巣ごもり需要や町中華ブームで、ご飯があれば家で手軽に作れる「チャーハンの素」の需要が伸びている気がします。近所のスーパーをのぞいてみると、町中華の名を冠した調味料シリーズからチャーハンの素が出ていたり、近ごろ人気急上昇中の業務スーパーがPB(プライベートブランド)を出していたりと、種類豊富であることを実感しました。
そこで今回は、ロングセラーからニューフェイスまで、チャーハンの素を比較してみます。用意したのは、こちらの8商品。
粉末タイプ、ペーストタイプ、フレークタイプなど、各社からさまざまなチャーハンの素がリリースされています
・あみ印 炒飯の素
・永谷園 焼豚チャーハンの素
・永谷園 五目チャーハンの素
・グリコ 焼豚五目炒飯の素
・エスビー食品 町中華 チャーハンの素
・業務スーパー チャーハンの素
・マスコット チャーハンミックス
・大阪王将 炒飯の素
ちなみに「味覇(ウェイパー)」やクックドゥの「香味ペースト」もチャーハンの素として使えますが、こういった万能系は対象外とします。あくまでも“チャーハン(炒飯or焼飯)の素”で違いを確かめました。
また、チャーハンの素そのものの味を際立たせるため、ご飯以外にはサラダ油と卵のみを使用します。テイスティングのコメントとともに、「うまみ」「ヤミツキ度」「高級感」「まとまり(一体感・バランス)」、「手軽さ(調理の簡単さ)」の5項目で採点していきます。
比較のため、なるべく調理方法はシンプルに。ご飯と卵をサラダ油で炒めて、チャーハンの素と混ぜ合わせるだけ
チャーハンの素の味わいだけで比較します。粉末タイプと液体タレタイプがあり、やはり前者のほうがパラっと仕上がる印象でした
日本初のチャーハンの素といえば、「あみ印」。昭和33年(1958年)の発売以来、60年以上愛され続けるロングセラー商品です。野菜パウダーの甘みと、多彩なスパイスを効かせた味わいは昔ながら。レトロなパッケージも印象的です。
●量:6g ●カロリー:11kcal(いずれも1人前あたり、チャーハンの素のみの値)
6袋入の粉末タイプ。具材が入っていないものの、シンプルで調理のしやすさも抜群でした
シンプル・イズ・ベストという表現が当てはまりそうな味。何かが突出しているわけではないのですが、説得力があります。あえて言えば、醤油のコク深さや、ネギ油的な香りでしょうか。“THE チャーハン”に必要な要素をしっかり押さえていて、「きっと、これにどんな具材を足してもおいしく仕上がるんだろうな」と思わせる安定感の高さです。
この総合力の高さが、長年愛される理由なのでしょう
フライパンで3分炒めるだけで、簡単にパラパラの“黄金炒飯”が作れるという、永谷園のチャーハンの素シリーズ。こちらは、香ばしく味付けした豚肉やネギなどの具が入った「焼豚チャーハンの素」です。焼豚オイルの際立つ風味が特徴的。
●量:9g ●カロリー:26kcal(いずれも1人前あたり、チャーハンの素のみの値)
1人前×3袋入の粉末タイプ。乾燥していて小さいのでチープ感は否めませんが、具材が入っています
今回の企画のためにいくつかスーパーを巡った中で、筆者が最も多く出合ったチャーハンの素がこれ。味わってみると、具材としての焼豚はチープですが、香りとしてのボリュームはきわめて高く、まるで焼豚たっぷりのチャーハンを食べているような気分にさせてくれる、技ありのおいしさです。
リアルな焼豚が使われていなくても、その風味をしっかりと感じられます
永谷園の同じシリーズからもう一品。海老、鶏肉など五目の具材が入った、五目チャーハンの素です。ネギ香味油による、香ばしい風味が特徴。
●量:8.2g ●カロリー:23kcal(いずれも1人前あたり、チャーハンの素のみの値)
1人前×3袋入の粉末タイプです
同ブランドの「焼豚チャーハンの素」と並んで、スーパーでの陳列率が高かった一品です。焼豚のフレーバーは息をひそめたいっぽう、海老やカニなどの甲殻類を思わせる香りが優雅。どことなく上品で、その分だけ「焼豚チャーハンの素」より高級感が少し感じられる気がします。
魚介の風味がしっかりと効いた、ちょっとリッチな五目炒飯です
グリコのチャーハンの素は、ご飯と卵を3分半炒めるだけで、パラッとしたチャーハンが作れます。オイスターソースとチャーシューのうまみを効かせた秘伝のタレが特徴で、調理時に仕上げのタレがジュワッとなるのがいいですね。
●量:22.1g ●カロリー:39kcal(いずれも1人前あたり、チャーハンの素のみの値)
1人前×2袋入。具材とタレが別になっているタイプで、調理中に袋を2つ開ける手間と、タレは手が汚れやすいという微々たるデメリットがあります
チャーシューと魚介の風味をバランスよくブレンドしたようなフレーバーです。液体タレを使っているからか、余韻が強めで、味、香りともに優等生感があります。間違いのないおいしさだとは思いますが、推しとなるようなインパクトは、どちらかといえば弱いかもしれません。
粉末に比べると仕上がりがしっとりする印象ですが、タレ仕上げによる味と香りが好バランス
東京・谷中にある町中華の名店「一寸亭」(ちょっとてい)の味を再現した、S&Bのチャーハンの素。香ばしさと濃厚なうまみが特徴で、ヤミツキになる老舗店のおいしさを家庭で味わうことができます。
●量:27g ●カロリー:116kcal(いずれも1人前あたり、チャーハンの素のみの値)
1人前×3袋入の液体タイプです。見た目はこってりした印象ですが、はたして?
ラード感のある濃厚なオイリーさと、コショウのようなスパイスの攻め。今回の中で最もパンチのある味です。辛いというほどではないですが、ほんのりピリっとしているので大人向けかもしれません。
確かに絶妙な旨さで、何度も食べたくなる「一寸亭」のチャーハンの味わいにも近いかもしれません。より本物に近づけるなら、この商品が液体タレということもあり、ご飯を硬めに炊きたいところ。あと、同店のシンボルであるカマボコを入れることをおすすめします。
名店の味をうまく再現した、インパクトのある味わい。脂の多いタレなので粉末よりしっとり感はありますが、ギトギトと重い感じはそれほどでもないです
国内の自社関連工場で製造された、業務スーパーのPBのチャーハンの素。豚肉、フライドオニオン、ニンジン、白ネギなどの具材が入ったフレークタイプで、食欲をそそる香味油の風味が特徴です。
●量:15g ●カロリー:44.85kcal(いずれも1人前あたり、チャーハンの素のみの値)
いろいろな具材が入ったフレークタイプ。中身の総量150gに対して1皿分は15gなので、計10回分となります。開栓してふりかけられる手軽さは魅力ですが、計量して使いたい人は計る手間がかかります
パウダーでも液体のタレでもない、セミドライのフレークという個性あふれるチャーハンの素。ある意味では味が付いた具材、とも言えます。全体的な味のまとまりはもう一歩といった印象。具材のアクセントとしての要素がおもしろいので、モヤシ炒めに加えたり、スープやあんかけに活用したりといったこともできそうです。
具材のインパクトが強く、ご飯との一体感に課題。パラパラ感は、粉末とタレの中間程度の印象です
世界中の数々のスパイスを取り扱う専門ブランド「マスコット」がブレンドした、おいしいチャーハンを作るためのシーズニング。炒める・炊き込む・混ぜるという3種類の使い方ができるのが特徴です。
●量:7g ●カロリー:17.9kcal(いずれも1人前あたり、チャーハンの素のみの値)
1本で4〜5人前のチャーハンが作れ、ほかにもいろいろな調理法に対応できる粉末タイプ。前述の業務スーパー同様、ビンからそのまま使える手軽さがありますが、計量する場合は手間がかかります
ほんのり海老のようなフレーバーがあり、全体的に香りがリッチ。さすがは一流スパイスメーカーの製品と言ったところ。味わいとしてもガツンとしたパワーではなく、そのぜいたくな風味で全体を包み込むかのような方向性になっています。使う量にもよると思いますが、比較的あっさりで上品なチャーハンの素だと感じました。
やさしい海老の風味とスパイスが香る上品な味わい。粉末なので、仕上がりはパラッとしています
大阪王将の料理人が監修したチャーハンの素。ポーク、チキン、オイスターのエキスによるうまみ、ネギ油とゴマ油の香りがクセになる味わいです。香料・甘味料・着色料・化学調味料は不使用。具材は豚肉、ニンジン、ネギです。
●量:20.4g ●カロリー:56kcal(いずれも1人前あたり、チャーハンの素のみの値)
1人前×2食分で、グリコと同様、具材と液体調味料が別になっているタイプ。袋を2つ開ける手間と、タレで手が汚れやすい点は好みが分かれるところ
天然素材を使っているのが特徴とのことですが、コクや余韻がしっかり出ていて、パンチは十分。ゴマ油の香りが効いていて、ガッツリ食べたい人には好まれそうです。ただし“チャーハンにニンジンは要らない派”の筆者としては、具材のニンジンが個人的なマイナスポイントです。
大阪王将らしい、パンチ力のあるおいしさ。粉末タイプよりはしっとりしますが、ベタつく感じはありません
それぞれの中華料理店の味に個性があるように、チャーハンの素も、豚・鶏ベースのものから魚介ベースのものまで、さまざまな味わいがありました。今回食べ比べた中で、筆者が特に印象に残った3品をピックアップします。
・個人的おすすめNo.1:あみ印 炒飯の素
・パンチ力No.1:エスビー食品 町中華 チャーハンの素
・個性派No.1:業務スーパー チャーハンの素
各メーカーから出ているチャーハンの素はどれも個性的。自分好みの一品を見つけてください!
手軽に本格的なおいしさを楽しめるチャーハンの素は、自炊の強い味方だと再認識しました。好みの具材やアレンジを加えて、自分だけの味を作るのもおもしろいでしょう。巣ごもりのお供や、忙しいときの助け舟に、家に常備しておくと重宝しますよ。多彩な広がりを見せる“家チャーハン”をお楽しみあれ!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。