2016年夏モデルとして、NTTドコモおよびauから5月19日に登場した「Galaxy S7 edge」。すでに、ハードウェアの概要や処理性能についてのレビューはお届けしているが、今回はさらに1週間、NTTドコモ版の「SC-02H」を使い、気になるバッテリーの持続性や、サムスンが注力するカメラ機能を中心にチェックしてみた。
凝ったケースに収まる「Galaxy S7 edge」からは、サムスンの意気込みが感じられる。すでに高い評価を獲得しつつある、今夏の最注目モデルだ
「Galaxy S7 edge」のバッテリーは、容量3,600mAhという大容量。昨年モデル「Galaxy S6 edge」の2,600mAhと比較すると、約1.4倍という大幅な容量アップとなる。その結果、カタログスペック上の連続通話時間は約1260分(VoLTE)、連続待受時間は約420時間となった。「Galaxy S6 edge」ではそれぞれ約950分、約400時間だったので、いずれも大きく伸びていることがわかる。
なお、「Galaxy S7 edge」のカタログスペックには、スマートフォンのバッテリー指標として、NTTドコモとKDDIが共同で作った「電池持ち時間」という指標が記載されている。この「電池持ち時間」は、平均的なスマートフォンの利用パターンに基づいたバッテリーの持続時間を計測したもので、NTTドコモが以前に掲載していた「実使用時間」と考え方は近い。カタログ上では、「Galaxy S6 edge SC-02H」の電池持ち時間は、約100時間となっており、平均的な利用パターンであれば4日以上バッテリーが持続することになる。
そんな、「Galaxy S7 edge」だが、1週間使用した際に行った充電は4回。そのうちもっとも短かったのは、ソフトウェアのアップデートやベンチマークテストをフルに使った場合で約23時間。もっとも長かったのは、持ち歩きが多く、長時間使う機会が少なかったときで、64時間以上もバッテリーが持続した。最長で2日半ほどバッテリーが持った計算で、これだけバッテリーに余裕があれば、一泊の旅行くらいなら充電器なしでも十分いけそうだ。
検証中のバッテリーの消費と充電の推移を示したグラフ。最短で約23時間、最長では64時間以上バッテリーが持続した
また、「Galaxy S7 edge」では、Android 6.0に備わる新しいバッテリー制御機能「Doze(ドーズ)」が利用できる。「Doze」は、待機中のアプリの通信や通知などを制限することで、不要なバッテリー消費を抑える機能。この「Doze」の効果だが、スリープ時におけるバッテリーの消費は、12時間で3〜5%のレベルに抑えられた。なお、「Doze」は、初期設定でオンになっており、ほとんどすべてのアプリが対象になっているため、誰でもすぐに利用できる。
また、サムスン独自の省電力機能として、3日以上使用していないアプリを省電力設定に切り替える「アプリを省電力化」も搭載されている。スマートフォンを使い始めてから3日以上経過した時点で、使っていないアプリがリストアップされ、簡単に省電力設定に切り替えられる。これを使えば、ほとんど使わないプリインストールアプリが知らないうちにバッテリーを浪費するといったことを抑えることができる。
このように、「Galaxy S7 edge」のバッテリーの持続性は、総じて満足度の高いものだ。価格.comのユーザーレビュー「バッテリー」の項目を見ても、カテゴリー平均が3.55のところ、4.26点(2016年5月27日時点)という高評価を得ている。こうしたユーザーの実感からも、本機のバッテリーの持続性のよさをうかがうことができる。
3日以上使用していないアプリをピックアップし、省電力設定に切り替えられる「アプリを省電力化」。こちらも基本的に設定不要で使える
昨年のスマートフォン夏モデルでは、搭載されるオクタコアCPU「Snapdragon 810」や「Exynos 7420」の影響で、「Galaxy S6 edge」を含むハイエンドモデルが軒並み高熱を発するという結果になった。本機は、「Snapdragon 810」の後継となるクアッドコアCPU「Snapdragon 820」を搭載している。この「Snapdragon 820」は、処理性能向上とともに発熱対策にもかなり注力されていることが事前に発表されていたが、果たして実際のところはどうなのだろうか?
下のグラフは、本機のを使用した5日間のCPU温度の変化を示している。CPUやGPUにかかる負荷の大きさで知られるゲームアプリ「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(以下、デレステ)を、30分ほど遊んだ際に記録した36.1℃が最高で、負荷の少ないTwitterやLINE、電子書籍の閲覧程度であれば、33℃前後の発熱で推移した。
なお、「Snapdragon 810」を搭載する「Nexus 6P」の温度変化グラフもあわせて掲載しているが、こちらは最高温度で44.0℃を記録、Twitterや電子書籍閲覧でも、大体36〜38度で推移している。このように「Galaxy S7 edge」と「Nexus 6P」ではCPUの温度に大きな差があり、「Galaxy S7 edge」では発熱がかなり抑えられていることがわかる。
「Galaxy S7 edge」のボディは、樹脂系素材よりも格段に熱伝導率が高いアルミ合金やガラスでできており、ボディ表面で廃熱するため、体感上はほかのスマートフォンよりも熱を感じやすい。ただ、1週間使った感じでは、熱くてもてないというような過度の発熱は感じられなかった。
「Galaxy S7 edge」を使用した5日間におけるCPUの温度推移グラフ。最高温度は「デレステ」を30分遊んだ場合の36.1℃。温度はハイエンドCPUとしてはかなり少ない
こちらは「Snapdragon 810」を搭載する「Nexus 6P」のCPU温度推移グラフ。最高温度は44℃を記録したが、40度を超えることもひんぱんに見られる
「Galaxy S7 edge」で1時間ほどWebコンテンツや電子書籍などを場合の閲覧した場合のCPU温度変化。35度を上回ることはなく、持つのが不快になるほどの発熱はなかった
次は、カメラの性能を見てみよう。メインカメラは約1220万画素の裏面照射型CMOSイメージセンサーに、F値1.7の明るいレンズを組み合わせている。なお、このイメージセンサーは、一部のデジタル一眼レフカメラなどで使われるデュアルピクセルテクノロジーを採用しており、すべてのピクセルで位相差オートフォーカスが可能だ。そのため、画面のどこをタッチしても素早く正確にピントが合い、暗い場所でも迷いが少ない。
ユニークな静止画撮影機能として、撮影後にピント位置を「短焦点」「遠焦点」「パンフォーカス」の3つから選べる「選択フォーカス」機能がある。こうした機能はすでに発売されている一部のスマートフォンでも実現しているものだが、「選択フォーカス」は、なかなか自然な仕上がりで、積極的に活用したくなった。
動画撮影機能では、4K/30Pの撮影にも対応。このほか、スローモーション撮影の「スローモーション」、早送り撮影の「ハイパープラス」、4つの動画を1画面にまとめる「動画コラージュ」、撮影した動画をリアルタイムでYouTubeにアップロードできる「ライブブロードキャスト」といった機能を備えている。
デュアルピクセルの裏面照射型CMOSイメージセンサーに、F1.7の明るいレンズを組み合わせたメインカメラ。高感度撮影に注力したカメラだ
サブカメラは約500万画素。ディスプレイ自体をフラッシュとして活用できるユニークな機能を備える
静止画および動画の撮影モードは、写真の10種類がプリインストールされる。このほかアプリで機能を追加することもできる
ピントの合う位置を撮影後に選んで変更できる「選択フォーカス」。左写真が手前の花にピントが、右写真は背景にピントがそれぞれ合っている。仕上がりが自然で、一眼レフカメラのような結果を得られる
マニュアル撮影の「プロ」モードでは、全体のトーン、オートフォーカス、ホワイトバランス、ISO感度、シャッタースピード、+2.0〜-2.0の範囲でのEV補正が行える
フラッシュなしで夜景を手持ち撮影。ISO感度は1250でシャッタースピードは1/9秒だ。粒子の粗さは確かにあるが、手ブレはほとんどない
フラッシュなしの手持ち撮影を行った。ISO感度は400、シャッタースピードは1/10秒だが、明るくクリアな画質で夜景が撮影できた
Androidスマートフォン全体の完成度が向上した昨今だが、より重視されているのがバッテリーの持続性だ。この点、「Galaxy S7 edge」は、3,600mAhという大容量バッテリーと省電力化された最新のハイエンドCPU「Snapdragon 820」を搭載し、さらには「Doze」や「アプリを省電力化」といったアプリ側での制御技術の効果もあって、バッテリーの持続性能は今までの「Galaxy S」シリーズよりも格段に向上している。
カメラ機能は、高感度撮影に強い点と、画面全体で高精度な位相差AFが使える点が特徴だ。そのため、ピント合わせが速く、そして正確に行える。使い勝手も良好で、今までのスマートフォンでは失敗したような暗めの部屋での撮影も「Galaxy S7 edge」ならラクに行えそうだ。
処理性能、バッテリー、機能性、そしてカメラ機能のいずれもが高性能な「Galaxy S7 edge」は、噂どおり「欠点が見当たらない」完成度の高いスマートフォンといえるだろう。