レビュー

猛暑の中でもシャープな操作性と優れた乗り心地!オールシーズンタイヤダンロップ「シンクロウェザー」を8か月使ってみた実力は?

季節を問わず一年中履き続けられるタイヤ、それが「オールシーズンタイヤ」です。欧米では古くから普及してきましたが、どの分野でも“まぁまぁ”の実力にとどまるオールシーズンタイヤは、アイスバーンが発生しやすい日本では長いこと不向きとされてきました。そんななか、そんな常識を一変させる実力を発揮する、次世代オールシーズンタイヤとして誕生したのがダンロップ「シンクロウェザー」です。

◆「シンクロウェザー」を陰で支える「アクティブトレッド」とは?

「シンクロウェザー」の最大のポイントは、冬はスタッドレスタイヤ並みの性能を発揮するいっぽうで、ドライ&ウエット路面では夏タイヤ並みの性能を発揮することにあります。オールシーズンタイヤというワードだけをとらえれば、ある意味当たり前なのですが、実際にそれを実現するのは簡単ではありません。だからこそ、「シンクロウェザー」のコンセプトを聞いてから試乗するまでは「本当なのか?」と半信半疑でした。

しかし、開発者に話を聞くと自信満々なのです。その背景にあるのが「アクティブトレッド」と呼ばれる新技術。水に触れたり温度が下がったりすると、ゴム分子内のポリマー結合がほどけてゴムがやわらかくなり、結果として摩擦係数を高めて滑りにくくなる、というものです。いっぽうで、ゴムの性質が変化する要因がないドライ路面や通常の温度域では、夏タイヤのようなコンディションが維持されます。

つまり、タイヤ自身が路面の状況に「シンクロ」することで、アイス路面で高いグリップ力を発揮し、いっぽうでドライ路面では切れのよい夏タイヤとしての能力を発揮する。ここにこそ、「シンクロウェザー」が“次世代オールシーズンタイヤ”と呼ばれる理由があるのです。

「シンクロウェザー」発売初期のタイヤサイズは15〜19インチの全40サイズだが、記事公開時点では21インチまで拡充。今後は22インチまでの全100サイズを用意する予定だ

「シンクロウェザー」発売初期のタイヤサイズは15〜19インチの全40サイズだが、記事公開時点では21インチまで拡充。今後は22インチまでの全100サイズを用意する予定だ

◆従来のオールシーズンタイヤを超えた氷上&積雪路での実力

さて、その実力は本当なのか。まずは「シンクロウェザー」の積雪路と氷上路面での試乗からスタートしました。試乗は北海道旭川市内にあるダンロップのテストコースと、その周辺の一般道で実施。比較のために、試乗ではダンロップのオールシーズンタイヤ「マックス・エーエスワン(MAXX AS1)」、スタッドレスタイヤ「ウインターマックス・ゼロツー(WINTER MAXX02)」も用意され、試乗車両はトヨタのカローラツーリングでした。

最初は氷上でのコース。まずオールシーズンタイヤの「MAXX AS1」でトライすると、すぐにグリップ力の弱さを実感。アクセルを踏んでもスリップするだけで思うように加速してくれません。そのまま旋回もしてみましたが、少しでもパワーをかけると簡単に外側へ膨らんでしまい、そのコントロールにはかなり苦労することになりました。

続いて「シンクロウェザー」です。アクセルを踏むとスリップしながらも氷上でのグリップ力を感じさせ、加速も少しずつしていくことが感じ取れます。氷上での旋回は外側へ膨らむものの、その出方はゆるやかで安心できるものでした。

「シンクロウェザー」で氷上を走行。旋回しても膨らみ方がゆるやかなためコントロールはしやすかった

「シンクロウェザー」で氷上を走行。旋回しても膨らみ方がゆるやかなためコントロールはしやすかった

最後はスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX02」。このタイヤはエントリー向けではありますが、そこは確かなグリップ力を発揮しているのがわかりました 。旋回時のコントロールは最もしやすかったと思います。このことからも「シンクロウェザー」は、氷上ではスタッドレスタイヤほどではないにせよ、従来のオールシーズンタイヤを明らかに上回る実力をみせてくれたと言えます。

次は「シンクロウェザー」で一般路へ出てみました。このときの試乗車はメルセデス・ベンツのGLC。路面は一部が圧雪路となってはいたものの、ルート全体は結構雪深い状況でした。しかし、「シンクロウェザー」からはコーナーでもしっかりとしたグリップ力を実感。GLCの駆動力性能がよかったことにも助けられたかもしれませんが、想像以上に安心感の高いスノードライブとなりました。

メルセデス・ベンツGLCに「シンクロウェザー」を装着して、雪深い一般路を走行。不安なく走行できることに驚く

メルセデス・ベンツGLCに「シンクロウェザー」を装着して、雪深い一般路を走行。不安なく走行できることに驚く

一般路での荒れた路面でも「シンクロウェザー」はその状態を上手にいなし、静粛性も高かった

一般路での荒れた路面でも「シンクロウェザー」はその状態を上手にいなし、静粛性も高かった

◆ドライ&ウエット路面では夏タイヤと比べても遜色なし

次なる体験はドライ&ウエット路面での試乗です。ここで試したタイヤは「シンクロウェザー」のほかに、ダンロップの夏タイヤ「ルマン・ファイブ・プラス(LE MANS V+)」と、氷上試乗でも試した「ウインターマックス・ゼロツー(WINTER MAXX02)」。試乗コースは岡山にあるダンロップのテストコースを使い、さらに周辺の一般路へも出掛けてみました。

まずは夏タイヤの「LE MANS V+」をカローラツーリングで試乗しました。周回路では路面の状況にしっかりと反応し、操舵(そうだ)に対しても忠実にトレースする高いスポーツ性を発揮。安心度も抜群に高いことが実感できました。いっぽうのスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX02」はステアリングを切っても反応が鈍く、高速でもその都度修正が強いられるなど、ブロックの剛性の低さがモロに出ていた印象。ロードノイズもかなり高めです。

続いて「シンクロウェザー」装着車に乗り換えてまず実感したのは、静粛性がきわめて高いことです。速度を上げていくと若干パターンノイズが車内へ侵入してきますが、気になるほどのものではありません。高速走行時のレーンチェンジでも反応はシャープで、さらに乗り心地も上々。特に一般路の荒れた路面での巧みないなし方には驚きを感じたほどです。これはまさにオールシーズンタイヤの概念を大きく変えたといって間違いありません。

テストコースを「シンクロウェザー」で高速走行中、レーンチェンジしてもシャープなハンドリングで追従した

テストコースを「シンクロウェザー」で高速走行中、レーンチェンジしてもシャープなハンドリングで追従した

ウエット路面での「シンクロウェザー」は。V字型パターンによる排水効果でしっかりとしたグリップを感じ取れた

ウエット路面での「シンクロウェザー」は。V字型パターンによる排水効果でしっかりとしたグリップを感じ取れた

◆「シンクロウェザー」を8か月試した結果・・

最後に、この「シンクロウェザー」を日産「ルークス」に装着して、普段使いで8か月間、7000kmほど走った感想もお伝えしたいと思います。ただ、昨シーズンは積雪がなく、現時点ではドライ&ウエット路での体験しかできていないことをまずはお断りしておきます。

何よりもすばらしいと思ったのが、岡山でも体験したハンドリングのよさとその静粛性の高さでした。

これまでオールシーズンタイヤは、積雪路でのグリップ力を高めるためにトレッド面のブロックはやわらかめに造られていました。しかし、このやわらかさゆえにドライ路面や気温が高い夏になると、ステアリングを切った際にどうしてもグニャグニャした感じがともないます。しかも、このブロックからはロードノイズも低周波となって車内にも侵入し、とても音楽を楽しむ雰囲気ではないとの印象を持っていました。

しかし、「シンクロウェザー」ではこの弱点がほとんど感じられないのです。連日30度を超える酷暑が続く状況下でも、ステアリングの手応えはシャープそのもので、走り出しこそ若干重さを感じさせますが、速度が乗れば夏タイヤと比べても遜色はほとんどありません。一般道の路面の荒れに対してもしなやかに処理してくれるため、乗り心地に関してはむしろ純正タイヤよりも上回っているのではないかと思ったほどです。

筆者の日産「ルークス」に「シンクロウェザー」を装着。純正よりも乗り心地がよいことにビックリ!

筆者の日産「ルークス」に「シンクロウェザー」を装着。純正よりも乗り心地がよいことにビックリ!

しかも走行時もきわめて静か。40〜50km/hを超えるあたりからパターンノイズが聞こえてきますが、低周波音はほぼ聞こえることはなく、これが音楽を聴くのにも十分なパフォーマンスにつながっているのです。こうした状況から、タイヤのパターンを見なければ、誰もが夏タイヤであると信じて疑わないでしょう。

いっぽう、ウエット路面でのしっかりとしたグリップ感は、テストコースで体験した、そのままでした。ゲリラ豪雨による厳しい条件下でも足回りの不安を感じることはなく、ステアリングにもしっかりとしたグリップを感じ取ることができたのです。これは「シンクロウェザー」のV字型パターンが大量の水を外へ吐き出してくれているからと思われ、ここでも全天候型タイヤとしての実力を見せつけられました。

そんな中で、強いて「シンクロウェザー」の弱点を上げれば、燃費が純正タイヤ(ブリヂストン「エコピア」)に比べて若干悪くなったように思えることです。ただ、それはコンマレベルの話。むしろ、夏タイヤの時期を迎えてもタイヤを交換しなくて済むメリットは大きく、ハンドリングや静粛性も考慮すれば、燃費のマイナス点をはるかに上回っていると個人的には感じています。

【まとめ】メリットいっぱい、タイヤの歴史に新たな1ページ!

「シンクロウェザー」の雪上・氷上性能がすぐれていることは、すでにいろいろなメディアを通じて報じられているところです。しかしここへきて、猛暑の中でも新技術「アクティブトレッド」が威力を発揮。ハンドリングのシャープさや静粛性、ウエット路面でのグリップのよさは冬期のテスト時と遜色ない性能を維持することがわかりました。

そうした意味でも「シンクロウェザー」の登場が、タイヤの歴史に新たな1ページを刻むことになるのは間違いないでしょう。

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2024/07/23 15:00
会田 肇
Writer
会田 肇
カーナビやカーオーディオのレポートを基点に、クルマの先端技術であるITS取材に取り組む。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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