文房具大好きな筆者は、これまでにさまざまな商品をご紹介してきましたが、振りかえってみると日本メーカーのものが中心で、あまり海外メーカーのものをご紹介していませんでした。価格設定が高めの製品が多いということもあるのですが、多少高くてもその価格にふさわしい逸品はたくさんあります。そこで、今回は思い切ってそんな逸品をご紹介することにいたしました。
それがこちら。宇宙をイメージしたパッケージがすてきです
今回ご紹介するのは、アメリカのフィッシャー社が開発、販売する「スペースペン」。NASA(米国航空宇宙局)の厳しい検査を経て、本物の宇宙飛行士によって使用されている、文字どおり宇宙で普通に使える特殊なボールペンです。通常のボールペンは、地球の重力によってインクがボールの先へと落ちていきますが、スペースペンは内部に封入された窒素ガスの圧力によってインクがボールペン先に移っていくため、無重力状態でも使用できるわけです。逆さにしても書けますし、水中や極度の寒さ暑さ(−34〜121度)においてもスムーズに文字が書けるすぐれものなのです。また、密閉状態で特殊な粘着性の強いインクを採用しているので、インクが乾燥することなく100年以上の保管も可能とされています。
筆者が購入したのは、スペースペンを代表するフラッグシップモデルの「AG-7」。立派なケースに入っています
長さは128mm。表面はクローム仕上げで高級感があります
クリップ部分には、「Fisher AG-7」の刻印が。さすがに高級ボールペンです
芯を出すのはノック式で、本体にあるリリースボタンを押すと、芯が中に引っ込みます
ペン先を収納した状態では、ぽっかりとあいた穴が鯉の口のようでなかなかキュート
もともと、無重力の宇宙ではボールペンは使えないという事実のもと、フィッシャー社は無重力の宇宙空間でも使えるボールペンを目指し開発をスタート、巨費を投じて完成させたのが「スペースペン」なのです。開発後、フィッシャー社はNASAに「スペースペン」を使ってもらうよう依頼。NASAによる広範囲な検査の結果、ついにアポロ計画に採用されたという歴史があります。
いまでは、「スペースペン」にはさまざまなバリエーションがあり、比較的リーズナブルな価格の「キャップアクション」、キャップに付いたリングを使ってバッグなどに取り付けて持ち歩ける「バックパッカー」、ラバーグリップがポイントの「エクスプローラー」、生涯の“インク切れ新品交換保証”が付いた「インフィニウムペン」といったシリーズが展開されています。さらに、それぞれのシリーズにカラーリングやデザインが異なるさまざまなモデルがあります。なお、筆者が購入したのは「アストロノート」シリーズの「AG-7」というモデル。人類初の有人月面着陸を成し遂げた アポロ11号のクルーによって使用されたという歴史的モデルです。
ちなみにアメリカと宇宙開発を競ったソビエトでは、「スペースペン」を導入するまで、鉛筆を使っていたといわれています。まあ、都市伝説かもしれませんけどね。
適度な重量があってバランスもよいです。油性インクならではの粘着性を感じつつも、スムーズな書き味
グリップ部分も滑りにくく加工されています
真ん中あたりにネジがあるので、この部分を回転させれば分解できます
窒素ガスが充填された、一体成型、完全密閉の金属製インクカートリッジ。強い存在感を放ちます。購入時はブラックの中字(BLACK MED)のインクカートリッジがセットされていました
太字と細字も試してみたくなり、替え芯を購入
下から順番に、太字、中字、細字です。筆者的には中字が一番すっきりします(いつものことですが、文字がきたないのは「スペースペン」のせいではありません)
なお、購入した太字と細字の交換用インクカートリッジは銀色ですが、ペンにセットされていた中字のものは金色。中字のボディーは金色なのかな?
交換用には文字の太さ以外にも結構インクのカラーバリエーションが豊富なことを発見!
気になったシルバーの中字を購入してみました。こちらも金色のボディーでした。やはり、中字は金色なのかも?
色が薄いのでちょっとわかりにくいのですが、確かに銀色です
最後に、本当に水の中でも書けるのか試してみました。まずはメモ用紙を水の中に浸します
なんと、本当に字が書けました。紙さえ破れなければ何の問題もなさそうです。しばらくそのままにしておきましたが、文字がにじむこともありませんでした、スゴイ!!
この様子をムービーでもお楽しみください
過酷な条件の中で文字を書くために生まれた「スペースペン」。暗闇に囲まれた遠く離れた宇宙空間に思いをはせながら、「スペースペン」で空想科学小説を書きたい気分になった筆者でした。あくまで、気分だけですけどね♪