暑さや湿気で食材が傷みやすくなる夏場は、生ゴミのニオイも気になります。キッチンの流しにそのままにしておくと、ニオイだけでなく、小バエが発生する原因になったりもしますし……。そんな時に役立つのが、生ゴミ処理機。今回は、価格.comの「生ごみ処理機 人気売れ筋ランキング」1位(2022年8月26日時点)のパナソニック「MS-N53XD」を使い、その実力をチェックするとともに、生ゴミ処理機の有用性を確かめてみました。
家庭用生ごみ処理機にはいくつかのタイプがあり、温風で乾燥させる「乾燥式」と微生物が分解する「バイオ式」、そして、「乾燥式」と「バイオ式」を組み合わせた「ハイブリッド式」に大別されます。目的や設置場所などによって適するタイプは家庭ごとに異なりますが、比較的コンパクトなサイズで、家の中で手軽に使うなら乾燥式がいいでしょう。今回紹介するMS-N53XDも乾燥式。温風で生ゴミに含まれる水分を蒸発させるだけでなく、本体底に装備された羽根でかくはんさせることで、投入した生ゴミを効率よく乾燥させ、乾燥したゴミを粉砕して減容します。
1回に処理できる生ゴミの最大量は約2kgと大容量ながら、サイズは268(幅)×365(奥行)×550(高さ)mmと細身。ちょっとした空きスペースに設定できます
本体内には「処理容器」が入っており、この中に生ゴミを投入します。処理容器の底にあるのは「かくはん羽根」。かくはん羽根を回転させることで生ゴミがムラなく乾燥し、処理した生ゴミが粉砕されて容積が少なくなります
ふたの裏にヒーターを搭載。ファンも装備しており、ここから出る温風で生ゴミに含まれる水分を蒸発させ、乾燥させます。また、高温で乾燥させるため、除菌効果もあるのだそう
また、一般的に生ゴミ処理機は、製品によって度合いは異なるものの処理中にニオイが発生します。MS-N53XDはそのニオイを軽減するため、熱を加えることでニオイの成分を二酸化炭素と水(水蒸気)に分解する「プラチナパラジウム触媒」を搭載。さらに、プラチナパラジウム触媒をスパイラル形状にすることで、ニオイ成分が触媒の搭載された部分(脱臭ユニット)を通過する時間を長くし、より高い脱臭効果を発揮するようにしています。
外からは見えませんが、本体後方にプラチナパラジウム触媒を搭載。処理中に発生したニオイはプラチナパラジウム触媒のある部分(脱臭ユニット)を通過し、脱臭された空気が本体背面から排気されます
そして、MS-N53XDには、生ゴミを処理するモードが「標準モード」と「ソフト乾燥モード」の2種類用意されているのも特徴。「標準モード」は約130℃の温風で素早く乾燥させることができ、標準モードよりも低温で乾燥させる「ソフト乾燥モード」は処理の時間は長くかかるものの、ニオイが強いものを処理したいときに最適なのだそう。また、MS-N53XDで処理した生ゴミは肥料としても使えるうえ、標準モードとソフト乾燥モードで効果の異なる有機質肥料が作れます(詳細は後述)。
操作部に標準モードを選択するスイッチがありませんが、電源をオンにすると標準モードが選択された状態となります。ソフト乾燥モードで使いたいときは「ソフト乾燥」スイッチを押せば切り替え可能
なお、生ゴミの種類や量、水切りの状態で処理時間は若干変動しますが、約400g〜700gの生ゴミを処理する場合、ソフト乾燥モードは標準モードに比べ1時間ほど長く時間がかかります。
運転は自動制御しますが、安全のため、最長約15時間で停止します
基本構造がわかったところで、MS-N53XDで生ゴミを処理してみましょう。手順としては、生ゴミをMS-N53XDに入れてスイッチを押すだけですが、生ゴミであれば何でも処理できるわけではありません。軽く説明しておくと、処理できる生ゴミは、ごはんや麺類、肉類、魚類、野菜くず、茶がらなど。アルコール分を含む酒かすやアルコール漬けの果物、多量のかんきつ類の皮は火災や引火のおそれがあるので禁止されています。また、牛・豚・鶏などの骨や多量の卵の殻、硬い貝殻や多量のあさり・しじみといった、生ゴミであっても硬いものも処理容器が破損する恐れがあるので避けたほうがいいとのこと。当然ながら、ラップや袋、容器のシールやふた、スチロールトレー、輪ゴム、木竹製品、動物のフンなど、生ゴミでないものは処理できません。
ということで、取扱説明書を確認しながら生ゴミを1kg用意しました。これを標準モードで1度に処理します。
野菜、果物の皮、魚の骨など、1kgの生ゴミを用意。生ゴミは水切りし、大きな生ゴミは5cm以下にカットして処理すると、乾燥状態や粉砕度がよくなるそうです
生ゴミをMS-N53XDに投入。高さがあるので、しゃがまずに入れられて使い勝手はいい印象です
1回で最大2kgの生ゴミを処理できすが、キャベツなどの葉物はかさがあるので1kgでいっぱいの量になりました
「入」スイッチを押すと電源がオンになり、標準モードで運転が始まります
生ゴミの処理は乾燥工程→冷却工程という流れで進み、その後、自動で運転が停止します。なので、操作部のランプが消灯するまで放置しておけばOK。
温風で乾燥させるため、本体が熱くならないか心配でしたが、手で触ってもほんのり温かい程度した
乾燥工程では本体内に温風が放出され、かくはん羽根が回転しますが、その運転音はそれほど気になりませんでした。カタログ値では通常運転時が42dB、かくはん時が44dBなので、図書館と同じくらいの騒音レベルです。また、本体背面の排気口から排気が出ますが、プラチナパラジウム触媒のおかげなのか、生ゴミのニオイはほぼ感じませんでした
3時間50分で処理完了。取扱説明書に記されている目安時間より50分長くかかりましたが、水分量の多い野菜などの生ゴミが多かったからでしょう。そして、写真を見てください! 処理容器の8分目くらいまであった生ゴミが、乾燥して縮み、さらに粉砕されたことで、かくはん羽根が見えるほどかさが減りました
運転が終了し、温度が十分に下がったことを確認したら、処理容器を取り出します。乾燥処理したゴミは、一般可燃ゴミと一緒に捨てることが可能
処理容器を持った際、とても軽かったので、乾燥処理した生ゴミの重量を計量してみました。スタート時は1kgだった生ゴミが、77gに! 923g分の水分が蒸発したようです
触った感じは、水分が完全に抜け、枯れ葉のようにカサカサした状態。もとの状態が判別できないほど細かくなっています
ニオイは香ばしさのみで、乾燥処理してもニオイが残りそうだと心配だったバナナやたまねぎ、魚のニオイはまったくしません
ちなみに、ソフト乾燥モードでも行うことは同じ。電源をオンにしたあとソフト乾燥モードを選択し、運転が完了するまで放置でOKです。
標準モードで処理した際に準備したのと同じ種類と量の生ゴミを用意し、ソフト乾燥モードで処理してみたところ、低温でゆっくり乾燥させるため、処理時間は5時間20分かかりました。色が若干薄く、フワフワした感じですが、かさの減り具合は標準モードで処理したゴミとほぼ同じ
触感も、標準モードで処理した生ゴミより少しやわらかい印象。水分の残り具合が違うのかも? と気になったので計量してみると、ソフト乾燥モードで処理した生ゴミの重量のほうが3g重い80gでした。若干、水分の残留量が多いようです
乾燥処理した生ゴミは有機質肥料として使え、標準モードとソフト乾燥モードで効果が異なると前述しましたが、その詳細を紹介しておきましょう。
そもそも、乾燥させた生ゴミを肥料とするためには、微生物に分解(窒素化)してもらわなければなりません。しかし、一般的に乾燥式の生ゴミ処理機では高温で処理されるため、たんぱく質の変化(褐色化)が起こり、微生物が分解するのにも時間がかかってしまい、肥料として使用できるまでに1〜3か月かかります。その点、低温で乾燥させるソフト乾燥モードはタンパク質の変性を抑えることが可能。微生物が早く分解(窒素化)してくれるので、即、肥料として使えるのです。ただ、標準モードで乾燥処理した生ゴミは、すぐに肥料としての効果は発揮できないものの、その分、肥料として使用できるまでの熟成期間があるため、肥料としての効能が持続しやすいのだそう。しっかり時間をかけて土作りをしたいときには標準モードで、すぐに肥料として使いたいときにはソフト乾燥モードで、というように使い分けられます。
乾燥処理した生ゴミを有機質肥料として使うときには、土によく混ぜながら埋めると栄養のあるいい土ができるそうです
お手入れに関しては、乾燥処理した生ゴミを捨てたあと、本体などの汚れ具合をチェックし、必要であれば行うくらいでいいようです。処理容器やかくはん羽根に乾燥処理した生ゴミが付着していても運転に支障はないとのことですが、ヒーターが装着されている部分に付着したゴミは、長く快適に使うためにも取り除いたほうがいいでしょう。
生ゴミを入れる処理容器は、取りだしてお湯または水で洗浄できます
処理容器を取りだした本体内(乾燥室)は、水で濡らして軽く絞った布などで拭き取ってキレイにできます
ヒーターの手前には「ヒーターカバー」が装着されています。この部分の汚れは、古くなった歯ブラシなどで取り除きましょう。その際、乾燥室にゴミが落ちないように新聞紙などでカバーしておきます
ヒーターカバー内にゴミが付着した場合、ヒーターカバーを取り外してお手入れします
今回、1kgの生ゴミを一気に処理しましたが、想像していた以上に容積が減って驚きました。水分が蒸発して重量も軽くなるので、処理した生ゴミを処分するのも楽ちん。また、使用する前に乾燥式の生ゴミ処理機について調べていたところ、処理中は特有のニオイが出るといろいろなWebサイトに書かれていて心配していたのですが、今回試した限り、ニオイは気になりませんでした。ふたをきちんと閉めておけば、乾燥処理した香ばしいニオイはほぼ漏れ出さないので、普通に生ゴミを流しに置いておくより間違いなく快適に過ごせます。
そして、生ゴミはまとめてではなく、1日目に出た生ゴミを乾燥処理し、2日目は処理したものの上に生ゴミを投入して乾燥処理するというように毎日処理することも可能。都度処理するほうが生ゴミの腐敗が防げるので、実際はこの方法で使う人が多そう。ちなみに、1日約400gの生ゴミの量であれば、約2週間は連続して処理できるそうです。
その日に出た生ゴミはその日の内に処理すれば、ふたを開けたときに生ゴミ臭が漂うような事態も防げます
電気代については、メーカーの公式サイトの情報によると、たとえば、約400gの量の生ゴミを処理する場合、標準モードでは約16円、ソフト乾燥モードでは約19円になるとのこと(※)。また、運転を開始する時間を設定する予約タイマー機能も搭載しているので、電気料金が安い夜間の時間帯に運転することもできます。
※電気代は、記事掲載時点でのメーカーの公式サイトの情報に記載のもの。電気代の変動により、今後、変わる可能性があります
予約運転は3時間後と6時間後で選択可能
価格は74,900円(2022年8月26日時点の価格.com最安価格/税込)と、初期費用はある程度かかりますが、すぐれた脱臭効果や2つの処理モードを備えているなど、性能は高い印象。価格.comの「生ごみ処理機 人気売れ筋ランキング」1位にランクインしているうえ、価格.comのユーザー評価も5点満点中4.63点と高評価なので、安心して選べる製品と言えしょう。
少数精鋭の編集プロダクション「雪か企画」に勤務。趣味は料理で、トマト煮込みハンバーグが得意料理。休日はプロジェクターでホームシアターを楽しんでいます。