特別企画
FREETEL撤退&楽天継承

激しい競争が表面化した2017年、MVNO業界事件簿

大手携帯キャリアの施策に影響を与えるほどに成長した格安SIM市場。サービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)の数は753社に上り、SIMカード型MVNOサービスの契約数は1000万回線を突破した(2017年9月末時点、総務省の統計資料より)。競争の激しい格安SIMを巡っては、今年もさまざまな動きがあった。本記事では、2017年のMVNO業界で起きた大きな事件を振り返ってみたい。

数多の事業者がひしめくMVNO市場、2017年の出来事を振り返る

数多の事業者がひしめくMVNO市場、2017年の出来事を振り返る

事件その1:プラスワン・マーケティングのMVNO事業撤退と民事再生手続き開始

2017年最大のトピックスは、プラスワン・マーケティング(以下「POM」)の撤退だ。

2012年10月に設立されたPOMは、独自開発した「SAMURAI」シリーズなどのSIMフリースマートフォンを「FREETEL」ブランドのもとで販売。そのかたわらではMVNO事業にも参入し、2015年7月からは同ブランドにおいて「FREETEL SIM」の提供をスタートした。

家電量販店内のカウンターだけでなく、POMでは独自店舗の「フリーテルショップ」も展開。タレントを起用したTVコマーシャルを放映するなどの施策も功を奏してか、2017年3月末時点におけるシェアは「BIGLOBEモバイル」や「UQ mobile」をしのぐMVNO業界第5位にまで成長した(MM総研調べ)。

しかし、その陰で資金繰りが悪化。2017年9月26日、ネット通販大手の楽天がPOMに対し5億2000万円を支払うことで、MVNO事業を承継することに双方が合意したと発表。わずか1カ月あまり後の11月1日に承継が完了し、POMはMVNO事業から撤退することとなった。

MVNO市場の厳しさを実感させる再編劇として報じられたこの事件は、これで終わりではなかった。楽天による事実上のMVNO事業買収を発表した時点では端末事業の継続に意欲を見せていたPOMだが、12月4日に民事再生手続きを申し立てたと発表したのだ。

これにともない、同社が開発・販売した端末向けの補償オプションや、購入から一定期間経過後に残金を残さず機種変更ができる「とりかえ〜る」といったサービスは、利用受付を停止。10日後の12月14日にはPOMが提供する一部のサービスが終了するなど、ユーザーに少なからぬ影響を与える事態へと発展した。事業再生への道を探っていくとするPOMだが、今後の見通しは不透明だ。

プラスワン・マーケティングの民事再生手続き申し立てとともに、FREETELのオンラインストアや一部サービスの手続きページなどにアクセスできなくなっている(FREETELのWebサイトより)

事件その2:楽天のFREETEL SIM承継と携帯キャリア事業への参入表明

2つ目のトピックスは、FREETEL SIMを承継した楽天を巡る動きだ。

楽天が提供する格安SIMサービス「楽天モバイル」は、すでに多くの事業者がMVNO事業に参入していた2014年10月にサービスを開始。同年の12月には楽天のリアル店舗「楽天カフェ」において新規契約やMNP(携帯電話・PHS番号ポータビリティー)制度を用いた乗り換えの手続きに対応するなど、後発ながらも実店舗の展開にはいち早く取り組んできた。

サービス内容も徐々に拡充されてきた。2016年1月には、各通話最初の5分間が無料になる「5分かけ放題オプション(現「楽天でんわ5分かけ放題 by 楽天モバイル」)」の提供を開始し、2017年4月には時間制限がない通話定額オプション「楽天でんわ かけ放題 by 楽天モバイル」も追加。現在では、5分間の通話定額オプションをセットしたプラン「スーパーホーダイ」、家族向けの容量シェアオプション、毎月30GBまでの大容量プランなども用意する。

すでに知名度が高い「楽天」のブランド名を冠し、楽天スーパーポイントを貯めたり使ったりできることなどもあって楽天モバイルは人気を集め、メインで利用する格安SIMのトップに選ばれている(2017年9月、MMD研究所調べ)。2017年8月には契約数が100万回線を突破し、前述のようにFREETEL SIMを承継したことで現在の回線数は140万を超え、個人向けのMVNOサービスとしてのシェアも急速に拡大している。

「業績に与える影響は軽微」とするFREETEL SIMの買収は楽天の強さを印象付ける出来事となったが、より大きなインパクトを与えたのは12月14日に発表された携帯キャリア事業への参入表明だ。総務省が2018年3月までに割り当てを予定している1.7GHz帯および3.4GHz帯を取得し、2019年中のサービス開始と1500万ユーザーの獲得を目指すと発表したのだ。

大手携帯キャリアから帯域を購入してネットワークに相乗りするMVNO事業とは違い、携帯キャリア事業では基地局の設置や維持管理などに莫大な費用が必要となる。また、割り当てられる予定の周波数帯にはいわゆる「プラチナバンド」が含まれないため、つながりやすさにも不安がある。参入が実現した場合に楽天モバイルがどう扱われるのかなど未だ明らかではない部分もあるだけに、第4のキャリアを目指し歩み始めた楽天の動きに注目だ。

MVNOでは勝ち組の楽天も、携帯キャリアとして成功するかは未知数だ(楽天モバイルのWebサイトより)

MVNOでは勝ち組の楽天も、携帯キャリアとして成功するかは未知数だ(楽天モバイルのWebサイトより)

事件その3:大手携帯キャリアが格安SIM対抗プランの提供を開始

3つ目のトピックスは、大手携帯キャリアによる割安な料金プランの提供開始だ。いまや全体で1つの携帯キャリアに相当するほどの規模にまで成長した格安SIM市場の影響は大きく、大手携帯キャリアも格安SIMを意識した料金プランを打ち出し始めた。

最初に動いたのはNTTドコモだ。2017年5月、新たな基本プランとなる「シンプルプラン」の提供を開始。当初は家族間で通信容量をシェアする「シェアパック」専用のプランだったが、2017年12月27日からは単独契約向けの「ウルトラデータLパック」(20GB/月、月額6,000円。税別、以下同)および「ウルトラデータLLパック」(30GB/月、月額8,000円)とも組み合わせられるようになった。

従来の基本プランは時間制限なしの通話定額プラン「カケホーダイプラン」と、5分間通話定額プランの「カケホーダイライトプラン」の2種類。スマホ向けの月額料金はカケホーダイプラン(スマホ/タブ)が2,700円、カケホーダイライトプラン(スマホ/タブ)が1,700円で、自分から電話をかけないユーザーにとっては割高だった。

だが、シンプルプランでは通話料が20円/30秒の従量制になっているかわりに、月額料金が980円と安く抑えられている。同時期に始まった端末購入者向けの割引サービス「docomo with」(※1)を組み合わせることで、シェアプランの子回線がシンプルプランを契約した場合、オプション料金などを除く月額料金は「280円+指定機種の端末代金」まで安くなる。

特定の機種を購入すれば、という条件付きではあるが、一部の家族だけ格安SIMに乗り換えるよりも、ドコモに留まったほうが家族全体の通信コストを抑えられるケースも出てきたのだ。

次に動いたのはauだ。2017年7月、使った通信量に応じて月額料金が5段階に変化する「auピタットプラン」と、毎月20GBおよび30GBの大容量が選べるプラン「auフラットプラン」の提供を開始した。

auピタットプランとauフラットプランは通話料金の違いで3タイプに分かれており、最も安いのは従量制通話料金(20円/30秒)の「シンプル」だ。「auピタットプラン(シンプル)」の月額料金は2,980円(その月の通信量が1GB以内だった場合)で、「ビッグニュースキャンペーン」(※2)が適用されると、最初の1年間は格安SIMに匹敵する月額1,980円まで安くなる。

※1…指定の機種を購入すると月額料金が毎月1,500円割り引かれる。割引は指定外の機種を購入するまで無期限に継続
※2…2018年5月31日までに新プランを初めて契約したユーザーの月額料金を、1年に渡り毎月1,000円ずつ割り引く

月額料金が5段階にスライドする「auピタットプラン」と大容量従量制の「auフラットプラン」は、提供開始から3カ月で200万回線を突破している(auのWebサイトより)

いっぽう、ソフトバンクは大容量プランで格安SIMに対抗。2017年9月に登場した「ウルトラギガモンスター」(月額7,000円)の通信容量は毎月50GBで、5分間通話定額プランの「スマ放題ライト」(月額1,700円)と組み合わせた場合の月額料金は9,000円だ。格安SIMで毎月50GBのプランを契約するよりも安く、通信量が多いアクティブなユーザーに向く。

低廉な料金プランでは格安SIMに対抗していないソフトバンクだが、その傘下には“サブブランド”とも呼ばれる「ワイモバイル」を抱えている。1つの店舗でソフトバンクとワイモバイルの双方を扱う合同店も増えており、ソフトバンクグループにおける低価格路線はワイモバイルが担う形となっている。

事件その4:国民生活センターによる格安スマホの注意喚起

最後のトピックスは、今年の春にあった国民生活センターの注意喚起だ。

独立行政法人国民生活センターは2017年4月13日、「こんなはずじゃなかったのに! “格安スマホ”のトラブル−料金だけではなく、サービス内容や手続き方法も確認しましょう−」と題して、格安スマホの契約に関する注意喚起を行った。

国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた格安スマホ(音声通話付きサービスのみ。SIMカードだけ契約する格安SIMも含む)の契約をめぐるトラブルの相談は、2014年度が139件だったのに対し、2015年度は380件、2016年度は1045件まで急増したという。

消費生活センターに寄せられた格安スマホの相談件数は、2014年度から急激に増加している(国民生活センターの資料より作成)

具体的な相談事例をチェックすると、その原因は大きく2つに分けられる。

原因の1つは「サービス」に由来するものだ。大手携帯キャリアを長く使っていると、キャリアメール、通話定額プラン、全国に展開された店舗網における手厚いサポートといったサービスの存在は、当たり前のように感じられる。

ところが、格安スマホや格安SIMを提供するMVNOは大手携帯キャリアとは事業者が異なるので、提供されているサービスの内容も違う。MVNOではキャリアメールが使えなかったり、実店舗がないために主なサポートが電話窓口に限られたりするのだ。

そのため、大手携帯キャリアそのままの感覚で格安スマホや格安SIMに乗り換えると、「格安スマホを契約したらキャリアメールが使えず、相手にメールが届かなくなってしまった」「修理中に代替機を借りられなかった」といったトラブルに発展してしまうのだ。

もう1つの原因は「端末」に由来する。格安SIMでは、大手携帯キャリアで購入した端末をそのまま利用できる場合がある。ただし、前提条件としてSIMロックの解除が必要だったり、使いたい格安SIMのネットワークに端末が対応していたりしなければならない。

自分が持っている端末が格安SIMで使えるかどうかは、各事業者が公開している動作確認済み端末のリストで確認できる。だが、相談事例には「事前にMVNOのサポート窓口で使えることを確認した上で契約したのに、実際はSIMロックの解除が必要だった」というトラブルも見受けられた。

また、インターネットで購入した中古端末を格安SIMで使っていたが、故障したため修理を依頼したところ、大手携帯キャリアから購入した人物による支払いが滞っており、精算するまで修理してもらえないという相談も寄せられたという。MVNOとは直接関係のないトラブルだが、中古端末にはこのようなリスクもあり得る。

こうした相談事例にもとづく注意喚起を受けて、MVNO事業者からは改めて大手携帯キャリアとの違いが案内されていた。もちろん、ユーザーの側にも、乗り換えたい格安SIMではどのようなサービスが提供されており、いま使っている携帯キャリアとは何が違うのかを、契約前に把握することが求められる。

まとめ:2017年は競争の激しさを実感した1年

POMの動向に象徴されるように、2017年はMVNO市場の競争がいかに激しいかを実感する出来事が多かった。

実は、POMのMVNO撤退が大きく報じられていた11月の末には、かつて使い放題プランが人気を集めたNTTぷららの格安SIM「ぷららモバイルLTE」もサービスを終了している。今年前半には「NifMo」を提供するニフティがノジマの、「BIGLOBEモバイル」を提供するBIGLOBEがKDDIのそれぞれ子会社になるなど、昨年から続く再編の動きが表面化した1年だった。

冒頭でも触れたように、現在のMVNO市場は1000万回線を巡って700社以上が争っている状況。大手携帯キャリアの格安SIM対抗プランが登場してからは、全体的な契約数の伸び率にも陰りが見え始めている。2018年は、今年以上に衝撃的な事件が待っているのかもしれない。

【関連情報】
・格安SIMカード比較 MVNO主要27社のプラン情報

松村武宏

松村武宏

信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。

関連記事
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る