レビュー

JBL「L75ms」はデカくて強烈なサウンドが魅力のWi-Fi&HDMI対応の多機能スピーカーだった

ハーマンインターナショナルがJBLブランドの創立75周年記念モデルとして発表したインテグレーテッド・ミュージックシステム「L75ms」。モダンクラシック・デザインを採用した一体型オーディオで、ワイヤレスオーディオにHDMI接続対応、アナログレコードプレーヤーの接続も可能と、なかなか意欲的なオーディオシステムだ。

JBLブランドの創立75周年記念モデルとして3月に発売が開始された「L75ms」

JBLブランドの創立75周年記念モデルとして3月に発売が開始された「L75ms」

創立75周年となるJBLブランドは、Hi-Fiオーディオのスピーカーだけでなく、今ではBluetoothスピーカーやイヤホンなど多岐にわたる製品を展開している。一体型のオーディオシステムとしては、2014年に「Authentics L16」という巨大な一体型多機能スピーカーを展開したことがあるが、「L75ms」もそれに並ぶほど巨大な1台だ。もちろん価格も198,000円(直販価格)となかなかのビックプライス。

今回、この「L75ms」を僕の自宅にお借りして検証してみることにした。

とにかく巨大で入力端子も多彩

さて、改めて「L75ms」の何が意欲的なのかというところから紹介しよう。

「L75ms」の実機を自宅リビングのテーブルに設置して検証

「L75ms」の実機を自宅リビングのテーブルに設置して検証

なによりも真っ先にお伝えしておきたいのが、そのサイズ感だ。790(幅)×216(高さ)×287(奥行)mmという、どう考えても一体型オーディオとして巨大過ぎる。もしネットの写真などで「L75ms」を知ってカッコイイと思った人は、僕が一緒に写っている下の写真を見てサイズ感を確認してみてほしい。

リビングへの設置風景。写真で想像するサイズよりもかなり大きかった

リビングへの設置風景。写真で想像するサイズよりもかなり大きかった

オーディオの世界ではスピーカーの容積も重要だから、筐体が大きいことはいいことだ。あるいは、プレーヤー+アンプ+スピーカーを別々に設置するのと比較したら、ワンボディで済む「L75ms」ならコンパクトとか言い訳も立つのだが……とは言え、自宅に「L75ms」をドンと置いた時のインパクトが強烈なのは確かだ。当然ながら、きちんと計画して購入しないと置き場に困るケースも発生しそう。もうひとつ言うと、重さも15.9kgもあるので設置もやや大変だ。

外見はとてもユニークだ。筐体はウォールナットのリアルウッド仕上げでモダンだし、扇型のようにフロント側が広がっている意匠も凝っている。ホームシアターの世界の5.1chシステム用センタースピーカーの形状に似ているが、ここまで巨大なモデルはなかなか珍しい。

扇のように左右にゆったり広がるデザイン

扇のように左右にゆったり広がるデザイン

そしてフロントデザインは、ビンテージJBLファンならニヤリとするQuadrexフォームグリル。もちろん、マグネット着脱式で取り外しも可能だ。

JBLのアイコニックなQuadrexフォームグリル

JBLのアイコニックなQuadrexフォームグリル

内部のスピーカーユニットは、左右に133mmのウーハーと25mmアルミドームツイーターを、センターに100mmのミッドレンジユニットを配置した3chスピーカーという珍しい構成。左右のスピーカーは扇状に外を向いているので、センターにパワーを出しつつ音を広げる狙いだろう。これらが独立DSP制御、独立駆動で総合350Wとかなりのパワー志向の作りだ。

内部のスピーカーユニットは3chスピーカーの構成

内部のスピーカーユニットは3chスピーカーの構成

再生ソースの対応は実に多彩だ。まずワイヤレスオーディオ対応としてWi-Fi内蔵(有線LAN端子も搭載)でChromecastとAirPlayに対応。この時点でスマホと接続すれば定額音楽配信のサブスクやYouTubeの音も流せる訳で、利便性重視の現代的な音楽リスニングならこれ一択だろう。ちなみに、もっとカジュアルにBluetoothでスマホ接続も可能だ。

本体側の操作は音量+/-含めて3ボタンのみとシンプル

本体側の操作は音量+/-含めて3ボタンのみとシンプル

リモコンからソースダイレクトも可能

リモコンからソースダイレクトも可能

だが、「L75ms」がインテグレーテッド・ミュージックシステムたる由縁は、汎用性も備えているところ。3.5mmのアナログ入力はもちろん、RCAアナログはアナログ・レコード接続用のPhone(MM)端子も搭載。ユニークなところではHDMI(ARC)も対応で、テレビ用のサウンドバーにもなる。つまり、新旧色々なソースをすべてこれ1台で面倒見るというところだろうか。

アナログ系入力まで揃う外部入力端子。デジタル系入力はHDMI(ARC)のみなので注意

アナログ系入力まで揃う外部入力端子。デジタル系入力はHDMI(ARC)のみなので注意

「L75ms」の使い方を考えると、やはりWi-Fiで接続してスマホ接続がメインだろうか。初回のネットワーク設定は最近オーディオ機器で増えているGoogleHomeアプリ経由で発見して設定する形で、iPhoneで試してみても登録は簡単だった。“リビングルーム”など名前を付ければ完了だ。

スマホの「GoogleHome」アプリからWi-Fiに接続

スマホの「GoogleHome」アプリからWi-Fiに接続

迫力あるアメリカンサウンド。ただし、設置は大音量で流せる環境を推奨

初期設定さえ済ませたらiPhoneならAirPlay経由、AndroidならChromecastで飛ばせるのでアプリ不要で音楽リスニングに使える。さっそく、iPhoneを使って「Apple Music」のロスレス音源で音質をチェックしてみた。

自宅リビングのテーブル上に設置した「L75ms」のサウンドを体験してみると、見た目どおりにパワーで余裕あり過ぎなJBLサウンド。JBLのサウンドというと製品ごとに違いがあるが、「L75ms」はアメリカ西海岸を彷彿とさせる、迫力重視のアメリカンサウンドだ。

見た目どおりにパワー志向のJBLらしいアメリカンサウンド

見た目どおりにパワー志向のJBLらしいアメリカンサウンド

普段どおりYOASOBI『三原色』から流してみると、ナチュラルながら情報量もあって中低域まで深みある歌声に、迫力たっぷりにドコドコと量感をともなって響く楽器の鳴り、そして深くリッチな低音。音質は巨大な筐体相応によいのだが、高解像志向ではないし、Hi-Fiオーディオ的なサウンドフィールドもない。ただ音をエネルギッシュに放出して鳴らすようなサウンドには不思議な魅力がある。ちなみに、リモコンに「SFX」というボタンがあり、オンにするとほんの少しだけ音空間が広くなる。

AirPlayが使えるので、iPhoneの「Apple Music」アプリから楽曲を再生

AirPlayが使えるので、iPhoneの「Apple Music」アプリから楽曲を再生

重低音の再現性はさすがにすばらしく、ビリー・アイリッシュ『BadGuy』もゴリゴリ重厚な音を聴かせてくれるし、BTS『Dynamite!』のような今どきのリズムをズンズン刻む音もノリよく聴ける。ジャズやクラシックは余裕こそあるが、迫力を追求したサウンドなので生楽器系との相性はあまりよくはない。

音楽を流しながら部屋の中で移動してみると、リスニングエリアは、扇形の形をしているだけあって、それなりにワイド。元々あまりステレオ空間を展開せず、センターからパワー志向で音を放出するタイプなので、リスニング位置は気になりにくいところもメリットだ。

壁の音反射などの影響も考えて設置場所を変えつつ検証

壁の音反射などの影響も考えて設置場所を変えつつ検証

さて、「L75ms」を使ううえで考えるべきポイントが音量だ。「L75ms」は再生できる最大音量が桁違いに大きいというか、むしろ大音量で音楽を流す前提で設計されている節がある。

「L75ms」を設置しても僕の環境含め一般家庭の音楽リスニングの環境では、iPhoneの音量操作で下から2、3段目で十分。小音量側の刻みがとても荒いところは要注意で、たとえば6畳間では音量は最低の1段目と2段目以外はまず使えないと思ったほうがいい。1と2の中間の音量はほしいところだ。そして6段目まで行くとすぐとなりの人と会話するにも声を張り上げる必要があるし、一戸建ての家の外まで余裕で音漏れするので、そこから先は僕もテストを断念。iPhoneの音量は全16段あり、その半分以下でこれだけ爆音な訳で……本来の想定シーンは、体育館のような巨大な空間や、近隣に家屋が存在しないレベルの郊外など、騒音が問題にならない環境だろう。ちなみに、音量刻みは再生デバイスにも依存していて、AndroidスマホでChromecast再生では、小音量側の調整が細かくなる。

Androidスマホの「AmazonMusic」でも検証。こちらのほうが音量の刻みが細かい

Androidスマホの「AmazonMusic」でも検証。こちらのほうが音量の刻みが細かい

想像以上にテレビ接続のサウンドがよく、エンタメとも相性抜群

僕がもうひとつ試した接続機器が、薄型テレビとのHDMI(ARC)接続だ。オーディオ界隈では地味にHDMIでテレビ接続可能という機器が増えている。ちなみに、「L75ms」にはサラウンド的な機能は存在せず、リニアPCMの2ch入力のみ可能だ。

ただし、テレビ接続用として考えると「L75ms」の設置場所はちょっと検討する必要がありそうだ。テレビラックにちょうどいいスペースがあればよいが、幅790mmは大型テレビにはちょうどいい幅だけど、高さ216mmは画面が隠れるし、テレビラック上に奥行き287mmを設置するスペースは確保しにくい。このため、なかなかセンターには置きづらいという問題がある。

今回は適当な台がなかったので、テレビラックの前にベンチ式の椅子を置いて検証。なお、床置きも試したが、当然ながら足元から音が聴こえるので推奨しない。

テレビ前に椅子を置いて設置。画面下が隠れているのはご愛嬌

テレビ前に椅子を置いて設置。画面下が隠れているのはご愛嬌

HDMI(ARC)の仕組みを使っているおかげで、「L75ms」をテレビと接続しても使い方に悩むところは特になく、地デジ音声もすぐに流れる。「L75ms」の音バランスはニュース番組などの人の声が得意という訳ではないが、大型で余裕あるサウンドで、それなりにナチュラルでいい音。当然ながら音楽番組にはマッチする。

そしてNetflixの映画も試してみたが……これが予想外に相性がよかった。仕様上、サラウンド再生はしていないはずだが、目の前に置いた「L75ms」の外向きのスピーカーがうまく音空間を広げてくれるので立体感がある。PS5のゲームプレイでも試してみたが、「L75ms」の迫力ある音がマッチするし、意外とテレビ接続を前提に購入するのはアリだなと感じた。

超近距離設置でNetflixの映画を試聴してみるのは意外とアリ

超近距離設置でNetflixの映画を試聴してみるのは意外とアリ

ゲームプレイは迫力あるサウンドがなかなかマッチしてくれる

ゲームプレイは迫力あるサウンドがなかなかマッチしてくれる

まとめ

音楽リスニングとテレビ接続の2パターンで「L75ms」を試してみた感想は……期待を裏切らない、見た目どおりのサウンドを体験できるシステムだということがわかった。いかにもアメリカ人が好きそうなノリよく聴けるJBLサウンドだ。ただ、本当に向いているシチュエーションは家の窓も開け放ってガンガンに音楽を流すような爆音再生で、日本の住環境へのマッチングは正直よくはない。これを買う人はそれ相応の覚悟がある人だろうが、唯一無二の個性でほかに替えのきかない意欲的な製品を日本市場にしっかり投入してくれたハーマンインターナショナル、そしてJBLブランドのチャレンジ精神にはエールを送りたい。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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