小麦粉でも米粉でもない“第3のパン”とは?
その名も、2023年11月にデビューした「ZENB BREAD(ゼンブブレッド)」。ミツカン傘下のゼンブ ジャパンが手掛けている本商品の特徴や味わいをレポートします。
「ゼンブブレッド」のラインアップ。左から、「くるみ&レーズン」「カカオ」「3種の雑穀」。各274円(税込)です
「ゼンブ」ブランドが誕生したのは2019年。当初は野菜を主原料とした「ゼンブペースト」や「ゼンブスティック」などから始まりました。そして翌2020年に仲間入りした「ゼンブヌードル」から、ブランドの顔的な主原料となる「黄えんどう豆」が大々的に登場。以前、以下の記事でも紹介しています。
その後も、さまざまな製品を続々と発売。販売先も広がり、「Amazon.co.jp」や「楽天市場」といったECモール直営店に加え、ポップアップストアなども展開されています(「ゼンブブレッド」はひとまず公式ECでのみ取り扱い)
今回の「ゼンブブレッド」も、原材料のベースとなるのは黄えんどう豆。生地にこの豆をまるごと使うことで、小麦粉でも米粉でもない“第3のパン”に仕上げています。
黄えんどう豆の特徴。たんぱく質や食物繊維が豊富で、なおかつ低糖質であることが魅力です
「ゼンブブレッド」のスペック的なウリは、栄養価の高さや糖質の低さ、そしてグルテンフリー。ざっくり言えばヘルシーなのが魅力ですが、個人的に気になったのは「そういったパンは、すでに存在していませんか?」ということです。
世の中には完全栄養食のパン、小麦ふすまなどを使う低糖質パン、グルテンフリーの米粉パンなどがあり、ある意味レッドオーシャン(競争相手が多い)と言える市場。そこに対して、「ゼンブブレッド」の優位性はどこにあるのかをメーカーに聞いてみました。
本商品の発表会には「ゼンブブレッド」開発チームの中心メンバーが登壇。質問には、R&Dグループ カカオ開発担当、水田瑛里佳さん(写真中央)が答えてくれました
「(『ゼンブブレッド』の魅力は)全部をいいとこ取りしているところかなと思います。たとえば、米粉パンの多くは食物繊維がほとんど入っていませんし、小麦ふすまの低糖質パンはグルテンフリーではありません。その点、『ゼンブブレッド』は後発な分、ヘルシーなパンのさまざまな要素すべてをバランスよく兼ね備えることを強く意識しました」(水田さん)
なお、栄養価も「ゼンブブレッド」の強みだとか。日本人が特に不足しやすい栄養素のひとつ、鉄分のほか、ビタミンB1が黄えんどう豆には多く含まれているからとのことです。
水田さんは、「もちろんおいしさも『ゼンブブレッド』の魅力です。自信あります!」と言います。聞けば、同商品はヘルシーさとおいしさを両立させるために、試作を1,000回以上行い、約4年もの歳月をかけて完成に至ったのだそう。ということで、1種類ずつ試食させてもらいました。まずは「ゼンブブレッド くるみ&レーズン」から。
「ゼンブブレッド くるみ&レーズン」。1袋53g当たり170kcal、たんぱく質3.5〜7.3g、炭水化物16.8〜26.4g(その内、食物繊維が5.0〜9.5g)
ベースとなる生地は、しっとり系のやわらかさ。噛み続けると、じゅんわり、そして粘りも出てきて、ネガティブなパサパサやボソボソした感じも粉っぽさも皆無です。練り込まれたクルミはコリッと存在感があり、レーズンは自然な甘酸っぱさで好アクセント。一般的なパンとして食べても大きな違和感はなく、つまりは普通においしいです。
卵もバターも不使用ながら、このふわもち感。新しさはあっても意識の高さを感じない素朴な味なので、むしろ日常的に食べられそう
「ゼンブブレッド カカオ」は、生地にカカオパウダーとカカオニブを練り込んでいるのが特徴。食べてみると甘さはなく、それでいてビターな風味が漂う大人な印象の味わいです。
「ゼンブブレッド カカオ」。1袋53g当たり145kcal、たんぱく質3.8〜6.5g、炭水化物24.3g(その内、食物繊維が5.6〜8.2g)
「ゼンブブレッド くるみ&レーズン」でも感じたのですが、咀嚼(そしゃく)し続けると出てくる粘り気には、どこかバナナのようなニュアンスも。これは食物繊維がそうさせるのかな、と思いました。
ほろ苦い香りが絶妙。コーヒーがよく合いそうな味わいです
ラストは「ゼンブブレッド 3種の雑穀」。こちらはゴマ、キヌア、アマニの香ばしさとプチプチした食感が楽しめる“いなたい味わい”が特徴。プレーンなテイストで、惣菜やスープなどと合わせるなら最も適していると思います。
「ゼンブブレッド 3種の雑穀」。1袋53g当たり155kcal、たんぱく質4.4〜7.6g、炭水化物21.2g(その内、食物繊維が6.5〜9.7g)
また、「ゼンブブレッド 3種の雑穀」は今回味わった3種の中では弾力がムチッとしていて、いちばんしっかりめ。これは、生地に雑穀が含まれているからかもしれません。自然と噛む回数が多くなり、食べ応えもありました。
雑穀入りで食べ応えのある生地でも、パサつきや粉っぽさはありません
こちらは、トースターで2分加熱した「ゼンブブレッド くるみ&レーズン」。香ばしさがアップして、よりおいしかったです
個人的に気になったのは、黄えんどう豆の研究に納豆の知見が関係しているかどうかということ。というのも、親会社のミツカンは「金のつぶ」シリーズなど、納豆のヒットメーカーでもあるからです。この回答については、特に関係はしていないとのことでしたが、何はともあれ、粘り強い製品開発力には今後も期待したいところ。
今後は食パンタイプや、クロワッサンタイプなども出るのでしょうか。販路拡大とともに注目です
ちなみに、「ゼンブ」ブランドとしては2023年11月に「セブン-イレブン」のパスタ商品に「ゼンブ ヌードル」が限定採用されるなど、トライアルも進んでいます。この施策を踏まえると、いつか今回の「ゼンブブレッド」がコンビニに並ぶ日もそう遠くないのかもしれません。引き続き、目が離せない食品ブランドと言えるでしょう。