XGIMI(エクスジミー)の「Elfin Flip 4K」(中央)、「Elfin Flip Laser」(左)、「Elfin Flip Plus」(右)をレビュー。各モデルの違いとは?
昨今流行のジンバルスタンド一体型プロジェクター。レンズを向けた場所が画面になるという手軽さが人気の理由です。価格.comではTVS REGZAの製品が人気ですが、それに次ぐ人気と言えるのがXGIMI(エクスジミー)。ここでとりあげるのは「本棚に収納できる」ほど小型省スペースの「Elfin Flip」シリーズです。
これまでのレビューで触れてきたXGIMIの製品は、どれも高コスパで好印象でしたが、同社が新たに提案するジンバルスタンド一体型タイプの実力は……?
左の折りたたんだ状態から、使用時は本体をクルっと回転させてレンズを露出させます。この特徴的な機構が「Elfin Flip」シリーズの特徴です
XGIMIは2013年に設立されたプロジェクターブランド。過去には、バッテリー内蔵モデル「Halo+」やバッテリー非内蔵モデル「MoGo 2 Pro」など筒状のLED光源モデルから、Dolby Vision対応がウリの4K高級モデル「HORIZON Ultra」まで、数多くの製品をレビューしました。その印象は共通していて、絵も音も派手さを抑えた手堅い製品作りがされている、ということでした。
フォーカス合わせや台形補正(歪んだ画面の補正)はもちろん自動。レンズを向けた先が画面になるので、天井投写も簡単です。ただし、真上には投写できないので、台形補正が前提になります。また、急角度での投写では電源ケーブルが少しわずらわしくなります
今回レビューする「Elfin Flip」シリーズは、こうした資産を生かしつつ、人気を博しているジンバル一体型プロジェクターをXGIMIが独自に再解釈したもの。その回答が、「使わないときはコンパクトに収納できる」でした。収納時の佇まい、閉じたときの驚きの薄さです。本棚にスッと入り、しかも軽量。投写時に開いて設置するとやや不安定で心許ないのですが、重くて硬いHDMIケーブルでも使わない限りは問題ありません。
とはいえ、今回紹介する3機種はすべてOSがGoogle TV。本体のみでYouTube、Amazonプライム・ビデオ、Netflixなどを再生できます。HDMIケーブル自体をつながない、という場合も多いでしょう。
左から「Elfin Flip Plus」「Elfin Flip Laser」「Elfin Flip 4K」。「Elfin Flip Plus」が特にコンパクトですが、どれも本当に本棚に収まってしまう小ささです
いずれのモデルも付属のACアダプターを使用します。接続端子は、本体に直接挿すような仕様です。それによってシンプルな構造となり、「Flip」の名のとおり、パタッとコインを返すような構造にできたのでしょう。
3機種ともにこの「Flip」構造であることが共通仕様で、異なるのは主に画質に関わる部分(解像度と光源)です。価格の安い順に3機種を見ていきましょう。
3機種に共通しているのは、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を使ったDLP方式のプロジェクターであることと、OSにGoogle TVを採用していること。大きな違いは表示解像度と光源です
左から「Elfin Flip Plus」「Elfin Flip Laser」「Elfin Flip 4K」。「Elfin Flip Plus」のみ電源アダプターとリモコンが異なります
フルHD解像度のLED光源モデル「Elfin Flip Plus」
3機種中で最も安価な「Elfin Flip Plus」は、フルHD(1920×1080)解像度+LED光源のエントリーモデル。たたむと20cm強という薄型で重量も1kgほどと驚くほど軽量。使用時にはくるっと本体を回して、レンズを露出させます。回転はスムーズで、任意の角度で停止します。
冒頭でも触れたようにあまりにも軽いので、立てた感じは少し心許ない印象もありました。ただし、重くて硬いケーブルでも使わない限り後ろが下がってくるようなことはありませんし、Google TVのアプリで(ケーブルの接続なしに)さまざまな動画を楽しむのがメインならば問題にならないでしょう。
投写映像は仰角に打ち込みがあり、本体を水平にしてもやや上側に絵が出ます。これは3モデルとも同じ。テーブルに置いて、その前に座って見るとちょうどよい高さになります。
背面の映像入力端子はHDMI入力1系統とシンプルです
付属のBluetoothリモコン。白いため暗い場所でも見つけやすいうえ、ボタンや十字キーは動かすと自照する仕組みが親切でした。ほかの2モデルにもほぼ同じリモコンが付属します
「Elfin Flip Plus」の実写映像はこちら。やや外光の入る状態で、映像モードは「標準」(デフォルト値)。部屋を暗くすれば、映像の明るさに大きな不満は抱かないでしょう。以下、ほかの2モデルも同条件で撮影したものを掲載します 【パッケージ/映像協力:ビコム株式会社 Ultra HDブルーレイ「四季 高野山」】
本稿では、あえて台形補正をオフ、全暗の環境にして最高画質を探ります。この作法はほかの2機種でも同様です。手始めに、「画像モード」(映像モード)を「標準」にして詳細に見ていきましょう。スクリーンにはキクチの立ち上げ式ホワイトマットスクリーン「GFP-80HDW」(グランヴューホワイト/80インチ)を使用します。
LED光源ということもあり、やや明るさが物足りないのは、他社製LED光源プロジェクターと同様。記憶ベースながら、以前レビューした同クラスのLED光源プロジェクター「Halo+」よりややピントが甘く、ジャギー(輪郭線のガタガタ)が目に付く印象です。普通に動画コンテンツを見ている分には気にならないものの、厳しい目で見ると、白側(明部)が飛び気味で色にじみや輪郭のザラつきが動きとともに目立つ場面があります。たとえば、冬空や雪景色は一面まっ白く、ピーカンの空は画面全体で色が浅くなりがち。いっぽうで暗いシーンはなかなか粘り、潰れがちなところまで色の違いを表現しているのは立派です。
「画像モード」のプリセットは写真のとおり。「標準」と「映画」モードでは「色温度」のほか、「緑ゲイン」「青ゲイン」に差がありました。ここに絵作りの核心がありそうです。なお、映像設定には「パフォーマンス」という最大の明るさになる設定がありますが、色が全体に緑がかってしまうため、映像鑑賞用途として実用的ではありません
映画作品ではやはり「映画」モードを選ぶべきでしょう。マグネター「UDP900 MKII」でUltra HD ブルーレイ「落下の王国」を再生してみました。海岸で勇者6人が勢揃いするシーンでは、衣装の色違いはもちろん、実写ならではの景色の魅力も表現できています。青い空、岸辺の土、やや濁った海の色を描き分けました。
上位モデルと比較すると、全体的なヌケ感のほか、極端に白が多いシーンや動きが激しいシーンで物足りないところはあるものの、肌の色や肌理の描写は、この価格にしては立派。つるっとした肌の純粋な少女と、青いヒゲ剃り跡の失意に暮れた男の心情の違いが、叙情的に表現できています。
「物足りない」と言っても、それはあくまで厳しく見ればの話。入力ソースによる画質の差がそこまでストレートに出ないので、普段見るのがYouTube主体で、Netflixも4Kは契約しない、という人ならばあまり問題はないでしょう。実際、地上波Eテレで放送された「日曜美術館」のような、もともとSD解像度の番組(再放送)でも、色の違いを上手く表現し、黒い衣服の陰影まできちんと見せてくれました。
なお、自動台形補正機能も使ってみましたが、見た目の映像にさほど違いがないことから、シビアに高品質な映像を見ると言うよりも、フリースタイルで自由な場所に投写して楽しむ製品だと理解しました。
音質モードである「サウンド スタイル」は「映画」が無難です
サウンドはヌケがよく、聴きやすく仕上がっています。アンプ出力は3W×2のステレオ構成とあって、無理をせず手堅くまとめたなという印象です。本体が薄型なので、音量を上げすぎるとビビり音がすることには注意しましょう。
「サウンド スタイル」(音質モード)は「映画」「音楽」「ゲーム」「スポーツ」を用意されていますが、どんな番組に対しても「映画」がよいでしょう。最もリズミカルかつパンチがあって、ナレーションも明瞭でした。また、「ダウンミックスモード」として「ステレオ」と「サラウンド」を選べますが、さして違いはありませんでした。悪さをしない「ステレオ」を選んでおけば間違いありません。
フルHD解像度のレーザー光源モデル「Elfin Flip Laser」。「Elfin Flip Plus」よりもの厚みと重量があるため、よりしっかり立ちます
「Elfin Flip Laser」は「Elfin Flip Plus」と同じフルHD解像度ながら、光源をレーザーにしたモデル。スペック上は光源の違いだけに見えて、本体サイズやより充実したメニュー構成からして、むしろ上位モデル「Elfin Flip 4K」と共通点が多いようです。ガンメタ調のカラーリングにも高級感があります。
やはり映像入力端子はHDMI1系統のみ。排気音は「Elfin Flip Plus」よりやや大きめに感じられました
「Elfin Flip Laser」の実写映像はこちら。「Elfin Flip Plus」よりもかなり明るいため、スクリーンからの反射で部屋全体が少し明るくなって見えます
電源を入れてGoogle TVが立ち上がると、もうぱっと見でパリッと明るく、ビビッドな赤が目に飛び込んできます。この時点でレーザー光源感満載です。
初期設定の映像モードである「標準」が推奨されているようなので、まずはこれで各種映像を見ていくと、「Elfin Flip Plus」と同じ解像度(とパネルサイズ)にもかかわらず、よりコントラストは強靭で、しかもクロマ(色)エラーが見られなくなり、4Kからのダウンスケールに伴うじりつきもわずか。動きへの追従性もずっとよくなりました。
たとえば、画面全体が眩しいような雪景色の再現は相変わらず厳しいものの、白い雲のたゆたいや朝もやは表現できています。これならば、朝の爽快感や草原の空気感、植物のフレッシュさがよく汲み取れます。水しぶきも自然です。
逆にクッキリしすぎて画素のメッシュが見えるほどで、夜景も朝焼けのようにややあっけらかんとしすぎるほど透き通って見えます。
やはり使い分けたいのは映像モード。色温度が高く、クッキリテイストの「標準」モードと、あえて控えめな絵作りを目指したと思われる「映画」モードを常用するとよいでしょう
Ultra HDブルーレイ「落下の王国」では、海中の青と緑と黄の違い、凝った緑の衣装の上下生地の違いまで克明。ただし、「標準」モードではデジタルシネマのように鮮やかすぎて違和感がありました。そこで「映画」モードに変更すると、ジャケ写と同じ絵画調のトーンになり、落ち着いて鑑賞できました。
映像モードは、「映画」でも十分な明るさなのでこちらを常用したいところですが、テレビ放送のバラエティ番組などを見ると、肌の色合いは「標準」のほうが正しい(よりリアルに近い)と感じます。「標準」モードには細かく気になる部分はありますが、YouTubeなど画質がさほどすぐれないソースでも気兼ねせず楽しめるし、むしろそういったソースこそうまく表現していました。
スピーカーはHarman/Kardon製。アンプ出力は7W×1とされていて、「Elfin Flip Laser」と「Elfin Flip 4K」は共通の仕様です
「Elfin Flip Laser」はHarman/Kardon製スピーカーを搭載していることもひとつのウリです、実際、「Elfin Flip Plus」で目立った音量を上げたときのビビり音などをうまく抑制しており、やや聴きやすくなっていました。もっとも、リビングに集まって大勢で聴く、という場合は十分とは言えません。大音量を期待するならば、外部スピーカーを活用したいところです。
4K解像度のレーザー光源モデル「Elfin Flip 4K」。ブロンズ調のカラーリングに高級感があります
「Elfin Flip 4K」は「Elfin Flip Laser」と同じRGBレーザー光源を搭載し、さらに表示解像度を4Kとしたモデル。シリーズ最上位モデルらしく、光学式ズーム(主に広角側)のほか、「スクリーン自動アジャスト」や「障害物自動回避」などの機能も加わり、至れり尽くせり。さらに、ゲーム愛好家にはうれしい低遅延表示も可能。遅延は「1ms at 1080P@120Hz(ゲームモード、VRRオン、自動台形補正機能オフ時)」とされています。
「Elfin Flip 4K」のみHDMI入力が2系統あります
4K解像度とレーザー光源に気を取られがちですが、実は本当に注目すべきは設置性の高さです。「Elfin Flip 4K」には光学ズーム機能があり、本体を動かすことなく画面の大きさを調整できるのです。
たとえば投写サイズを80インチにする場合、「Elfin Flip Laser」が投写距離2.13mなのに対し、「Elfin Flip 4K」では1.74m〜2.60m。同じ投写距離でより大きく壁に投影できるほか、(画質を犠牲にすることにはなりますが)自動台形補正を広範に活用できることになります。
合わせて、スクリーンの黒枠を検知して映像を収める「スクリーン自動アジャスト」や、障害物を避けて投写する「自動障害物回避」が、自由な場所に投写して楽しむ「Elfin Flip」の世界観をさらに豊かにしています。
「Elfin Flip 4K」の実写映像はこちら。写真ではわかりにくい部分ですが、「Elfin Flip Laser」とは色再現性や解像感で差がでていました
全体の画調は「Elfin Flip Laser」に似ており、ハイライトがややのっぺりしているのも同様。もっとも、色味は、レーザー感満載でコッテリした「Elfin Flip Laser」よりも少しスッキリして自然に。それでいて、わずかなトーンの違いも描き分けて好印象です。
小さい文字や線の太細をきっちり表現できている点が4K解像度ならでは。水平の動きが安定していて、クロマ(色)エラーも見受けられません。色の分離がよいのもRGB3色レーザーならではと言えるでしょう。
たとえば、細かい雲の描写や山並みの木々、動物の毛並みなどもぐっと生々しく見えてきます。遠くまで細かく解像することで、立ち上る靄や湯気もつまびらか。クローズアップした絵では「Elifn Flip Laser」も遜色ないかと思わせる部分もありますが、ワイドな景色になれば、解像度が上がったことによりクッキリ見通せて、立体感も出てきます。また、対象物のかすかな動きやカメラの揺れまでも敏感にとらえてくれます。
映像モードは「標準」のほか、「映画」「ビビッド」「ゲーム」「スポーツ」が用意されています。低遅延を優先するゲーマーなら、「ゲーム」モードにも注目しましょう
Ultra HDブルーレイ「落下の王国」では、映像モードの完成度に唸りました。「標準」モードでも、「Elfin Flip Laser」の「映画」モードが持つ味わいまでカバーしている印象なのです。さらに「映画」モードは、単に暖色になるだけでなくやや枯れた色となり、輪郭線を強調しないふわりとやわらかな滋味深い映画トーン。最新のデジタル映像を見慣れた人から見ると地味かもしれませんが、なかなか“通な絵”。ここで、「ダイナミックブラックレベルエンハンスメント」(映像に応じて適応的に黒を沈み込ませる機能)を入れると、さらに“通な絵”になります。
EテレのSD素材「日曜美術館」を再生しても、色に関しては最近の放送番組のように正確な描写で、「標準」モードでも華美になりません。
最後にサウンドチェックも兼ねて、Netflixで「Fujii Kaze Stadium Live “Feelin' Good”
」を視聴します。基本的には、「Elfin Flip Laser」と同じくHarman/Kardon製スピーカーで、お世辞にも迫力があるとは言えません。音質モード(「サウンドスタイル」)は、初期値の「標準」や、スタジアムっぽい広がりを感じる「スポーツ」ではなく、ボーカルやリズムがしっかり聴こえる「映画」がいちばん映像に寄り添います。これは「Elfin Flip Plus」含め、すべての「Elfin Flip」シリーズに共通していました。
また、音量を上げすぎるとビビりが出るし、ダウンミックスモード(「ステレオ」と「サラウンド」)の差も薄いことも同様。リビングで大勢が集まってライブを楽しむ……という雰囲気を得るには、やはり外部スピーカーとつなぎたいところです。
そうすれば、カメラごとの絵の違いや藤井風のアイキャッチ、リップのきらめきまで見えて大興奮すること間違いなし。映像モード「標準」だとつるっとしすぎるので、ややアートな印象になる「映画」が私にはハマりました。
LED光源のスタンダードモデル「Elfin Flip Plus」から、レーザー光源モデル「Elfin Flip Laser」、4K解像度のレーザー光源モデル「Elfin Flip 4K」まで一気に見てきました。普段は本棚に忍ばせて、使うときだけ取り出して気軽に投写、というコンセプトは独創的でとても面白いと思います。
では、そのコンセプトに共感した方は、どれを選ぶべきでしょうか?
「Elfin Flip Plus」は価格が手ごろで軽量薄型、画質面でもLED光源による色味が素直。価格やコンパクトさ、手軽さを求めるならば有力候補でしょう。ただし、映像の明るさとフォーカス感の点で同価格帯のライバル機を凌ぐほどではありません。
レーザー光源の「Elfin Flip Laser」はフォーカス感があるものの、色がかなり派手めで好みが分かれそうです。価格を重視しつつも、映像の明るさ、パッと見たときの派手さを求めるならば「Elfin Flip Plus」よりも「Elfin Flip Laser」が好適と言えるでしょう。
その点、「Elfin Flip 4K」は、レーザー光源ながら穏当な絵作り(色再現)にも対応できる懐の深さがあり、光学式ズームも便利。ほかの2製品と比べれば高価ですが、最新の4Kプロジェクターにしては妥当と言えるでしょう。画質・設置性の高さから、予算さえ許せばやはり「Elfin Flip 4K」を選びたいところです。