こんにちは。ライターの斎藤充博です。今日はうちの妻を連れて価格.comマガジン編集部まで来ています。
というのも、ある日、価格.comマガジンの担当者「しえる」さんからこんなことを言われたのです。
価格.comマガジン編集しえる
しえる「価格.comマガジンで、歯ブラシの選び方の記事を作りたいんですよね……。歯ブラシってドラッグストアにいっぱいあるじゃないですか。どれ選んだらいいかわからなくて」
斎藤「それならうちの妻が歯科衛生士ですよ」
しえる「えっ」
斎藤「僕は妻と結婚してから『歯磨きの大切さ』について、こんこんと諭されてきました。歯磨きはとても大切なことです……」
しえる「斎藤さんは歯磨きを適当にしていそうな気がしていましたが……。意外」
斎藤「価格.comマガジン編集部に妻を連れてきますので、しえるさんも歯磨きと歯ブラシの話をガッツリ聞いていただければと思います」
そう、うちの妻は歯科衛生士。歯科医院で歯石を取ってくれたり、歯の磨き方を教えてくれたりする人。つまり「歯磨きのプロ」なんです
今回は僕としえるさんで妻に話を聞いていきたいと思います
しえる「さっそく、価格.comで買える歯科衛生士さんおすすめの歯ブラシや、歯磨き粉を教えてほしいのですが……」
斎藤「ちょっと待ってください。その前に聞いてほしい話があります。それは『人はなぜ虫歯になるのか』ということです」
しえる「そこから?」
斎藤「どうかそこから聞いてほしいんですよ。妻、お願い!」
妻「そこからでいいですかね? まず虫歯は『ミュータンス菌』という細菌の感染症です」
しえる「それは聞いたことありますね」
妻「人がミュータンス菌に感染してしまうのは乳児期です。ミュータンス菌を持っている大人と食器を共有したり、キスしたりすると、子供に菌が移ってしまうんです」
妻「ミュータンス菌は口の中で『糖質』をエサにして、『酸』を排泄(はいせつ)します。この酸の作用で歯が溶けて『虫歯』になってしまうんです」
しえる「菌が歯を直接溶かしているのではなくて、酸が溶かしているんですね。そういう細かいところまで考えたことがなかったです……」
妻「面倒なのは、ミュータンス菌は口の中で『バイオフィルム』を作ることです」
しえる「バイオフィルム?」
妻「ミュータンス菌はネバネバした物質を作って、歯の表面にくっつきます。さらに菌同士がくっつきあって、増殖して、かたまりになったものを『バイオフィルム』といいます。これがいわゆる『歯垢(しこう)』です。これが歯にくっつくと、うがいなどでは落とせません。機械的に取り除くしかないです」
しえる「バイオフィルムを取り除く方法が『歯磨き』ってことですか!」
妻「そうなんです。歯垢の付着しているところにブラシを当てて、機械的に排除しなくてはいけないんです」
斎藤「つまり、歯垢を落とすには全部の歯のありとあらゆる面にブラシの毛を当てなくてはいけないらしい……。本当に原始的な物理攻撃……」
しえる「大変ですね」
斎藤「これがいい歯ブラシを使わなくちゃいけない理由ですよ……。物理攻撃はちゃんとした武器を使わないとダメ!!!」
妻「なんでそんなに熱いのかよくわからないけど……。そのとおりで、歯ブラシは重要なんです」
しえる「なるほど。それでは価格.comで買える歯科衛生士さんおすすめの歯ブラシを教えてもらえますか?」
斎藤「しえるさん、もうちょっと待って! 歯磨きのやり方も重要なんですよ。妻、説明して!」
妻「私がオススメしたいのは『ダブルブラッシング』です」
しえる「ダブル? 2回歯磨きをするんですか?」
妻「そうです。まず1回目は『歯の汚れを落とす』目的で歯磨きをします。このときには歯磨き粉は付けても付けなくてもいいです」
しえる「付けなくてもいいんですか?」
斎藤「歯の汚れを落とすのには、歯磨き粉はそこまで重要ではないらしいんですよ。歯垢はあくまでもブラシの物理攻撃で落とすので」
妻「普通の歯ブラシのほかに、デンタルフロスやタフトブラシ(後述)も使って、できるだけ歯のすべての面に触れるようにしてください。そして口をよくゆすぎます。これで1回目は終わり。
2回目は『フッ素を口の中に残す』目的の歯磨きです。フッ素の入った歯磨き粉をたっぷりと付けて、歯ブラシで口の中に行き渡らせます。このときは軽く磨けば十分です。
口の中に歯磨き粉が行き渡ったら、口を軽くすすぎます。そうするとフッ素が口の中に残って、虫歯を予防してくれるんです」
斎藤「つまり、シャンプーとリンスみたいな感じだよね?」
妻「それはちょっと違うんだけれど……」
しえる「かなり時間がかかりそうですね」
妻「私は1日に3回歯磨きをしますが、ダブルブラッシングをするのは夜だけですね」
しえる「斎藤さんも毎日ダブルブラッシングを行っているんですか?」
斎藤「僕は気が向いたときだけです」
しえる「それでいいんですか……?」
妻「それはそれで、いいんですよ。歯磨き自体がイヤになってしまったら、元も子もないので……」
しえる「なるほど……。プロの気遣いですね」
デント マキシマ(ライオン)
斎藤「それでは歯ブラシの紹介をお願いします!」
妻「まずはデントマキシマという歯ブラシです」
しえる「パッケージがおしゃれ。海外メーカーですか?」
妻「これは国産。メーカーは『ライオン』ですね」
斎藤「この見た目で国産なんだ」
妻「毛が生えているところが薄いことがポイントですね。このおかげで奥歯のほうに歯ブラシが入りやすくなります」
斎藤「ネックも細長い」
妻「それも磨きやすいポイントだね」
妻「毛が二段になっているの、わかりますか? 長い毛と短い毛が交じっている」
しえる「毛が二段になっているほうがいいんですか?」
妻「私は二段になっているほうが、ブラッシングしていて気持ちよく思えるんですよね」
斎藤「ん? それは好みの問題ってこと?」
妻「そう。好みは重要。私はこの歯ブラシが一番好きかな」
斎藤「でも、うちで使っているやつはこれじゃないよね?」
妻「そう……。これはちょっと高めだからね。次にうちで使っている歯ブラシを出してみようか」
ルシェロ ピセラ(ジーシー)
斎藤「これこれ。今使っているのはこれだ」
妻「これはさっきの『マキシマ』よりも値段がちょっと安いんです。箱買いして家にストックしています。やっぱり月に1回は替えたいから、買いだめしても負担感のないものを家では選んでますね」
斎藤「確かに洗面台の下に大量にあるな……」
しえる「歯ブラシってやっぱり月1回替えなくちゃダメですか?」
妻「替えたほうがいいですね。毛先が広がっちゃうと、どうしても歯の清掃効率が悪くなります」
妻「これはかなりブラシの部分が小さいです。さっきのマキシマよりも小さい。小さいほうが細かい部分をよく磨けますね」
斎藤「小さければ小さいほどいいの?」
妻「うーん。小さすぎても清掃効率が悪くなるから、小さければいいってわけではないね」
しえる「すごく変わった形ですね。ブラシの上のほうがとんがっている……」
妻「まさにそれが特徴ですね。ここがとがっていると、奥歯の奥の部分に毛先が届くんですよ。普通に歯磨きしていると汚れが残っちゃうんですよね」
奥歯の奥にも届く
しえる「奥歯の奥じゃない部分を磨くときに、とんがりはじゃまになりませんか?」
妻「正直、ちょっとじゃまではありますね(笑)。それでも奥が磨けるのがやっぱりいいですね」
斎藤「毛もマキシマと同じで二段になっているよね。僕も毎日使っているけれども、磨きやすいと思う」
妻「充博は口が小さいからね……。これは女性向けに開発されてるんだよね」
テペ(テペ)
妻「これは『テペ』というスウェーデンの歯ブラシです」
斎藤「パッケージ開けにくいなー。海外って感じがする」
しえる「これはブラシ部分が大きくないですか? さっきまでの歯ブラシと比べると段違いの大きさ」
斎藤「ブラシ部分は小さいほうが磨きやすいんじゃないの?」
妻「そう。これはみんなが言うようにブラシが大きすぎる。それから柄の終わりのところがボコッと広がっている。ちょっと磨きにくいんですよ……」
斎藤「磨きにくいのに、これがいいの?」
妻「これはね、毛の質がマジのマジで最高。毛が多くて、柔らかくてすごくよくしなる。これで歯磨きをすると本当に気持ちいい……。私はこれをダブルブラッシングの2回目で使っています」
斎藤「歯磨きが気持ちいいって感覚、ちょっとよくわからないな……。風呂の気持ちよさが10だとすると、この歯ブラシの気持ちよさはどのくらい?」
妻「5くらいかな」
しえる「まあまあ低いですね?」
斎藤「いや、歯磨きで風呂の半分の気持ちよさを得られるなら、かなり高いのでは?」
妻「お風呂の話するとわけわからなくならないかな……? これ、使いにくいんですが見た目はかわいいんですよね。色のバリエーションがいくつかあるんですが、どれもパキッとした色遣いでよいです」
しえる「見た目のかわいさで選ぶのもアリなんですね」
斎藤「スウェーデンの人は、このくらい大きくても磨きやすいのかな?」
しえる「口が大きいのかな」
妻「それはありそうですね」
クリニカアドバンテージ ハブラシ(ライオン)
しえる「私がいつも使っている物を持ってきました。これはどうですか?」
妻「ここまで私が紹介した物は、普通のスーパーでは売られていないことが多いんです。普通に買える物だったら私はこれが一番好きです」
しえる「やった! 歯科衛生士のお墨付きだ」
上がマキシマ、下がクリニカ
妻「最初に紹介したマキシマと、このクリニカって形が似ていると思いませんか?」
斎藤「あっ! 本当だ。ほとんど同じ。パクリ商品?」
妻「この2つはメーカーが同じ。どっちもライオン製」
斎藤「同じ会社ならセーフだな……」
しえる「歯ブラシって毛の『硬さ』を選べるじゃないですか。あれはどれを選んだらいいかってありますか?」
妻「『ふつう』がおすすめですね。『かため』を使って磨くと、歯茎が下がるリスクがあるんですよ。私は患者さんが『かため』を使っていると、やんわりと『ふつう』を使うように誘導しています」
しえる「『やわらかめ』はどうですか?」
妻「『やわらかめ』だと清掃効率が落ちるんですよね。ただ、歯肉が腫れている人が歯肉マッサージをするときに使うなら『やわらかめ』を使います」
※歯肉のマッサージは歯科医の指導を受けて行ってください
ルシェロ フロス ミントワックス(医院用)
妻「私が使っているデンタルフロスはこれ。歯科医院用の物ですが、一般の方でも買えます。唾液で糸が膨らむので、使いやすいです」
しえる「これは糸だけなんですね。柄が付いている物はダメですか?」
妻「それでもいいですよ。Y字型の柄が付いている物が奥歯と奥歯の間にも使いやすいと思います」
クリニカアドバンテージ デンタルフロスY字タイプ(ライオン)
斎藤「僕も糸だけのやつは難しくて、Y字型のフロスを使っていますね。鶏肉食べた日にフロスをすると、歯垢というよりも『鶏肉の繊維そのもの』が出てきてビックリする。こんなに食べ物が挟まっているんだな、って」
妻「そう。フロスを使わない人はそれがずっと口の中に残るので。やっぱり使ってほしいですね」
ワンタフトブラシ プラウト(オーラルケア)
妻「タフトブラシも。特に歯並びの悪い人は、歯の段差に汚れがたまりやすいのでぜひ使ってほしいです」
しえる「柄の曲がり方がハンパないですね」
妻「これくらい曲がっているほうが、奥歯にも入りやすいですよ」
しえる「フロスやタフトブラシも1日に3回やらなくちゃダメですか?」
妻「寝る前の1回だけでいいかな、と思います。やっぱり時間かかりますからね」
しえる「価格.comマガジン的におうかがいしたいんですが、『電動歯ブラシ』はどうなんでしょうか? これまで1つも出てこなかったので」
妻「私は使いません。自分で磨くのが好きなので……。ただ『ものすごくブラッシング圧が強い』方におすすめすることはよくありますよ。ブラッシング圧が強すぎると、歯茎を傷つける原因になってしまいます。電動の力だと一定のブラッシング圧をかけられます。それは利点ですね」
チェックアップ スタンダード(ライオン)
しえる「歯磨き粉のおすすめはありますか?」
妻「フッ素の多い物がいいですね。今まで私はチェックアップという、歯医者だけで売っている物を使っていました」
クリニカアドバンテージ ハミガキ シトラスミント(ライオン)
妻「でも最近、チェックアップと同じ量のフッ素が入っている『クリニカ』が発売されたんです。普通のスーパーやドラッグストアで買うことができます。これは本当にすごくて……」
妻「市販の歯磨き粉って、今までフッ素の含有量が書かれていなかったんですよ。だから、歯磨き粉にどれだけフッ素が入っているかわからなかった。これは私が知っている限りで初めてフッ素の含有量が明記されている歯磨き粉です」
斎藤「これ割と最近だよね。妻がこれ買ってきて大騒ぎしていたのよく覚えている」
しえる「歯科衛生士も興奮する歯磨き粉……」
斎藤「チェックアップもクリニカもフッ素の含有量が同じなら、どっちでもいいの?」
妻「本当ならチェックアップのほうがいいかもしれない。『低発泡』なので、泡立ちにくい。泡がたくさん出ちゃうと、なんとなく磨いた気になって短時間で歯磨きを終わらせちゃうから」
斎藤「あれ? でもうちで使っているのは『クリニカ』だよね?」
妻「これはシトラスミントの味が好みだから。こっちのほうが磨いていて楽しい」
斎藤「好みの問題か〜」
MIペーストメロン(ジーシー)
妻「歯磨き粉をもう1つ紹介させてください。これ、普通の歯磨き粉として使うにはちょっと高いんですよ」
しえる「価格.comの最安値でも1本(40グラム)1200円を超えますね……」
妻「この歯磨き粉にはフッ素は入っていないんですが、牛乳由来の『CPP-ACP』という、歯を強くする成分が入っています(牛乳アレルギーのある方は使用しないでください)。私はこれをダブルブラッシングが完全に終わった後に使います。歯ブラシに歯磨き粉をつけて、歯に塗るようにするんです」
しえる「あまり聞いたことのない使い方ですね。歯ブラシにどのくらいの量付けるんでしょうか」
妻「ブラシの長さと同じくらいですね。たっぷり付けてください。そして口をゆすぐときは軽くです。歯を強くする成分を口の中に残しておきたいので」
斎藤「もう本当にダメ押しみたいな感じだなあ」
妻「これは甘いメロン味がついていて、おいしいんです。口の中に行き渡らせておくと、甘い状態で寝ることができます。幸せ……」
斎藤「そういえばメロンとかメロン味好きだよね……」
妻「これは本当にときどきでいいと思います」
キシリトールガム(ロッテ)
斎藤「キリトールのガムってあるよね。あれは本当に虫歯予防になるの?」
妻「なる。キシリトールは『ミュータンス菌の力を弱くする効果がある』んだよね」
斎藤「フッ素は『歯を強くする効果』でキシリトールは『菌の力を弱める』のか……。RPGのバフとデバフみたいだね……。そして歯磨きは物理攻撃……」
妻「何を言っているのかよくわからないな……」
しえる「今まで聞いた話をまとめてみるとこんな感じでしょうか」
■歯ブラシはヘッドが小さいほうが磨きやすい
■毛の硬さは「ふつう」を使うのがおすすめ
■歯磨き粉はフッ素の量の多い物がおすすめ
妻「そうですね。ただ一番重要なのは『自分のお気に入りの道具』を使うことなんです。私は仕事で患者さんの歯ブラシを見せていただくことがあるんですが、『本人が気に入っている道具』を否定することは絶対にしません」
斎藤「今日も何回も『好み』の話がでてきたもんね」
妻「今日紹介した物も、あくまでも私の好みの道具ですね」
しえる「結局大事なのは『好み』……」
斎藤「そういうの、記事的にはちょっと締まらないんだけどな……」
妻「それから、最後に言いたい。『歯磨きは楽しい』んですよ。好きな道具を使って歯がツルツルになるのは本当に楽しいです。この記事を読んでくださった方にも、ぜひお気に入りの1本を見つけてもらえたらと思います」
というわけで、歯磨きの話でした。妻は毎日3回、1回に5分以上かけて歯磨きをしています。さらにおやつにせんべいなどの歯につまるものを食べると、その都度簡単に歯磨きをして食べかすを落としています。
僕も最初は「やりすぎだろ……」と思っていたのですが、だんだんとちゃんと歯磨きをするようになりました。ちょっと楽しくなりかけているのかも?
そうそう、このくらいやっていると、歯医者さんに行ったときに歯科衛生士さんにはものすごくほめてもらえますよ。
みなさんもお気に入りの1本を見つけてみませんか。