Amazonのディスプレイ付きスマートスピーカー「Amazon Echo Show 8」
Amazonはえらい。すばらしい。なぜか? 新スター・トレック(TNG)どころかシリーズ全体での正当続編 – あえてそう言い切ってしまおう – 「Star Trek: Picard」を配信してくれたからだ。しかも北米とほぼ同じタイミングで、TNGのときと同じ声優で日本語吹き替えを用意してくれる入念さ。まさか現世でTNGの続きを見られるとは。できもバッチリ、製作のCBSもあわせてひたすら感謝だ。
そんなAmazonの動画配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」(通称アマプラ)を見る手段といえば、テレビかスマホ。PCでも視聴できるが、仕事道具は遊びに使いたくないし、そもそも音がイマイチだったりする。
Amazonプライム・ビデオを気軽に見られるちょうどいいデバイスを探していたところ、この「Amazon Echo Show 8」をレビューする話が舞い込んだ。音声アシスタント「Amazon Alexa」に対応するスマート○○括りのデバイスということは承知しているが、果たして。Amazonプライム・ビデオ視聴用端末を念頭に置きつつ、使ってみることにした。
背面は濃いグレーのファブリック調素材で覆われており、質感はなかなか
背面にはACアダプターの差込口とメンテナンス用USB端子、音声出力用3.5mm端子が並ぶ
Echo Showは、スマートスピーカー「Echo」シリーズに含まれるディスプレイ付き端末。Echo Show(10.1型)、Echo Show 5(5.5型)、Echo Show 8(8型)と画面サイズ別に3つのモデルがあり、今回レビューするEcho Show 8は大中小のうち「中」という位置付けだ。
Alexaの機能そのものはディスプレイなしモデルと同じだが、ディスプレイを利用した機能も用意されている。「Alexa字幕サポート」はそのひとつで、Alexaが話す内容を文字で表示するもの。ディスプレイにはタッチパネルが採用されており、音声での指示だけでなくタッチ操作できることもポイントだ。
通常、Alexaはウェイクワードにコマンドやスキル名を続けて命令するもの。天気を知りたければ「アレクサ、天気を教えて」、最新ニュースを聞きたければ「アレクサ、ニュースは」などと口頭で伝えればいい。しかし、読み上げた内容を聞き逃してしまうと、もう一度聞き直すことが難しく、ニュースの残り時間も見当がつかないが、Echo Showは見出しや要約を表示してくれるので理解しやすく、タッチディスプレイだから再生/停止や頭出しもかんたん。よく使う機能をショートカット化してタッチで呼び出す「タップでAlexa」も用意されているので、しゃべることすら面倒なときにありがたい。
ニュースによっては、音声だけでなく文字が表示されスクロールなど操作できることも
なにより異なるのは、エンターテインメント性。Echo Showには「Amazonプライム・ビデオ」と「ひかりTV」、「Paravi」という3つの映像アプリ(スキル)がプリインストールされており、インターネット接続環境があればすぐに楽しめる。特にPrime Videoの場合、Echo Show導入前からアカウントを有しているユーザは多いはずで、ユーザアカウントの入力なしにいきなり映画やドラマを再生できる。感覚的には"箱を開けたら2分でアマプラ"といったところだ。
Amazonプライム・ビデオ以外にも「ひかりTV」と「Paravi」のスキルがプリインストールされている
写真保管サービス「Amazon Photos」とも連動しており、クラウドに保存した写真/アルバムを壁紙として表示できる。「アレクサ、フォトアルバムを見せて」と命令すればアルバムが一覧され、そこから先はタッチスクリーンを操作しながら表示したい写真を選べるので、すべて口頭で伝えるスマートスピーカーのまどろっこしさがない。
Echo Show 8の解像度は1280×800とフルHDに満たないが、8インチという画面サイズもあり粗さは気にならない。そもそもPrime Videoの解像度は視聴する端末により決定され、ほとんどのスマートフォンはSD/480pかHD/720pで再生される事実を踏まえると、スマートフォン並みかそれ以上の画素数ということになる。なお、どの品質で配信されているかはプログレスバー左下に表示されるが、Echo Show 8ではしっかり「HD(高画質)」と表示された。
Amazonプライム・ビデオは720pのHD品質で受信できた
Amazonプライム・ビデオの起動は「アレクサ、ウォッチリストを見せて」などのボイスコマンドを使うか、画面右端を左方向へフリックすると現れるクイックアクセスメニューで「ビデオ」をタップ、そこでAmazonプライム・ビデオボタンをタップすればOK。
視聴履歴はAmazonアカウントに紐付けられるため、テレビやスマートフォンで見た続きを再生できる。ウォッチリストや「次に観る」の内容もそのまま、リビングの大型テレビを家族に取られてしまい、続きは別の場所で...というときも、Echo Showとともに移動すればいい。
サウンド面もしっかり。2.0インチ/10Wスピーカーを2基搭載のステレオ構成で、さらにパッシブラジエーターを搭載することで低音域をカバーする。お気に入りのAmazonオリジナルハードボイルド刑事ドラマ「BOSCH」のテーマソングで確認したところ、スマートフォン内蔵スピーカーではさっぱり聞こえないベースの音がしっかり出ていた。出力10Wと余裕があるため、画面サイズにそぐわないほど音量を上げることもできる。
音楽ストリーミングサービスはAmazon Musicのほか、Spotify、Apple Music、TuneIn、AWA、dヒッツ、うたパスをサポート。ラジオチューナーは搭載されていないが、サイマルラジオサービス「radiko」のスキルをインストールすれば聴けるので(GUIは非対応のため音声コマンドで選局)、ラジオ代わりに利用することも。
もっとも相性がいいのは、いうまでもなく「Amazon Music」。iOS/Android OSアプリで再生する端末にEcho Showを選べば、直接Echo Showがインターネットに接続しストリーミング再生してくれる。スマートフォンからBluetoothやWi-Fiで音を飛ばさないぶん音質的に有利で、Echo Showのタッチパネルを使い選曲することも。もちろん、口頭でAlexaに命令してもいい。このフレキシブルな操作性が、Echo Showというデバイス最大の美点だ。
Amazon Musicなど音楽ストリーミングも楽しめる
イコライザーで音質を調整することも
Amazon Musicはスマートフォンアプリで選曲/操作できる
1か月ほどEcho Showと暮らしてみたが、Amazonプライム・ビデオ端末としての使いやすさはかなり優秀。ややレスポンスが鈍い・スクロールやフリックでもたつくところがあるため、つらつらと番組ザッピングするのはややストレスを感じるが、ふだんテレビかスマホでウォッチリストを作成していれば問題なし。視野角も広めで、ベッドに寝そべりながら見ても色味は大きく崩れない。パッシブラジエーター搭載により低音域もしっかり出るので、アクション映画の迫力もある。
音楽鑑賞にも使える。ハイエンドのオーディオシステムと比べるわけにはいかないが、部屋を音楽で満たしたい、料理中に音楽を聞きたい、といったBGM用途には必要にしてじゅうぶん。選曲はボイスコマンドとタッチパネル、スマートフォンアプリどれでもOKという柔軟性も◎だ。
なにより、1万円台半ばという価格。これでもコストパフォーマンスは相当なものだが、ときどき実施されるセール期間中には1万円を切ることもあるという無双ぶりには、ただ圧倒されてしまう。スマートスピーカーのよさはわかるけど段々使わなくなった、でもアマプラビューアとして使えるのならまた検討しようかな、ステイホームでアマプラ端末がもう1台あっていいかも、そう考える方には比類なきお買い得ガジェットとなること請け合いだ。
IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。