レビュー

目新しさに欠けるが音は着実に進化! CHORD Mojo 2は遊べる1台

2015年に国内販売がスタートした英国Chord Electronics社製DAC内蔵ポータブルアンプ「Mojo」は、持ち運びに適したコンパクトサイズと上位機種ゆずりの良質サウンドによって、大いに人気を集めるベストセラー製品となった。そんな「Mojo」がこのたびリニューアルされ、「Mojo2(モジョ・ツー)」となった。

Chord ElectronicsのFPGA DAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ「Mojo 2」

Chord ElectronicsのFPGA DAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ「Mojo 2」

6年以上の月日を経て新たな形へと生まれ変わった「Mojo2」だが、デジタルオーディオ機器の進化が激しい現在の状況からは意外に思えるほど、そのデザインもコンセプトもオリジナル「Mojo」とまったくといっていいほど変わっていない。

外観は、スマートフォンやポータブルDAPの背面にすっぽりと収まるコンパクトさはそのまま。およそ83(幅)×62(高さ)×22.9(奥行)mmという公表数値で比較してみるみると、「Mojo」に比べて1〜2mmほど大きくなっているようだが、新旧2台を横並びにしても違いは感じない。とはいえ、LEDによってカラフルに光る球形のボタン部分は4つに増え、CHORDロゴがエッチングされている部分が浅いカットに変更されているなど、両者の違いはひと目でわかるようになっている。また、マッドブラック塗装も、傷が目立ちにくいものに変更されているようにもうかがえる。

「Mojo 2」(写真左)と「Mojo」(写真右)の大きさを比較したところ。サイズ感はほとんど変わらない

「Mojo 2」(写真左)と「Mojo」(写真右)の大きさを比較したところ。サイズ感はほとんど変わらない

球形のボタン部。「Mojo 2」では数がひとつ増えたほか、球が回転しない仕様に変更された

球形のボタン部。「Mojo 2」では数がひとつ増えたほか、球が回転しない仕様に変更された

塗装やCHORDロゴの加工も変わっており、新旧モデルはひと目でわかるようになっている

塗装やCHORDロゴの加工も変わっており、新旧モデルはひと目でわかるようになっている

コネクター類も、基本的にはオリジナル「Mojo」をほぼそのまま踏襲している。片側には3.5mmヘッドホン出力が2つ並んでおり、2つのイヤホン/ヘッドホンを同時利用することができる。反対側には入力端子が集約されており、データ用と充電用のUSB Micro B端子が中央に並び、その左側に同軸、右側に光デジタル端子が並ぶ。USB Micro Bと同軸端子の間、本体底面の少し引っ込んだ位置にUSB Type-Cが追加されているのが、端子系唯一の違いと言っていいだろう。

「Mojo 2」でもヘッドホン出力は3.5mm×2となっている

「Mojo 2」でもヘッドホン出力は3.5mm×2となっている

ヘッドホン出力の反対側にレイアウトされている入力端子。充電端子がUSB Micro Bというのはイマドキではなくて少々残念なところ

ヘッドホン出力の反対側にレイアウトされている入力端子。充電端子がUSB Micro Bというのはイマドキではなくて少々残念なところ

USB Type-Cが新たに追加され、USB Type-Cを搭載したスマートフォンやDAPとの接続を手軽に行えるようになったのは大きな進化点だ

USB Type-Cが新たに追加され、USB Type-Cを搭載したスマートフォンやDAPとの接続を手軽に行えるようになったのは大きな進化点だ

このうち、入力端子がほぼ同じ、かつUSB Type-Cが底面にレイアウトされているのは大きな理由がある。それは、「Mojo」のオプション製品であるネットワークストリーマー「Poly」との接続を確保するためだ。この「Poly」、なかなか便利な製品で、こちらを活用することでネットワークプレーヤーとしてスマートフォンなどから操作することができるし、microSDメモリーカードスロットも持ち合わせているため、モニターレスDAPとして活用することができる。「Poly」が用意されていること自体、「Mojo2」の大きな魅力アップにつながっているのは確かだ。

新たに追加されたUSB Type-C以外の入力端子のレイアウトが「Mojo」とまったく同じなのは、「Mojo」のオプション製品である「Poly」を接続できるようにするため

新たに追加されたUSB Type-C以外の入力端子のレイアウトが「Mojo」とまったく同じなのは、「Mojo」のオプション製品である「Poly」を接続できるようにするため

ドッキングした際の一体感のあるデザインは「Mojo」と共通だ

ドッキングした際の一体感のあるデザインは「Mojo」と共通だ

そのいっぽうで、ヘッドホン出力が3.5mmステレオ端子2系統のまま、というのが少々微妙に思えたりもする。Chord Electronics社では、バランスヘッドホン出力端子を保つポータブル製品はこれまでもラインアップされていないので、確固たるメーカーの意思ではあるのだが、2端子あってもボリュームは1系統なので異なるイヤホンをつなぐと両方にベストな音量にはできなかったりする。

また、ユーザーの中には、さらにアナログヘッドホンアンプをつないで自分好みの音に変えたい、という人もいるので、そういった人からすると(2端子あるのだったら)専用のライン出力がほしいところだろう(「Mojo」にあった3V出力のアインアウトモードがなくなっている)。遊び心、実用性の両面から4.4mm5極端子などのバランスヘッドホン出力、もしくはライン出力などがほしかった、というのが正直な話だ。そのあたりは、今後の展開に期待したいところだが、今回のモデルチェンジに6年以上の時間を要していることから、現状のシステムをいかにうまく活用するかに注力したほうが健全かもしれない。

いっぽうで、サウンドシステムについてはかなりのグレードアップが行われているようだ。Chord Electronics社の名を一躍有名にした独自のプログラマブル・パルスアレイDACシステムの採用はそのままに、フルトランスペアレント型ロスレスDSP「UHD DSP」を世界で初めて採用。705〜768KHzで動作する104bitのカスタムDSPコアによって、高い動作精度を実現。同時に、デジタルDCサーボによるDCカップリングや改良型独自WTAフィルターの採用、徹底したノイズシェーピングなどによって、大幅な音質アップを果たしているという。また、音量調整も+18dB〜-108dBとさらに幅広くなっていて、感度の高いイヤホンから高い駆動力を必要とするヘッドホンまで、さまざまな製品をベストな音量で楽しむことができるようにもなっている。オリジナル「Mojo」でもかなり幅広い音量調整幅を持ち合わせていたが、さらに広がってくれているのはうれしいかぎりだ。

さらに、「Mojo2」ならではの新機能として、大きな注目ポイントとなっているのが「イコライジング」と「クロスフィード」、2つの音質調整だ。

まず、イコライジング調整に関しては、ローベース(低い低域)/ミッドベース(中低域)/ロートレブル(低い高域)/ハイトレブル(高い高域)の4ポイントで調整が行えるようになっている。また、それぞれが+−9dBずつ、トータル18段階の調整が可能となっているため、自分好みの、特徴的なサウンドキャラクターを作り上げることができるそう。

また、クロスフィードは、音の広がり感を積極的にコントロールして、スピーカーで聴いているかのような音響空間を作り上げるシステム。「Mojo2」では、最小から最大まで、3段階(オフを含めると4段階)の調整を行えるようになっている。

このように、とにかく音質の向上を強くアピールする「Mojo2」だが、実際のところはどうなのだろうか。オリジナル「Mojo」と比較しつつ、その実力を検証してみた。

まずはWindows PC(LG gram/Windows11)とUSB接続して再生してみる。オリジナル「Mojo」に対して、一聴でわかるほど音質の向上が感じられる。特にSNの向上、ノイズの低減がすばらしく、音楽がよりクリアに清々しく聴こえるようになった。とはいえ、オリジナル「Mojo」だってそれほど悪いわけではなく、基本のサウンドキャラクターがかなり異なっている、といったイメージだろうか。「Mojo」はデフォルトでメリハリに富んだ表現や厚みのあるボーカルを持ち合わせているが、それに対して「Mojo2」はかなりあっさりした音色で、“聴感上のフラット”を具現化したかのような無色透明の音色をしている。逆にいえば、こちらをベースにしつつイコライジング機能によって自分好みのサウンドを作り上げればいい、ということなのだろう。実際、イコライザー調整を試してみたが、音質的な劣化をまったく感じないうえ、結構な幅広さでキャラクターを調整できるため、かなり楽しめそうだ。

たとえばヘッドホンにHIFIMAN「DevaPro」(有線接続)をつなぐと、ローベース(低い低域)をほんの少し控えめにしたほうが軽快でノリのよい鳴りに変化。ミッドベース(中低域)やロートレブル(低い高域)を調整すると、ボーカルの声の調子が変わったり、押し出し感が強くなったりする。ハスキーになったりウォームになったり、声の調子が変わるほどのキャラクター変化はないが、そのぶん「Mojo2」ならではの素直な音色はしっかり生かされているので、積極的に活用したいと思えた。

もうひとつの音響調整クロスフィードについては、確かに、強くしていくと回り込んでいた左右の音が前方に移動し、スピーカーに近い音場表現となってくれる。ただし、ヘッドホンによってはきれな横広がりになってくれないことがあったりと、利用するしないはあくまで好みの範疇だと思う。

ちなみに、ヘッドホン出力のパワーについてはかなりのもので、HIFIMAN「DevaPro」どころかfinal「D8000 Pro Edition」でさえもハイゲインの下のほうで十分な音圧が確保できた。音色的な相性は「D8000 Pro Edition」よりも「DevaPro」のほうがヌケのよさがあって好ましい音色に感じられたものの、そのあたりはイコライザーでの調整でなんとでもなりそう(いっぽうで中域の解像感の高さやディテール表現のきめ細やかさなど「D8000 Pro Edition」ならではの魅力は十分に発揮されていた)。ヘッドホン派にとって「Mojo2」はかなり魅力的な製品と言っていいだろう。

ただし、かなりマニアックな製品だけに、注意しなければならないポイントがいくつかある。まず「Mojo2」本体では、ユーザーにはおなじみでも初心者にはわかりづらい、色による状態/設定の表現だ。今回も取材しているうちにだんだんと慣れてきて、イコライザー設定など説明書を見なくてもわかるようになってきたが、音量設定やサンプリングレート表示など、しばらく使わないとすぐに忘れてしまいがち。敷居の高い表示方法となってしまっているので、素直にモニターを付けてくれるか、スマートフォン用アプリがほしいと思った。

LEDの色だけで各種ステータスを把握するのはなかなか大変なので、このあたりをもう少し改善してほしかったところではある

LEDの色だけで各種ステータスを把握するのはなかなか大変なので、このあたりをもう少し改善してほしかったところではある

また、ポータブルDAPならともかく、スマートフォン裏に設置するのはサイズ的というか厚み的に厳しいといわざるを得ない。ここ1〜2年インラインDACアンプが増えてきた(かつ聴き応えのある製品が出てきた)こともあってか、PCなどとの組み合わせがメインでポータブル活用は時々、という使い方がよさそう。または、Polyと組み合わせてモニターレス(スマートフォンから再生操作する)DAPとして活用するのがいいかもしれない。

薄型のスマートフォンと有線接続すると、厚みが少々気になるかもしれない

薄型のスマートフォンと有線接続すると、厚みが少々気になるかもしれない

このように、使い慣れるまでに多少コツが必要な製品なのは確かだが、音もすばらしく、いろいろと遊べる製品なのは間違いないので、「Mojo 2」を手に入れたあかつきには、ぜひいろいろと使い倒していただきたい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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