レビュー

家電のリモコンを束ねるスマートスピーカー パナソニック「コエリモ SC-GA1」の実用度は?

パナソニックのスマートスピーカー第2弾登場

スマートスピーカーといえば、筒型もしくはまんじゅう型で、口頭で命令すれば天気予報や最新ニュースを声で知らせてくれて、ときには話し相手になってくれる、というところが世間の認識だろう。性質上、認識精度の高い音声アシスタント機能との連携が必要とされるため、ここ日本ではGoogleの「Googleアシスタント」とAmazonの「Alexa」、LINEの「Clova」の3種類で占められており、Appleの「Siri」を採用した製品が発売されるかどうか、という状況だ。

そこに登場したパナソニックの「コエリモ(KOEREMO) SC-GA1」。型番に“1”は付くが、同社製スマートスピーカーとしては2018年5月発売の「SC-GA10」に続く第2弾であり、待望の"あの機能"が搭載されている。あの機能とは、家電に付属の赤外線リモコンをエミュレートする機能(以下、赤外線リモコン機能)のことだ。

コエリモの愛称を持つパナソニックのスマートスピーカー第2弾モデル「SC-GA1」

コエリモの愛称を持つパナソニックのスマートスピーカー第2弾モデル「SC-GA1」

赤外線リモコン機能をスマートスピーカー経由で利用する試みは、すでに多くの企業によりなされており、いくつか製品も発売されている。しかし、大半は"赤外線ユニット搭載ネットワーク端末"であり、同じLANに接続された他社製のスマートスピーカーと連携することで機能を実現する。Clovaには「Clova WAVE」という赤外線リモコン機能を持つスマートスピーカーが存在するものの(Clova Friendsもオプションで赤外線リモコン機能を追加可能)、赤外線の送信を行うIRブラスターが内蔵された製品はGoogleアシスタント/Amazon Alexaの陣営に見当たらない。

コエリモはプラットフォームにGoogleアシスタントを採用、一般的なスマートスピーカーとしての機能に加え、テレビとエアコン、照明機器の操作に対応する赤外線リモコン機能を搭載する。同機能では、特定ジャンル/メーカーの製品についてリモコンプリセット値を提供するものとなっており、実際にリモコンのボタンを押して役割を覚えさせる学習機能には対応しない点は注意が必要だ。

100mm四方のボディにスマートスピーカー機能と赤外線送信機能を内蔵

コエリモのパッケージを開けると、100mm四方、高さ54mm、重さ370gという四角い本体が現れる。曲線が使われていないためかやや大ぶりに感じたが、Google Home miniと並べてみるとあまり変わらない。

コエリモとGoogle Home miniと並べたところ。大きさは思ったほど大きくない

コエリモとGoogle Home miniと並べたところ。大きさは思ったほど大きくない

天面は、操作パネルを兼ねる。電源オン/オフや音量調整、Googleアシスタントなど利用頻度の高いボタンに加え、Bluetoothのペアリングを開始するボタンまで配置されている。手探りで操作する場面への配慮か、再生/一時停止ボタンに小さな突起があることはうれしい。

100mm四方の箱型筐体を採用するコエリモ。天面は操作パネルを兼ねており、各種ボタンが並ぶ

100mm四方の箱型筐体を採用するコエリモ。天面は操作パネルを兼ねており、各種ボタンが並ぶ

コエリモのセットアップは、スマートフォンで「Google Home」アプリを利用して行う。デバイスを追加する操作を行いコエリモが検出され、効果音が聞こえればとりあえずOK。あとは「リビング」や「書斎」といった場所を選択し、Googleアシスタントの設定を行えばいい。ここまでは、ほかのGoogle系スマートスピーカーと同様だ。

少し手間取るのは、家電製品の登録。今回のテストでは、スピーカー付きLEDシーリングライト「AIR PANEL LED THE SOUND HH-XCD1288A」をボイスコマンドの操作対象に選んだが、この製品をコエリモで利用するためには「あかリモ」アプリに登録しなければならず、さらに「Google Home」アプリ経由で命令するには、クラブパナソニック(製品の利用者登録などを行うためのWebサイト)に登録しておかなければならない。購入品は必ずユーザ登録するというまめな人はともかく、そうでない人はハマりそうなポイントだ。

音楽用スピーカーとしてコエリモを見ると、いくつか不満はあるものの、機能の豊富さと柔軟性でそれをカバーする。5cm径のフルレンジユニットは本体底に下向きに取り付けられ、向かい合わせの台座がディフューザーの役割を果たし音を拡散する。音を部屋全体に拡げようとした場合、スピーカーは上向き/天面取り付けのほうがベターなように思えるが、これは操作性を優先するというこの製品のデザインポリシーなのだろう。

フルレンジユニットは下向きに取り付けられており、台座部分で音を拡散する仕組み

フルレンジユニットは下向きに取り付けられており、台座部分で音を拡散する仕組み

音楽再生機能は、無償配布の再生アプリ「Panasonic Music Control」によりかなり充実。スマートフォン上の楽曲を再生できるだけでなく、NAS上の音源を再生するネットワークプレイヤーとしても利用できる。MP3やAACはもちろん、ロスレスコーデック(FLAC/ALAC)、最大192kHz/24bitのハイレゾ音源もサポート。DSDの再生には対応しないものの、フォーマットの豊富さという意味ではこれで十分だろう。イコライザー機能も用意されているので、もう少し音の傾向を調整したいというときに便利だ。

音楽再生機能は無料で提供されている「Panasonic Music Control」というアプリを利用する

音楽再生機能は無料で提供されている「Panasonic Music Control」というアプリを利用する

イコライザー機能で音質を細かくチューニングすることも可能

イコライザー機能で音質を細かくチューニングすることも可能

NASに保存したハイレゾ音源をネットワーク再生することもできる

NASに保存したハイレゾ音源をネットワーク再生することもできる

もちろん、ボイスコマンドでの音楽再生にも対応。Google Homeアプリ側での設定が必要になるが、SpotifyやAWA、YouTube Musicといったストリーミングサービスに対応しているため、気楽に利用できる。普通のBluetoothスピーカーとしても使えるので、Google Homeがサポートしないサービスも楽しめる。

スマートスピーカーが「リモコンを束ねる」メリット

コエリモの赤外線リモコン機能は、テレビとエアコン、照明機器をサポートしている。コエリモのリモコン機能に対応する製品一覧を見てもらえばわかるが、対象メーカーや製品はある程度限られているものの、パナソニック以外の製品もほぼ機能差なく利用できる点はメリットといえるだろう。

このGoogleアシスタントに任せてしまうタイプの赤外線リモコン機能は、あらかじめクラウドに端末情報を登録しておかなければならない。その手順はメーカーによりまちまちなため、初めてこの手の製品を利用するユーザは戸惑うに違いない。この問題は、Googleアシスタントという汎用プラットフォームを採用したうえでは避けられないが、付属の説明書にそのあたりの情報がもう少しわかりやすく整理されていたら、と感じてしまう。

とはいえ、セットアップを完了させてしまえば、以降は何も考えずに使えるのがGoogleアシスタントのいいところ。「ねえGoogle、テレビをつけて」でテレビは点くし、「ねえGoogle、エアコンをつけて」でエアコンはオンになる。コエリモに限った話ではないが、スマートスピーカー/家電コントローラ導入のハードルがもっと下がれば、このメリットの恩恵を受けられる層はかなり多いに違いない。

照明機器に関しては、Bluetooth搭載シリーズであれば、オン/オフ以外のコントロールがいろいろできる。「AIR PANEL LED THE SOUND」の場合、「ねえGoogle、だんらんを開始して」といえば、LEDの明るさが控えめになり、屋久島で録音されたという水のせせらぎが再生される。ほかにも「くつろぎ」や「勉強」、「パーティー」といった明るさと音楽の組み合わせが用意されており、なかなか便利に使える。このような使い方は、試す前には少し先の未来のような印象を受けていたが、実際に使い始めるとすぐ体に馴染んでしまい、当たり前のようにボイスコマンドで操作するようになってしまった。

スピーカー一体型のLED照明「AIR PANEL LED THE SOUND」

スピーカー一体型のLED照明「AIR PANEL LED THE SOUND」

明るさと音楽がセットになった「シーン」を声で命令できる(画面は「あかリモ」アプリ)

明るさと音楽がセットになった「シーン」を声で命令できる(画面は「あかリモ」アプリ)

気になった点としては、AIR PANEL LED THE SOUNDなど照明器具で音楽再生を行う場合、ワイヤレス送信機(Bluetooth/A2DPのトランスミッター)をコエリモに接続しなければならないことが挙げられる。トランスミッターには電源(USB)を用意し、コエリモと3.5mm端子のラインケーブルでつながなければならないため、設置場所が悩ましいことになってしまうのだ。多少高価になったとしても、Bluetooth/A2DPのトランスミッターは内蔵すべきだったと考えるが、いかがだろう。

AIR PANEL LED THE SOUNDで音楽を再生するには、コエリモにBluetoothトランスミッターを接続しなければならない

これまでスマートスピーカーといえば、ボイスコマンドを受け付けるという基本機能に絞った製品か、音に振った(音質重視系)製品のどちらかだったが、コエリモはそこに「家電のリモコンを束ねる」という役割が追加された。Googleが提供するプラットフォームを利用するためにパナソニック独自のフィーチャーを盛り込みにくい部分も感じたが、スマートスピーカーの進化の方向性としては順当であり、総合家電メーカーが手がける意義は大きい。「赤外線リモコン対応機器とメーカーについては2019年夏以降順次追加アップデート予定」という情報もあるため、今後の展開に期待しよう。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る