レビュー

Technicsのアナログターンテーブル「SL-1500C」「SL-1200MK7」「SL-1200GR」を聴き比べてみた

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SL-1200MK7

続いて、「SL-1200MK7」を試聴しよう。

こちら、DJ系ユーザーにとっては待望の、新SL-1200シリーズのなかでもド本命といえるモデル。モーターに関しては、これまでとは変わらず独自開発のコアレス・ダイレクトドライブ・モーターを採用しているが、2008年発表の「SL-1200MK6」を上回るトルク性能を実現している。スペックや写真を見る限り、「SL-1500C」とほぼ同じグレードのものが採用されているようだ。

Technics「SL-1200MK7」

Technics「SL-1200MK7」

また、シャーシも先代から一新され、「SL-1500C」に近いアルミダイキャストとABS+ガラス素材による2層構造となっている。トーンアームは、Technics伝統のスタティックバランス型/S字ユニバーサルタイプを採用し、トーンアームパイプにはアルミ素材が使われている。こちらは、随所の改善によって「SL-1200MK6」よりも高い読み取り精度と針飛びのしにくさを実現しているという。

そのほかの機能に関しては、デジタル式の回転制御を採用することで±8%または±16%の範囲でピッチ調節が可能となり、また、プラッター下のディップスイッチによって、ブレーキ設定(4タイプ)、トルク設定(4タイプ)、78rpm回転の有効・無効、逆回転機能の有効・無効、LEDの発光色選択(ブルー/レッド)も行えるようになっている。きめ細やかな設定項目が用意されているのは、うれしいかぎりだ。

LEDイルミネーション機能のコントロール専用スイッチも装備。イルミネーションカラーは、ブルーとレッドの2色から選べる

ピッチコントロールは±8%または±16%の範囲で調節可能

ピッチコントロールは±8%または±16%の範囲で調節可能

背面の入力端子は非常にシンプル。電源ケーブルが着脱式になったのも地味にうれしいポイントだ

背面の入力端子は非常にシンプル。電源ケーブルが着脱式になったのも地味にうれしいポイントだ

さて、実際のサウンドを確認してみよう。今回は、DJユースには配慮せず、シンプルに音質だけをチェックさせてもらった。なお、カートリッジに関しては「SL-1500C」付属のオルトフォン「2M Red」を使用し、フォノイコライザーはiFi audio「iPhono2」を使用した。

iFi audioのフォノイコライザー「iPhono2」とケンブリッジ・オーディオのプリメインアンプ「CXA80」を組み合わせて試聴

とてもダイレクト感の高い、とてもピュアに感じる音色。聴感上のSN感がよく、細かい表現までしっかりと伝わってくるし、特に抑揚表現の切れがよい。湿度の低い南国の青空のように、明瞭度の高い清々しいサウンドだ。おかげで、スティングとアース・ウィンド&ファイアーの2曲がとても生き生きとした、躍動感あふれるサウンドに感じられた。

スティングはちょっとハスキーな、とても魅力的な歌声を聴かせてくれたし、アース・ウィンド&ファイアーはドラムとベースの演奏がとてもダイレクトに感じられ、グルーヴ感あふれる演奏を楽しむことができた。カートリッジ選び、別体となるフォノイコライザー選びやその調整など、「SL-1500C」に比べると大幅に手がかかることになるが、それであっても、このストレートでピュアな音は捨てがたい。ホームオーディオ用プレーヤーとしても、大いに魅力的なサウンドをもつ製品といえる。

SL-1200GR

最後に、今回の音質比較用のために用意した「SL-1200GR」についても紹介していこう。こちらの製品、2017年に発売されたモデルで、高級モデル「SL-1200G」のノウハウを多数投入したモデル。今回試聴した他のモデルと同じく独自開発のコアレス・ダイレクトドライブ・モーターを採用しているが、シャーシはアルミダイキャストとBMC(バルク・モールディング・コンパウンド)を一体化した2層構造となり、プラッターも約2.5kgの重量タイプが採用されている。

Technics「SL-1200GR」

Technics「SL-1200GR」

「SL-1200GR」の見た目は「SL-1500C」に近いが、プラッターなどを比べてみると投入されている物量が大きく違うのがよくわかる

「SL-1200MK7」同様、カートリッジは付属せず、別途用意する必要がる

「SL-1200MK7」同様、カートリッジは付属せず、別途用意する必要がる

こちらのサウンドは、何よりも解像感の高さが特徴的。「メイドインアビス」は楽器の細やかな表現、音色の特徴までしっかりと伝わってくるし、ボーカルも熱気あふれる歌声に感じられる。こと音質に関しては、先の2台に対してアドバンテージを持つ製品となっている。

とはいえ、ダイレクト感の高さ、メリハリのはっきりした音だったら「SL-1200MK7」のほうがアドバンテージを持っていたし、思い通りの音が出るまで、多少の時間がかかったのも事実だ。少なくともアナログレコード初心者は「SL-1500C」が一番のおすすめだし、手を伸ばしても「SL-1200MK7」までがよさそう。実力は持ち合わせているが、使い手の実力を問われる製品なのかもしれない。

「SL-1200MK7」を試聴している様子

「SL-1200MK7」を試聴している様子

まとめ

ここまで3台のTechnics製ダイレクトドライブターンテーブルシステムを比較試聴させてもらったが、想像していた以上に音質も使い勝手も違っていて、大変興味深かった。特に、「SL-1500C」はアナログレコードプレーヤー初心者から手軽に楽しみたい人まで、幅広くお勧めできるパッケージングの巧みさに驚かされた。そのいっぽうで、音質、設定の多彩さで大いに魅力的だったのが「SL-1200MK7」だ。正直、こちらは仕事用のリファレンス機器として、1台導入しようか、という気持ちにまでなっている。

いずれにしろ、どの製品もブランド力だけでない、十分な実力を持ち合わせている良質な製品だった。皆さんには「SL-1500C」や「SL-1200MK7」など、こういった価格帯の製品に手を伸ばして、アナログレコードならではの心地よいサウンドを、存分に楽しんでいただけたらと思う。

野村ケンジ
Writer
野村ケンジ
ヘッドホンをメインに幅広いジャンルで活躍するジャーナリスト。レビュー記事はもとより、VGPライフスタイル審査委員、ヘッドフォンブック・アワード審査員などの役割を通して、年間300製品以上のポータブルオーディオ新製品を試聴。また、YouTube「ノムケンLabチャンネル」やレインボータウンFM「ふわっと」など、幅広いメディアでの活動を行っている。
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遠山俊介(編集部)
Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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