンジでは、ニスモ専用の内外装にも変更が施されている。まず、外観は空力性能をアップさせるため、フロントグリルとリアバンパーを最適化。

フロントグリルは、通気効率を最適化しながら、開口部を最小化したデザインが採用されている

フロントグリルは、通気効率を最適化しながら、開口部を最小化したデザインが採用されている

リアディフューザーは、底面積の拡大によるダウンフォースの強化などが図られている

リアディフューザーは、底面積の拡大によるダウンフォースの強化などが図られている

アルミホイールは、4WD専用のものが装着されており、2WDのアルミホイールに比べて12%の軽量化が図られている。4WDでは2WDに比べて車重が増加しているが、それを補うためにアルミホイールの軽量化が施された。

4WDグレード専用のアルミホイールは、ENKEIの「MATT工法」によって軽量化と高剛性を両立させている

4WDグレード専用のアルミホイールは、ENKEIの「MATT工法」によって軽量化と高剛性を両立させている

内装は、標準シートの「ニスモ専用シート」に電動調節機能が標準装備された。また、オプションとして用意されている「レカロ製スポーツシート」には、新たに「電動リクライニング機能」が採用されている(スライドは手動)。従来の「レカロ製スポーツシート」は、手動だったためにリクライニング角度が調節しにくかったのだが、その欠点が解消されている。

標準シートの「ニスモ専用シート」。画像は、オプションの「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」装着車のため、標準シートとはヘッドレストが異なっている

標準シートの「ニスモ専用シート」。画像は、オプションの「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」装着車のため、標準シートとはヘッドレストが異なっている

オプションの「レカロ製スポーツシート」は、これまではリクライニングが手動だったためやや手間だったが、マイナーチェンジによって「パワーリクライニング機能」が搭載された

オプションの「レカロ製スポーツシート」は、これまではリクライニングが手動だったためやや手間だったが、マイナーチェンジによって「パワーリクライニング機能」が搭載された

ちなみに、標準シートであれば「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」もオプションで選択できる。ただし、BOSEのスピーカーがヘッドレストに備わるため、「レカロ製スポーツシート」との同時装着ができないことに注意したい。

4WDはコーナーを自在に駆け抜ける気持ちよさが味わえる

「ノートオーラニスモ」4WDのトータルの動力性能は、ベースの「ノートオーラ」4WDとほぼ同じだ。出力の数値を見ると、後輪の82PS、15.3kgf・mがそのまま加算されるように思えるが、モーターが最大の性能を常に発揮できるわけではないからだ。

それでも、e-POWERはモーター駆動のハイブリッドなので、アクセル操作に対する反応は機敏だ。NAガソリンエンジンに当てはめると2.5Lの排気量に相当するような、余裕のある加速を味わえる。また、ノイズが小さいので運転感覚は上質だ。

「ノートオーラニスモ」は、タイヤやサスペンションが専用にチューニングされているため、ステアリング操作に対する車両の反応や走行安定性は「ノートオーラ」と異なる。具体的には、たとえばステアリングホイールの回し始めから車両の進行方向が正確に変わっていくのがすぐにわかることなどだ。車両との一体感が感じられ、余裕のあるパワーも相まって、乗っていると走ることが楽しくなる。

「ノートオーラニスモ」の4WDは、旋回加速やトラクションを自在にコントロールできる気持ちよさや安心感を目指して開発が進められたという

「ノートオーラニスモ」の4WDは、旋回加速やトラクションを自在にコントロールできる気持ちよさや安心感を目指して開発が進められたという

さらに、「ノートオーラニスモ」は走行安定性もすぐれている。たとえば、危険を避けるために素早い車線変更などを行っても、回避のための動作が正確だ。さらに、後輪の接地性が高いので、危険回避を行った後の挙動も実に安定している。

e-POWERの制御を切り替えるドライブモードは、ニスモ専用にチューニングされている。「ノートオーラ」のドライブモードは、「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3種類だが、ニスモでは「スポーツ」の代わりに「NISMO」モードが用意されている。「NISMO」モードは、アクセル操作に対する反応が最も機敏になり、4WDでは後輪の駆動力が積極的に増加する。

「ノートオーラニスモ」の「NISMO」モードは、加速力やレスポンスが最大に引き出されるドライブモードだ

「ノートオーラニスモ」の「NISMO」モードは、加速力やレスポンスが最大に引き出されるドライブモードだ

「NISMO」モードの違いを実感できるのは、ワインディングなどでコーナーをトレースしながら曲がるときだ。後輪の駆動力が増しているので、前輪の負担が軽減され、車両を内側へと向けやすい。次第に深く回り込むようなやっかいなカーブでも、思ったとおりの走行ラインで自在に走れる。アクセルを踏み込んでフルパワーまで引き出すと、「NISMO」モードの違いは体感しにくくなるが、適度にスポーティーな走りをしたいなら「NISMO」モードは胸のすく加速感と安定性の高さで爽快にドライブできる。

ちなみに、ドライブモードで「NISMO」モードを選び、かつATレバーを「Bレンジ」に切り替えると、アクセルペダルを戻したときの減速力と回生充電量が高まる。ワインディングで元気よく走りたいなら、「NISMO」モードで「Bレンジ」にすれば、アクセルペダルを戻すと強めの減速力が生じるので走りやすいだろう。また、ゆるやかなカーブで速度域が少し高いような場所では、「NISMO」モードで「Dレンジ」を選べば、軽快で滑らかな運転を満喫できる。

乗り心地は、少々硬めだ。路面の凹凸が直接的に伝わるような粗さではないので不快ではないのだが、ファミリーカーとして使うのなら少し乗り心地が硬いので注意したい。もし、乗り心地が気になる方は、販売店の試乗車などで市街地の舗装が荒れた場所を時速40km以下で走ると確認できるだろう。

「ノートオーラニスモ」は、シートによって安定性や乗り心地が異なることにも注意したい。標準シートでも、腰を確実に支えてくれてスポーティーな運転にも対応できる。「レカロ製スポーツシート」は、乗員の体をさらにしっかりとホールドしてくれるが、路上の凹凸が体に伝わりやすくなる

「ノートオーラニスモ」は、シートによって安定性や乗り心地が異なることにも注意したい。標準シートでも、腰を確実に支えてくれてスポーティーな運転にも対応できる。「レカロ製スポーツシート」は、乗員の体をさらにしっかりとホールドしてくれるが、路上の凹凸が体に伝わりやすくなる

4WDは少々高めだが価格設定は妥当

「ノートオーラニスモ」の価格は、2WDが307万2,300円で、4WDは347万3,800円。ベースの「ノートオーラ」G・2WDの価格は277万9,700円なので、「ノートオーラニスモ」2WDとの価格差は29万2,600円に収まる。この金額で外観がエアロ仕様になり、アルミホイールとタイヤがグレードアップされ、内装にニスモ専用のディスプレイやシートが備わる。さらに、ドライブモードやサスペンションにも専用の設定が施されるので、「ノートオーラ」Gと比較しても買い得度は高い。マイナーチェンジされた後も、「ノートオーラニスモ」は「ノートオーラ」の売れ筋グレードになるだろう。

また、「ノートオーラニスモ」4WDの価格は、2WDに比べると40万1,500円高い。金額だけを見ると4WDは割高に見えるが、前席シートヒーターなどを含んだメーカーオプションの「ホットプラスパッケージ」と、前述した専用の「軽量アルミホイール」が備わる。これらの違いを考慮すると、4WDと2WDの実質価格差は約30万円だ。それでも10万円ほど割高にはなるものの、さらにリアモーターのパワーアップなども踏まえると妥当な価格設定になる。

e-POWERと4WDの併用による、走行安定性の向上効果は高い。「ノートオーラニスモ」はスポーティーモデルだが、4WDにもっと柔軟な足まわりを組み合わせれば、快適性と安全性を高次元で両立させたプレミアムモデルも開発できそうだ。

渡辺陽一郎
Writer
渡辺陽一郎
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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