以前、edelkrone(エーデルクローン)の「QuickRelease One」という製品をご紹介したことがある。今回は同じメーカーの、「WING」という製品をご紹介したい。
ドリーとは、カメラ移動ショット全般を指すのだが、滑らかにドリーをするのは大変だ。距離が長ければ、地面にレールを敷いて、その上に台車を載せ、カメラをその上に設置する。これは映画やCMといった撮影で、スタッフが数人いないと扱えないレベルである。
一方短いドリーでいいのなら、「スライダー」を使う手がある。これは最近Libecが手ごろな製品をリリースして、人気を集めている。
三脚に載せて使えるので、最初からドリーを撮影するとわかっているならがんばって持っていく。だがドリーするかどうか現場に行ってみないとわからないようなケースでは、なかなか面倒だ。
その点を解決するのが、WINGである。これは折りたたみ式のアームになっており、上部の端にカメラを取り付け、底部の端は三脚に取り付ける。今回買ったのは、本体重量0.54kgのもっとも小さいWING3というモデルで、250ドル。小型故に、耐荷重量は1.4kgまでだ。なおカメラ側は一般的な1/4インチネジ(小ネジ)だが、底部側は3/8インチネジ穴(大ネジ)なので、三脚によってはサイズ変換ネジが必要になる。
カメラの固定にはボールヘッドを併用すると便利
アームは、折りたたむと全長15cmほどだが、移動距離としては約40cmとなる。内部にはギヤとベルトがあり、アームが動いてもカメラは正面を向き続けるよう、台座部分が回転するようになっている。
実際に撮影してみると、均等なスピードで動かすのはなかなか難しい。と言うのも、アームの曲がり始めはトルクがきつく、真ん中ぐらいが一番緩くなる。同じ力で横に押し続けても、動きの中でムラが出るのだ。
手動操作ではどうしても動きムラが出る
しばらく練習してコツをつかんだのだが、動き始めと動き終わりで、アーム部の真ん中のジョイント部分をもう片方の手でアシストしてやると、きれいに動かすことができるようだ。だがゆっくりしたスピードで動かすと、やはり動きにムラが出る。
ゆっくり、かつ滑らかに動かす方法としては、何かモーターを使って動かす方法がある。同じくドリー製品では、ひもを使ってカメラを引っぱるという製品を見かけたことがあるので、何か自宅にあるもので簡単にできないかと見渡してみたところ、いいものがあった。
以前タイムラプス撮影をする際に購入した、電動の回転雲台だ。通常はタイムラプス用なのでゆっくりしか動かないのだが、位置決め用に早く回転するモードがある。これを使ってひもを巻き取らせ、そのトルクを使って動かすのだ。
電動の回転雲台にひもを巻き取らせる
たこ糸を使用してみたところ、ひもの弾性があるので動き出しにブレがあるものの、動き途中は非常に滑らかでいい感じに動かせることがわかった。
電動モーターで滑らかにドリー
設置に手間がかかるのは難点ではあるが、小さいものを撮影する際には、相当ゆっくり動かさないとあっという間に通り過ぎてしまうので、こうした電動に頼るほかない。動画でブツ撮りが必要な人はあんまりいないかもしれないが、ドリーで撮影すれば雰囲気が全然変わって高級そうに見えてくるのが不思議なところである。
WINGのメリットは、40cmドリーをカメラバッグに突っ込んでいつでも持ち歩けることにある。事前に覚悟して機材を準備する必要もなく、その場で思いついたらドリーショットが撮れると言う点が画期的だ。
今回は一眼レフを使ったが、iPhoneのような小さいものでも使える。素人にはなかなか滑らかなドリーなど撮れないので、動画撮影では大きく差を付けることができるだろう。
AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITなどのメディアを独自の視点で分析するコラムで人気。メルマガ「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」も配信中。