レビュー
ボーカルがとてもリアルでたまらない!

iFI Audio「micro iDSD」の黒い“BL”と「nano iDSD」の“LE”バージョンを聴く

iFI Audioの「micro iDSD BL」(左)と「nano iDSD LE」(右)

iFI Audioの「micro iDSD BL」(左)と「nano iDSD LE」(右)

コンパクトなボディから想像できない、ハイスペックな機能性と良質なサウンドによって、瞬く間に人気モデルとなったiFI AudioのDAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ「micro iDSD」と「nano iDSD」。「micro iDSD」はリニアPCMが768kHz/32bit、DSDが512(22.4MHz)まで対応する超ハイスペック音源への対応とともに、デジタルフィルター選択やIEMモードの設定、RCAプリアウトのボリュームオンオフ、同軸/光デジタル一体型コネクターの搭載、バッテリーの内蔵など、ユーザビリティにとことん配慮した使い勝手のよさも好評だった。

いっぽうの「nano iDSD」は、なんといってもコストパフォーマンスの高さだろう。3万円を切った価格でありながら、PCM384kHz/32bit、DSD256(11.2MHz)まで対応していたのは、当時この「nano iDSD」が唯一無二だったし、さらにバッテリーまで内蔵していたのだから恐れ入る。音質に関しても、多くの人が満足できるクオリティを確保していた。

そんな製品たちに、このたび(ほとんど同時期に)パーツを見直すことでさらなるクオリティアップを推し進めたモデルと、機能限定することでさらなるロープライスを実現したモデルの2つが新登場した。それが「micro iDSD BL」と「nano iDSD LE」だ。ということで、今回は「micro iDSD BL」をメインとしつつ、この2製品について紹介していこうと思う。

BLは「BLACK LABEL」の略

さて、ここまでの記事で、とあることに気がついた方は少なくないと思う。そう、筆者も新製品ニュースや他のレビュー記事を読むたびに、ひとこと突っ込みいれたくてうずうずしていた。

「なに、BL!?」

そう、名前にBLの二文字がついているのだ。実際のところは「BLACK LABEL」の略で、あのBLとは全くこれっぽっちも関係ないのだが、鈍く輝いている黒くて堅いアルミボディといい、英国紳士の天才エンジニアが作り上げた製品だというストーリーなど、いろいろと妄想が膨らみ続ける女子も多いことだろう(え、いない!?)。ということで、今回の記事は腐っているいないはともかく、女子向けの音源をメインにチョイスしてのレビュー記事をお届けしたいと思う。なにしろ名前がBLだけに。あ、途中の機能紹介などのパートでは、ややこしい数字とか名前とかがやたら出てくるが、そのあたりはよく分からない、というか興味がない、という人は斜め読みしてもらってもかまわないのでよろしく。

“BL”で何が変わった?

ということで、まずはちょっとだけ真面目に、新モデルの機能性について紹介をさせていただこう。この「micro iDSD BL」は、機能面ではオリジナルモデル「micro iDSD」とまったく変わりない。768kHz/32bitまでのリニアPCM、22.4MHzまでのDSD音源に対応しており、どんなハイスペックなハイレゾ音源でも再生することができる。具体的にいえば、TVアニメ「おそ松さん」のEDテーマを手がけたTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのオリジナル曲「visible invisible」(DSD11.2MHzレコーディングされた音源)もダウンコンバートされず、ネイティブ再生で楽しむことができる。

続く「micro iDSD BL」の大きな特徴といえば、入力端子の豊富さだろう。USB端子は一般的な製品と異なり、USB A“オス”端子を採用しているが、これはiOSデバイス向け「Lightning - USBカメラアダプターケーブル」やウォークマン用「ハイレゾオーディオ出力用USB変換ケーブル」などが直接接続できるよう配慮されたもの。iPhoneやウォークマンと(もちろんAndroidスマートフォンとも)ケーブル1本で接続でき、高音質が楽しめるのは、とても手軽でありがたい。

また、同軸デジタルと光デジタルを兼用する独自のハイブリッド(イヤ今回の記事的には“バイ”と表現すべきか!?)接続端子や、3.5mmアナログ入力端子も用意され、パソコンからテレビから専用DAPからスマートフォンまで、ほぼ何でも接続が可能なことも重宝する。

さらに、ボリュームコントロールのオンオフが可能なアナログRCA出力端子も用意されており、そのまま自宅のオーディオシステムでも活用することができる。まるでアイドルユニットのリーダーかなにかのような、とてつもない万能選手だったりするのだ。

リアパネルのインターフェイス。USBデジタル入力にUSB Aのオス端子を採用しているのはかなり貴重だ

リアパネルのインターフェイス。USBデジタル入力にUSB Aのオス端子を採用しているのはかなり珍しい

加えて、デジタルフィルターのタイプやヘッドホン出力の大きさを(Eco/Normal/Turboの3つに加えてカスタムIEM用2つの合計5モードから)選べるほか、広大な音場を作り上げてくれる「3D+」や引き締まった低音を聴かせてくれる「XBass+」など、独自の調整機能を持ち合わせている。特にヘッドホン出力は、「IEMatch」と名付けられている通り、カスタムIEM(インイヤーモニター)など低インピーダンス(鳴りやすく作られているためかえってベストな音量にしづらい)イヤホンなどでも、音量と音質とのバランスがよい、良質なサウンドを楽しむことができる。具体的にいえば、自分の好きなアーティストが使っているスタジオモニターヘッドホンから、自分の好きなアーティストがステージで使っているカスタムIEMまで、さまざまな製品をベストな音で楽しむことができるようになっている。

フロントパネルには、ヘッドホン出力端子やアナログ入力端子、「3D+」や「XBass+」、ボリュームコントロールノブなどのスイッチが並ぶ

本体側面や底面には、サウンド調整用の各種スイッチが用意されている。これらの組み合わせで、非常に細かなサウンドチューニングが行える

もうひとつ、4800mAhもの大容量バッテリーを搭載しているうえ、いざというときにはスマートフォンなどに充電できるのもありがたい。実際、これには筆者も(所有しているオリジナル「micro iDSD」に)何回か助けられている。

本体側面にはUSB Aメス端子も用意されている。こちらを使って、本機をモバイルバッテリーように使うこともできる

多機能のため長々となったが、このように「micro iDSD」はオリジナルモデルから高性能&多機能を誇っていた。では、“BL”で何が変わったかというと、そればズバリ、音質だ。

まず、オリジナルのオペアンプをTI社にオーダーメイド。HCOFC銅のリードフレームや4Nゴールド・ボンドワイヤーを使用することで、格段に音質を向上させたという。加えて、旧サンヨー(現パナソニック)製OS-CON(コンデンサー)や、さらに精度を高めたクロックなどにより、安定した出力や超低ノイズ&ジッターを獲得したとアピールしている。こういった、音質に関して理詰めで徹底した改良を加えているのが、BLの特徴だ。

「Free!」や「おそ松さん」の音源を使って音質をチェック!

ということで、ここからはお待ちかね「micro iDSD BL」の試聴レビューをお届けしよう。もちろん“お”約束通り、試聴音源についてはアニソンやJロックなど、男性ボーカルをメインにチョイス。なお、再生にはiPhone5Sを(アプリはHFプレーヤーを)使用し、「Lightning - USBカメラアダプターケーブル」を使って「micro iDSD BL」と接続。JH Audio「Michele」とフォステックス「T50RP MK3n」で試聴した。

今回は「Lightning - USBカメラアダプターケーブル」を使ってiPhoneを直接接続した

今回は「Lightning - USBカメラアダプターケーブル」を使ってiPhoneを直接接続した

まずはTVアニメ「Free!」の「SPLASH FREE」リミックスバージョンのハイレゾから。 聴き始めてまず最初に驚いたのが声の質感だ。リミックスバージョンのため、いろいろとエフェクトがかけられているはずなのだが、マイクの向こうで歌っているかのような、リアルな姿が浮かんでくるのだ。いっぽう、打ち込み主体の演奏は、音色こそiPhone直とそう変わらないものの、高域の歪み感というか、尖った感じがずいぶん引っ込み、聞きやすい印象になった。

続いては、「Free!」繋がりでOLDCODEXの「Feed A」「Aching Horns」CD版(をリッピングしたもの)を試聴。こちらは、演奏やレコーディングの意図が包み隠さず全て伝わってくる、情報量の多さが特徴。叩きつけてくるかのような演奏を、Ta_2のヴォーカルがねじ伏せている様子が如実に伝わってくる。まるで爆音のライブ会場にいるかのような迫力とグルーブ感がたまならい。Ta_2の歌声も、「Feed A」と「Aching Horns」では微妙に歌い方、感情の表現が違っていたりと、いくつも新しい発見があった。

もうひとつ、TVアニメ「おそ松さん」のEDテーマ「SIX SAME FACES 今夜は最高!!!!!! 」も試聴。こちらもボーカルが超リアル。マイクの前で話したり歌ったりしているいい声の6+1人の声に囲まれ、女子でなくても思わず鳥肌が立ってしまいそうになる。これはたまらない。

次は、ちょっと趣を変えてUVERworldのライブ盤を試聴。まるで会場にいるかのような、臨場感溢れるサウンド。いや、もしかすると会場で聴くよりもクリアかもしれない、心地よく、それでいて迫力満点の演奏が楽しめる。自然と体が揺れてきそうな、臨場感溢れるサウンドだ。

このように「micro iDSD BL」は、とてつもなくピュアでクリアな心地よいサウンドを楽しませてくれる。それは同時に、ボーカルがとてもリアルに感じられるし、音楽の持つ迫力もさらに増してくれる。いい音は、とても楽しい。そんなシンプルな事実を実感できる製品だ。

ちなみに、オリジナル「micro iDSD」と比較試聴もしてみた。こちらも解像度感の高さなど、かなり良質だったが、音のピュアさやリアルさについてはBLのほうが一枚も二枚も上手だった。いまからどちらかを選ぶのだとすれば、迷わずBLを推薦する。

オリジナル版の「micro iDSD」とも音質を比較してみた

オリジナル版の「micro iDSD」とも音質を比較してみた

価格とポータブル性では断然“LE”が有利

とまあ、ここまで「micro iDSD BL」について紹介してきたが、さすがにいきなり7万円のオーディオ製品には手が伸びない、という人のために、「nano iDSD LE」も紹介しよう。

こちら、“ライト・エディション”と名付けられているとおり、オリジナル「nano iDSD」から同軸デジタル出力やDSD11.2MHz対応など、いくつかの機能を省くことでロープライス化を実現したモデル。基本的な部分は変わらず、ハイレゾ音源もリニアPCMで384kHz/32bit、DSDで5.6MHzまで対応と、現在流通しているハイレゾ音源はおおよそ大丈夫。それでいて、2.7万円前後のオリジナルに対して1.7万円前後という低価格さを実現しているのだから、コストパフォーマンス的にはなかなかのものといえる。ちなみにボディカラーは、メーカーがチタンブラックと呼ぶ、濃いめのシルバーを採用する。

「nano iDSD」から機能を絞り、コストパフォーマンスを高めた「nano iDSD LE」。濃いめのシルバーカラーが特徴的だ

機能を絞ったはいえ、リニアPCMは384kHz/32bit、DSDは5.6MHzまで対応と、なかなかにハイスペックだ

機能を絞ったはいえ、リニアPCMは384kHz/32bit、DSDは5.6MHzまで対応と、なかなかにハイスペックだ

なお、こちらはUSB端子にBタイプを採用しているため、iPhoneとの接続は「Lightning - USBカメラアダプターケーブル」に加えて変換コネクター等も必要となる。

フロントパネルには、RCA出力やヘッドホン出力、ボリュームコントロールノブを用意

フロントパネルには、RCA出力やヘッドホン出力、ボリュームコントロールノブを用意

リアパネルのUSB端子はBタイプとなっており、パソコン以外のデバイスとの接続には、変換アダプターが必要になってくる

リアパネルのUSB端子はBタイプとなっており、パソコン以外のデバイスとの接続には、変換アダプターが必要になってくる

同じ楽曲でひととおりチェックしてみたが、さすがにBLほどの超絶な音のクリアさ、心地よさはなくなってしまう。低域はややウォーミーで、迫力を重視したイメージだ。とはいえ、iPhone直に比べれば(比べるのもかわいそうなほど)圧倒的にパワフルな迫力のあるサウンドが楽しめる。逆に、ボーカルは歌声がとても近く、声がハッキリと届いてくるため、屋外で聴くにはこちらの方が楽しいと感じる人がいるかもしれない。やや厚手のボディがスマートフォンとの接続には少々アンマッチングに思えるかもしれないが、「micro iDSD BL」に対して半分近い長さになっているため、ポータブル性もこちらの方が高い。

結論としては、音質では絶対「micro iDSD BL」。価格とポータブル性では断然「nano iDSD LE」。用途と予算によって、自分にとってどちらがベストかをじっくり検討して欲しい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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