いいモノ調査隊
ポイントは「スミ入れ」と「汚し」

リアルさ激変! ガンプラが手軽にカッコよくなる「マーカー塗料」

1980年7月にシリーズ1作目となる「1/144 ガンダム」の発売開始から数えて38年の歴史を持つ「ガンプラ」は、累計販売数は4億5000万個を超え、それまで主役であったスケールモデル(戦車や飛行機、軍艦、自動車などの実在するものを縮尺に基づいて忠実に再現した模型)を押しのけて、日本国内では模型趣味の主役にまで上り詰めた。


エアブラシを使わずに塗れないものか

その間にガンプラ自身も著しく進化を遂げた。現在主流のキットは接着剤が不要で、各パーツをはめ込むことで組み立てられる「スナップフィット」、素材の異なるパーツを1つのランナーの中に盛り込める「システムインジェクション」、1つのランナーの中に違った色のパーツを盛り込んだ「多色成形」により、初心者でもインスト(説明書)どおりにパーツを組み合わせるだけで、アニメの設定に近い完成品が手に入るのだ。

しかし、ガンプラをただ組み立てただけだと、表面はテカテカしたプラスチックの質感そのものでどうにもオモチャっぽい。それにいくら多色成形のガンプラといっても、細部までカラーリングが再現されていないケースもあり、実在する兵器としてのリアルさを完成品に求めるならやはり塗装が必要となる。

模型店に行けばプラモデル専用の塗料が売られているが、ムラなくきれいに塗装するためには「エアブラシ」(ひと昔前はコンプレッサーとセットで数万円したが、現在は1万円以下の安価な製品も売られている)が欲しくなる。しかし、エアブラシは取り扱いにある程度の知識が求められるし、塗料が粒子状に拡散するのを防ぐための「塗装ブース」を別途買い求めなければならない。もちろん、それらの道具を設置する場所も用意しなければならず、狭い日本の住宅事情では、スペースや塗料のニオイ問題から家族の同意を得るには少しハードルが高いかもしれない。

では、昔ながらの筆塗りという方法はどうか? 確かにエアブラシのような専用の道具はいらず、初期投資は筆とプラカラー、溶剤、塗料皿(もしくはパレット)だけで済むのだが、筆塗りだけでムラなくきれいに仕上げるには相応のテクニックが必要だし、塗料のニオイ問題は依然として付いて回る。つまり、これまた初心者にはハードルが高いのである。

それでは、初心者でも手軽にワンランク上のガンプラを仕上げるための方法はないのだろうか? いや、ある。それは「ガンダムマーカー」を使う方法だ。

GSIクレオスの「ガンダムマーカー」

GSIクレオスの「ガンダムマーカー」

目次
└ガンダムマーカーはフェルトペン感覚
└実際に使ってみた
└「スミ入れ」と「汚し」をメインに使う
└タミヤ「ウェザリングマスター」も合わせて使うとよりリアルに

ガンダムマーカーはフェルトペン感覚

模型店で簡単に入手できるガンダムマーカーはペン型の模型専用塗料で、フェルトペンと同じような感覚で手軽にプラモデルを塗装することができる。しかも、ほかのプラカラーとは異なり、溶剤にアルコールを使用していることから塗料独特のニオイがあまりしないというメリットがある。

基本的な使い方はとても簡単で、完成したガンプラに「トップコート(水性スプレー) つや消し」の缶スプレーをさっと吹き付け、よく乾燥させてから塗り分けが必要な細かな部分をガンダムマーカーで塗っていくだけだ。

ほかの塗料にはないガンダムマーカーならではの利点としては、塗装に失敗したときでも塗料がはみ出した部分を「消しペン」でなぞってからティッシュなどで拭き取るだけで簡単にやり直しができることも挙げられる。

ガンダムマーカーは「ベーシック6色セット」、「ジオン軍6色セット」や「細先タイプセット 6色セット」、「メタリックマーカーセット」など、5〜6本1組としてセット販売されているほか、1本単位でバラ売り販売もされている。ベーシックセットのほかに、作るキットに応じて必要なセットを買い求めておけばいいだろう。

現在、ガンダムマーカーは60色以上がラインアップされている。たいていの場合は現在販売中のガンダムマーカーだけで問題なく仕上げることができるが、もしもラインアップにない色を使いたい場合は、画材店で販売されている「コピック」と呼ばれるアルコールマーカーを使うとよい。この製品は内容的にガンダムマーカーと変わりはない。コピックのラインアップは全358色と充実している。ガンダムマーカーにコピックを組み合わせれば、ほとんどのシチュエーションに対応できるはずだ。

ガンダムマーカーを使って塗装する場合の注意点は、ラッカー系やアクリル系塗料と比べると塗料の皮膜や下地の隠ぺい力がともに弱く、アルコール系塗料のため、ほかの塗料を使って塗装したあとに重ね塗りすると、下塗りした塗料を侵食しやすいという点だ。

皮膜と隠ぺい力の弱さには作業上どのような影響があるかというと、成形色が黒いパーツに白のガンダムマーカーを塗っても下地の色が影響してキレイな発色が得られないし、大きな面積を塗る場合には塗装面がムラになりやすいという弱点がある。その場合、ほかの塗料のように重ね塗りをしたいところだが、アルコール系塗料を重ね塗りすると、先に塗った皮膜を塗料に含まれた溶剤が侵食してしまうので難しい。

対策としては、こうしたときは諦めてラッカー系やアクリル系塗料を使用するか、それが難しい場合は、ガンダムマーカーで塗装した部分が完全に乾いたら、つや消しのトップコートを吹き付けて目止めし、乾燥させてから再度ガンダムマーカーを重ね塗りするしかない。一度の重ね塗りでキレイに仕上がらない場合はこれを数度繰り返すといい。

ただし、トップコートを吹いてしまうと消しペンを使ってもガンダムマーカーを落とすことができなくなる。やり直しが利かなくなるので十分に注意してほしい。なお、ほかの塗料で塗装した上からガンダムマーカーを使用する場合にも同様につや消しトップコートで目止めしてやれば問題はない。

まず、つや消しと塗料のノリをよくするために素組みしたキットに「トップコート(水性スプレー) つや消し」をスプレーする

つや消しトップコートはドライヤーを使うと短い時間で乾燥させられる

つや消しトップコートはドライヤーを使うと短い時間で乾燥させられる

「ガンダムAN-01トリスタン」と「ザク・ハーフキャノン」を仕上げる

ここまでがガンダムマーカーを使った基本的な塗装の話である。ここからはさらなる完成品のレベルアップを目指してガンダムマーカーの「リアルタッチマーカー」を使って、ぼかし塗装による陰影の強調やウェザリングを施してみたいと思う。今回は作例としてバンダイから発売中の「HG 1/144 ガンダムAN-01 トリスタン」と「HG 1/144 ザク・ハーフキャノン」を使用した。

トリスタンは今から14年前の2004年に発売された「HGUC 1/144 RX-78 NT-1 ガンダム NT1」に新規パーツを追加したキットということもあり、ところどころに古さを感じるし、ビームライフルや肩部のバーニアなどの色分けがなされていないなどの問題はあるが、組み立てそのものは簡単で、プロポーションは悪くない。

「HG 1/144 ガンダムAN-01 トリスタン」

「HG 1/144 ガンダムAN-01 トリスタン」

もう一方のザク・ハーフキャノンは2016年に発売されたORIGIN版ザクをベースに、キャノン砲を備えたバックパックやビッグガンを追加したキットで、RG版と並んで現時点で1/144ザクのベストとされるモデルだけあってなかなかカッコイイ。ただし、以前のHG版ザクに比べてパーツ分割が細かくなっており、組み立て時間はトリスタンの2倍ほどかかった。

「HG 1/144 ザク・ハーフキャノン」

「HG 1/144 ザク・ハーフキャノン」

まずはインストにしたがって両モデルを組み立てていく。基本的には改造の類いは施していないが、無塗装仕上げのためにサフェーサーが掛けられないことから、パーツの合わせ目を消す作業と表面処理だけ入念に行った。合わせ目を消す方法は、まずプラモデル用の接着剤(今回は「タミヤセメント」を使用)を接合面にたっぷりと塗り、プラスチック樹脂を侵食したところでパーツをギュッと力を入れて接着する。完全に乾燥させてから刃を立てたアートナイフで接合面からはみ出した樹脂をこそげとって、金属ヤスリとタミヤの「フィニッシングペーパー」(耐水ペーパー)を使って表面処理を行う。

まず金属ヤスリを使って大まかに表面を整えてから400番、600番、1000番と次第に目の細かいフィニッシングペーパーを使って、ヤスリの細かなキズを消していく。フィニッシングペーパーは目が詰まったら水につければ再びヤスリ掛けができる。時間と手間は掛かるが、単純な作業なので根気よく続けてやろう。音楽を聴きながらや、テレビを横目で見ながらの作業でも全然かまわない。ただし、勢い余ってモールドまで消してしまうと、後で彫り直しの作業が必要になるので注意しよう。

キットが組み上がったら、モノアイレールやビームライフルなどの塗り分けが不十分な部分をガンダムマーカーで塗装する。トリスタンのビームライフルは白一色で成形されていたが、設定では上半分がブルーグレーなので、今回は「ガンダムマーカー ベーシック6色セット」のガンダムブルーでペイントした。だが、塗装する面積が大きかったため、ガンダムマーカーで塗って、つや消しトップコートを吹き、完成させてからガンダムマーカーで重ね塗り……という作業を4回ほど繰り返した。

キットを素組みした状態。多色成形技術により無塗装でもこれだけの完成度を誇る。ここから、よりリアルな仕上がりを目指す

「スミ入れ」と「汚し」をメインに使う

ここまでの作業が下準備だ。いよいよリアルタッチマーカーを使っての仕上げ作業に移る。今回はトリコロールカラーのトリスタンは陰影表現、パネルラインなどのモールドが多いザク・ハーフキャノンは「スミ入れ」を施すことでリアルさを狙うことにした。

トリスタンの陰影表現で白い部分は「リアルタッチマーカーセット1 5色セット+ぼかしペン」を使用した。白い部分はリアルタッチグレー1、青い部分はリアルタッチブルー1、赤い部分はリアルタッチレッド1、黄色い部分はリアルタッチオレンジ1を使って影になる部分に直接ガンダムマーカーをさっと塗っていく。そして、ぼかしペンで円を描くようにぼかしていき、余分な塗料はティッシュペーパーや綿棒を使って、軽く抑えるように取り去っていく。基本的にはこの作業の繰り返しだ。この作業は脚なら脚、腕なら腕とパートごとに作業を進めていくほうがよいだろう。

リアルタッチマーカーを使って影となる部分を塗装する

リアルタッチマーカーを使って影となる部分を塗装する

ガンダムマーカーで影を描き込んだトリスタンのショルダーアーマー

ガンダムマーカーで影を描き込んだトリスタンのショルダーアーマー

塗装した影の部分をセットの「ぼかしペン」を使ってなじませる。塗料が多すぎたときには綿棒などを使って拭き取るといい

ザク・ハーフキャノンのスミ入れは「ガンダムマーカー流し込みスミ入れペンセット」を使用する。本来、ザク・ハーフキャノンのような成形色がデザート色のキットには、ブラウンで流し込みをしたほうが自然な仕上がりになるのだが、今回はスミ入れ部分がわかりやすいようにグレーを使用した。

流し込みペンはアルコール溶剤が多めとなっており、モールド部分に軽くペンを当てるだけで毛細管現象によりインクが流れ込んでいく。塗装が終わったらはみ出しやペンを押し当てた部分を「消しペン」を軽く当ててやり、後はティッシュペーパーや綿棒を使って表面部分のよぶんな溶剤を吹き去るだけで完成となる。こちらもパートごとに作業を分割して進めたほうがいいだろう。

キットのモールドに「流し込みペン」(写真は間違えてほかのペンを使用しているが……)で影を入れてゆく

キットのモールドに「流し込みペン」(写真は間違えてほかのペンを使用しているが……)で影を入れてゆく

はみ出した部分は消しペンを使って消してゆく

はみ出した部分は消しペンを使って消してゆく

消しペンの溶剤はときにはティッシュで拭い去る

消しペンの溶剤は、ときにはティッシュで拭い去る

次に汚し作業だ。宇宙で運用されるトリスタンと違って、ザク・ハーフキャノンは陸上で運用される設定のため、足元には泥汚れやホコリが付着する。そこで「リアルタッチマーカーセット2 5色セット+ぼかしペン」のリアルタッチブラウンの細ペン先で、汚れが付着しやすい影になる部分を中心に軽く塗り、ぼかしペンでぼかしを入れる。この際に注意しなければならないのは、表現がオーバーになりすぎないように、ペンでの塗装はパートごとに分け、少し塗ってはぼかしを入れるという作業を繰り返すことである。

あわせてザク・ハーフキャノンのシールドには、リアルタッチマーカーセット2のリアルタッチグリーン1とリアルタッチブラウン1を使って、第2次世界大戦時のドイツ戦車のような3色迷彩を施してみた。やり方は簡単でガンダムマーカーの太ペン先を使い、ペン先で軽くたたくように塗っていくだけだ。濃淡の違いにより、多少のムラは出るが仕上がってみるとさほど気にはならない。ガンプラだけでなく戦車や装甲車などのミリタリーモデルにも応用が利きそうだ。全体が仕上がったところで、つや消しトップコートを上から吹いてガンダムマーカーによる作業は終了となる。

ガンダムマーカーは迷彩塗装にも利用できる。ペン先を軽くたたくように塗ってゆくと“らしく”仕上がる

ガンダムマーカーは迷彩塗装にも利用できる。ペン先を軽くたたくように塗ってゆくと“らしく”仕上がる

タミヤ「ウェザリングマスター」も合わせて使うとよりリアルに

そして、最後の仕上げとしてタミヤから販売されている「ウェザリングマスターB(スノー・スス・サビ)」を使ってみた。この製品は名刺サイズのパレットに3色の汚し用カラーと、専用ツールがセットになっており、Bセットは「スノー」、「スス」、「サビ」がセットになっている。今回はセットの中から武器やスラスターの排煙汚れを「スス」を使って表現してみた。

タミヤ製「ウェザリングマスターB(スノー・スス・サビ)」

タミヤ製「ウェザリングマスターB(スノー・スス・サビ)」

こちらも塗料を使った塗装のような煩わしさはなく、専用ツールを使って塗装面にこすりつけるだけで簡単にスス汚れが再現できる。手軽にリアルな汚しができることもあり、作業が楽しくて作例は1/144スケールにしてはややオーバー気味となってしまったのはご愛きょうといったところ(火薬を用いないビームライフルの銃口部分にまでスス汚れを表現したのはどう考えても蛇足だった)。

ガンダムマーカーやウェザリングマスターを使えば、無塗装でもそれなりに格好よくキットを仕上げられるし、プラカラーで塗装後にワンポイントで使用してもおもしろい効果が得られるだろう。初心者はもちろん、塗装派のベテランモデラーも一度試してみてほしい。

山崎龍

山崎龍

乗り物系フリーライター。「くるま文化評論家」「痛車評論家」の肩書きも持つ。クルマを中心に、ミリタリー、航空機、艦船、アニメ、コミック、ゲーム、ホビー、政治問題と執筆のテーマは選ばない。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
関連記事
模型・フィギュアのその他のカテゴリー
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る