クルマのナビゲーションとしてスマートフォンを利用することは、もはや珍しくなくなりました。Apple CarPlayやAndroid Autoに対応するディスプレイオーディオが普及したことで、スマートフォンの小さな画面を見るのではなく、車載ディスプレイにナビ画面を表示して使えるようになったからです。
こうなると、ナビアプリを選ぶ基準も変わってきます。
目的地をどれだけ簡単に検索できるか、適切なルートを探索できるかだけでなく、ディスプレイオーディオに表示したときに地図が見やすいか、交差点や高速道路の分岐をわかりやすく案内してくれるか、CarPlay/Android Auto接続時にどこまで操作できるかも重要となっているのです。
そこで今回はGoogleマップ、Yahoo!カーナビ、moviLink、カーナビタイム、そしてサービス終了が決まったCOCCHiについて、スマートフォン単体ではなく、ディスプレイオーディオで使うことを前提に最新事情をチェックしてみました。
まず外せないのがGoogleマップです。
最大のメリットは、何といっても目的地検索の強さです。施設名や住所を正確に覚えていなくても、店名の一部やジャンル、関連するキーワードなどから目的地を探し出せます。
ディスプレイオーディオでルートガイドを受けながら、スマホの画面ではターンbyターン案内が同時に利用できる
飲食店なら営業時間や写真などを確認したうえで目的地を設定できますし、「近くのガソリンスタンド」「駐車場」といった音声での検索にも強い。純粋に「行きたい場所を探す」という能力では、他のナビアプリに対する大きなアドバンテージがあると言えます。
目的地検索にこれだけ複雑な条件「千葉県内でレトロな自動販売機でうどんが食べられるスポット」を入力しても対象地を絞り込める
検索結果の一覧を表示した画面。営業時間なども考慮されているのがわかる
もちろんApple CarPlayとAndroid Autoの両方に対応し、ディスプレイオーディオ上でルート案内やリアルタイム交通情報、車線案内などを利用できます。
Android Autoでは「検索」から「カテゴリ」を選び、ガソリンスタンドや駐車場、カフェなどを探すことも可能です。生成AIであるGeminiを使うことができるのも大きな魅力となるでしょう(CarPlayでは利用不可)。また、事故や渋滞、工事、車線規制、路上障害物などの道路交通情報の報告もAndroid AutoだけでなくCarPlayでもできるようになりました。
一方、カーナビとしても多機能なGoogleマップですが、ルート案内となると不満を感じることもあります。
特に気になるのが、目的地までのルート案内での効率を重視しているためなのか、クルマ同士のすれ違いが難しいような狭い道路を案内してしまうことです。
また、ルート案内でも日本のカーナビでおなじみの交差点拡大図を多用する案内とは考え方が異なります。曲がる場所が近づけば地図をズームアップして進行方向や車線は案内されるものの、それだけでは複雑な交差点で専用カーナビのように瞬時に状況を把握するのは難しいでしょう。
とはいえ、行きたいところがストレスなく探せるのはGoogleマップならではの魅力。利用料もGoogleマップは基本無料で、CarPlay/Android Autoを利用するための追加料金もありません。圧倒的な検索力を無料で車載ディスプレイへ持ち込めることこそ、Googleマップ最大の魅力です。
◆Googleマップ( iOS版 )( Android版 )
Googleマップとは違った方向から「クルマで使いやすいナビ」を目指しているのがYahoo!カーナビです。
Apple CarPlayとAndroid Autoの両方に対応しており、実際にディスプレイオーディオで使ってみると、Googleマップよりも日本の市販カーナビに近い感覚があるのです。
それをはっきりと実感できるのがルート案内の仕方です。
交差点に近づくと分岐イラストやレーン情報などを表示し、その情報が充実していることもあって、ドライバーが「次に何をすればいいのか」を把握しやすいのです。特にルート探索では広くて通りやすい道路を優先して案内することを基本としており、そのため安心して目的地へと進むことができます。
交差点に近づくと分岐ポイントを提示しながら進行方向を案内。CarPlay上では、Android Autoで実施される車線ガイドを表示しないなど機能に制限がある
CarPlayであっても複雑な分岐点ではその形状をイラストで大きく示し、曲がる方向を直感的に確認できる
高速道路での案内も充実しています。
CarPlay接続中は、車載ディスプレイでナビ画面を表示しながら、iPhone側には次の案内ポイントをリスト表示できます。高速道路ではこれから通過するインターチェンジやSA/PAなどを確認でき、一部のSA/PAでは駐車場の満空情報にも対応します。
また、一般道と高速道路が並走している区間では、たとえ走行中の道路が違っていてもワンタッチで併走する別の道路へ切り替えられます。これは道路が込みいっている都市部での走行に便利な機能となるでしょう。つまり、Yahoo!カーナビは、カーナビとしてのわかりやすさをより高めたアプリということができるのです。
とはいえ、検索能力ではGoogleマップに分があるのは確か。そんなときはGoogleマップの目的地共有機能を使うのがおすすめです。あくまで位置情報だけの共有となりますが、目的地検索で困ることはほぼなくなります。 また、Yahoo!カーナビは、基本利用料を含め、CarPlay/Android Autoにも無料で対応できます。さらに月額250円の「Yahoo!カーナビプラス」では、経由地を最大10カ所まで設定できるほか、広告非表示などの追加機能を利用できることも見逃せません。
◆Yahoo!カーナビ( iOS版 )( Android版 )
そんな中で、特に注目したいのがトヨタコネクティッドのmoviLinkです。
最大の特徴は、トヨタが車載ナビで培ってきたノウハウをスマートフォンアプリへ持ち込み、しかも誰でも無料で使えることです。しかもその地図には広告表示もありません。
では、機能面で見劣りするのかと言えば、そんな心配は一切無用。他アプリと比べても見劣りするどころか、機能面で上回っているところが数多くあるほどなのです。
地図はシンプルで見やすく、ルート探索では走りやすい道路を重視。交差点に近づくと車線情報や推奨レーンを表示し、減少レーンや合流、踏切、事故多発地点などについても地図上のアイコンと音声を使って案内します。
著名な施設はリアルな立体アイコンとして表示。実際の道路形状や進むべき車線を直感的に把握しやすい
さらに一部の複雑な交差点では車線状況をリアルなCGで案内する機能を備え、一般道と高速道路が並走している場所ではディスプレイオーディオから走行道路を切り替えることも可能です。
東京都内・昭和通りの地下道へつながる江戸橋南での案内。CGによるリアルな車線ガイドで進むべきルートを案内している
高速道路でのルート案内。最上段には分岐点までの距離と進行方向を案内し、通過するICやSA/PAは最大3施設まで表示している
また、CarPlay/Android Auto接続中でも、停車していればスマートフォン側からフリーワード、カテゴリー、お気に入り、目的地履歴などを使って目的地を検索できます。もちろん、音声での検索も可能です。ただ、このアプリの場合もその能力はGoogleマップほど強力ではありません。
そこで活用したいのが、他のアプリから位置情報を共有できるGoogleマップの機能です。これにより、つまり「目的地探しはGoogleマップ、道案内はmoviLink」の“いいとこ取り”という使い方ができるわけです。
加えてmoviLinkはクルマを降りてから目的地まで徒歩で行く必要がある場合も、スマートフォン上で継続して案内します。こうしたラストワンマイルへの対応もこのアプリの魅力と言えるでしょう。
クルマを降りた後もスマートフォンで案内を継続。駐車場所から最終目的地まで徒歩で誘導してくれる
スマートフォンアプリでありながら、専用カーナビに近い機能を求めるならカーナビタイムがベストと言えるかもしれません。
このアプリ最大の特徴となっているのが、交差点拡大図や案内標識、交差点イラスト、高速道路入口、ジャンクションなど、従来型のカーナビと遜色ないレベルで実現させていることです。さらに交差点に近づくと地図を徐々にズームアップしていき、同時にその進行方向を黄色い矢印で示します。この流れが直感的でとてもわかりやすいのです。
交差点では詳細なCGを使い(政令指定都市)、ほぼ車載ナビと同レベルの詳細さで目的地へと誘導。周辺情報も豊富だ
また、個人的に不慣れな道で安心と思ったのが、一方通行での進入禁止の案内です。通常なら、道路標識と同じアイコンで表示していることが多いのですが、カーナビタイムではオリジナルの目立つアイコンで道路上に示しています。かなり目立つので、これなら間違えて進入禁止を進むことは少なそうです。
ルート探索後は、目的地までの気象状況までも案内してくれるので、安心度という面でも心強いと思います。さらにオフラインでの利用にも対応しているので、通信圏外でも地図表示やルート案内を利用できます。山間部など携帯電話の通信が不安定な地域を走ることが多い人にとっては安心感をもたらすでしょう。
高速道路ではICやSAを最大3施設まで表示し、最上段では次の分岐ポイントまでの距離と方角が案内されている
方面案内標識を使い、車線ガイドと共に進行方向を案内。分岐する交差点をズームアップして黄色で強調して表示し、わかりやすく案内している
さらに2026年は、ディスプレイオーディオとの連携も進化しました。Android版ではAndroid Auto接続後もスマートフォン側で操作できるようになったのです。また、iPhone版では、CarPlay使用時に対応車両のメーターパネルへターンバイターン情報を表示する機能に加え、HUD(ヘッドアップディスプレイ)への案内情報表示にも対応しました。すべてのCarPlay対応車で利用できるわけではなく車両側の対応が必要ですが、ナビアプリの情報がメーターやHUDへ広がってきたことは興味深い進化です。※他アプリでも車両側の対応によってHUDへの対応が可能となる場合があります。
ただ、カーナビタイムをディスプレイオーディオで使うには有料プラン、それも「プレミアムプラス」に加入する必要があります。料金は月額1200円または年額1万1800円と、有料アプリの中でも少々高め。交差点拡大図やオフライン地図などを含め、「専用カーナビに近い環境」を求めるユーザー向けのアプリと言えそうです。
一方、大きな動きとなったのがパイオニアのCOCCHiです。
市販カーナビ「カロッツェリア」で培ったノウハウを活かし、交差点でのわかりやすい案内や車載ナビらしい地図表示など、「クルマで使うこと」を強く意識したアプリでした。
しかし、スマートフォン向けCOCCHiは2026年11月30日をもってサービスを完全終了します。
無料プランは9月16日に終了。有料プランも同日で新規受付と自動更新を停止しました。既存の月額払いユーザーは契約満了日まで、年額払いユーザーも契約満了日または11月30日のいずれか早い日まで利用できます。
なお、Google搭載インフォテインメントシステム向けの「COCCHi for Automotive」は継続されます。つまりパイオニアがナビアプリから完全に撤退するわけではありません。今後はスマートフォン向けアプリではなく、Google搭載インフォテインメントシステム向けの「COCCHi for Automotive」に注力していく形になります。
こうしてディスプレイオーディオで使った場合を比較すると、それぞれのアプリの性格はかなり違うことがわかります。
目的地検索ならGoogleマップが便利ですし、日本の道路事情を意識した案内ならYahoo!カーナビやmoviLinkが魅力的でしょう。さらに、交差点拡大図やオフライン地図など、専用カーナビに近い機能を求めるならカーナビタイムという選択肢があります。それぞれにメリット/デメリットがあるわけですが、必ずしもその中から一つを選ぶ必要はありません。
たとえばGoogleマップで行きたい場所を探し、その位置情報を他のアプリへ渡して道案内を任せる。普段は日ごろ使っているナビアプリを使いつつも、通信環境が不安定な場所へ出掛けるときは、オフライン地図に対応するGoogleマップやカーナビタイムを利用する、といった使い分けもできます。
ディスプレイオーディオの普及によって、ナビアプリは単なる専用カーナビの代用品ではなくなりました。「目的地を探す能力」と「そこまでわかりやすく案内する能力」は必ずしも同じではありません。それぞれのアプリが得意とする機能を理解し、必要なら複数を使い分ける。それが現在のディスプレイオーディオにおける、ナビアプリの賢い使い方と言えそうです。