3分でわかる自動車最新トレンド
自動車メーカーに加えてIT企業も続々参入!

活発な動きを見せる「自動運転」技術の今を読みとく

自動車に関係する気になるニュースや技術をわかりやすく解説する連載「3分でわかる自動車最新トレンド」。連載第17回は、第1回で取り上げた自動運転を再び取り上げる。この夏に発売されたメルセデス・ベンツの「Eクラス」と日産「セレナ」で、さらに注目を集めている自動運転関連技術だが、まだ課題も少なくない。交通行政にも詳しいモータージャーナリストの森口将之氏が解説する。

2016年になり自動運転に関係するさまざまな出来事があった。それらをつぶさに追うことで見えてきたこととは何だろうか?

実用化しつつあるように見える「自動運転」。だが、市販車に搭載されるのは、いずれもまだ「運転支援」のレベル

このコラムで自動運転を取り上げるのは2度目だ。前回記事を公開したのは2015年12月だったから、1年も経っていない。ではなぜもう一度スポットを当てることにしたのかというと、この9か月間で、自動運転まわりであまりにいろいろなことが起こったからだ。

なかでも最大の出来事は、今年5月、テスラの「オートパイロット」を搭載した「モデルS」を運転していたドライバーが大型トラックと衝突し、死亡した事故だろう。ドライバーが映画を見ていて運転の任務を果たしていなかったとか、トラックが急に左折してきたとか、原因はいろいろ語られているが、現在市販車に搭載されている技術が、自動運転と呼べるほど完全なレベルにはないことも証明した結果になった。

事故の直後から、多くの国が反応した。日本も例外ではなく、国土交通省が、「現在実用化されている『自動運転』機能は、完全な自動運転ではありません!!」と、“!”マークを2つも付けて注意をうながしている。その直後から、矢沢永吉がテストコース上で手放し運転を披露した日産自動車のCMをはじめ、自動運転関連の宣伝が目立たなくなった。

テスラ「タイプS」の事故の直後に、国土交通省は今の自動運転技術に関する注意を呼びかけた

テスラ「タイプS」の事故の直後に、国土交通省は今の自動運転技術に関する注意を呼びかけた

自動車メーカー各社が研究開発中の自動運転技術のレベルは、完成形に近づいていると筆者は認識している。しかし、それはプロトタイプにおけることで、市販車はコストとの兼ね合いもあって、技術の一部が搭載されているにすぎない。加えて、法規もネックとなっていて、日本の交通法規のベースとなっている「ジュネーブ道路交通条約」などでは、自動車を運転するのは人間であることが定められている。いずれ改正されるとしても、現状はまだまだ、公道で自動運転を実現できる環境ではない。

そうした現実に目をつぶって「自動運転」と称するのは言い過ぎだと思うし、「部分自動」とか「半自動」とか、曖昧な言葉を使ってアピールすることも好ましくないと思っている。実際、現在市販されている技術は「運転支援システム」の域を出ていない。

食品の世界では原材料や産地、賞味期限などについて厳しい規定があり、規定に合わなかったものはすべて偽装扱いされる。化粧品や住宅など、身の周りの多くのものがそうだ。こうした状況を考えると、自動運転の表示は曖昧なのではないかという印象を抱いている。

自動運転に一歩近づいた運転支援システムを搭載する「Eクラス」や「セレナ」が登場

そんな中、気になるクルマが2台、この夏相次いで発表された。7月27日に日本で発表されたメルセデス・ベンツの高級セダン「Eクラス」と、8月24日に発表された日産自動車のミニバン「セレナ」だ。両車は発表を伝えるプレスリリースの中で、しっかり「自動運転」の4文字を使っている。

Eクラスは「部分自動運転を実現」、セレナは「同一車線自動運転技術」という表現を使っており、前後に別の言葉を加えることで表現を薄めようとしているが、これを自動運転と取る人がいても不思議ではなし、その考え方を否定はできない。ちなみに富士重工業はスバル各車に搭載している「アイサイト」について、「運転支援システム」と称しており、自動運転という言葉は使っていない。

といっても、大々的にこの4文字を使うことはさすがにマズイと思ったのだろう、メルセデスは「ドライブパイロット」、日産は「プロパイロット」という呼び名を使っている。テスラの「オートパイロット」に似た言葉だ。パイロットと聞いて連想するのは飛行機。飛行機は現在実用化されている乗り物の中で、自動操縦をいち早く実用化した。それにならっているのかもしれない。

日産「セレナ」の「プロパイロット」は、高速道路など自動車専用道路を直進するのが基本的な機能。レーンチェンジは行えない

セレナの「プロパイロット」は、高速道路での巡航時や渋滞時に、先行車との車間距離を一定に保ち走行する「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」に、車線中央を走行するよう操舵を行うステアリングアシストも備え、先行車が停車した場合は自動的に停車するとともに、3秒以内なら自動的に発進し、追従走行を再開する。低速でもステアリングアシストを行うのは日本初だ。

Eクラスの「ドライブパイロット」は、上記のセレナの機能に加え、自動停車後の自動発進が30秒以内まで作動するようになるほか、高速道路での車線変更も自動で行う。追い越し車線に他車がいない場合に右ウインカーを出すと、システムが安全確認を行って自動的にレーンチェンジを行うものだ。

ただし、これらはいずれも、テスラ「モデルS」のオートパイロットで実現している技術だ。筆者は、まだセレナには乗っていないが、Eクラスをドライブした限りでは、モデルSから大きく発展しているとは感じなかった。むしろ、曲率の小さなカーブの追従では、スバルのアイサイト Ver.3に備わる「アクティブレーンキープ」のほうが正確であるという印象も抱いた。

さらにEクラスでは、走行中にドライバーが気を失うなど万が一の場合に、車線を維持しながらゆるやかに減速・停止する「アクティブエマージェンシーストップアシスト」を世界で初めて搭載してもいる。この技術を賞賛する関係者もいるようだが、日本の高速道路は駐停車禁止であり、夜間の高速道路の走行車線に車両が停車していたら、パニックになる人もいるだろう。個人的には、可能な限り車線を維持して走行を続け、その間に緊急連絡で救助を求めるほうが安全ではないかと思っている。

7月に国内でも発売されたメルセデス・ベンツ「Eクラス」は、セレナに備わる運転支援機能に加えて、レーンチェンジ機能や、「アクティブエマージェンシーストップアシスト」を備える

次世代となる自動運転「レベル3」は、ライドシェアと相性がよい

ともあれテスラの事故が起こってからも、自動運転に対する探求は止むことはない。国内では伊勢志摩サミットで日本の自動車メーカーが自動運転技術を披露したことも記憶に新しい。

しかし、それとは別の動きも目立ってきた。一般ユーザー向けの販売よりも、自動車配車サービス「Uber」を展開する米国ウーバー・テクノロジーズなど、ライドシェア企業への供給を念頭に置くメーカーが増えてきたことだ。

2016年5月に開催された伊勢志摩サミットでは、トヨタ、日産、ホンダが自動運転技術を披露。国をあげて盛り上げている

すでに、トヨタはウーバーと、GM(ゼネラルモーターズ)はウーバーと競合する「リフト」と提携を結んでおり、ウーバーはさらにボルボとも手を結んだ。フォードも自分たちが開発中の自動運転車をライドシェアに供給していくとしている。ウーバー自身も自動運転を研究開発中と聞く。

自動運転のレベルを示す指標としてよく使われているのが、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が制定したレベル1〜4のランキングだ。レベル1はアクセル、ブレーキ、ステアリングのいずれかの自動化、レベル2は複数を自動化したもので、ここまではすでに市販車に搭載されている。モデルSやEクラス、セレナに搭載されるのも、もちろんこのレベル2である。長時間乗車するドライバーの疲労を軽減させるといった実利があることは筆者も確認している。

ここまでは人間が主体でシステムがサポートをするという、文字どおりの運転支援システムだ。ところがレベル3はガラッと変わる。アクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動化し、必要な場合、人間がサポートする。ドライバーではなくオペレーターという呼び名を使ったほうがふさわしいだろう。さらに上のレベル4は、ドライバーがまったく運転に関与しない、文字通りの完全な自動運転となる。

しかし、仮にレベル3になったとき、すべての人がオペレーターとしての任務を果たしてくれるかは疑問だ。「ポケモンGO」に夢中になっていたりしたら、とてもじゃないがオペレーターとは言えない。うわさが事実だとすれば、自動運転中に起こったモデルSの死亡事故も、そんな将来を暗示しているように思える。しかし、ライドシェアなら、お金をもらって人を運ぶプロのドライバーであり、乗客から常に見られているわけだから、オペレーターとしての任務をこなしてくれるだろう。自動運転は、この分野のほうが、将来性を感じる。

自動運転技術で、地方の交通インフラ整備を目指すIT企業の参入の動き

以前、自動運転を取り上げた回でも紹介した、ヨーロッパの自動運転プロジェクト「シティモビル」も、今年に入って動きがあった分野だ。このプロジェクトで車両開発を担当していたフランスのベンチャー企業の車両が、独自にほかのベンチャー企業と組んで、一部の都市で実験走行を始めた。そこに日本も含まれるようになったのだ。

ネット企業のDeNA(ディー・エヌ・エー)が、フランスのイージーマイル社と我が国での独占契約を結び、8月上旬、千葉市のショッピングモール脇の公園で、「ロボットシャトル」と名付けた自動運転小型バスの実験走行を行った。使用車両の「EZ10」には、ステアリングもペダルもない。基本はシステムが運転し、非常時のみ乗務員が停止ボタンを押す。つまりレベル3だ。筆者はフランスと日本でこのEZ 10に乗って、速度は遅いものの、不安なく移動を任せられることが確認できた。

DeNAやイージーマイルもまた、自動運転車を売ることは考えていない。タクシーやバス、ライドシェアとしての運用を前提としている。今年になってSBドライブという新会社を設立したソフトバンクも、地方のバスに自動運転を導入しようとしている。先日、シンガポールで実験を開始した「NuTonomy」も、タクシーとしての運用を考えている。

千葉県で実験走行を行った「ロボットシャトル」は、私道でレベル3の自動運転を実現した

千葉県で実験走行を行った「ロボットシャトル」は、私道でレベル3の自動運転を実現した

以前のコラムで筆者は、自動車メーカーの自動運転車をハイウェイ型、IT企業のそれをシティ型と称した。あれから9か月。その位置付けはより明確になっているように思えるが、同時にIT企業側の勢いが目立つ。両陣営の提携話から想像できるのは、IT企業側が構築したシステム上で自動車メーカーの車両が走るというシーンであり、主導権は前者にあるような気がするからだ。

交通事故を減らし、快適なドライブをもたらすことだけが自動運転のメリットではない。高齢者や身障者でも安全に移動でき、赤字に悩む過疎地域の交通を健全化できる可能性も秘めている。こうした部分まで見据えているのは、実はIT企業のほうだ。そのビジョンが多くの人々の支持を受け、今の勢いにつながっているのではないだろうか。

ソフトバンクも、自動運転にかかわる新会社SBドライブを設立。市販車ではなく交通インフラとしての自動運転を後押ししている

→ 価格.comで自動車保険を比較・見積もり

森口将之

森口将之

1962年東京都生まれ。自動車業界のみならず、国内外の交通事情や都市計画を取材しメディアを通して紹介。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る