音声通話だけでなく、情報のやりとりをしたり、知らないことを調べたり、モノを購入したり、映像や音楽を楽しんだりと、1台あればさまざまなことに活用できるスマートフォン。いまや、普段の生活に欠かせないほどの存在となりつつあるのは事実だが、そのいっぽうで、情報を調べたり映像を楽しんだりする場合などは画面サイズの大きいタブレットのほうが便利で扱いやすかったりする。音楽再生もしかり。専用DAP(デジタルオーディオプレーヤー)のほうが、何かと有利な点が多い。
まず第一に、音がいい。さまざまな機能性を詰め込まなければならないスマートフォンに対して、音質を最優先できるDAPは、当然ながら格段に音をよくできるし、同時にコストパフォーマンスも優位となる。屋外でBluetoothイヤホンを使い環境音楽的に楽しむ、という使い方だったらスマートフォンでも十分役割を果たしてくれるが、音楽に集中して存分に楽しみたい、という人にはやはり専用DAPの音質が絶対オススメだ。
第二に、使い勝手のよさが挙げられる。スマートフォンの音楽再生アプリも使い勝手は悪くないが、音楽再生“のみ”に特化した専用DAPは、タッチパネルはもとより、ボリュームなどのハードウェアキー含めて音楽再生のために作り込まれているので、使い勝手は格段によい。
さらに、ハイレゾ再生に関してはスマートフォンだとアプリを追加したりいろいろな設定を行ってあげたり、それでもDSD形式はネイティブ再生できなかったりと、かなり詳しい人でないと使いこなせない部分が出てくる。さまざまなハイレゾ音源を手軽にいい音で再生したい、という人には、やはり専用DAPがオススメだ。
最後に、バッテリーの持続時間も見逃せない。スマートフォンで音楽を聴くと多少なり消費電力が高まるため、いざ電話したいときにバッテリー切れになってしまうことも考えられる。モバイルバッテリーを持ち歩いて対処する方法もあるが、音楽プレーヤーをスマートフォンと分けることでこういった心配は激減するし、逆に、ハイレゾ対応DAPもモバイルバッテリーから充電できるため、2台使いはとても便利だ。
このように、音楽再生に関しては何かと有利なDAPだが、昨年1年間に登場した最新モデルは、なかなかに魅力的な製品が多かった。そのなかから、音質や使い勝手のよさはもとより、コストパフォーマンスのよさや製品的な魅力なども踏まえ“イチオシ!”と思えるの製品を選びだしてみた。2万円以下、5万円以下、10万円以下、10万円以上と、それぞれの価格帯にも分けてイチオシを選び出しているので、ぜひとも充実音楽ライフを送るための参考にしてもらえたら嬉しい。
目次
・2万円以下のイチオシハイレゾ対応DAP
・5万円以下のイチオシハイレゾ対応DAP
・10万円以下のイチオシハイレゾ対応DAP
・10万円以上のイチオシハイレゾ対応DAP
・【番外編1】無差別級モデル
・【番外編2】超弩級モデル
・【番外編3】2018年に野村ケンジがもっとも使ったDAP
はっきりいって、この価格帯はウォークマンAシリーズの牙城といってもいい価格帯となっている。しかしながら、そこに新たな製品が飛び込んできた。それがSHANLING「M0」だ。
中国のオーディオメーカーSHANLINGが発売したエントリーモデルに位置するDAPの「M0」は、40(幅)×45(高さ)13.5(奥行)mmという類のない小型軽量ボディを持ち、いっぽうでLDACコーデック対応のBluetooth接続やワイヤレスレシーバー機能(スマートフォン内の音楽をM0出楽しむことができる)など、多彩な機能性を持ち合わせている。それでいて、音質もなかなか。ESS社製「Sabre ES9218P」DACなどが採用されており、自然な音色と厚みのある歌声を楽しませてくれる。
次点はソニー「ウォークマンA50」シリーズを挙げたい。この価格帯の雄はさらなる進化を果たし、操作性やデザインのコンセプトはほぼ変わらず、それでいて音質はさらに向上していて、ハイレゾ音源のよさを充分に楽しめるようになった。
DAPのなかで、もっとも充実しているのがこの5万円以下のクラス。ゆえに、1台を選ぼうと思っても、それぞれに特徴があってそれぞれに魅力的な部分を持ち合わせているので、なかなか絞りきれない。ということで、この価格帯はベスト製品を1台選びつつ、次点候補を3つ挙げさせていただくことにした。
ベストワン、として推挙したいのがaudio-opusの「Opus#1S」だ。こちら、カーナビなどのシステム開発を行っているThe Bit社の第一弾DAP「OPUS#1」の後継モデルで、DACにシーラスロジック製「CS43198」を2基搭載し、2.5mmバランス出力端子も採用するなど、音質の面で格段に進化している。実際、そのサウンドはなかなか。解像感がしっかり確保されていることに加え、ピッタリとフォーカスの定まったクリアなサウンドを聴かせてくれる。いっぽうで、歌声やチェロの音などにはしっかりとした艶やかさがあり、聴いていて楽しい。この価格帯としては格別といえる良質なサウンドだ。
次点としては、まずFiiOの最新モデル「M9」を挙げたい。こちら、音質はもとより、最新モデルならではの多機能が素晴らしい。apt X HDやLDACに加え、次世代Bluetoothとして期待されるHWA(LHDC)コーデックにも対応していることに加え、レシーバー機能も搭載。スマートフォン内の音源を「M9」でも楽しむことができる。Wi-Fi&DLNA接続に対応し、パソコンやNAS内の音楽ファイルを再生することもできる。この多機能さは、大いに魅力的だ。
扱いやすさでは、groovers Japanの「ACTIVO CT10」も捨てがたい。可愛らしい小柄なボディを持ちつつ、タッチパネルやダイヤル式のボリュームなど操作性も良好。もちろん、音質も推挙するに相応しい良質さを持ち合わせている。手軽にハイレゾ音源のいい音を楽しみたい、という人にはもってこいの1台といえる。
もうひとつ、パイオニア「private XDP-20」も挙げたい。こちら、ESS社製「ES9018C2M」DACと「SABRE 9601K」アンプを2基ずつ搭載してデュアルDAC構成&2.5mmバランス出力を実現したほか、上位機種譲りのバランス出力選択(「BTL駆動」&「ACG(アクティブコントロールGND)駆動」や「ロックレンジアジャスト」等のデジタルコントロール機能も搭載されている。こと音質に関して、徹底した追及を行ったモデルとなっている。この価格帯のなかで、個性が光る製品だ。
10万円以下の価格帯も、かなり充実した価格帯となっている。こちらも1台を選び出すのには苦労したが、iriver Astell&Kern「A&norma SR15」イチオシとさせていただきたい。
こちら、ハイレゾDAPの雄Astell&Kernブランドの最新モデルにして、スタンダード位に位置するモデル。とはいえ、音質面でまったく手抜かりはなく、シーラスロジック社製「CS43198」DACをデュアルで搭載し、DSD 2.8MHz/1bitのネイティブ再生にも対応。Astell&Kernブランドとしてはお馴染みとなった2.5mmバランス出力端子も搭載されている。どちらかというと小柄なボディは、タッチパネル画面が反時計回りに少しだけ回転している個性的なデザインを採用している。こういった唯一無二のスタイルは、Astell&Kernならではといえる。
そのサウンドは、ナチュラル志向でボーカル重視といったイメージ。女性ボーカルは低域の付帯音がしっかりと感じられるちょっとハスキーな歌声、男性ボーカルはリアルさを強く感じる艶やかな歌声を楽しませてくれる。特に男性ボーカル楽曲をよく聴く人にオススメしたい。
次点としては、ソニー「ウォークマンZX300G」を挙げたい。こちら、4.4mmバランス出力端子を搭載する「ウォークマンZX300」の小変更モデルで、内蔵ストレージが128GBにアップデートされている。その他の部分はほとんど変わりないが、上級クラスのヘッドホンもしっかり駆動してくれる4.4mmバランス出力端子の高い実力は健在で、屋外でも気軽に(特にソニー製)ヘッドホンを使いたい、という人にはオススメだ。