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リモコンの進化形へ! 家電操作の歴史から見る「スマートスピーカー」

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ソニーやパナソニックなどの日本メーカーも参入し、「スマートスピーカー」の世界が本格的に盛り上がり始めている。AI(人工知能)と音声認識技術の搭載により、とにかく“できること”が多いスマートスピーカーだが、なかでも利便性の面から期待されるのが家電との連携だ。この“家電操作”の切り口から、スマートスピーカーの最新事情と未来への期待をまとめていこう。

はたして日本でも本格普及するか? 今回のテーマは「スマートスピーカー」

はたして日本でも本格普及するか? 今回のテーマは「スマートスピーカー」

スマートスピーカーの登場で、家電操作が変わる?

昨今の家電はますます高機能化し、快適さを求めて進化している。その快適さは、「リモコン」が鍵を握っているといっても過言ではない。なぜならば、リモコンは家電とヒトとの接点だからだ。リモコンの正式名称は「リモート・コントロール」または「リモート・コマンダー」とも言われ、直訳すると「遠隔指令機」になる。手でボタンを押す「リモコン」だけでなく、話し言葉で操作する音声方式や、スマホのアプリによる操作も含め、遠隔で操作できるものなら何でも「リモコン」と呼べる。

なお、近年ではリモコン対応の家電が標準的になっているので、家庭内にリモコンの数が増えて混乱しがちでもある。筆者宅でも数えてみると全部で20個程度のリモコンが存在し、それらを使い分けることすら面倒くさく感じることもある。それに紛失や電池切れでイライラする場面も少なくない。

では、我々の生活とは切り離せない家電を、より快適に使いこなすための「リモコン」のあり方とは? その答えのひとつとして有力なのが、家電と連携できる「スマートスピーカー」である。

家電リモコンの昔と今

スマートスピーカーに期待したい利便性を考えるうえで、家電操作の歴史=リモコンの歴史についてざっとおさらいしておこう。家電におけるリモコンの起源は1950年代のテレビで、“有線方式”で始まった。筆者も子供の頃に体験したが、ケーブルの届く範囲でしか操作できないものの、視聴位置から動くことなく、寝転がったままテレビのチャンネルを切り替えられるというのは、当時としては画期的な快適さだった。

その後、家電操作はより自由で快適なワイヤレスの時代へ。リモコン→家電のワイヤレス通信には、長く“赤外線方式”(IR)が用いられてきた。比較的低コストで消費電力も少なく、誤動作もまずない赤外線リモコンは、今日にいたるまで40年以上も使われている。デメリットは、リモコンの向きや障害物によって赤外線が機器に届かず、操作が「カラ振り」することくらいだろう。そこで10年近く前に登場したのが、“無線変調方式”(RF)。障害物があっても通信可能で、指向性もないためリモコンの向きに関係なく操作ができる。操作コマンドの認識性能も高く、より操作時の快適性がアップした。

テレビを筆頭に、家電の操作アイテムとして当たり前になっているワイヤレスリモコン

テレビを筆頭に、家電の操作アイテムとして当たり前になっているワイヤレスリモコン

そして近年では、スマホやWi-Fiルーターの普及にともない、家電を操作できる“アプリ”も浸透し始めた。加えて、世帯あたりのリモコン保有数が増えた状況に対応し、“複数の家電リモコンの機能を1台の機器に集約”できる製品も登場している。RATOC「REX-WFIREX1」は、家庭内にある複数のリモコン操作を、Wi-Fi経由でスマホから行えるようにする変換器のような端末。ソニー「HUIS」は、複数のリモコンの機能を登録してオリジナルのリモコンが作れるという、スマホサイズの新しいデバイスだ。

RATOC「REX-WFIREX1」は、Wi-Fi接続に対応する学習リモコン。さまざまな家電リモコンが登録されており、Wi-Fiネットワークを通じてスマホの専用アプリから操作できる。Wi-Fi接続なので、外出先からも家の中の家電操作が行える。テレビやエアコンの電源を切り忘れて外出したときなどに便利

ソニー「HUIS」は、テレビやエアコン、オーディオ機器など、家庭内にあるさまざまな家電リモコンの機能を1台に統合できる端末。スマホサイズのコンパクトなボディに、大型の電子ペーパーディスプレイを備えている。複数の家電のリモコンから必要なボタンをピックアップし、ディスプレイに自由にレイアウトして、自分だけのオリジナルのリモコンを作れる

もうひとつ、新しい方式としては、“音声操作”もある。具体的にはテレビ製品で、本体に内蔵のマイク、またはマイク内蔵リモコンを通じて音声操作ができるモデルが数年前から登場している。ただし現状では、音声の認識率がパーフェクトとは言えず、また、操作にまつわるルールを使用者がある程度把握する必要があるなど、反対に従来型のリモコンよりわずらわしく感じるケースも少なくない。AIの活用により、話し言葉で自然な操作ができるよう改善されつつあるが、操作対象はテレビのみ、しかも比較的高価な製品に限られるなど、本格普及には課題もある。

スマートスピーカーは“AIと音声操作による新しいリモコン”

そして最近、家電以上に話題の“家電的存在”といっても過言ではないのが「スマートスピーカー」だ。以前に本連載でも紹介したが、スマートスピーカーの特徴は「AI技術」と「音声認識機能」を搭載すること。インターネットに接続し、クラウド上のAIシステムと連携することで、ヒトの話し言葉を高度に理解してくれる。我々の言葉を理解し、音声で返事もするスマートスピーカーは、これからの家電操作の“切り札”とも考えられる存在なのだ。

我々はスマートスピーカーに“話しかける”ことで、さまざまなネットサービスを利用したり、家中の家電を快適に操作したりすることが可能になる。たとえば、「テレビをつけて」と言うとテレビの電源がオンになったり、「音楽をかけて」と言うとスピーカーから音楽が流れるといったように、スマートスピーカーを中心にして家中の家電をコントロールできる。操作コマンドの切り口は“会話”。いわば未来のリモコン的に使えるというわけだ。(以下は、Amazonのスマートスピーカー「Amazon Echo」の公式動画/英語版)

スマートスピーカーはネット上の情報検索もお手のモノで、検索した情報を音声で読み上げてくれたりもする。最新のリモコンが「スピーカー」である必然性がこれだ。ユーザーからすると、“文字を読む”という作業からも解放されることになる。いろいろなことを頼んだり尋ねたりできる秘書のような存在と考えると理解しやすいだろう。

従来の「音声操作リモコン」と新しい「AIを活用したスマートスピーカー」の違いは、言葉(音声)の認識範囲が広いところ。従来の音声リモコンは機械的で、「ボタンを押す」という行為を「音声」に置き換えただけなので、原則、機器のルールに従って決まった言葉を使ったり、しゃべる順序を守らなければ、操作コマンドとして認識してくれない。しかしそこに、クラウド上で日々学習を続けるAIが加わると、話し言葉に“揺らぎ”があってもそれを踏まえて操作を認識してくれる。リモコン側が“人間的な忖度”をしてくれることが期待できるのだ。

AIはユーザーが使えば使うほど学習して賢くなるので、最初は意思疎通が難しくても、赤ちゃんが大人に成長するように能力を増していく。また、技術がクラウドベースなので、大勢の利用者の履歴をビッグデータとして扱い、そこからさまざまな言語ケースを学び、急速に賢くなることも期待できる。将来的には、長年連れ添った夫婦のように「いつものアレを……」と、スマートスピーカーにモゴモゴ話しかけただけで家電を操作できるようになるかもしれない。

スマートスピーカーは、海外ではすでに複数の製品が発売されている。導入したユーザーの反応もおおむね好評のようで、日本への導入も大いに期待される。……とはいえ、家電との連携操作を行うためには、操作対象となる機器側も相応の機能を備えている必要がある。一足飛びに未来的な生活が手に入るわけではないが、現時点では音楽再生と相性がよく、用途の大きな柱となっている。

話題のスマートスピーカー製品まとめ

ここからは、各社から発表されているスマートスピーカー製品の代表的ラインアップをまとめていこう。近日中に日本での発売がアナウンスされているものから、国外で発表され、日本展開が期待されているものも含めてご紹介する。

【1】 Amazon Echo

「Amazon Echo」は、ネット通販大手のAmazonが手がけるスマートスピーカー。この分野の先駆者的存在だ。独自のAIシステム「Amazon Alexa」による強力な音声認識能力を備えており、「Alexa」と話しかけることで音声操作が可能。多種多様なネットサービスの利用や、各種家電および自動車の音声操作も可能なシステムを構築している。本体には7つのマイクを搭載し、騒音の多い室内環境でも対応できる高い音声認識能力を確保。価格は約180USドル。その派生品として、コンパクトで低価格な「Amazon Dot」と「Amazon Tap」もラインアップする。

Alexa対応スピーカーをオンキヨーと東芝が開発!

Alexaはオープンプラットフォームのため、サードパーティー(第三者)が対応製品やサービスを自由に続々と開発できるのもポイントだ。日本メーカーからもAlexa対応スピーカーとして、オンキヨーが「VC-FLX1」、東芝が「TH-GW10」を開発し、米国での展開予定を発表したばかり。ただし、いずれも日本への導入は明言されていない。

IFA2017会場ではAmazon Alexaのブースが出展され、サードパーティー向けデバイスなども展示されていた。Alexa対応のスマートスピーカーは今後も各社から続々と登場しそうだ

こちらもIFA2017会場にて。ドイツのハイエンドAV家電ブランド「LOEWE」のブースでは、Alexa対応のテレビを展示していた

東芝が北米での展開を発表している「TH-GW10」

東芝が北米での展開を発表しているAlexa対応スマートスピーカー「TH-GW10」

【2】Google Home

上述のAmazon Echoを手がけたのがネット通販界の巨人Amazonだったのに対し、IT界の巨人Googleが発表したスマートスピーカーが「Google Home」だ。いわばAmazon Echoの“対抗馬”である。こちらはGoogle独自のAIシステム「Google Assistant」に対応しており、「OK,Google」と話しかけることで音声操作が行える。Googleが蓄積してきた検索ノウハウを生かし、たとえば日常生活でよく利用する「目的地までの経路案内機能」なども実用的に使えるなど、海外では評価が高い。販売価格は109USドルと比較的手軽な設定。日本でも2017年10月に発売予定であることが発表され、話題になっている。

ソニーやパナソニックもGoogle Assistant対応スピーカーを開発!

Google Assistantも、上述のAlexaと同じくオープンプラットフォームで、サードパーティーに開発環境が開示されている。Google Assistant対応のスマートスピーカーは日本メーカーからも続々登場予定で、ソニーの「LF-S50G」やパナソニックの「SC-GA10」、オンキヨーの「VC-GX30」などが発表されたばかりだ。オンキヨーはAlexaとGoogle Assistantそれぞれに対応する製品を開発したこととなる。なお、いずれも日本展開については、2017年9月27日時点で未発表。

オンキヨー「VC-GX30」。IFA2017会場にて筆者撮影

オンキヨーのGoogle Assistant対応スマートスピーカー「VC-GX30」。IFA2017会場にて筆者撮影

こちらはソニーのGoogle Assistant対応スマートスピーカー「LF-S50G」

こちらはソニーのGoogle Assistant対応スマートスピーカー「LF-S50G」

【3】HomePod

「HomePod」は、アップルが開発したオリジナルブランドのスマートスピーカー。そのAIシステムには、iPhoneですでに利用者の多い「Siri」を採用し、iOS 11を搭載したiPhone 5s以降の端末と連携する。また、独自の先進的なデジタル技術を駆使した高音質再生に注力したことも特徴だ。価格は349USドルで、2017年12月よりオーストラリア、英国、米国で先行発売される。グローバル市場での発売は2018年予定とのことで、もう少し待たなくてはならない。

【4】WAVE

無料通信アプリ「LINE」でおなじみのLINE社が開発したスマートスピーカーが「WAVE」だ。日本初のAI搭載スマートスピーカーとしても話題になった。同社の独自AIシステム「Clova」(クローバ)を搭載していることが特徴。2017年8月に、音楽再生を中心に機能を絞った“先行版”が日本で限定販売された。アップデートによって音声でテレビ操作が可能になるなど、音声認識技術を活用した機能も少しずつ追加されていっており、今秋にも“正式版”が日本でリリース予定だ。

さいごに

スマートスピーカーの登場で、家電は「直接操作するモノ」から、意思を伝えれば自動制御できる時代に進化するかもしれない。AIシステムを活用し、ユーザーの詳細な情報を組み合わせれば、利用者それぞれに最適な家電の自動コントロールが実現できそうだが、実際に“阿吽(あうん)の呼吸”でスムーズな操作が実現するのかは興味深いポイント。それに、はたして日本でも本格的に普及するかどうか? まだまだ今後の動向に注目していきたい。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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