まだ気温は低いですけど、ぼちぼち「春かな?」と感じることが増えてきましたね。日差しが暖かかったり、目や鼻に花粉を感じたり。
春と言えば、文房具業界にとってのハイシーズン。年度変わりのタイミングで、普段使いの文房具を買い替える人が多いというのもあるんですが、それに加えて、卒入学や入社・異動をする人へのプレゼントとしても文房具は人気が高い。というわけで春は、ちょい高額の文房具にも注目が集まります。
とは言え、じゃあどんな文房具を贈ればよろこんでもらえるか?というと、悩ましいところですよね。
1984年発売のモンスター級ヒット文房具「チームデミ」
……で、上の写真の文房具に見覚えはありますでしょうか。
今、「うわー懐かしい!」と声を上げたのは、まず間違いなく40代以上の人ですよね。わかります。超懐かしい。
こちらは、1984年に発売されたプラス「チームデミ」の初代モデル。超コンパクトサイズの文房具が専用ケースにぎっしり詰まったものですが、当時累計650万個売れたというから、間違いなくモンスター級の大ヒット製品です。もちろん当時も、春のプレゼント用として大人気で、実際にこれを「もらって使っていた」という人も多いでしょう。
そして何とこの「チームデミ」が、2020年秋に36年ぶりの復刻を果たしました。しかも、単なる焼き直し復刻ではなく、令和にふさわしいデザインと機能に一新されています。見た目カッコよく、高級感もあり、しかも実用的。まさに、卒入学・入社・異動などのお祝いの品に最適な逸品と言える仕上がりになっているんですよ。
まず、デザインについてですが、新旧並べて見ると、雰囲気や搭載された文房具のラインアップは昔を踏襲しつつも、明らかに洗練されているのが一目瞭然。
それも当然で、新「チームデミ」は、世界的なプロダクトデザイナー、深澤直人氏の手によるもの。言われてみれば、無駄な凹凸を削ぎ落としたフラットさ、それなのにクール過ぎないやわらかさなどは、無印良品の「壁掛式CDプレーヤー」(深澤デザインの傑作!)に通じる要素が感じられます。
2020年に復刻したプラス「チームデミ」。公式サイト価格は、6,600円(税込)
コンパクトなハサミ/液体のり/ステープラー/SIMピン/セロハンテープ/メジャー/カッターナイフ/定規が、ギュッと高密度に詰まっています
さらに、新型において特徴的なのは、収納と文房具の固定にマグネットを多用していること。
旧版は、文房具型にくり抜かれたウレタンにそれぞれが収まっていたんですが、新「チームデミ」はケース内に内蔵したマグネットで、ピタッとすき間なく収納できるように変化しました。
文房具を収納位置に近づけると、スイッと吸い込まれるようにハメ込まれて、カチャッと固定。このピッタリ感と吸い込まれる手応えが非常に心地よく、特に使うアテもないのに、何度もスイッカチャ、スイッカチャ、と出し入れを繰り返してしまうレベルです。
余分なすき間のないスペースに、マグネットで吸い込まれる感じが、とても精密で美しい
収納部内に段差がついているので、取り出す時は端を押し込むと浮き上がります
もちろん、中の文房具も、80年代から比べると完全に別物と言えるアップデートを遂げています。
たとえば、わかりやすいのはハサミ。見た目はさほど違いがありませんが、刃の部分がうっすらとカーブを描いているのがわかるでしょうか。
これは、プラスが2012年に発売したハサミ「フィットカットカーブ」と同じ構造で、軽い力で従来比3倍の切れ味をうたうカーブ刃です。つまり、小さくても間違いなく切れる!
わずかに湾曲したカーブ刃は、今や大定番ハサミとなった「フィットカットカーブ」を踏襲したもの
切るモノつながりで、カッターナイフももちろん高性能。
小型カッターは、切れ味が落ちても刃を折らずに使い続けられるケースが多いんですが、じゃあもういっそ、交換不要で長持ちする刃にしてくれればいいじゃん、と。
そこで、こちらも2016年に同社発売のカッターナイフ「オランテ」と同じ、折らずに切れ味が持続する頑丈な刃を搭載しました。刃厚も、大型カッターと同等の0.5mm厚なので、よほど無理な力をかけない限り、切っている最中に刃がヨレたりゆがんだりすることはありません。
小さなボディにも関わらず、切っている時の安定感が非常に高い。純粋にカッターナイフとして優秀と言えるでしょう。
折り線のない刃は、通常の1.3倍の刃厚で頑丈。切る時に安定感を感じられます
「古くさい」と思われがちな液体のりだって、貼る時にシワになりにくい新しいタイプのものを搭載。これなら、経費精算でレシートを書類に貼る時も、デコボコせずにすっきりと仕上がるわけです。
フタの部分に収納用のマグネットを内蔵しているので、これを使えば、散らばったゼムクリップを拾い上げるのにも便利だったり。
ただ、個人的には、液体のりよりもテープのりのほうが使う機会が多いんだけどなー、とは思ったんですけども……。さすがに、このサイズに収まるテープのりは難しかったのかもしれません。
塗り口がスポイト状で、細かいところまで塗りやすいのもポイント
セロハンテープは、カッター下を押さえるとテープの切り口が浮き上がって貼りやすい。これも地味に便利です
旧版のケースでは製品名が印字されていた位置に、従来なかったプレート型のSIMピンが追加されました。これが唯一のラインアップ変更点と言えるでしょう。
SIMカードの取り出しに使えるのはもちろん、時計のリセットやメディアの強制イジェクトなどで使うこともあるので、意外と「あってうれしい」やつです。
製品名のプレートかと思いきや、実はちゃんと使えるSIMピン
ちなみに、ケース裏面にはQRコードが印字されており、読み込むと「チームデミ」のブランドサイトにつながります。ここから、別売の消耗品を購入できるのは、なかなか親切だと思いました。
こういったコンパクトな文房具は、どうしても見た目優先になるため、機能性は落ちて当然……というのが、今までのイメージでした。
しかし新「チームデミ」は、このサイズで考え得る最良の性能を搭載しているので、間違いなく実用性が高いんです。実際問題として、春からひとり暮らしを始めるという人は、まだ家で使う文房具類が揃っていない、なんてこともあるでしょう。ハサミやテープなどは、必要に迫られてようやく100均で適当なのを買ってくる、みたいなこともよくありますし。
それなら、収納場所に困らないコンパクトさで、実用的で、ケースにまとめてあるから紛失しにくい文房具のセットを贈るのって、かなりよろこばれると思いません? 贈る側としても、プレゼントを開封しただけで引き出しの奥に放り込まれるのは、何だか寂しいですし。そんなわけで、ちゃんと日常的に使ってもらえて、「あの人にもらったコレ、役に立つなー」と感じてもらえれば、どっちもウィンウィンってことで。新「チームデミ」、おすすめです。
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。