フォステクスから、オーディオ初心者でも手軽にハイレゾ音源を楽しめる新シリーズ「FS」が登場した。製品ラインアップは、アクティブスピーカー「FS-4AS」と、据え置き型のUSB DAC「FS-3DA」。いずれもデスクに置けるサイズで、高音質を楽しめる製品だ。それぞれ単品販売となるが、木目をあしらったデザインで統一されており、そろえて使いたくなるコンポーネントシステムのような製品となっている。今回は実際にパソコンデスク上に両機種を設置して試してみた。
筆者の幅150cmサイズのパソコンデスクにFS-4ASとFS-3DAをセッティングして試聴してみた(※スピーカースタンドは付属しない)。幅90cm程度に収まっており、標準的なパソコンデスクでも問題なく設置できそうだ
ブックシェルフ型のアクティブスピーカーFS-4ASの大きな魅力となるのが、設置性の高さだ。スピーカー1本あたりの本体サイズは150(幅)×237(高さ)192(奥行)mmで、2本あわせてもA4サイズでおさまるようになっている。手狭なパソコンデスクでも比較的設置できそうなデスクトップ向けスピーカーだ。実際にデスクに設置してみも圧迫感は少ない。本体はしっかりとした作りで、重量は約3.3kgとわりと重いスピーカーに仕上がっている。
音についてもこだわっている。ドライバーユニットは、100mmサイズのウーハーと、19mmサイズのツイーターの2ウェイ構成。フロントにバスレフポートを2つ搭載。スピーカーユニットをドライブするアンプにはD級を搭載し、それぞれの帯域を専用に増幅するバイアンプ方式を採用。ウーハー用に25W、ツイーター用に16Wを搭載することで、ユニットの性能を引き出している。再生周波数帯域は60Hzから40kHzとワイドだ。
高級感のあるデザインも注目だ。ボディのルックスは本体側面の木目調パネルが特徴的。FSシリーズは、フォステクスのパーソナルスピーカーのカテゴリーに属しているが、同カテゴリーの中で木目調のビジュアルを採用しているのはFSシリーズのみだ。
本体前面と背面。ネットはなし。接続はRCA。電源はケーブル直付け(ACアダプター不要)となっている。ボリュームノブはクリック感があり、電源スイッチはスタンバイ/オートスタンバイ(一定レベルのゲインを超えると自動オンになる)
本体側面には、高級感のある木目調のパネルが使われている
100mmウーハー。クラフトパルプを基本とした振動板を採用し、さらに表面を特殊コーティング。そのほかにも、高剛性アルミダイキャストフレームやブチルゴムを採用したエッジなど、振動対策も随所に施した
高音域を受け持つツイーターには、19mmサイズのソフトドーム・ツイーター(UFLC)振動板を採用
価格は、価格.com最安価格(2015年1月26日時点)でブラックのFS-4AS(B)とホワイトのFS-4AS(W)ともに37,800円となっている。
スピーカーのカラーは、ブラックのほかにホワイトもある
FS-3DAは、最大96kHz/24bit PCMに対応したUSB DAC。入力は、USB(USB 2.0)、アナログRCA、デジタル角型の3系統で、出力はアナログRCAとヘッドホンの2系統をそれぞれ切り替えて使用する(同時使用は不可)。最近の高音質USB DACに比べると再生性能は控えめで、入出力数も必要最小限だが、その分コストパフォーマンスは高い。価格.com最安価格(2016年1月26日時点)は18,360円。
左右側面に木目調パネルを採用し、FSシリーズとしてアクティブスピーカーFS-4ASとデザインがマッチしているのも特徴だ。
また、ハイレゾ対応DACで必要となることが多いドライバーのインストールは不要で、Windows 7以上もしくはMac OS X 10.6以上であれば、USBケーブルで接続することで使用できる。電源はバスパワー駆動となっており、ACアダプターもいらない。
FS-3DA。フロントには、ヘッドホン出力やボリュームのほか、入力切り替えスイッチ、出力切り替えスイッチを搭載している
左右側面に木目調パネルが装着されている
入出力は、アナログがRCA×2系統(入力と出力)、デジタルが角型(出力)とUSB(入力)となっている
今回、FS-4ASとFS-3DAのほかに、IsoAcousticsのスピーカースタンド「ISO-L8R155(Long)」、山本音響工芸のキューブベース「QB-4」、SAECのオーディオラインケーブル「SL-1980」、ACOUSTIC REVIVEのクロロプレインインシュレーター「CP4」を使用して試聴環境を構築した。
FSシリーズのよさは空間の表現力と中低音から高音の階調表現。コントラストのはっきりとした空間の表現になっており、特にボーカルの音像はハッキリとした傾向。スピーカーより少し前に定位し、歌っている様子をシャープに描き出す。変な味付けを加えずありのままを出している印象だ。目の前で歌っているような感じをしっかり再現してくれる。いっぽうでボーカル以外の、たとえばオーケストレーションを聴くと、左右へのスムーズな広がりが印象的だ。
このストレートに伝わるボーカルと広がりのあるオーケストレーションが、うまいこと混ざり合ってクオリティーの高い音を再現している。さらに、デスクトップオーディオならではの使用するときの短い距離感が、スイートスポットとはまっているのも大きなポイントだ。
また、中低音から高音の階調表現も見逃せない。特に高音へのつながりはスムーズで音の響きと余韻もきれいだ。人によっては少しきらびやかに感じるかもしれないが、目立ちすぎないチューニングだ。
気になるのは低音だ。打ち込み系の楽曲でいわゆる(超)重低音といわれるような深く沈み込むような音が抜ける感じがある。多弦ベースやバスドラムの量感はしっかりでているものの、打ち込み系の重低音では多少割り切っている印象だ。ただ、低音はキャビネットの容積とも関係するため、このクラスのサイズのスピーカーでは、かなり健闘しているといえるだろう。
FSシリーズを実際に聴いて感じたのは、ニアフィールドでの相性がよかったこと。奥行70cmの標準的なパソコンデスクにセッティングしても、ハイレゾ音源の高音質を楽しめた。さらにセッティングを詰めていくことで、音のクオリティーをさらに引き上げることができるだろう。
デザインがマッチしているのでFSシリーズとして組み合わせて使用するのがベターだが、スピーカーであればアンプを内蔵しているため、ラインアウト付きのハイレゾ対応ポータブルプレーヤーとつなげることで手軽に高音質環境を構築できる。USB DACについてもハイレゾ対応のヘッドホンと組み合わせて使うこともできるはずだ。
フォステクスというと、プロ向けというイメージもあるが、この製品では音楽ファンやハイレゾ初心者でも手軽に高音質を楽しめるシリーズとなっている。