レゴブロックの組み立てにプログラミングを遊びとして取り入れた「レゴブースト クリエイティブ・ボックス」(以下、レゴブースト)が、2018年2月15日より全国のレゴブランドストアや主要家電量販店、 Amazon.co.jpにて発売された。「レゴブースト」は、iOS/Androidのタブレットを使って、自分で組み立てたレゴブロックを思い通りに動かして遊ぶことができる。847ピース(!)のレゴブロックのほか、インタラクティブモーター、距離センサー、カラー&チルトセンサー、プレイマットが付属する。
「レゴブースト クリエイティブ・ボックス」の価格.com最安価格は、20,500円(2018年2月26日時点)。
写真のロボットは、組み立てられるメカのひとつ「ロボットのバーニー」。アプリはiOS/Androidのスマートフォンにも対応するが、アプリの中身が細かいので、画面の大きいタブレットがベター。今回の試遊には、iPadを使用した
「レゴブースト」は、傾きを検知するチルトセンサーを搭載した「ムーブハブ」というベース部分に、レゴブロックを組み合せることで、5つのタイプのメカを組み立てることが可能。完成したメカは、タブレットにダウンロードした無料の専用アプリ「LEGO BOOST」を使ってプログラミングすることで、自由に動かすことができるという仕組みだ。
対象年齢は7歳〜だが、大人が遊んでも面白そう! ということで、実際に作って遊んでみた。
筆者は、小学3年生ごろはレゴブロックにハマっていたが、大人になってからも数年前まで、大人向けの「レゴクリエイター」シリーズで気になる建物のモデルが発売されると、たまに買ってはちょこちょこ作っていた。今回は2年ぶりのレゴ製作となる。
机の上に内容物を出してみた。12個の袋に分けられているため、847ピースあるパーツもそんなに多く感じられない
今回、組み立て説明書の閲覧やマシンの操作は、すべてタブレットの専用アプリ上で行う。アプリをダウンロードして立ち上げると、最初は練習用と思われる「クルマ」しか選べない。とりあえず、これを作るところからスタートというわけだ。
アプリ画面。最初はこちらの不思議な形の「クルマ」しか選択できない
小学生が楽しみながらプログラミングを学べるという知育玩具的な側面を持つホビーなので、子供がイチから作るには1ステップずつゆっくりと教えていくのがいいのだろう。
アプリではまず、電池の入れ方が説明され、その後「1」と書かれた謎のマニュアルのようなモノクロ説明書が表示される。だが、いくら内容物をチェックしてみても、そんな説明書は同梱されていない……。
開始早々、行き詰まってしまう。一番左の説明書っぽい「1」のモノクロ用紙(?)を探すことに……
欠品しているのか? と、パッケージや内容物をくまなくチェック。やっぱりない……。もう1度チェック……、あれ、この数字、ブロックの入った袋の番号を表している……? これに気づくまでに30分かかった。
アプリ内の説明書は、ほぼ言語を使わない仕様のため、逆にわかりづらい気がする。数字を強調するため袋の中のブロックをモノクロで表示していることと、電池交換について書かれた英語のペラ紙のモノクロマニュアルがキットに同封されていることがアダとなり、ますますわかりにくくなっている。イラストの下に「袋」とひと言書いてあればすぐ気づくのだが……。
しかし何度も言うが、このホビーのメインターゲットはあくまでも小学生。これがすぐにわからないのは、欠品などとよこしまな考えを持つ大人だからかもしれないと思い直し、指定された番号「1」の袋を開けて製作を開始した。こうして、プロペラを装備した「クルマ」が完成!
19工程で、イラスト通りのロボット2体を含むすべてが完成!
アプリの指示通りに「ムーブハブ」をオンにすると、アプリを使って「クルマ」を操作できる。
緑のボタンを押して、「ムーブハブ」をオン! ライトが点灯することで確認できる
完成した「ビークル」を動かすには、アプリ上で動作プログラムの書かれたタイルを組み合わせていくだけ。前進、後退などの距離は数字を変えることで直感的に変更できる。子供でも簡単に操作できる配慮がなされていると感じた。
タッチパネルでアイコンを並べていく。このアイコンの場合、再生を押すと、前へ進んで右へ曲がる
「ビークル」を作ったことでアプリのロックが解除された。すると、新たに5つのキットの組み立てが可能となった。
好きなメカのイラストをタッチすると製作説明がスタートする
上の写真で言えば、左から「ロボットのバーニー」「ギター4000」「ブースト車」「子猫のフランキー」などが並んでいる。なかでも、悪役メカにしか見えない風ぼうの「ブースト車」がダントツで気になる。というわけで、まず作るのは「ブースト車」に決定。その後時間があれば、「ロボットのバーニー」も作ろうかなとか思いながら、「ブースト車」の説明ページをアプリで開いた。しかし最初のページには、“とりあえず作ったものを全部壊しましょう”的なイラストが……。何と、先ほど作った「クルマ」を破壊するところから組み立ては始まるのだ。
組み立ては、「とりあえずバラバラにしてくれよ!」という説明からスタート
次のページからは、レゴブロックのみの解説。あれ? 前述のような開ける袋の番号の指示がない!
つまり自分で探せということ。というか、何度も作り直して遊ぶレゴブロックはそれが当たり前なのだ。全部を袋から出そうかとも思うが、机の上がパーツで埋まるのはできるだけ避けたい。袋をひとつずつ手に取り、840種類のレゴブロックを袋越しに触り、パーツを探す。いきなり大海に放り出されたような気分になる。
ちなみに、「ロボットのバーニー」の説明書を見てみたところ、こちらは袋の番号順に開けて組み立てることで完成するようになっており、最初に作るのに適している。というか、対象年齢ギリギリの子供は、絶対「ロボットのバーニー」から作るべき! じゃないと難しすぎる! これもアプリではまったく触れられていないが、筆者のように間違ってほかのものから作るとかなり難易度が上がる気がする。ただその考えも、よくよく考えると私が年老いた中年だからであって、もしかすると記憶力がすぐれている子供ならば、難なくお目当てのレゴブロックを探し出せるのかもしれないし、これはいらぬ心配なのかもしれない。
使うレゴブロックを見つけては組み立てる。組み立ては、2〜4個ほどのレゴブロックの組み方が、1ページで紹介されているのでわかりやすい。しかし、お目当てのレゴブロックを探すのに時間がかかる。同じレゴブロックが複数あるものは見つけやすいが、ひとつしかないものはお目当てのものを探すのに数分かかることも。
たとえば、写真の「→」のマークが描かれたレゴブロックは全体で2個しかない。形状は同じで無地のタイプもあるため、探すのにすごく時間がかかった
数工程進んだところで、早速このレゴブロックの探し方がイヤになってきたので、袋を開けてすべてのレゴブロックを取り出し、色でざっくり分けてみた。こうすることでだいぶ探しやすくなった。だが、800ものレゴブロックを広げるとかなりの量。組み立てたり、メカを試運転したりするスペースも必要なため、できれば4人がけのダイニングテーブルほどの広さがあるのが好ましい。小学生の勉強机では結構つらそうだ。
レゴブロックを出してザックリ色別に分けることで作業がはかどる
ここからは、スムーズに進行した。どんどん組み上がっていく。だが、作っても作っても、進まない、終わりが見えない! アプリのページ下のゲージで現在の進行状況がなんとなくわかるのだが、まだ3分の1も終わっていないようだ。
動力を伝えるギアを配置
なんとなく動力部ができてきた
センサーも搭載! 完成間近か!?
その後、タイヤを取り付けるシャフトの長さを間違ってしまい、分解することになり、40工程ほど戻ることになったものの、なんとか再度作り切り、トータル4時間ほどでついに完成! ……って、どう見てもぜんぜん完成してない!!
画面下のゲージを見てると、もう完成かと思われたが……
どう見ても完成していない。クルマとはほど遠い姿
iPadをのぞくと、アプリ内のロックが外れて、次の工程へ。これ、どこまであるんだ? 今日中に終わるのか!? と不安に駆られるが、そのままアプリの指示のまま進めるしかない。キャタピラは、どこにあるんだ? と思ったらこれも作る!
物語はまだ序章に過ぎなかった……。ステージは3つあった。真ん中のアイコンのロックが外れて第2のステージへ
後方の黒タイルをつなぎ合わせて、キャタピラを作っていく
キャタピラを装着。ゴールは近そうだ
そして、ついに完成! と、思いきや、ロックが外れて、第3ステージへ! 「週刊少年ジャンプ」の人気漫画のごとく、終わりそうに見せかけてぜんぜん終わらない。さらに追い討ちのごとく、ハンマーやミサイルは別枠で、各3ステージに分かれているということが判明……。
全3ステージが終わったと思いきや、今度は別の3ステージのロックが解除。助けて!
ハンマーで叩いて飛ばす新たな武器「カタパルト」を製作中に、どうしてもハマらないレゴブロックが出現するという問題が発生。
写真右のグレーのレゴブロックがハマらない
バラしてみた。黒いレゴブロックが浮いている……
取り外すと、黒いレゴブロックにはオレンジのレゴブロックが挟まってた……と思ってよく見たら、小さなローラーが内蔵されたレゴブロックでした
上が正解のレゴブロック。下が間違えてハメていたレゴブロック。裏返さないとわからない……
こんなのいちいち裏まで見ないし、書いてないとわかんねえよ! と、疲労と、終わりの見えない戦いに嫌気が差し、すべてを投げ出しそうになる。これ、子供だと絶対間違えるんじゃないか? というか、自分が7歳でこれを体験したら間違いなくやめてる! とも思うが、これは「人もレゴブロックもパッと見ではその本質はわからない」という現代社会を生き抜くためのメッセージを暗に伝えようとしているのかもしれない。そして、これも知育的には必要なのかも知れないと思いとどまり、黙々と作り続ける。
「カタパルト」(写真右)をハンマーでぶっ叩けば、いろんなものを飛ばしてさらなる攻撃が可能だ!
その後は順調に作っていくが、またまた問題が発生。目当てのレゴブロックが見つからない。ブロック数はだいぶ減ってはきているのだが、見つからない。で、色で分けられたパーツ表を見てもない。
このグレーのレゴブロックが見つからない……
20分ほどかけて、机の下など探し続けるがまったく見つからず、本当に欠品かと思い始めたところで、もう一度、違う色のブロックもチェック。そして発見! これ、グレーと思わせて、グレーじゃない! ベージュ! わかりにくい! 子供だと泣き出す、いや、いい歳したおっさんも泣きながら逃げ出しそうになるレベル。
ついに発見! これだけ色が違うとわかんないって!
タブレットの画面の明度の問題かなと思ったが、そうでもない。というかわかりにくい!
少し前の工程でシャフトを探す際も、グレーとベージュを間違って10分ほどロスをしていたため、気をつけようと思った矢先の出来事。それでもわからないほど、色の視認性が悪いのだ。レゴブロック探しの手がかりは形状と色だ。この30分のロスで一気に疲弊する。
言語を入れるのがNGであれば、たとえば注意するところは「!」マークを入れ、グレーのカラーに「×」をつけてベージュカラーに「○」をつけたアイコンを入れてくれれば、この30分のロスはなかった。ここは、たぶん多くの家庭で……、
子供 ない〜!
親 よく探しなさい!
子供 本当にないんだって!
親 ……あったら怒るからね!
という一連の流れが行われ、一緒に数十分探してみると、目当てのレゴブロックが見つかってしかられる。そんな理不尽さに直面する子供が続出すると想像すると悲しくなる。もしかするとこれもなにかしらの知育的な意味があるのかも知れないが、この部分は早急にアップデートお願いします! と、こんなことを気軽に提案できるのも、説明書が紙ではなくアプリだから、だったりする。
「ブースト車」が完成!
で、全321工程、トータル5時間かけて、ついに完成! ハンマーやミサイル(正式名称はダーツ)を装備することで、クレイジーさが格段にアップ。「360°回転しながら、全方位をハンマーで叩きまくる」など、多くの物騒な操作アイコンがアプリに標準装備。さらにほかのアイコンと組み合わせることで、「動いてるものを見つけるとぶっ叩く」「指定の色を見つけてミサイルを発射する」などの動作も可能だ。プログラム次第では、部屋中のものを叩きのめしながら爆走させることもできる。
もちろん、ラジコンのようにリアルタイムに操作するアイコンもあり、好きなように走らせつつ、攻撃を繰り出すこともできる。
映画「マッドマックス」シリーズの敵マシンばりの破壊兵器満載「ブースト車」を暴走させて遊ぶと、これがめちゃめちゃ面白い! カタパルトで飛ばした敵の元へ走り寄り、ハンマーでとどめを刺すなど、「これとこれの動作を組み合わせると、もしかしてこういうこともできるんじゃないか?」 と動作プログラミングを考えるのがとても楽しい。
物騒すぎるアイコンが並ぶ動作プログラム画面。この場合、360°回転し、周囲をハンマーで叩きのめし、2歩進んだ後に再びハンマーをカタパルトに打ち下ろす。そして再び周囲を叩きのめす。凶悪!
上の凶悪なプログラムを発動した様子がこちらだ。日本の玩具にはないクレイジーっぷりが最高!
こうやって、ようやく1体作ってみたわけだが、ほかの4体のメカも作って試してみたくなった。ただ、思ったよりも時間がかかるので、作るなら休日まるまる使って取り組むべき。後、お子さんにひとりで作らせるなら、まず「ロボットのバーニー」から作るべきだし、その後も、レゴブロックの色には注意してあげてほしい。「ひとりでやれるって言ったでしょ!」とか言わないで、お子さんが困ってたら助けてあげて!
大人でも間違いやすいアプリの説明書に少し難はあるが(2018年2月25日時点)、これもすぐにアップデートで改善されるはず。そのほかは本当に最高! ついマジメになっちゃいがちな、日本の知育玩具にはない面白さにあふれているし、何度でも作れて、しかも、自分でカスタマイズできちゃう。そんなレゴブロックの魅力を知ってる人は、絶対これを選ぶべきだ!
設定でアプリの言語変更が可能。子供が遊ぶ場合は、まず日本語設定に変更してあげよう!
「日経エンタテインメント!」から「月刊ムー」まで、エンタメやホビーを中心に幅広く活躍するマルチライター。トランスフォーマーなどの変形玩具、海外ボードゲームに詳しい。