衝撃のデビューから6年。もはやおなじみとなったキリンビールの「本麒麟」ですが、その間、何度もリニューアルを繰り返していることをご存じでしょうか?
狙いは、時代とともに変化する消費者の嗜好に合う味わいにするためであったり、競合が多い市場の中で差別化を図るためであったりとさまざまですが、2024年も中味とパッケージが刷新されました。
このニュースに合わせ、今回はメーカー側が初代となる2018年版の「本麒麟」を当時のレシピを元に再現して送ってきてくれました。なるほど、これは面白い! ということで、その2018年版と2024年版を飲み比べ、どう進化したのかレポートしていきます。
左の缶と中央のグラスに入っているのが2024年版。右のグラスが2018年版ですが、中身が入っていたサンプルボトルは撮影不可なので写真はなしです
まずは「本麒麟」のおさらいから。
同商品はビール類の中でも新ジャンル(第3のビール)と呼ばれるカテゴリーであり、日本の定義では「発泡酒(2)」に区分されます(2023年10月の酒税法改正で「リキュール(発泡性)(2)」から変更)。
2023年10月の酒税法改正では税率も変更され、狭義のビール(「一番搾り」や「晴れ風」など)との価格差が狭まりましたが、それでも発泡酒や新ジャンルのほうが今のところは安価です(2026年10月にビール類の酒税は統一されます)。
それもあって「ビールが安くなったけど、自分は発泡酒(新ジャンル)だな」という人や、「普通に『本麒麟』が好きだから浮気はしません!」というファンもいるでしょう。だからこそ今でも売れていて、キリンビールも引き続き「本麒麟」に注力しているのです。
改めて、2024年版の「本麒麟」。1月より切り替わっています
そんな同商品が誕生したのは、2018年3月。発売直後は出荷制限がかかり、初年度は売上目標が2回も上方修正される大ヒットに。また、過去10年間で発売されたキリンビール社の新商品の中で売上No.1になるなど、「本麒麟」はこの年を象徴するビール類商品となりました。
2019年に取材した際の「本麒麟」。左の3本が2019年版で、右3本が初代の缶
なお、当時の開発秘話などは以下の記事で読めます。
ということで、ここからが本題。まずは簡単に特徴を解説するとともにスペックを比較し、そのあと交互にテイスティングして味の違いを探ります。
「本麒麟」は、狭義のビールと新ジャンルとの価格差が今より大きかった当時、「本当はビールを飲みたいけど、新ジャンルの安さでもそのおいしさを楽しみたい」というユーザーをターゲットに開発されました。
そこで、「キリンラガービール」などに使われている、ドイツ産のヘルスブルッカーホップを一部に採用したり、長期低温熟成で雑味を抑えつつコクを増強したり、アルコール度数を6%に仕立て、強い飲み応えとスッと切れる引き締まった後味に仕上げたりと、贅沢かつこだわりの詰まった製法で生み出されました。
以前、取材で見せてもらった「ヘルスブルッカーホップ」。実際の醸造時には、ペレット状に固めて使っています
こうした製法は今でも踏襲しつつ、そのうえで2024年版では大麦を増量することで飲み応えと力強いコクをより向上。また、1つの釜で徐々に温度を上げながら糖化を進める「インフュージョン糖化法」を採用し、麦の旨味をしっかり感じられながら、雑味が少なく飲み飽きない味わいを実現したそうです。
では、当時と今で原材料や栄養成分表示はどう違うのでしょうか。手元のデータには2018年版がなかったので、2019年版と2024年版で比べてみました。すると、原材料は変わらないものの、カロリーなどに若干の誤差があることが判明! 概要としては、2024年版のほうが、ほんの少しヘルシーです。
左が2024年、右2本が2019年版。たとえば、100mL当たりのカロリーは2024年版が-1の46kcal、糖質は-0.2gの2.3gでした
スペック的にも違いがあることを確認したうえで、いよいよ飲み比べます。まず、初代の2018年版から。うん、「本麒麟」らしい力強いコクと鋭いキレがバランスよく両立し、当然と言えば当然ですが、この時点ですでに完成された味わいだと感じます。
2018年版。アタックもボディもしっかりありながら、絶妙な苦味とのどごしが爽快で、すっきりした後味も心地よいおいしさです
では2024年版はどうでしょうか……。ん? これはかなり集中して神経を研ぎ澄ませないと難しいジャッジ。気にせず飲んだだけでは、違いに気づかないかもしれません。それほどの誤差ではあるものの、交互に飲み比べると進化がわかりました!
こちらが2024年版。ボディに由来する飲み応えは同じに感じましたが、旨味やコクはより豊かに。それでいて苦みや余韻のキレもシャープで、全体的においしさの説得力がアップ
特に感じたのは、よりクリアな味わいになっていること。おいしさの要素がくっきり明瞭に伝わってくる印象で、いわゆる“味の解像度が増している”というやつです。言い換えれば、“より洗練された味わい”といった表現でしょう。
アルコール度数6%の飲み応えも「本麒麟」の強み。新ジャンルながら、あなどれません!
前述した酒税法改正により、狭義のビールに追い風が吹いているとはいえ、それでも安価な新ジャンルの魅力も見逃せません。元々の「本麒麟」ファンにとっては言うまでもないでしょうが、新ジャンルを積極的に選ぶ人にもおすすめしたいところ。ぜひこの機会に、新しい「本麒麟」を飲んでみてはいかがでしょうか。