ウォークマン「A100」シリーズ
こちらも、外観のイメージは先代を踏襲しているが、タッチパネル画面が大きくなり、前面の四隅まで広がったため、随分と印象が変わっている。そのほかにも、右サイドの操作ボタンが大型化され「ZX500」シリーズと共通イメージのものになっていたり、microSDメモリーカードスロットが下辺側に移動していたりと、まったくの別物といえるくらいデザインに手が加えられている。
何よりも、随分上質なイメージになったと思う。実際、価格も上へシフトしているので、「A100」シリーズは「A50」シリーズを上級グレードへと進化させたもの、ととらえるのが妥当だろう。個人的には、フロントパネルからWマークがなくなってしまった(充電LEDが配置されているため)のが残念ではあるが、それも些末な話だろう。
「A100」シリーズと「A50」シリーズを比べたところ。こちらも「ZX500」シリーズと「ZX300」シリーズの時同様に、サイズはほぼ同じに収まっている
右サイドの物理ボタンは、「ZX500」シリーズに近いデザインに変更されている
本体下部には、USB Type-C端子とmicroSDメモリーカードスロットを配置
いっぽう、ストリーミングウォークマンというコンセプトを実現するため、「A100」シリーズにもAndroid OSが採用されている。バージョンは9.0で、Google Playストアにもしっかり対応しているなど、基本的な部分は「ZX500」シリーズとそん色ない内容となっている。さすがにこのサイズだとAndroidは扱いにくいかも、と想像していたが、実機を触ってみるとまったくそんなことはなく、ストレスなく扱うことができた。
ベースとなるAndroid OSは「ZX500」シリーズと同じバージョン9だが、「A100」シリーズは専用のノイズキャンセリングイヤホンへの対応を想定し、ノイズキャンセリング機能をコントロールできる機能がOSに統合されている
音質面では、ハードウェアのてこ入れが随所に行われている。アルミ製削り出しキャビネットを変わらず採用しているが、加えて大型の高音質抵抗「Fine Sound Register」やフィルムコンデンサーなど、上位モデルに使用されていた高音質パーツが新たに投入されている。
結果のサウンドについては、満足のひとこと。「A50」シリーズもしっとりとした落ち着きのある好印象のサウンドだったが、「A100」シリーズはそれに元気さが加わったイメージ。MYTH & ROIDを聴くと、メリハリのよいパワフルな演奏が楽しめた。女性ボーカルの一歩前に出てきてくれたかのような、存在感の強さも好ましい。YURiKAの声も高域の倍音がしっかりと感じ取られるためか、随分と伸びやかだ。正直、この音質であればハイレゾ音源もそのよさを存分に楽しむことができる。これがあれば充分なのでは、そう思える優秀機だ。
1点、弱点があるとすればバッテリーの持続時間だ。有線接続時のFLAC(96kHz/24bit)再生で約21時間(ノイキャンON時は約16時間)と、「A50」シリーズに比べてかなり短くなってしまっている。これはAndroid OS採用による影響だろうが、視点を変えると、「A50」シリーズが望外にロングライフだっただけで、他社製DAPと比較すると、約21時間という持続時間はなかなかに優秀だったりする。このあたり、旧モデルのオーナー以外はそれほど不満を感じないはずだ。
ここまで、使い勝手と音質を中心に新ウォークマンの特徴を紹介してきたが、「ZX500」シリーズは扱いやすさと良音質が巧みに両立したモデルへと、「A100」シリーズは幅広いユーザーが安心して使える王道リファレンス機へと進化していた。どちらを選んでも、大いに満足できる製品に仕上がっているのは確かだ。新しいウォークマンで、ハイレゾ音源だけでなくストリーム音源も、いい音で楽しんで欲しい。
ちなみに、筆者は「ZX500」シリーズの導入を検討中だ。現在所有の「ZX300」シリーズはバランス出力の音のよさとコンパクトなサイズ、加えてBluetoothワイヤレス接続の安定性が好みだったが、これらに加えて「ZX500」シリーズではアンバランス出力の音質も向上し、ますます便利で楽しい製品へとなってくれたため。もし導入したら、改めてどこかで使いこなしの記事を書かせていただけたらと思う。