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売り切れ続出! 水性インクの欠点を覆した「ユニボール ゼント」を文具のプロが解説

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水性インクの欠点を覆した「ユニボール ゼント」を文具のプロが解説

ボールペンのインクに「油性」「ゲル」「水性」の3種類があることは、ご存じの方もわりと多いのではないでしょうか。油性ボールペンといえば、世界で年間1億本以上が出荷されている三菱鉛筆「ジェットストリーム」シリーズが代表格。ゲルボールペンなら、消せるインクのパイロット「フリクションボール」シリーズも、同様に年間1億本クラスの製品です。しかし、じゃあ水性ボールペンと言えば? と問われると、これがなかなか困るというか、そこまでメジャーなペンがないのが実情と言えるでしょう。

そんななかで2025年2月に三菱鉛筆から発売されたのが、新開発の水性インクを搭載したボールペン「ユニボール ゼント」0.5mm/0.38mmシリーズです。油性の「ジェットストリーム」とゲルの「ユニボール ワン」でこれまで高い人気を得てきた三菱鉛筆が、満を持して水性ボールペンに乗り込んできた、と文房具業界内でも話題となったこの新シリーズ。しかも、従来の水性ボールペンのほとんどがキャップ式なのに対して、ノック式(一部、キャップ式)を採用しているのもユニークです。はたしてどれほどの性能を持っているのか? その使用感なども含めてレビューしてみようと思います。

「ユニボール ゼント」、どのボディで書く?

まず「ユニボール ゼント」(以下、ゼント)シリーズについてですが、価格帯ごとに4モデルがラインアップ。高価格帯のキャップ式「シグニチャー」モデル、中価格帯の金属軸「フロー」モデル、そして普及価格帯の「スタンダード」モデルと「ベーシック」モデルで、それぞれボール径0.5mmと0.38mmが用意されています。

「ベーシック」はそれぞれインク色に合わせた黒・赤・青軸、「スタンダード」は黒インクと8色カラバリ軸との組み合わせです。

三菱鉛筆「ユニボール ゼント」左から「シグニチャー」「フロー」「スタンダード」「ベーシック(青・赤・黒)」の各モデル

三菱鉛筆「ユニボール ゼント」左から「シグニチャー」「フロー」「スタンダード」「ベーシック(青・赤・黒)」の各モデル

ボール径は0.5mmと0.38mm。水性インクにありがちな線の太りもなく、ボール径でイメージするとおりの文字が書けています

ボール径は0.5mmと0.38mm。水性インクにありがちな線の太りもなく、ボール径でイメージするとおりの文字が書けています

ドライアップの危険性があるためキャップ式が多い水性ボールペンですが、ノック式が中心(「シグニチャー」のみキャップ式)のラインアップというのは、ちょっと珍しいと言えます。

ボディによって書き味は当然違ってきますが、ひとまず新型水性インクを試してみたいなら、最も基本的な「スタンダード」がよいでしょう。前軸がペン先まで一体のゴムグリップになっており、自分の握り方に合わせて筆記感を確かめられるのがポイントです。

普及価格帯の「スタンダード」モデル。前軸(ゴムグリップ)は握りやすくグリップ力も良好でした

普及価格帯の「スタンダード」モデル。前軸(ゴムグリップ)は握りやすくグリップ力も良好でした

三菱鉛筆「ユニボール ゼント スタンダードモデル」

また、ハイエンドな「シグニチャー」モデルは、マグネットキャップを付け外しするクリック感の気持ちよさや、リラックスして書ける落ち着いた筆記バランスなど、高級感を指に伝えるギミックがいくつも仕掛けられています。握り心地とインクの相性も非常によいため、余裕があればこちらも試してみてほしいところです。

ハイエンドの「シグニチャー」モデル。キャップを後軸に挿すとちょうどいいバランスになる設計です

ハイエンドの「シグニチャー」モデル。キャップを後軸に挿すとちょうどいいバランスになる設計です

ちょっと上級者向けですが、書き味を楽しむのにおすすめなのが、軸の入れ替えです。実は「ゼント」のリフィルは、姉妹ペンとも言えるゲルボールペン「ユニボール ワン」(三菱鉛筆)と同サイズ。つまりリフィルの入れ替えが可能!

低重心化された「ユニボール ワンF」や、ショート軸の「ユニボール ワンP」に「ゼント」用リフィルを装填すると、ちょっと驚くほどに書き味が変わるんです。軸のバランスによる変化……なんて言うとマニアックですが、この違いは誰でも体感できるほどハッキリしたものなので、できれば一度は体感してみてください。

ショート軸の「ユニボール ワンP」にゼント用リフィルを搭載してみたところ。低重心化により書き味が大幅に変わるのが面白い!

ショート軸の「ユニボール ワンP」にゼント用リフィルを搭載してみたところ。低重心化により書き味が大幅に変わるのが面白い!

新型水性「ZENTOインク」の性能をチェック!

水性ボールペンは、サラサラとした摩擦の少ない書き味と、インクの発色が鮮やかというのが最大の特長です。その代わり、耐水性が弱い・筆跡が紙に染みてにじみやすい・裏抜けしやすい・乾燥が遅くスレ汚れになりやすい、といった難点も多く、このあたりの使いづらさが人気を集めにくかったのではないか、と考えられます。

しかし、これらを解消できたとしたら、もしかしてすごく便利なボールペンになるかも?

そういった発想から生まれたかどうかは定かではありませんが、しかし、水性ボールペン「ゼント」に搭載された新開発の水性「ZENTOインク」は、まさに従来の水性インクの欠点を可能な限り解消しつつ、よいところだけを強調したようなインクと言えそう。

まず書き味についてですが、これはもう間違いなく水性のサラサラ感がしっかりと手に伝わってきます。ただ、水性ボールペンの多くはインクフロー(流量)を増やすことで滑らかさを演出しているんですが、見たところ「ゼント」のフローはやや少なめなぐらい。

かなり軽めのサラッとした書き心地で、これはハマる人も多いのでは……

かなり軽めのサラッとした書き心地で、これはハマる人も多いのでは……

「ZENTOインク」には「POA界面活性剤」という成分が配合されており、これがペン先と紙の間で摩擦を約40%低減。これによってインクをダクダクに流すことなく、サラッと軽い書き心地が得られているようです。

実際、「軽っ!」としか表現できないような軽快なタッチはとても気持ちよく、一度ハマるとクセになる人も多そう。特に0.38mmの細さでここまでサラッと軽く書けるペンはかなりレアだと思います。

適度なインクフロー+界面活性剤配合で、0.38mmでも軽くサラッと、かつシャープな線が書けます。これは優秀

適度なインクフロー+界面活性剤配合で、0.38mmでも軽くサラッと、かつシャープな線が書けます。これは優秀

にじみに関しては、わかりやすいよう、インクがにじみやすい紙ナプキンに書いて、従来の水性ボールペンと比べてみました。こちらも違いは一目瞭然。どちらも同じボール径0.5mmですが、従来水性のほうはインクがにじんだことで筆跡が明らかに太ってしまっています。

いっぽう「ゼント」はと言うと、ノートなどに書いたのとほとんど変わらない、ちゃんと0.5mm径で書いたような細さの筆跡です。

従来水性ボールペン(上)と「ユニボール ゼント」(下)とのにじみ比較

従来水性ボールペン(上)と「ゼント」(下)とのにじみ比較

これは、「ZENTOインク」に配合された「引き寄せ粒子」と呼ばれる添加剤のおかげ。インク同士を引き寄せ合うことで、紙繊維への拡散を抑えてにじませない、ということのようです。

この粒子がどのように作用しているのかは公開されていないので、何とも説明がしにくいのですが、しかし効いているのは確実。

唯一ちょっと残念なのが、インクの発色です。「ZENTOインク」、書いた瞬間はかなりクッキリ鮮やかに見えるのですが、紙に吸われて乾いていくうちに、じわっと微妙に色が浅くなっていきます。水性インクならではのクッキリ高発色を期待していただけに、ここはもったいないと感じました。

発色は水性インクとしてはやや浅めの印象

発色は水性インクとしてはやや浅めの印象

【まとめ】書くことが楽しくなる、サラサラが気持ちよいボールペン

水性インクにはいくつもの使いづらい難点があり、それが微妙な不人気につながっていたのは間違いありません。

しかし「ゼント」シリーズには、それを確実に覆すだけのポテンシャルがありそう。あのサラッとした書き味にハマる人が増えていけば、もしかしたら、“水性ボールペンブーム”が来るかも?

まだ発売されたばかりということで、チェックしておくなら今のうちだと思います。あと、シグニチャーモデルがすごい人気で、店頭でも売り切れ続出とのこと。こちらは見つけたら即ゲット推奨です。

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三菱鉛筆「ユニボール ゼント シグニチャーモデル」
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きだてたく
Writer
きだてたく
最新の機能派文房具から雑貨・ファンシー系のオモシロ文房具まで、何でも徹底的に使い込んでレビューする文房具ライター。雑誌・WEBで文房具の最新情報や使いこなし記事を執筆するほか、文房具の楽しさを伝えるトークライブやワークショップなども全国各地で精力的に行う。最近は掃除機業界にも進出中!
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金原望弥(編集部)
Editor
金原望弥(編集部)
大学卒業後、出版社にて月刊誌の編集に従事。その後、カカクコムに入社し、ファッションメディア「TASCLAP」を経て、「価格.comマガジン」へ。腕時計やアウトドアを担当するZ世代エディターです。
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