趣味のAV(オーディオビジュアル)を実践する場合に、音質強化の核となるがAVアンプです。AVアンプがあれば、5.1chやDolby Atmos(ドルビーアトモス)といった「サラウンド」音響の再生が可能になり、映画作品などの音響効果を十全に楽しめるようになるのです。ここでは、AVアンプの基本的な選び方とおすすめ製品を紹介します。
AVアンプとは、その名前のとおりAV向けのアンプのことです。時代とともに多機能化が進んでいますが、5.1chなどのサラウンド音声が再生できること、映像処理回路(HDMI入出力など)を持っていることを兼ね備えたアンプの総称です。
AVアンプに似たシステムとしてサウンドバーがありますが、AVアンプとスピーカーが一体になったものがサウンドバーと考えればおおよそ間違いありません。つまり、AVアンプを使うには別途スピーカーを必要数だけ購入、設置する必要があります。
難しく思われるかもしれませんが、AVアンプの使い方はサウンドバーとほぼ同じです。テレビやプレーヤーなどとは基本的にHDMIでの接続が前提。ARC機能の連携でテレビからの音声も簡単に再生可能です
現在では映像処理回路、つまりHDMI入力を持ったプリメインアンプも人気ですが、こちらはサラウンド音声を再生できません(あくまで右と左2つのスピーカーによる2ch音声再生のみ)。映画も音楽も2ch再生で十分、という人はHDMI端子を持ったプリメインアンプを選ぶことも検討するとよいでしょう。
上記のとおりHDMI端子を持ったプリメインアンプという選択肢もありえますが、製品の価格や利便性を考えると、AVアンプはオーディオ/AVのエントリー2chシステムとしてもすぐれた製品と言えます。HDMI端子を持ったプリメインアンプは比較的高価で、AVアンプは将来のシステムアップ(スピーカーの増設)も見込んで運用ができるからです。
また、サラウンド音声の再生自体は擬似的にも可能ですが、サウンドバーやテレビの疑似サラウンド再生のクオリティは今のところAVアンプと複数のスピーカーによる“リアル”サラウンドを超えるものにはなっていません。特に映画の音響など、すぐれたサラウンドを最高の形で楽しみたい、と思うならばAVアンプの使用がベストと言えます。
そのいっぽうで、機能の多いAVアンプは本体が大きくなりがちで、多数のスピーカーを置くにはもちろんスペースが必要になります。さらに、機能が多いため設定が難しいと感じる場合もあるでしょう。
【AVアンプのメリット】
・安価な製品があるうえ、必ずHDMI端子を持っているのでテレビと連携しやすい
・サラウンド再生のクオリティはAVアンプがベスト
【AVアンプのデメリット】
・本体が大きくなりがち
・設定が難しいと感じることもある
図版はAVアンプを使った最小システムのイメージ。AVアンプを使うからといっても、過度にスピーカーを増やす必要はありません。ニーズに応じてスピーカーの本数を増やしましょう
「4.1.2」chシステムの構成例。センタースピーカーやサラウンド(リア)スピーカー、サブウーハーは、必要なら足せばOK。なくても映画や音楽は楽しめます。図のようにスピーカーの上に置き、天井からの反射音を利用するイネーブルドスピーカーを導入すれば、比較的手軽にDolby Atmosを楽しめます
ここからはAVアンプの選び方を見ていきます。
現在ではAVアンプのメーカーは限られていて、その多くが日本を本拠地にしています。メーカーごとに言えるのは、ラインアップの製品価格に比例して機能性が増え、音質が向上するということ。つまり、数少ないメーカーの特色を理解し、機能がどこまで必要かを考えれば、おのずと選択肢は見えてくるということです。あとは予算とのバランス次第。まずはAVアンプの主要メーカー(ブランド)を紹介しましょう。
デノンの「AVR-X1800H」。デノン/マランツのAVアンプ共通の特徴として、独自のネットワークオーディオ機能「HEOS(ヒオス)」の搭載(一部機種を除く)があげられます。ハイレゾを含むAmazon Music再生なども可能な便利な機能です
マランツの「CINEMA 70s」。大きなAVアンプを置きたくない、という人にぴったりのモデルです
オーディオブランドとして有名なデノンとマランツは、日本では株式会社ディーアンドエムホールディングスが運営しています。つまり、同一会社の別ブランド。AVアンプにおいてはHDMIの仕様や機能性を共通化したうえで、それぞれに音の個性がある製品を多数ラインアップしています。低価格から高価格まで、予算に応じて充実した製品を選べる数少ないブランドです。
オーディオ専業ブランドらしく、ハードウェア的な作り込みのよさが特徴で、アンプとしての音質を求めるユーザーにおすすめです。現在は資本こそ海外ですが、開発と主要製品生産の本拠地は日本です。
「STR-AN1000」
ソニーについては説明不要でしょう。オーディオメーカーでもあるソニーは、かつては多くのAVアンプをラインアップしていましたが、現在日本で購入できるモデルは限定的。これから購入する選択肢としては、事実上「STR-AN1000」のみです。それでも、独自の音場補正技術などメーカーのノウハウが結集された意欲作として、価格.comでも人気を得ている製品です。
製品の詳細は別途記載しますが、音場補正技術が充実した「STR-AN1000」はソニーファンだけではなく、誰にとっても使いやすいモデルと言えます。
オンキヨーの「TX-RZ70」
パイオニアの「VSA-LX805」
オンキヨーとパイオニアのAVアンプも、同一会社が運営する別ブランドです。現在、ホームオーディオのオンキヨーとパイオニアブランド製品は、オンキヨーテクノロジー株式会社が企画開発および生産管理を行っています。大阪を拠点とするこの会社には以前からオンキヨーとパイオニア製品を支えていた技術者が多数在籍しているとのこと。両ブランドはやはり基本設計を共通化しつつ、音質での差別化を図っています。
前体制から受け継いだ技術を生かした、製品のハードウェア的作り込みが特徴ですが、スウェーデンのDirac Research社による自動音場補正機能「Dirac Live」を採り入れ、追加料金なしで利用できることが話題。パイオニアの「VSA-LX305」と「VSA-LX805」は独自の補正技術「MCACC」と好きなほうを利用できるという特徴もあります。
エントリーモデルの「RX-V6A」(左)と「RX-V4A」。どちらも独自の「音場創生」技術「シネマDSP」を利用できます
デノン/マランツのほかに、低価格から高価格までAVアンプを取り揃えているのがヤマハです。「音場創生」という発想で積極的にサラウンド効果を付加していく姿勢は唯一無二と言えます。「原音忠実」を追い求めるマニアには相容れない世界観かもしれませんが、映画再生時の臨場感や没入感を求める人におすすめです。
社会情勢による都合か、2024年現在では新製品の投入が滞っていますが、現行製品のスペックが陳腐化しているわけではありません。唯一確認しておいたほうがよいのは、HDMIで接続しているテレビなどとの接続を維持したままフレームレートや解像度の変更を瞬時に行う「QMS」非対応ということくらいです。
上位モデルの「MA9100HP」
AVアンプメーカーの多くが日本を本拠地にしていると説明しましたが、数少ない例外がJBLです。JBLはこれまでも本国アメリカ(北米)を中心に「Synthesis」というホームシアターブランドでAVアンプを発売したことはありました。しかし、JBLブランドとしてAVアンプを展開するのは初のこと。同一グループ内のブランドARCAMがAVアンプを展開しています(日本未導入)から、技術提携があると見てよいでしょう。
日本には薄型のエントリーモデル「MA710」、フロントパネルに大きめの液晶ディスプレイを備えた上位モデル「MA9100HP」の2機種が導入されました。
アンプの数や機能に若干の違いはありますが、Dolby AtmosやDTS:Xに対応すること、AVアンプには珍しく本体のカラーリングが白であることは共通。白を基調としたインテリアとの調和を考えるならば注目したいモデルです。
主要メーカーを把握したところで、自身にとって必要な機能を確認しましょう。ポイントは4つです。
まず重要なのは、最新製品から選ぶこと。価格.comのデータから具体的に言えば、少なくとも2020年以降に発売された製品を検討するとよいでしょう。AV機器は陳腐化が早い分野なので、動作の素早さなどスペックには表れづらい部分に差がある場合も考えられます。そのほか確認がもれてしまうことや、購入後に気づく要素もあるかもしれません。
なお、スペックシート上で差が出るのは、HDMI端子の仕様です。特にゲーム用途などを考えていて、4K/120fpsや8K映像をパススルーしたい場合に重要になる項目です。しっかりスペックを確認しましょう。
価格.comの「AVアンプ」カテゴリには2020年以前の製品も掲載されています(2024年12月時点)が、価格以外の明確な理由がない場合は手を出さないほうが無難と言えます
次に確認すべき点はDolby Atmos(ドルビーアトモス)への対応が必要かどうか。Dolby Atmosが必要であればDolby Atmos対応品を、必要がなければ非対応品を選んでもOKです。ただし、Dolby Atmos非対応の最新AVアンプは一部のエントリーモデルに限られます。無理に非対応品を選ぶ必要はありません。
Dolby Atmosとは、リスナーの周囲を垂直方向も含めて包み込むイマーシブ(没入型)オーディオのこと。5.1chや7.1chはあくまで水平方向のサラウンドでしたが、Dolby Atmosでは垂直方向の音場が広がります。
垂直方向に音を発するためにはオーバーヘッド(ハイト/トップ)スピーカーと呼ばれるスピーカーを使います。左右のスピーカーの上にイネーブルドスピーカーという垂直方向に音を発するスピーカーを置くことでも代用できるので、実現の難易度はそこまで高くはありません。
なお、そのほかのイマーシブオーディオのフォーマットとしてDTS:XやAuro-3Dがあります。Amazonプライム・ビデオやNetflixの作品で採用例の多いDolby Atmosに対して、これらの優先度は低め。少なくともこれらのフォーマット名を初めて聞いたという人は、あまり気にする必要はありません。
また、Dolby Atmosに対応していれば、Dolby DigitalやDolby Digital Plus、Dolby TrueHDなど、家庭用のDolbyフォーマットにはもれなく対応していると考えて間違いありません。その意味でも、Dolby Atmos対応製品を選んでおけば安心です。
Dolby Atmosの「5.1.2」chシステムのイメージ(ドルビーのホームシアター向け「Speaker Guide」より)。床に「5」本(フロント/センター/サラウンドスピーカー)があり、サブウーハーが「1」本、オーバーヘッドスピーカー(この場合はトップスピーカー)が「2」本で「5.1.2」です
オーバーヘッドスピーカーは高い位置に設置する必要があるため、実現が難しいという人も多いでしょう。そこで使いたいのがイネーブルドスピーカーです。こちらはフロントスピーカーの上にイネーブルドスピーカーを置いた「5.1.2」chシステム。天井からの反射を利用して、垂直方向の音の広がりを表現します
冒頭のとおり、サラウンドスピーカーやセンタースピーカーは必須ではありません。こちらはイネーブルドスピーカーを使った「2.1.2」chシステムのイメージ。サブウーハーなしの「2.0.2」chでもDolby Atmosの再生は可能ですから、この場合もDolby Atmos対応はむだにはなりません
積極的にDolby Atmosを実践しようと考えた場合に注意すべきは、内蔵アンプの数と最大プロセッシングch(チャンネル)数、および利用可能なオーバーヘッドスピーカー数です。
デノンの製品を例に取ってみましょう。高級モデル「AVR-X6800H」の内蔵アンプ数は「11」ch分、最大プロセッシングch数は「13」です。信号処理自体は13ch分が可能ですが、アンプは11個しか内蔵していないということ。13本のスピーカーを鳴らすためには、別途単体のパワーアンプが2ch分必要になります。
もし、床に5本のスピーカー、サブウーハー1本、天井に6本のスピーカーを設置する「5.1.6」chシステムを作ろうと思った場合、アンプが必要になるのはサブウーハーを除いた「5」+「6」=「11」。「AVR-X6800H」の内蔵アンプで事足りるわけですが、床のスピーカーを7本とする「7.1.6」chには2ch分アンプが足りません。多数のスピーカーを検討している場合は注意しましょう。
利用可能なオーバーヘッドスピーカー数は2/4/6本と製品によってさまざま。個別に確認をしましょう。
現在のAVアンプには、基本的に自動音場補正機能が搭載されています。これは専用のマイクを使ってテストトーンを計測し、その結果から再生音質の最適化を図るものです。製品によってこの演算の方法が異なり、この差は最終的な再生音の違いとなって表れます。
ソニー「STR-AN1000」に付属する自動音場補正機能専用マイク
この演算の発想はブランドや製品ごとに独自のものもあれば、外部の技術を使っているものもあります。効果の違いは部屋の状況に依存するため、一概にどれがすぐれているとは言えません。どのブランドを選ぶかは、積極的に補正機能を使うかどうか、をひとつの基準にするとよいでしょう。
具体的には……
●デノン/マランツ:補正に頼りたくない人向け。ただし、有償オプションで「Dirac Live」という機能も用意され、細かな調整が可能(マニア向け)。
●ソニー:補正を使いたい人向け。スピーカー間のスムーズな音のつながりを重視する人におすすめ。天井の埋め込みスピーカーを使っている場合に音の位置を下に降ろすなど、“刺さる人には刺さる”機能がある。
●オンキヨー/パイオニア:補正を使いたい人向け。無償で「Dirac Live」を利用可能。パイオニア製品では「MCACC」という独自の補正機能も利用可能。いずれもマニアックではある。
●ヤマハ:補正を使いたい人向け。上位製品には左右スピーカーの設置環境の違いを積極的に補正する機能もある。
●JBL:補正を頼りたくない人向け。AVアンプとしては珍しく、複数のスピーカーに対して一気に測定・補正をする機能を持っていない。上位モデルのみ有償で「Dirac Live」対応。
と言ったところです。
専用の部屋を適度な吸音と反射を計算して作り込んでいく……という意気込みでない限り、ソニーやヤマハの自動音場補正機能を使うのがバランスのよいサラウンド再生を実現するための最も手堅い方法です。試聴室のような理想に近い環境でAVアンプを使う人は少数派でしょう。リビングルームなどでよい音を手に入れようとするならば、積極的に高精度な補正に頼るべきなのです。
ソニー「STR-AN1000」の「インシーリング スピーカーモード」のイメージ。すべてのスピーカーを埋め込み型にすると収まりはよいのですが、必ずしも音質によいわけではありません。その悩みを積極的にサポートする有用な機能で、すべての音が上から聴こてくる違和感を和らげてくれます
最新AV機器の接続方法はHDMIを基本にしていると言ってよいでしょう。そのため、確認すべきポイントの1つ目でもあげたとおり、HDMIのスペックは最新が望ましいと言えます。自身がつなぎたい機器をリストアップして、HDMI入力端子の数は足りているか、通したい信号を問題なく通せるか(パススルーできるか)どうかを確認しておきましょう。
特にゲーム用途を考えているならば、4K/120fpsや8K/60fpsといった高解像度高フレームレートの映像をパススルーできるかどうかだけでなく、「VRR」「ALLM」などに対応しているかどうかは個別に確認する必要があります。
そのほかにも、コンポジットなどのアナログ映像系の入力やラジオチューナーなどを求める場合もあるでしょう。その場合はしっかりスペックを確認しましょう。
デノン「AVR-X1800H」のHDMI入出力端子。4K/120fpsや8K/60fps信号パススルー対応製品ですが、この高フレームレート信号をパススルーできるのは入力4〜6の3系統のみ。このように同じ製品でも端子で性能が異なる場合もあります
現在のAVアンプは、Dolby AtmosやDTS:Xといったイマーシブオーディオフォーマットに対応しているモデルが多数派。あえてDolby Atmos非対応のモデルを選ぶ必要はありませんが、とにかく価格を抑えたシンプルで音のよいAVアンプが欲しいならば、以下の製品がおすすめです。
リアパネルの端子類もシンプルで使いやすいはず。安価でもスピーカー端子はバナナプラグ対応です
2022年発売のデノンエントリーモデル。Dolby Atmos非対応など、あえて機能を省略してシンプルに5.1chサラウンドを実現できるよう配慮されています。ネットワークオーディオ機能はないものの、末尾の「BT」のとおり、Bluetoothには対応。スマートフォンなどからの音楽再生もスムーズです。自動音場補正は「オートスピーカーセットアップ」という名称で、デノンの中でも最も簡易的なもの。HDMIの仕様は最新と言えるので、とにかくシンプルなアンプをテレビと組み合わせたい、と考えるなら最有力候補です。
・Dolby Atmos:非対応
・内蔵アンプ数:5ch
・自動音場補正機能:「オートスピーカーセットアップ」
・HDMI入力:4系統(すべて8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
やはりシンプルなリアパネル。こちらのスピーカー端子mもバナナプラグ対応です
2020年発売のヤマハエントリーモデル。やはりDolby Atmos非対応とすることで価格を抑えています。デノン「AVR-X580BT」とは対照的に、ネットワークオーディオや自動音場補正機能が充実していることに注目。「AVR-X580BT」は機能を絞りすぎ……と感じるならば「RX-V4A」がおすすめです。本機がひとつあればSpotifyやAmazon Musicの再生機にもなりますし、iPhoneからAirPlayで音楽を再生することも可能です。特に注目すべきはオリジナルの自動音場補正機能「YPAO(ワイピーエーオー)」。音響の調整をしない部屋で使うならば、より手軽に高音質を狙えます。
・Dolby Atmos:非対応
・内蔵アンプ数:5ch
・自動音場補正機能:「YPAO」
・HDMI入力:4系統(すべて8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
Dolby Atmos対応製品でも、価格を抑えたAVアンプはたくさんリリースされています。ここでは、15万円以下で購入できるおすすめ製品を紹介します。
HDMI入力は左の3つが4K/120fpsパススルー対応端子です
2020年発売のDolby Atmos対応モデル。自動音場補正は、弟モデル「RX-V4A」よりも高精度に初期反射音を制御する「YPAO R.S.C」を搭載。スピーカーを左右等距離で設置する自信のない場合や、物理的にそれが難しい環境で使うのに適していると言えます。価格.comの最安価格はタイミングによっては5万円を切っていますから、さし当たりDolby Atmos対応が不要でもこちらを選ぶという選択もよいでしょう。オーバーヘッド(ハイト/トップ)スピーカーなしでも仮想的に立体音響を再生するDolby Atmos Height Virtualizerも利用できますから、高機能はむだになりません。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:7ch(5.1.2chシステム対応)
・自動音場補正機能:「YPAO R.S.C」
・HDMI入力:7系統(3系統のみ8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
4K/120fpsなどの高速信号のパススルーに対応するHDMI入力は「8K」の表示がある4〜6の端子です
2023年発売のデノン「AVR-X1800H」は、Dolby Atmos対応のエントリークラスでありながら、アンプとしての音質にこだわった製品です。詳細は関連記事を参照いただきたいのですが、アンプとしての実力を生かすには、比較的シビアなスピーカー設置や音響調整が前提になります。したがって、趣味の製品として愛用していきたい人や、プリメインアンプと比較した場合の音質が気になる人におすすめのAVアンプと言えます。最新の製品とあって、HDMIの仕様などに不安はありません。AirPlay 2に対応するほか、ネットワークオーディオ機能「HEOS」を使えばSpotifyやAmazon Musicの再生も可能です。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:7ch(5.1.2chシステム対応)
・自動音場補正機能:「Audyssey MultEQ XT」
・HDMI入力:6系統(3系統のみ8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
4K/120fps信号パススルー対応HDMI入力は「8k」「4K/120」の表示がある2系統です
今ソニー製AVアンプを選ぶならば、事実上2023年発売の「STR-AN1000」以外にはありません。独自の自動音場補正技術「D.C.A.C.(デジタル・シネマ・オート・キャリブレーション)IX」でスピーカー位置を3次元で測定。この処理をベースとして、スピーカーの音源位置を理想的な位置に電気的に移動させる「スピーカーリロケーション」や天井に埋め込まれたスピーカーの音源位置を下げる「インシーリング スピーカーモード」などさまざまな補正機能を利用できるのです。これらはスピーカー設置をシビアにできないユーザーの大きな助けになります。Spotify ConnectやAirPlay 2対応のほか、BluetoothコーデックはLDACに対応するなど、音楽再生機能も充実。サラウンドスピーカーとしてソニー製のワイヤレススピーカー「SA-RS5」「SA-RS3S」を利用できることも特筆されます。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:7ch(5.1.2chシステム対応)
・自動音場補正機能:「D.C.A.C. IX」
・HDMI入力:6系統(2系統のみ8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
薄型のため端子間が詰まっていますが、ほかのモデルと同等の装備を持っています
冒頭でAVアンプの本体は大きくなりがち、と説明しましたが、例外的に薄型モデルも存在します。それが2022年発売のマランツ「CINEMA 70s」。442(幅)×384(奥行)×109(高さ)mm(アンテナを除く)と高さ以外が小さいわけではないのですが、インテリアとしてアンプを悪目立ちさせたくない人にはぴったりのモデルです。本体がブラックとシルバーゴールド2種用意されるのもうれしいポイント。とはいえ、音質や機能に妥協した製品ではありません。Dolby Atmosに対応しているほか、独自のネットワークオーディオ機能「HEOS(ヒオス)」を使えばAmazon MusicやSpotifyも再生できます。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:7ch(5.1.2chシステム対応)
・自動音場補正機能:「Audyssey MultEQ」
・HDMI入力:6系統(3系統のみ8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
アナログ音声入力は2系統、プリアウトはサブウーハー用2系統のみと端子の装備は絞られています
2024年発売のDolby Atmos対応モデル。パッと見てわかるとおり、薄型(高さ 109.9mm)で、しかも本体色は白。この特徴は、日本市場では唯一無二。白いAVアンプを探しているならば、「MA710」を選ぶほかありません。ただし、自動音場補正を搭載していないことには注意。ほかのメーカー品のように自動での計測と音質の最適化はできません。そのままでも使えないわけではありませんが、AVアンプ特有の少しややこしいマニュアル設定があることは覚悟しておきましょう。入力端子の数など、機能的にはとてもシンプルなので、テレビとの連携を主に、プリメインアンプとして使うのもよいでしょう。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:7ch(5.2.2chシステム対応)
・自動音場補正機能:なし(個別に周波数特性を補正する「EZ Set EQ」対応)
・HDMI入力:6系統(3系統のみ8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
ここからは少し高級品のため、スピーカー端子のグレードも上がっています
ヤマハの高級モデル「AVENTAGE(アベンタージュ)」シリーズに属する2021年発売のAVアンプ。高精度の自動音場補正「YPAO R.S.C」を搭載することは弟機「RX-V6A」と同じですが、イコライジング(周波数特性の補正)などの精度はさらに高められています。さらに、ヤマハ独自の「音場創生」技術の最高峰「シネマDSP HD3(エイチディ キュービック)」を使えることが特徴です。これは、あらゆる音源に対して立体的な空間情報を付与して再生するもの。サラウンドの楽しさを十分に味わいたい! という人にぴったりのモデルと言えるでしょう。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:7ch(5.1.2chシステム対応)
・自動音場補正機能:「YPAO R.S.C」
・HDMI入力:7系統(すべて8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
「TX-RZ50」と兄弟モデルと言える仕様ですが、アナログ映像系端子が省略されるなど、価格差が反映されています
後述するオンキヨー「TX-RZ50」と同時期(2022年)に発売された姉妹機と言えるのがパイオニア「VSA-LX305」です。かつてのパイオニアは多くのAVアンプをラインアップし、独自の音場補正機能「MCACC」と2chステレオと同じ発想でサラウンドを展開する「マルチチャンネルステレオフォニック」思想でAVファンに支持されていました。「VSA-LX305」はそれらを引き継ぐ正統的モデルと言えます。オンキヨーのAVアンプと同じく「Dirac Live」を利用できますが、「MCACC」の強化版「Advanced MCACC」も採用。コンテンツに含まれるLFE信号の遅れを補正する「オートフェイズコントロールプラス」など、ファンにはおなじみの機能が搭載されています。価格.com登録時の初値が172,725円(税込)だったことを考えると、価格がかなりこなれていることもポイントです。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:9ch(5.2.4ch/7.2.2chシステム対応)
・自動音場補正機能:「Advanced MCACC」/「Dirac Live」
・HDMI入力:7系統(3系統のみ8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
15万円を超えるAVアンプとなると趣味性が高くなり、製品間のいちばんの大きな違いは音質ということになります。そのほかには内蔵アンプの数、対応オーバーヘッドスピーカーの数が異なることもあります。いずれにせよ話題はマニア向けになりがち。最後は20万円を区切りに、ちょっとマニアックなニーズに対応する製品を紹介します。
拡張性を持たせるため、多数のスピーカー端子、プリアウト端子を装備していることが特徴です
天井のオーバーヘッド(ハイト/トップ)スピーカーをたくさん設置してDolby Atmosを十全に楽しみたい、でもAVアンプの予算は抑えたい……という人におすすめの製品が2022年発売のデノン「AVR-X3800H」です。ネットワークオーディオ機能「HEOS」でSpotifyやAmazon Music再生できることはもちろん、注目すべきはその拡張性の高さです。Dolby Atmosのためのオーバーヘッドスピーカーを最大6本扱えるほか、サブウーハーを個別に4本出力可能。さらに内蔵パワーアンプの電源を落として使う「プリアンプモード」も搭載。別途パワーアンプを用意して音質アップを狙う方法です。さらに、有償オプションとして「Dirac Live」という自動音場補正機能の利用も可能。いずれの機能も突き詰めるとかなりマニアックに使えるという懐の深さがあります。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:9ch(5.4.6ch/7.4.4chシステム対応)
・自動音場補正機能:「Audyssey MultEQ XT」/「Dirac Live」(有償対応)
・HDMI入力:6系統(すべて8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)
アナログ系の映像入力端子を持っていることが特徴的。古いAV機器との接続性が確保されています
オンキヨー/パイオニアは新体制下で動きだしてそれほど経っていないこともあり、製品数が限られています。ここで紹介するオンキヨー「TX-RZ50」は2022年発売の9chアンプ内蔵モデル。最新製品らしく、HDMIの仕様は最新と言えます(40Gbpsの広帯域対応は3系統のみ)。音楽再生機能としてSpotifyやAmazon Musicに対応するほか、BluetoothのコーデックはaptX HD対応という点も気が利いています。注目すべきは、自動音場補正機能に「Dirac Live」を採用していること。デノン/マランツとは異なり無料で利用できます。ただし、「Bass Control」(低域再生スピーカーのルーティング機能)という機能には非対応であることには注意しましょう。
・Dolby Atmos:対応
・内蔵アンプ数:9ch(5.2.4ch/7.2.2chシステム対応)
・自動音場補正機能:「Dirac Live」/「AccuEQ」(オフライン環境下用)
・HDMI入力:7系統(3系統のみ8K/60fps、4K/120fpsパススルー対応)