特別企画

【動画】デノン/マランツの工場「Shirakawa Audio Works」を見学してきた

ディーアンドエムホールディングスが有する「デノン」「マランツ」ブランドの主要製品を生産する、福島県白河市の「Shirakawa Audio Works」

ディーアンドエムホールディングスが有する「デノン」「マランツ」ブランドの主要製品を生産する、福島県白河市の「Shirakawa Audio Works」

AVマニアの間で話題になっているデノンのフラッグシップAVアンプ「AVC-A1H」。本製品の発表会が行われたのは、福島県白河市に位置する、ディーアンドエムホールディングスの自社工場兼研究開発施設「Shirakawa Audio Works」。“白河工場”と呼ばれることもある、ディーアンドエムホールディングスが有する「デノン」「マランツ」両ブランドの主要製品が生産される拠点だ。

発表会の当日はちょうど「AVC-A1H」の生産が開始される日で、メディア向けに工場見学会が催された。高級アンプがどのように生産されているのか、その様子の一部をお届けする。実際に工場が“動いている”さまを以下リンクからご覧いただきたい。

工場内では同時に多数の作業が行われているが、この日生産されていたメインの製品は「AVC-A1H」。15chものパワーアンプを内蔵した一体型AVアンプだ

工場内では同時に多数の作業が行われているが、この日生産されていたメインの製品は「AVC-A1H」。15chものパワーアンプを内蔵した一体型AVアンプだ

1983年に設立された研究施設兼工場「Shirakawa Audio Works」

「Shirakawa Audio Works」があるのは「みちのくの玄関」として知られる福島県白河市。「デノン」「マランツ」ブランドの研究開発施設と生産工場が一体になっており、双方が密にコミュニケーションを取りながら製品を作っているという

「Shirakawa Audio Works」があるのは「みちのくの玄関」として知られる福島県白河市。「デノン」「マランツ」ブランドの研究開発施設と生産工場が一体になっており、双方が密にコミュニケーションを取りながら製品を作っているという

この工場で生産されるのは、20数万円以上の高級品ばかり。最も多いのはAVアンプ(63%)で、プリメインアンプ(22%)、CDプレーヤー(8%)、ネットワークオーディオプレーヤー(5%)、レコード用カートリッジ(1%)、ヘッドホン(1%)と幅広い製品が作られている

この工場で生産されるのは、20数万円以上の高級品ばかり。最も多いのはAVアンプ(63%)で、プリメインアンプ(22%)、CDプレーヤー(8%)、ネットワークオーディオプレーヤー(5%)、レコード用カートリッジ(1%)、ヘッドホン(1%)と幅広い製品が作られている

見学当日には稼働していなかったが、同グループ内のブランドであるカナダの「CLASSE(クラッセ)」製品も生産している

見学当日には稼働していなかったが、同グループ内のブランドであるカナダの「CLASSE(クラッセ)」製品も生産している

多くの作業が機械化された基板製作

ここから見ていくのは、「AVC-A1H」に使われる主要パーツがどのようにできあがるか。最も重要なパーツとして思いつくのは、デジタル/アナログ、音声/映像を問わず、信号処理を行う基板だろう。各所から仕入れたパーツを検品した後、手作業ではとてもできないような小さなパーツを基板に実装していく。

こちらはHDMI入出力のサンプル基板。青いシートの上に載っているのが基板に実装されるICの見本

こちらはHDMI入出力のサンプル基板。青いシートの上に載っているのが基板に実装されるICの見本

まずは「生板(なまいた)」や「生基板(なまきばん)」と呼ばれるプリント基板に、専用の機械でクリーム状のハンダを印刷していく

まずは「生板(なまいた)」や「生基板(なまきばん)」と呼ばれるプリント基板に、専用の機械でクリーム状のハンダを印刷していく

小さなICはテープ状のカートリッジのような形で(シールのように貼り付けられて)納品される。それを基板に装着する(置く)のがこの機械。この段階ではまだハンダ付けはされていない

小さなICはテープ状のカートリッジのような形で(シールのように貼り付けられて)納品される。それを基板に装着する(置く)のがこの機械。この段階ではまだハンダ付けはされていない

背の高いコンデンサーなど、大きめの部品はまた別の専用機で設置されていく。こうして基板の適当な場所にパーツを設置した後、さらに別の専用機で熱を加え、クリームハンダを溶かしてハンダ付けする

背の高いコンデンサーなど、大きめの部品はまた別の専用機で設置されていく。こうして基板の適当な場所にパーツを設置した後、さらに別の専用機で熱を加え、クリームハンダを溶かしてハンダ付けする

手作業も加わる基板製作

上記のように、多くの手順が機械化されている基板製作作業もあるが、やはり手作業で行う基板製作も存在する。その場合はプロジェクターでICを置く位置を基板上に照射して、指示にしたがって人力でICを置いていく、という作業を行う。企業秘密のためプロジェクターの様子は取材はできなかったが、それ以降の作業を以下に紹介しよう。

手作業でICを設置した後、ハンダ槽にプリント基板を流して下の面にハンダ付けをしていく。溶けたハンダ槽を基板が流れていくさまを、ぜひ動画でご覧いただきたい

手作業でICを設置した後、ハンダ槽にプリント基板を流して下の面にハンダ付けをしていく。溶けたハンダ槽を基板が流れていくさまを、ぜひ動画でご覧いただきたい

その後、目視&手作業でハンダ付けを修正。さらに通電チェックなども別途行われる

その後、目視&手作業でハンダ付けを修正。さらに通電チェックなども別途行われる

キャビネットや基板の組み立て

ここまで見てきたのは、いわゆる「ライン方式」で基板ができあがるまで。ここからはそれらをひとつの製品として組み立てていく様子を紹介する。「AVC-A1H」では「ライン方式」だけでなく「セル方式」と呼ばれる方式を採用していて、これ以降はひとりの作業者が複数の作業を行う。

「AVC-A1H」の内部。上記のようにできあがった基板のほか、キャビネット自体やスピーカー端子などがひとつずつ組み上げられていく

「AVC-A1H」の内部。上記のようにできあがった基板のほか、キャビネット自体やスピーカー端子などがひとつずつ組み上げられていく

ネジ留めなど、機械化できる部分はできるだけ機械に任せるという形は基板製作と同じ

ネジ留めなど、機械化できる部分はできるだけ機械に任せるという形は基板製作と同じ

ボトムシャーシに対して、6つのファンや大型のカスタムブロックコンデンサーの載った基板が手作業で取り付けられていく。こうした作業で使うドライバーも電動で、当然にトルク(ネジの締め付けの強さ)が管理されている

ボトムシャーシに対して、6つのファンや大型のカスタムブロックコンデンサーの載った基板が手作業で取り付けられていく。こうした作業で使うドライバーも電動で、当然にトルク(ネジの締め付けの強さ)が管理されている

最終チェックを経て出荷

こうして組み上がった製品は、最終チェックを経て出荷されていく。このチェックは電気的な検査を機械で行うだけでなく、外観の目視などを含め、人の手で行われる部分も多い。

製品の全数で動作確認を行うため、その労力は膨大だ。外装の傷などを含めて、少しでも不備があった個体はパーツ交換される

製品の全数で動作確認を行うため、その労力は膨大だ。外装の傷などを含めて、少しでも不備があった個体はパーツ交換される

最終チェックをパスした製品が梱包されていく。「AVC-A1H」については、ここも手作業で行われていた

最終チェックをパスした製品が梱包されていく。「AVC-A1H」については、ここも手作業で行われていた

箱詰めされた製品は倉庫に保存され、日本だけでなく世界中へ出荷される

箱詰めされた製品は倉庫に保存され、日本だけでなく世界中へ出荷される

さて、ここまで高級AVアンプができあがるまでの流れをご覧いただいたが、ここで紹介した工程はあくまで一部分だ。実際にはかなり多くのパーツで構成されているうえ、それぞれの工程やパーツで修正や正しい動作をするかどうかのチェックを行われる。

高級オーディオ製品がなぜ高級なのか、その理由の一端が伝われば幸いだ。

取材日は、工場内でCDプレーヤーの組み立ても行われていた

取材日は、工場内でCDプレーヤーの組み立ても行われていた

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

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