いいモノ調査隊

撮影機材は0円で作れる!? プロカメラマンが教える裏技で写真を撮ってみた

スマホ撮影なんですが、ちょっと手間をかけています

こんにちは。カメラのことが全然わかっていない斎藤充博です。この間、プロのカメラマンである友人と居酒屋もも焼き嵐坊で飲んでいたときに、こんな話を聞きました。

プロカメラマンのヨシダヤスシさん。長い付き合いの友人

プロカメラマンのヨシダヤスシさん。長い付き合いの友人

ヨシダ「スマホで料理写真を撮ることってよくあるじゃないですか。そういうときって、もう1 つのスマホのLEDライトでライティングしたらおもしろいと思うんですよ」

斎藤「どういうことですか?」

ヨシダ「ちょっとやってみますね。斎藤さんは普通にスマホで撮ってもらっていいですか?」

卵焼きをスマホで撮る僕。向かいでスマホのLEDライトを光らせるヨシダさん

卵焼きをスマホで撮る僕。向かいでスマホのLEDライトを光らせるヨシダさん

斎藤「なるほどね! スマホのカメラについているストロボを使うと、なんかヘンに影がついちゃうことありますもんね」

こういうふうにカメラとストロボを離して自由な方向から光を当てることを、カメラ用語で「オフカメラフラッシュ」というそうです。スマホ2台でも原理は同じですね。

イメージとしてはこんな感じです

イメージとしてはこんな感じです

これで撮った写真がこちら!

僕が普通に撮った卵焼き

僕が普通に撮った卵焼き

ヨシダさんがスマホのライトで照らした卵焼き

ヨシダさんがスマホのライトで照らした卵焼き

卵焼きが光り輝き始めた! かなり質感が変わって、これはうまそうに見える。僕がSNSにあげるくらいだったら、このくらいで十分です。2人で協力し合いながら写真を撮るのも、おもしろい。


大きめのノートをレフ板に

斎藤「ほかにも身の回りのもので撮影機材になるの、ありますかね?」

ヨシダ「たとえば、ある程度の大きさの白い紙があれば、レフ板の代わりにはなりますよね」


斎藤「なるほどなー。レフ板って(イメージ的に)テレビとかでADさんが持っているやつね」

斎藤「ちょうどA4のノートあります」

ヨシダ「それくらいあれば十分ですね」

ヨシダ「こんな感じかなー。右からはスマホのライト、左からはレフ板代わりのノートで照らします」

斎藤「手つきが素早い」

ヨシダ「それから、店の外に赤い提灯(ちょうちん)があるので、その赤い光がカメラに入らないようにノートでさえぎる効果もあります。斎藤さん、撮ってみてください」

ノートを使っていない卵焼きの写真。卵焼きの左側に影ができてしまっています。また店の外の提灯で全体に赤みがかかってしまっています

ノートを使った卵焼きの写真。自然な発色になっています

ノートを使った卵焼きの写真。自然な発色になっています

斎藤「すごい。さすがプロカメラマン!」

ヨシダ「この程度のことで『さすがプロ』とかあんまり言われたくはないですが……」

いやいや。その場にあるものを利用しちゃうプロ、メチャクチャかっこよくないですか……! たとえばジャッキー・チェンって映画の序盤に食堂で闘うじゃないですか。あのとき、イスを武器にしたり、敵の攻撃を防いだりしますよね。あれと同じ興奮。このたとえ伝わってほしい。


Tシャツをレフ板の代わりに

斎藤「ほかにもっとないですか? 日常の道具が撮影機材になるやつ」

ヨシダ「白くてある程度の大きさがあるものなら、なんでもレフ板の代わりにはなりますね。たとえば普通のTシャツとか」

斎藤「ノートでもレフ板の代わりになるくらいですもんね」


というわけで、明るい時間に公園でやってみることにしました。

ここから価格.comマガジン編集部の担当編集、しえるさん(左)が参加します

ここから価格.comマガジン編集部の担当編集、しえるさん(左)が参加します

ヨシダ「順光の位置がわかりやすいと思います。斎藤さん、そこ座ってもらっていいですか?」

しえる「斎藤さんは、できるだけアンニュイな目をしてください!」

斎藤「アンニュイ???」

ヨシダ「それでは僕がTシャツを固定するんで、しえるさんに撮影してもらいましょうか」

しえる「わかりました! 斎藤さん、もっと目を伏せる感じで! そのほうがアンニュイになります!」

Tシャツ使っていない僕の写真

Tシャツ使っていない僕の写真

Tシャツを使っている僕の写真

Tシャツを使っている僕の写真

なるほど……。影になってしまっていた顔の右半分がきれいに撮れていますね。そして、しえるさんがリクエストしていたアンニュイな表情、意味あったのか?

少し引くとこんな感じ。なにこれ?

少し引くとこんな感じ。なにこれ?

公園で洗濯物を干しながら眠ってしまった人みたいですね……。

斎藤「レフ板ってどういう角度から当てるのがいいんですか?」

ヨシダ「ひと口に『どの角度がいい』とはいえないんですよ。状況にもよるし、撮りたい写真にもよる」

斎藤「どういうこと?」

ヨシダ「たとえばですが、さっき、レフ板を使わないで顔の右半分が影になっている写真が撮れましたよね。そのような表現が目的なら、影はそのままでもいいです」

斎藤「そうか。影になっているのも、別に間違いではないわけですね」

ヨシダ「逆に顔をはっきりと写したい場合は、Tシャツレフを入れたとおり、影になっている部分に光が当たるような位置にレフ板を入れればいい。ただし、影を起こしすぎても、不自然な写真になってしまうんですよ」

斎藤「ふむ……」

ヨシダ「ただ、顔をきれいに写すのが目的であればこれでもいいでしょうし、なるべく不自然さをなくしたいのであれば、レフ板の距離や角度を調整して、さらにさまざまな大きさのレフ板を使い分けます。こればっかりは実際に被写体に当たる光を観察し、経験を積んでいくしかないですね」

斎藤「意外と難しいな。これが『正解』というのはないんですね」

ヨシダ「極端なことをいうと、撮った本人が満足であればいいですからね」


スマホのライトでリングライトにする

斎藤「ほかになんかありますかね? できれば、この間みたいにスマホのライトとスマホでできるやつがあるとおもしろいな〜」

ヨシダ「う〜ん。強いて言えば、スマホのレンズの周りに、スマホのLEDライトを丸く配置して、『リングライト』という機材に近い効果になるかなあ……?」

斎藤「リングライト、被写体の目がキラキラ光るやつですよね」


ヨシダ「今のは思いつきなんで、本当にできるかどうか、ちょっとわかりません。あと、リングライトにするなら最低でも8個はスマホが必要かなあ」

斎藤「スマホ8個か……」

というわけで、価格.comマガジンの会議室にやってきました

被写体は編集担当のしえるさん。撮影は僕のスマホ。そして僕のスマホのリングライトになってもらうのは価格.comマガジン編集部のみなさんです。

こんなわけのわからない企画なのに、簡単な説明でみんな素早く持ち場に移ってくれました。みんなやったことあるのかな?(ないそうです)

「スマホのレンズの周りをスマホのライトで囲む」って言葉にすると簡単だけど、実際はけっこう大変

「スマホのレンズの周りをスマホのライトで囲む」って言葉にすると簡単だけど、実際はけっこう大変

ヨシダ「みなさん、もっとLEDをスマホのレンズに近づけてください! スマホとスマホが重なるくらいの近さで!」

しえる「なんか怖い! 圧迫感すごくないですか?」

斎藤「確かに撮っている僕もなんか怖いですね」

これがスマホリングライトなしの写真

これがスマホリングライトなしの写真

スマホリングライトありの写真

スマホリングライトありの写真

斎藤「確かになんかいいかも。目がLEDを反射してキラキラしているし」

ヨシダ「影がバラけちゃうのがちょっと気になりますね。もっとスマホのLEDライトの配置を正確に円にできればいいんでしょうが、人力ではこのくらいが限界かもしれませんね」

斎藤「やっぱり普通のリングライトのほうがいいことはいいんですね」

ヨシダ「そりゃそうです!」

僕も写してもらいました。圧迫感で表情がおびえていますね……

僕も写してもらいました。圧迫感で表情がおびえていますね……

これが被写体が見ている光景。なんかわからないけれども怖い!

これが被写体が見ている光景。なんかわからないけれども怖い!

しえる「斎藤さんはライトがメガネに反射しちゃっていましたね」

ヨシダ「メガネはしょうがないかもしれませんね。たぶん、本物のリングライトでも反射しちゃうと思います」

もう一回しえるさんを撮ってみます。この圧迫感の中で笑顔を作れるのはすばらしい……。しえるさんは編集者ですが、元地下アイドル。たぶんその経験が生きているんだと思います。地下アイドルやっている人はみんな今すぐWeb編集者になろうぜ。


レースのカーテンでふんわりとやさしい陰影に

ヨシダさんには「身近なものを撮影機材にしてみる」というテーマでもう1つ教えてもらいました。

ヨシダ「レースのカーテンを使うと『紗幕(しゃまく)』という機材と同じ働きができると思います」

斎藤「紗幕ってなんですか?」

ヨシダ「わかりやすくいうと、薄い生地の白布です。ストロボを紗幕越しに被写体に当てることによって、光を拡散させて光の質を変えます。ストロボの光を被写体に直接当てるよりも光が柔らかくなるんです」


斎藤「なるほど。レースのカーテンは、あの『本物のカーテン』と『窓』の間にあるやつですよね」

ヨシダ「それです」

斎藤「確かにあれも窓から入る光を散らすものだもんな……」

やってみました

やってみました

ここで、ストロボとカメラが無線でつながるようにヨシダさんにセッティングしてもらいました。

撮影は編集部のしえるさん。ヨシダさんと価格.comマガジン編集部の方にはレースのカーテンを持ってもらっています。

ヨシダ「レースのカーテンを支えているの、めっちゃ腕疲れますね……」

ヨシダさん、紗幕の「足」あつかいしちゃってごめんなさい!

レースのカーテンなしの写真。コントラスト強めのパキッとした写真です

レースのカーテンなしの写真。コントラスト強めのパキッとした写真です

レースのカーテンを使った写真。影が抑えられてコントラストが低くなりました。ふんわりとした印象に

レースのカーテンを使った写真。影が抑えられてコントラストが低くなりました。ふんわりとした印象に

ヨシダ「斎藤さん、妙に社長っぽいポーズになりましたね」

しえる「本当だ! 社長っぽいですよ」

斎藤「なんででしょうね? ストロボをたいたりすると、人は社長になってしまうのかもしれない……」

ヨシダ「今回は試しにカーテンを入れてみましたが、実際には『カーテンを入れたほうがいい』ということはなくて、使い分けですね。コントラストを強めたいときはストロボを直接当てたほうがいいわけです」

斎藤「確かに2つの写真のどっちがいいかって言われると難しいですね。雰囲気は違うけれども、どっちも社長っぽいし」


段ボールでスポットライトが作れる


僕も「身近なものを撮影機材にしてみる」というテーマで1つ試したいものがあります。使うのは段ボール。

斎藤「段ボール紙を重ねてストロボに当てると、スポットライトになるそうですよ」

ヨシダ「なるほど。『ハニカムグリッド』という機材と同じような効果になるでしょうね」

斎藤「へー。すごい!」

段ボールを切って

段ボールを切って

こんな感じのものを作り

こんな感じのものを作り

ヨシダさんからお借りしたストロボにつけます。光が漏れないように黒い布(今回はしえるさんのトートバッグを借りました……)を巻き付けています

ヨシダ「『ハニカムグリッド』にするなら、段ボールの長さをそろえて、形は丸くして、色は黒く塗ったほうがいいんだけどなあ」

斎藤「でも、そこまでやったら、段ボールで手軽に作っている意味がなくないですか……?」

ヨシダ「まあ作っちゃったし、やってみますか」

撮影ポジションはこんな感じ

撮影ポジションはこんな感じ

部屋を暗くして、撮ってみましょう!

段ボールを使って撮った写真

段ボールを使って撮った写真

斎藤「これはヤバいですね!」

ヨシダ「ヤバいのは斎藤さんのポーズじゃないですか? なんではだけるんですか?」

斎藤「ああ……。楽しい……」

しえる「斎藤さんは鼻筋がきれいに出ますね」

斎藤「そんなこといわれたら、いくらでも鼻筋見せますわ」

ヨシダ「はだけているのより鼻筋なんだ」

段ボールを使わないとこんな写真になります

段ボールを使わないとこんな写真になります

しえるさんも撮ってみました

しえるさんも撮ってみました

斎藤「アー写だ! アー写!」

しえる「インスタグラムで調子に乗っている人がやるポーズをしてみました!」

なんか唐突に闇が出てきましたが……。でもいい写真です!

斎藤「今度は女優だ!」

ヨシダ「この方式だとスポットライトを狙ったところに当てるの難しいなあ。やっぱり段ボールを丸くして、きれいに切りそろえたほうが光が収束しやすくなるはず……」

斎藤「なるほど……。さっきの指摘は意味があったんだ」

ヨシダ「そりゃそうですよ」

工作は雑だったんですが、段ボールでスポットライト作るの、超楽しいですね。段ボールで遊んだことで、逆にいいストロボと一眼レフが欲しくなってきます。あと本物のハニカムグリッドも……。

カメラの沼、それは至る所で口を開けて人々を待っている……。


ストロボ撮影ってなにからすればいいの?

斎藤「ヨシダさんが使った機材を教えてもらってもいいですか?」

ヨシダ「今回僕が使ったクリップオンストロボ(外付けのストロボ)はNikon SB-910です。ちなみにこれはNikon SB-5000という新型が出ているので、そっちもチェックしてみてください」

ヨシダ「カーテンや段ボールを使った撮影では、カメラとストロボを離していますよね。そのときにカメラとストロボをワイヤレストランシーバーCactus V6 IIという機材でつないでいます。これがあるとカメラとストロボを無線でつなぐことができますので、カメラから離れたところにストロボを設置できますし、離れたストロボの出力を手元で調整することができます」

斎藤「なに気なくやってもらっていたけれども、専門的な機材が必要だったのか……」

ヨシダ「今回段ボールで作っていましたが、クリップオンストロボにつける本物のハニカムグリッドを買うならこれですかね」

ヨシダ「スマホでリングライトを作りましたよね。リングライトってメーカーのあつかいがなかなかなくて、買うとしたらRoundFlash Ringという製品が手軽でおすすめです。クリップオンでリングライトのような効果を出すことができます」

斎藤「ちなみに、これからライティングにこってみたい一眼レフ初心者はなにを買ったらいいですかね? カメラ内蔵のストロボじゃダメですよね?」

ヨシダ「内蔵のストロボは光の照射方向の自由度がないので、まずはクリップオンストロボですよね。カメラのメーカーと同じものを買うようにしてください。そうしないと、カメラとストロボが連動しないので……」

斎藤「なるほど……。メーカーさえそろえれば、あとはなんでもいいですか?」

ヨシダ「いや。できれば、発光部の向きを変えられるモデルを選んでください。照射方向を変えられると、白い天井や壁にストロボ光を当てて光を回すテクニック(天井バウンス、壁バウンス)が使えます」

斎藤「なるほど」

ヨシダ「ストロボは、できれば値段が高い上のランクのものを買ったほうがいいですよね。そのほうが、出力面や耐久性ですぐれているので……」

斎藤「カメラでレンズ沼ってよく聞くけど、ストロボ沼ってのもあるのか……?」

ヨシダ「Profotoというプロ用ストロボの老舗メーカーが、今年クリップオンストロボを出しました。余裕があれば、それもおすすめです。こちらはNikon用とCanon用がそれぞれ出ていますので、自分のカメラに合うものを購入してください」

プロカメラマンが知っている「裏技」はおもしろかったです。こんな方法を考えつくのも、カメラや光の関係をよく知っているプロだからこそ……。

ちなみに、冒頭に行った「2台のスマホでオフカメラフラッシュ」。いろいろな居酒屋メニューを試したのですが、一番違いがわかりやすかったのは「卵焼き」でした。
みんなも今すぐ友達と居酒屋に行って「卵焼き」を撮ってみてください!



【取材協力店舗】
もも焼き嵐坊
住所:東京都江東区富岡1-5-5 和田屋ビル 1F
電話番号:03-5646-5833
営業時間:[月〜木] 11:30〜14:00(L.O.14:00) 17:00〜23:30(L.O.22:30)
     [金・祝前日] 11:30〜14:00(L.O.14:00) 17:00〜翌1:00(L.O.翌0:00)
     [土] 15:00〜翌0:00(L.O.23:00)
     [日・祝] 15:00〜23:00(L.O.22:00)
定休日:不定休
アクセス:門前仲町駅 徒歩1分

斎藤充博

斎藤充博

1982年生まれの指圧師(国家資格)。「田端ふしぎ指圧」を運営しています。インターネットで記事を書くことをどうしてもやめられない。 ツイッター:@3216  ホームページ:田端ふしぎ指圧

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