レビュー

日産の3列シート上級SUV「パトロール」が日本で発売するかも!? 予想価格は900万円超

日産が海外で販売している、Lサイズの3列シート上級SUV「パトロール」。今後、「パトロール」が日本でも販売される可能性が高くなってきた。

日産「パトロール」の7代目現行モデルは、2024年9月3日にアラブ首長国連邦アブダビで発表された。今回は、海外仕様の詳細から実際の運転フィール、予想価格や想定される発表時期などをお伝えしたい

日産「パトロール」の7代目現行モデルは、2024年9月3日にアラブ首長国連邦アブダビで発表された。今回は、海外仕様の詳細から実際の運転フィール、予想価格や想定される発表時期などをお伝えしたい

背景には、業績の影響がありそうだ。同社の経営再建計画としては、2万人の人員削減と17か所の生産拠点のうち7か所を閉鎖・統合するという。業績悪化の理由は様々だが、新商品の開発や投入が滞っていたことがあげられる。魅力的な商品が揃(そろ)わないと、売れ行きが下がるのは必然である。

例えば、現在の国内市場はSUVが人気だが、「エクストレイル」や「キックス」は、ハイブリッドの「e-POWER」のみを搭載しており、NAガソリンエンジンが用意されていない。そのために価格が高く、売れ行きも伸び悩んでいる。

特に、現行モデルの「キックス」は日本での発売は2020年だが、海外では2016年にNAガソリンエンジン車が投入されている。また、海外仕様の「キックス」は2024年に新型になったため、日本仕様は設計の古いクルマだ。さらに、トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」に相当するようなコンパクトミニバンも日産にはない。

また、Lサイズの高価格車も少なく、トヨタ「ランドクルーザー」に相当するLサイズSUVはなく、「エルグランド」も現時点では発売から15年が経(た)ち販売が落ち込んでいる。これらの高価格車は大量には売れないが、1台当たりの利益が多く、日産のイメージリーダーにもなり得るクルマのはずだ。

なぜ、日産はこれまでに魅力的な商品を投入しなかったのだろうか。関係者によれば、「海外には、コンパクトな『ジューク』や『マイクラ』など魅力的な商品がある。また、北米市場の使い方に適した『e-POWER』を開発することも可能だった。だが、以前は上層部の一部が柔軟な商品開発に否定的で、各市場の商品ラインアップが減少したり設計が古くなったりした」とのこと。

そして、経営再建に乗り出した日産は、打開策のひとつとして「パトロール」の日本国内での販売を検討している模様だ。

2025年6月時点で、日産は「パトロール」の日本発売を正式に発表こそしていないが、中東仕様を用いた報道試乗会をテストコースで実施した。そこで、実際に「パトロール」の運転感覚や居住性をチェックしてみたのでお伝えしたい。

ボディの大きさや取り回し性は海外向け

今回、試乗した「パトロール」のグレードはLEチタニウムで、エンジンは3.5L V型6気筒ツインターボエンジンだ。ボディは大柄で、全長は5,350mm、全幅は2,030mm、全高は1,955mmに達する。トヨタ「ランドクルーザー」300ZXが、同4,985mm、1,980mm、1925mmなので、「パトロール」は「ランドクルーザー」よりもさらに大きい。

日産「パトロール」のフロント、リアエクステリア

日産「パトロール」のフロント、リアエクステリア

フロントマスクは、日産のV字型グリルを進化させ、ワイドなボディをいっそう幅広く見せている。ボディ側面は水平基調だが、サイドウィンドウの下端を後端で持ち上げて躍動感を表現している。

ボディサイズや取り回し性は、海外向けだ。全幅が2mを超えるため、日本の駐車場では取り回しが難しく、床が高いので乗り降りもしにくい。

だが、大胆なデザインのフロントマスクと大柄なボディによって、外観は力強く存在感がある。ボンネットがよく見えるため、Lサイズとしてはボディの先端位置や車幅がわかりやすい。また、最低地上高には253mmの余裕があるため、悪路の凹凸なども乗り越えやすい。

日本で発売されれば「3列目シートが最も快適なSUV」に

内装は上質で、インパネには二分割された液晶パネルが並び、多彩な情報を表示できる。音声認識で、エアコンやカーナビの操作も可能だ。

日産「パトロール」のインテリア

日産「パトロール」のインテリア

シートは3列で、乗車定員は8名。1列目シートはサイズに余裕があり、座り心地は少し硬めだが、腰から大腿部をしっかりと支える。2列目シートには前後のスライド機能があり、膝先には握りコブシ3つぶんの余裕がある。

日産「パトロール」のフロントシート

日産「パトロール」のフロントシート

日産「パトロール」の2列目シート

日産「パトロール」の2列目シート

ただし、この状態では3列目の足元空間は狭いので、3列目シートも快適で、膝が持ち上がりにくい設計となっている。2列目シートを前にスライドさせて、膝先空間を握りコブシ1つ半になるまで詰めれば、3列目シートに座る乗員の膝先も同程度の空間になる。

日産「パトロール」の3列目シート

日産「パトロール」の3列目シート

2、3列目の広さはマツダ「CX-80」と同等の広さだが、快適性は「パトロール」のほうが上だ。その理由は、「パトロール」では3列目の床と座面の間隔に余裕があるからだ。SUVでありながら、3列目シートでも自然な姿勢で座れる。日本国内で販売されれば、「3列目シートが最も快適なSUV」になるだろう。

ライバルと比較してステアリングの反応が良好

3.5L V6ツインターボエンジンは、425PS(5,600rpm)の最高出力と71.4kg-m(3,600rpm)の最大トルクを持ち、実用回転域の駆動力が高い。3.5Lという余裕の排気量で、発進直後の1,600rpm付近から力強い加速を開始する。追い越しなどを想定してアクセルペダルを深く踏むと、4,000rpm付近から加速力がさらに強まり、5,500rpm付近まで滑らかに吹け上がる。

日産「パトロール」の試乗シーン

日産「パトロール」の試乗シーン

トランスミッションは9速ATで、フル加速時には高回転域を保つことが可能だ。「パトロール」は、「ランドクルーザー」のようなエンジンを縦向きに搭載する悪路向けのSUVなので駆動方式は4WDのみで、舗装路の走行安定性も高いだろう。

注目したいのが、ステアリング操作に対する車両の反応がよいことだ。悪路向けのSUVは、「ランドクルーザー」を含めてステアリング操作に対する反応が鈍いことが多い。後輪側に車軸式サスペンションを採用するなど、悪路走破力を重視しているからだ。

日産「パトロール」の試乗シーン

日産「パトロール」の試乗シーン

その点で、「パトロール」は取り組み方が異なる。前輪にダブルウイッシュボーン、後輪にマルチリンク式サスペンションを採用して4輪独立懸架とした。それによって、曲がりくねった道でも動きに鈍さを感じにくい。乗り心地は少し硬いが、突き上げる粗さは抑えられている。走行安定性とのバランスも考えれば、足まわりは上質だ。

予想価格はベーシック仕様でも900万円以上

販売店に尋ねると、「『パトロール』の日本導入のスケジュールは聞いていないが、お客様からの問い合わせはある」とのこと。今の日産には、以前の「プレジデント」や「シーマ」のような上級車種はないものの、今は「高級車はセダン」という認識は薄れたから、「パトロール」の導入で法人需要も期待できるだろう。

「パトロール」を日本へ導入する場合、多くの台数を販売できる車種ではないから、グレードは3.5L V型6気筒ツインターボエンジンを搭載する上級グレードに限られるだろう。そうなると、「パトロール」の予想価格はパッケージオプションなどを装着しないベーシックな仕様でも900万円以上になると考えられる。

トヨタ「ランドクルーザー300」ZXのガソリンエンジン搭載車は価格が743万6,000円で、JBLプレミアムサウンドシステムなどをオプション装着すれば800万円に近づく。いっぽう、「ランドクルーザー300」と共通点の多いレクサス「LX」は、最も安価なグレードでも1,450万円になる。そのため、「パトロール」が900万円以上でも競争力がある。

発売時期は2026年中盤と予想され、2025年10月29日から開催される「ジャパンモビリティショー2025」で出品される可能性が高そうだ。日産の新たな象徴となるであろう「パトロール」の登場に期待したい。

渡辺陽一郎
Writer
渡辺陽一郎
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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