選び方・特集

スコットランド産シングルモルトの特徴や飲み方、おすすめ銘柄を識者に聞いた

深遠なるウイスキーの世界が待っています!

深遠なるウイスキーの世界が待っています!

「おうち飲み」の機会が増えたここ1年で、特にじっくりとその味わいを楽しめるウイスキーに興味を持つ方が増えています。せっかくならゆっくりと時間をかけて味わえるお酒を買い求める方が増えているからでしょうか。しかし、ウイスキーについて、何となくの知識しかないという方も実は多いかもしれません。

そこで今回、六本木で人気のバー「カスクストレングス」の入江さん、伊藤さんにウイスキーの基本知識、そして楽しみ方を教わりました!

秘密基地あるいは洞窟のようなムードのある店内とバーテンダーの入江さんです

秘密基地あるいは洞窟のようなムードのある店内とバーテンダーの入江さんです

ウイスキーの基本

まずはウイスキーの基本知識について。

(1)穀物を原料としていること
(2)糖化・発酵・蒸留を行っていること
(3)木樽熟成をしていること

この3つをすべて満たしているものだけをウイスキーと呼びます。原料は特に指定されていないので、麦を原料とする一般的なウイスキーのほか、トウモロコシから作られるバーボンなども広義ではウイスキーに含まれます。製造方法は、簡単に言うと、大麦麦芽(モルトと呼ばれます)やトウモロコシなどの穀物を糖化・発酵させ、蒸留した液体を木樽で熟成させることで完成します。

さらに、ウイスキーには「シングルモルトウイスキー」と「ブレンデッドウイスキー」という種別があります。

「シングルモルトウイスキー」はひとつの蒸留所でのみ作られたウイスキーで、それぞれの地域や蒸留所ごとの個性がかなり強く表れたお酒です。

「ブレンデッドウイスキー」は複数の蒸留所のウイスキーをブレンドしたもので、シングルモルトウイスキーと比べると個性が中和されることで、一般的にかなり飲みやすい味となります。

飲みやすいこのブレンデッドウイスキーが1990年代ごろから日本でも多く流通するようになったことが、近年のシングルモルトウイスキーブームの火付け役になったとも言われています。たとえば「ジョニー・ウォーカー」はコンビニなどでも見かける有名なブレンデッドウイスキーで、名前を聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。「ブレンデッドウイスキーっておいしい!」→「じゃあそれぞれに使われているシングルモルトウイスキーを単体で味わってみよう!」という流れが生まれたのです。

ここでは、そんなシングルモルトウイスキーの中でも代表格と言える、スコットランド産の「スコッチウイスキー」について見ていきましょう。

スコッチウイスキーの蒸留器。麦を糖化・発酵させて作った麦汁に、熱を加えて蒸留させることで、ウイスキーの原酒を作ります

スコッチウイスキーの蒸留器。麦を糖化・発酵させて作った麦汁に、熱を加えて蒸留させることで、ウイスキーの原酒を作ります

スコットランド特有のピート(泥炭。植物などが長年堆積して作られた炭の一種)。他地域にはないこのピートを燃料として麦芽を乾燥させるため、スコッチウイスキーにはピートを燻したような独特の風味が生まれます

スコットランド特有のピート(泥炭。植物などが長年堆積して作られた炭の一種)。他地域にはないこのピートを燃料として麦芽を乾燥させるため、スコッチウイスキーにはピートを燻したような独特の風味が生まれます

ビールは1か月ほど、日本酒も2か月ほどで完成しますが、スコッチウイスキーは、木樽で10年以上熟成を行うものがほとんど。

なぜ10年以上が多いのかというと、樽の中でウイスキーが熟成され変化していく味わいが「今が一番おいしい!」となるのが、ちょうど10〜12年ごろが多いからなのだそう。

樽に入って熟成され、出荷を待つウイスキー。冷涼なスコットランドでは10年以上熟成させるのが一般的です。※写真はイメージ

樽に入って熟成され、出荷を待つウイスキー。冷涼なスコットランドでは10年以上熟成させるのが一般的です。※写真はイメージ

いっぽう、アメリカ産のウイスキーはスコットランドと比べ気候が温かいことから、3年ほどで完成するものが多いのだそうです。スコッチウイスキーは完成までに長い年月と手間を要することから、高級なものが多いのですね。

スコッチウイスキー独自の特徴としては下記のようなものがあります。
・バーボン樽かシェリー樽を使用しているのでウイスキーが香ばしくなりすぎない
・寒い気候柄、10年以上樽の中で熟成させたものが多い
・蒸留所の数が多く、それぞれの蒸留所の数だけ個性的な味わいが楽しめる

ウイスキー発祥の地スコットランドで
偶然生まれた「スコッチウイスキー」

ウイスキーには「世界の5大ウイスキー」と呼ばれる産地ごとの呼び名があります。

・スコッチウイスキー(スコットランド)
・アイリッシュウイスキー(アイルランド)
・アメリカンウイスキー(アメリカ)
・カナディアンウイスキー(カナダ)
・ジャパニーズウイスキー(日本)

なかでも近年人気なのが、イギリスのスコットランドの蒸留所で造られた「スコッチウイスキー」。ウイスキー発祥の地はスコットランドとアイルランドとも言われており、蒸留所の数が多いのが特徴です。

スコットランドは大ブリテン島北部の地域。スコットランドの中もいくつかの地域に分かれており、地域ごとに特徴のあるウイスキーが作られています

スコットランドは大ブリテン島北部の地域。スコットランドの中もいくつかの地域に分かれており、地域ごとに特徴のあるウイスキーが作られています

ウイスキーの発祥には諸説ありますが、一説として4世紀ごろに錬金術師が醸造酒を偶然蒸留器に入れたことで生まれ、密造酒としてこっそり樽に隠しておいたところおいしくなった、というものがあります。これが本当だとしたら、錬金術の偶然! なんだかロマンがありますね〜!

ウイスキーが文献に初めて登場したのは15世紀。その後、どんどんウイスキー造りが広まり、スコットランドとアイルランドで120以上もの蒸留所が誕生したのだそう。これはウイスキーが作られるほかの国と比べても、圧倒的に多い数です。

初心者はまず好きな銘柄を見つけよう

入江さんに「そもそもどのウイスキーから飲み始めればいいのかわからないのですが……」と聞いてみました。

「まずはひとつでもいいので、好きな銘柄を見つけてみることをおすすめします。『これってどこのエリアの銘柄なんだろう』と調べてみて、気に入ったら同じエリアのもので別の銘柄にもチャレンジしてみるなどして広げていくのがいいですよ。もちろん、私たちバーテンダーに『飲みやすいのをください』とオーダーして、出されたものにチャレンジするのもいいですね」

スコッチシングルモルト・王道の5銘柄とは

とはいえ最初の1本は難しい!
ということで、入江さんにウイスキー初心者の方向け、「まずはこれを飲んで!」な定番5銘柄を教えてもらいました。

Glenmorangie Original 10y
グレンモーレンジ 10年

グレンモーレンジ 10年

グレンモーレンジ 10年

北ハイランドにある蒸留所で製造されているウイスキー。スコットランドで最も飲まれている定番。とても飲みやすく、ウイスキーに慣れてない方におすすめしたい銘柄。花や柑橘類を思わせる、上品で優雅な味わいです。

The Glenlivet 12y
ザ・グレンリベット 12年

ザ・グレンリベット 12年

ザ・グレンリベット 12年

ハイランド地方にある、スペイサイドという地域の蒸留所で造られたウイスキー。1824年に密造酒が多かった中、政府公認第一号として認められた由緒正しい銘柄です。フルーティーな味わいはウイスキー初心者にもすっきりと飲みやすいはずです。

The Macallan 12y
ザ・マッカラン 12年

ザ・マッカラン 12年

ザ・マッカラン 12年

「ザ・グレンリベット」同様、スペイサイドにある蒸留所で造られたウイスキー。スコッチウイスキーの名門として知られ、世界3位の売上を誇る有名な銘柄です。樽へのこだりが強く、スペインで一度シェリーの熟成に使用した樽を使って長期熟成させることで、独特の風味を出しています。とても華やかで上品な味から「シングルモルトのロールスロイス」とたたえられています。

Talisker 10y
タリスカー 10年

タリスカー 10年

タリスカー 10年

「アイランズ」と呼ばれる島嶼(とうしょ)のひとつ、スカイ島にある蒸留所で造られたウイスキー。スカイ島の荒波や潮風によって与えられた個性的な塩気と磯の風味が香る、少しクセのある味が特徴です。甘さとスパイシーさを兼ね備えた複雑な味わいをぜひ。

Laphroaig 10y
ラフロイグ 10年
ラフロイグ 10年

ラフロイグ 10年

「アイランズ」と呼ばれる島嶼のひとつ、アイラ島にある蒸留所で造られたウイスキー。とても特徴的な風味で、チャールズ皇太子が好み、王室御用達の称号を持つことでも有名。ヨードチンキや薬品を思わせる香りが特徴的で、飲み慣れない方にはかなりクセがあると感じられますが、その分、とクセになる人も多いのだとか。

シングルモルトの味わい方とは?

おすすめ5銘柄を教えてもらったところで、さっそく飲んでみたいのですが、ウイスキーの味わい方のお作法ってあるのでしょうか? 入江さんに味わい方を教わりました。

「まずは色みを確認します。樽ごとに色が微妙に異なるんです。白いものを背景にして確認するとわかりやすいですね」

「まずは色みを確認します。樽ごとに色が微妙に異なるんです。白いものを背景にして確認するとわかりやすいですね」

「そして、香りをかぎます。冷やすと口当たりがよくなりますが、より香りを感じやすいのは常温です」

「そして、香りをかぎます。冷やすと口当たりがよくなりますが、より香りを感じやすいのは常温です」

「続いて、口に含みます。少しグラスを回して空気を含ませ、ふくよかな香りになったところで再び香りをかいでみると、また違った香りに感じることがありますよ」

「続いて、口に含みます。少しグラスを回して空気を含ませ、ふくよかな香りになったところで再び香りをかいでみると、また違った香りに感じることがありますよ」

「その後、加水して味を見るとより香りを感じやすくなります。加える水の量は常温の軟水をほんの1滴!それでも驚くほど香りが変わるので、ぜひ試してみてください」

「その後、加水して味を見るとより香りを感じやすくなります。加える水の量は常温の軟水をほんの1滴!それでも驚くほど香りが変わるので、ぜひ試してみてください」

この「加水」する方法は、水とウイスキーの割合を1:1にした「トワイスアップ」としても知られています。強いアルコール度数が緩和され、より香りを感じやすくなることから初心者の方にもおすすめの飲み方なんだとか。

バーなどでオーダーする際にはお水も一緒に頼むといいですね。自宅で再現する際には、割る水で味が変わってしまうことがあるので、「常温の軟水」を用意するようにしましょう!

バーでの所作って?

ウイスキー初心者にとって、なかなか「カスクストレングス」のようなバーはちょっと入りにくい気がしますし、初心者であることを隠したほうがいいのかな?なんて考えてしまいますが、入江さんは「むしろビギナーだと教えてください」と話します。

「たとえば『普段はレモンサワーしか飲まないんです』とか『ウイスキーは初心者です』とか、教えていただいたほうがいいですね。ウイスキーを楽しむきかっけとして、まずはハイボールをオーダーいただいてもいいんですよ。それでウイスキーを好きになってくださってから、ストレートでのオーダーをしてくださってもまったく問題ありません」

そうした思いもあって、「カスクストレングス」ではメニューがないのだとか。

「メニューがあると、つい聞いたことのある銘柄をオーダーしてしまいがちです。それを避けるため、また私たちバーテンダーと会話をしていただきたいため、あえてメニューを用意していません。『飲みやすいものを』とか『アイルランドのものを』など、オーダーを聞いてお好みに合わせて2500種以上のラインアップの中からご提供しています」

六本木という土地柄、ビジネスマンや40代以上のお客様が多いそうですが、ワインなどウイスキー以外のお酒もあるそうなので、まずはバーテンダーさんとの会話を楽しみに、勇気を出して訪れてみましょう!

六本木という土地柄、ビジネスマンや40代以上のお客様が多いそうですが、ワインなどウイスキー以外のお酒もあるそうなので、まずはバーテンダーさんとの会話を楽しみに、勇気を出して訪れてみましょう!

スコッチシングルモルト・中級者向け4銘柄

バーでウイスキーを嗜(たしな)むことに少し慣れてきた中級者の方向けに、おすすめの4銘柄を教えてもらいました!

Cragganmore 12y
クラガンモア 12年

クラガンモア 12年

クラガンモア 12年

スペイサイドにある蒸留所で造られたウイスキー。知る人ぞ知る名酒で、ウイスキー業界では元々人気が高い銘柄。華やかでやさしくソフトに飲みやすく、隠れたファンも多いのだとか。

Tamdhu 15y
タムデュー 15年

タムデュー 15年

タムデュー 15年

スペイサイドにある蒸留所で造られたウイスキー。最近まで製造を中止していましたが、近年再スタートしました。今後が楽しみな銘柄です。

Glendronach 18y
グレンドロナック 18年

グレンドロナック 18年

グレンドロナック 18年

東ハイランドにある蒸留所で造られたウイスキー。シェリー樽比率の多い作り方が特徴で、特に18年はシェリー樽を100%使用した濃厚でリッチな味わいが楽しめます。とても飲みごたえがある銘柄です。

Lagavulin 16y
ラガヴーリン 16年

ラガヴーリン 16年

ラガヴーリン 16年

アイラ島にある蒸留所で造られたウイスキー。有名なブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」の核となる原酒のひとつ。16年は、スモーキーな中に甘さを感じる、パワフルでエレガントな味。初心者には刺激的な余韻の長さが、まさに中級者向けです。

白亜の外観が印象的な、ラガヴーリン蒸留所

白亜の外観が印象的な、ラガヴーリン蒸留所

奥深き、プライベートボトルの世界

ウイスキーのマニアックな楽しみ方に「プライベートボトル」というものがあります。

通常は蒸留所がボトル詰めまで行って出荷しますが、「プライベートボトル」は蒸留所とは異なる業者が樽ごとウイスキーを買い取り、独自に瓶詰めを行って販売したものです。

たとえば、独自のブレンドを行ってみたり、別の樽に移し替えて独自の味を出してみたりしているのです。

なかにはこんな現代的な「るろうに剣心」プライベートボトルも!

なかにはこんな現代的な「るろうに剣心」プライベートボトルも!

このプライベートボトルまで含めると、ひとつの蒸留所でも数限りない味が存在することに。それを追い求めるのもウイスキーの楽しみ方のひとつと言えるでしょう。

どんなきっかけでもいいのでまずは触れてみたい!

店長の伊藤さんは「1本1本味が違うので、飽きがこないのがウイスキー。追求すると尽きないのが楽しい。ぜひ自分のお気に入りの1本を見つけてくださいね」と、その魅力について教えてくれました。

お話を聞いていく中で筆者は、「ウイスキーというお酒のハードルを勝手に上げすぎていたな」と感じました。さらに、「ウイスキー=ストレート」と思い込んでいましたが、加水してトワイスアップにすることでかなり飲みやすくなることも初体験!

まずはどんなきっかけでもいいのでひとつの銘柄を飲んでみて、少しずつ広げていくことが大事。そのうえで、バーテンダーさんからその銘柄のエピソードを聞くなどして、知っている銘柄を増やしていけば、より親しみがわくと感じました。

取材協力:カスクストレングス

東京都港区六本木3-9-11 六本木ビル B1F

東京都港区六本木3-9-11 六本木ビル B1F

写真(店内):野村知也

松本果歩

松本果歩

恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。Twitter:@KA_HO_MA

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