「なるほどなー!」。
筆者は先日、とあるランキングを見て、思わずヒザを叩きました。それは、「gooランキング」の「一番うまい!カップ焼きそばランキング」(※)なんですが、結果はというと、
1位 「日清焼そばU.F.O.」(日清食品)
2位 「やきそば弁当」(東洋水産)
3位 「ペヤングソースやきそば」(まるか食品)
でした。
※:「gooランキング」のアンケートによる集計結果。投票数合計:1260票、調査期間:2021年4月2日〜2021年4月16日
関東出身の筆者にとっての“ソウル焼そば”は、群馬が拠点のまるか食品「ペヤングソースやきそば」でして、3位というのは実に悲しいところですが、1位に日清食品の「日清焼そばU.F.O.」がランクインするのはある意味当然と言えるのです。なぜなら、業界随一の売り上げもさることながら、2021年で45周年を迎えたから。アニバーサリーイヤーの盛り上がりとともに、新商品を次々と出しまくっているのです。
今回ピックアップした「日清焼そばU.F.O.」の5製品。定番から新発売の個性派まで、食べ比べてみました
気になるのは、発売のペースが乱発気味なところや、「これは『U.F.O.』ブランドで出す必要あったんですか?」と思えるほど狂気が垣間見えるフレーバーがあるところ。
はたして、その乱発はムダ打ちなのか、それとも狙いどおりにヒットを出せているのか。定番を含めた5つを食べ比べ、味の項目採点とともにレビューします。
まずは、ゆるぎない大定番の「日清焼そばU.F.O.」を食べて、味の基準を再確認。基本情報としては、誕生が1976年5月。一時期は、揚げ玉を入れたり、麺を縮れタイプからストレートにしたりと、長い歴史の中でおいしさの高みを目指してアップデートを繰り返してきました。
「日清焼そばU.F.O.」は、1食128g(麺100g)で556kcal
最大のウリは、濃厚ソース。これは、ガーリックとオニオンをベースにしたオイルと、18種類のスパイス、7種類のフルーツを閉じ込めたソースを煮詰めたもので、実際、ソース推しであることはパッケージでも大々的にうたわれています。
45周年を迎えたことや、売り上げNo.1であることもさりげなくアピール
かやくは、麺とともにそのまま入っていて、ソースとふりかけの袋が同梱。なお、内ブタの穴から排水する手法は、1999年に「ターボ湯切り」として「U.F.O.」から始まったものだとか
熱湯を入れて3分。
湯を切って、ソースとふりかけを加えて混ぜ、あっという間に完成しました。見た目はシンプルながら、おなじみのソースの香りも漂い、どこか風格や説得力すら感じます。
茶色い麺に、具材とふりかけの王道ルックス。紅ショウガは、淡色で小さいですが、これがあるのとないのとでは、味も見た目もかなり異なります
味は、想像どおりの安定感。濃く甘めで、酸味はほどほどのソースが、生麺風のモチッとしたストレート麺によくからみます。ふりかけは、青のりと細かい乾燥紅ショウガがきいていて、爽やかなアクセントに。かやくとして入っているキャベツや肉は、甘みがあり、量としては少ないものの存在感は十分。ウマいカップ焼そばのお手本と言える完成度の高さを感じました。
「ソースの甘さ・辛さ」は、「1」に近いほど甘く、「5」に近いほど辛い
濃厚さをうたいつつも、やり過ぎではない攻め具合。また食べたくなる要素が詰まっています
「日清焼そばU.F.O. 濃い濃いラー油マヨ付き醤油まぜそば」は、問題作と言えるでしょう。「日清焼そばU.F.O.」として堂々発売されているものの、味はソース味ではなく、醤油まぜそばで、「焼そばの面影は?」的な突っ込みどころが満載です。しかも、麺は極太麺を採用……。まあ、「カップ焼そば」自体が焼いたものではないので、むしろ「まぜそば」のほうがしっくりくるのですが……。
「日清焼そばU.F.O. 濃い濃いラー油マヨ付き醤油まぜそば」は、1食112g(麺85g)で542kcal
そんな「濃い濃いラー油マヨ付き醤油まぜそば」は、前回2020年3月に発売した商品のリニュ―アル版。いちジャンルとして定着したまぜそばを、「日清焼そばU.F.O.」らしく濃厚な味にアレンジしたところ、好評だったことから進化させ再発売したとのこと。
麺が太いので、調理時間はほかの「U.F.O.」より2分多い5分かかります
ソースはフタの上で温めますが、「辛口濃い濃いラー油マヨ」は温めると水っぽくなってしまうので、それはご法度!
リニューアルポイントは、実は麺。しかも、今作から「日清焼そばU.F.O.」史上最も太い「極太ウェーブ麺」を採用しているのです。醤油と酢をベースに、メンマのうまみをきかせた「濃厚コク旨醤油ダレ」と、ごま油のコクとラー油のピリッとした辛さが特徴の「辛口濃い濃いラー油マヨ」の2つの調味料に負けないパンチを、麺でも表現しているということでしょう。「U.F.O.」らしさがあるかどうかはさておき、期待は高まります。
野菜は減らして、ジャンク度アップが狙いなのか、キャベツがきわめて少なめ。いっぽう、オレンジ色の「辛口濃い濃いラー油マヨ」は、一種の暴力性を醸し出しています
ファーストタッチでインクパクト大だったのは、やはり麺。ムチッと強めの歯応えで、もっさり&ガッシリとしています。角張った太い麺で、縮れもありと、定番の「U.F.O.」の麺との違いはいくつも感じられます。
タレも、麺に負けない破壊力。ニンニクの要素はありませんが、オイル感がなかなかヘビーです。そこに、「辛口濃い濃いラー油マヨ」が追加の強力パンチ。個人的には、紅ショウガ、ネギ、のりなどで中和したくなりました。「日清焼そばU.F.O.」として味わう必要性は感じませんでしたが、ジャンクなカップまぜそば好きにはおすすめです。
「ソースの甘さ・辛さ」は、「1」に近いほど甘く、「5」に近いほど辛い
「辛口濃い濃いラー油マヨ」は、余韻までピリピリ残る、なかなかの辛さ。辛いのが苦手な人は注意!
「日清焼そばU.F.O. だし醤油きつね焼そば」は、“同期”ブランド(ともに1976年デビュー)である「日清のどん兵衛」と相互にコラボレーションした限定商品。逆に、「日清の汁なしどん兵衛 濃い濃い濃厚ソース焼うどん」も同時発売されています。
「日清焼そばU.F.O. だし醤油きつね焼そば」は、1食112g(麺90g)で514kcal
特徴は、「U.F.O.」をどん兵衛風のだしで味わえる点。カツオのだしをきかせた醤油味の油揚げ入り焼そばに仕上がっているらしいのですが、なかなか想像はつきません。「うまかった件。」とパッケージには書かれているので、味への自信はかなりあるということでしょう。
だし醤油味の焼そばに、なぜかマヨネーズをかけて味わいます。もしかすると、同社の「U.F.O.」担当者は、マヨネーズ好きなのかもしれません
かやくで注目すべき点は、「日清のどん兵衛 きつねうどん」名物の「おあげ(油揚げ)」が刻まれていること。やや寂しい感じがしますが、味は気になります
ひと通りの調理を完成させたところ、ルックスはなかなかカオティック! トッピングは、かまぼこに刻みおあげで、カツオの風味が香るだし醤油に仕上げの「どん兵衛マヨ」。はたして、お味は!?
ビジュアルに関しては、オリジナリティあふれるB級感
ということで、実食。
これは、まったく新しい麺料理です。「U.F.O.」の面影は麺のみで、焼そばというよりも、焼うどんを細麺にしたようなニュアンス。味付けは、だしが主張するしょっぱめのテイストで、そこに「どん兵衛マヨ」がジャンク感をプラス。この「どん兵衛マヨ」は七味入りですが、辛さはほどほどで、あまり気になりませんでした。ユニークな味なので、ネタとして食べるならアリだと思います。
「ソースの甘さ・辛さ」は、「1」に近いほど甘く、「5」に近いほど辛い
個人的には、「日清のどん兵衛 きつねうどん」とまったく同じ形状のおあげを入れてほしかったです。バランスが悪くなるなどの理由で、刻むことになったのかもしれませんが……
だしで攻める「U.F.O」は、今年もう1品、「日清焼そばU.F.O. 濃い濃いだしソース焼そば」が発売されました。こちらは、合わせだしソースと、カツオ風味のだしフレークをきかせたソース焼そば。ソース味ということで、先述の「濃い濃いラー油マヨ付き醤油まぜそば」と「だし醤油きつね焼そば」に比べれば、まだ“まとも”(失礼)なカップ焼そばの味が期待できます。
「日清焼そばU.F.O. 濃い濃いだしソース焼そば」は、1食112g(麺90g)で501kcal
こちらも、2020年春発売から若干のリニューアルを加えた商品。ただし、その内容は、サイズダウンで、前回は大盛りのみだったのが、レギュラーサイズで再発売されました。味はそのままだとか。
「だし醤油きつね焼そば」も「だし」ですが、こちらはソース焼そばにするためにチューニングされたもので、「U.F.O.」としては正統派
ふりかけの袋の中に、カツオ風味のだしフレークと揚げ玉が入っています
濃厚なソースにカツオ、シイタケ、昆布のだしを合わせた和風だしソースと、カツオ風味のだしフレークと揚げ玉が入ったふりかけで味わう「U.F.O.」。焼そばには、「富士宮焼そば」や「石巻焼そば」など、だしをきかせて味わうご当地グルメもあることから、商品化を考えたのでしょうか。
キャベツの少なさもさることながら、ふりかけもやや寂しい感じ。特に、だしフレークに関しては、かなり貧弱な印象です。これはちょっと残念……
味わいは、だしとソースのきかせ方や配合がよく考えられていると感じました。カツオ、シイタケ、昆布と数種類を重ねているだけあって、魚介の風味がボリューミー。ソースは、ほどよいスパイシーさで、だし感をジャマせずに共存しています。フレークはそれほどでもないですが、揚げ玉のアクセントは好感触で、だしソースの味にもマッチ。具材がもっと多いとうれしいですが、完成度はピカイチだと思います。
「ソースの甘さ・辛さ」は、「1」に近いほど甘く、「5」に近いほど辛い
同じだし系でも、「だし醤油きつね焼そば」より「U.F.O.」度が高いです。だしソース味はかなりアリ!
最後は、パッケージでの「濃い」連呼など、一種の怖さを感じるものの、45周年の記念製品らしく、まじめに攻めた味の逸品「日清焼そばU.F.O.大盛 最極 (さいごく) 濃厚ソース」です。味の破壊力だけでなく、ボリュームもパワフルで、レギュラーサイズはないという潔さ!
「日清焼そばU.F.O.大盛 最極 濃厚ソース」は、1食171g(麺130g)で728kcal
特徴は、商品名そのままですが、「U.F.O.」の武器である濃いソースをとことん追求しているところ。ツブツブ食感のタマネギとニンニクのうまみを加えた「U.F.O.」史上最も濃厚なソースに仕上がっているそうで、その量も「日清焼そばU.F.O.大盛」に比べて25%増量しているとか。
「どろ…どろ…どろ…」。この独特な表現はまさか、ギャンブルマンガの金字塔「カイジ」シリーズで有名な「悪魔的」ってことを言いたいのでしょうか。かつて「U.F.O.」は、同作者の福本伸行先生のマンガ「中間管理録トネガワ」とコラボしていましたが、そう考えると胸が「ざわ…ざわ…」としてきます
麺の増量に合わせ、キャベツと豚肉も心なしか若干多い気が。ちなみに、調味料はふりかけなしのソースのみです
パッケージに「控えめに言って、『どろどろ』」との表記があるとおり、コシのある中太ストレート麺によくからむよう、ソースはドロッとした高い粘度に仕上げているのだそう。定番をシャバシャバのウスターソースにたとえるとしたら、こちらはとんかつソース的なイメージでしょうか。カレーに関しては、とろみのあるほうが好みな筆者としては、期待感がさらに高まります。
爽やかさをもたらすふりかけがないので、キャベツがオアシス的な存在に
第1印象として、ドロドロ感よりも色の漆黒さのほうがインパクト大だと思いました。粘度もそれなりにあるのですが、とにかく色が黒い! そして食べてみると、確かにディープでストロング! 風味には香ばしさがあり、甘みと酸味を始め、しょっぱさとスパイシー感も際立っています。「U.F.O.」好きの人なら、「僥倖(ぎょうこう)っ…!」「圧倒的感謝っ…!」と、感動できるかもしれません。ぜひ試してみてください。
「ソースの甘さ・辛さ」は、「1」に近いほど甘く、「5」に近いほど辛い
麺は、やや細めに感じました。これは、麺の味よりもソースを強調したいため、細くすることで、よりソースにからませやすくするという狙いがあるのかもしれません
今回は、5つの「U.F.O.」を食べ比べましたが、そのうち4つの限定商品は2021年3〜6月の間に発売されたもの。しかも、それ以外に「日清焼そばU.F.O.ペロリ バター香るたらこ味」や「日清焼そばU.F.O.大盛 濃い濃い黒胡椒 荒ぶる岩塩風焼そば 豚塩&ガーリック味」も同期間内に発売されている猛攻ぶりです。
やはり安定感で言えば、定番の「日清焼そばU.F.O.」がベスト。また食べたくなるのはコレ
これだけ短期間に乱発しまくっているので、今後もまだまだ日清食品は新作・珍作を送り出してくるに決まっています。45周年ということで、ノリにのっている「日清焼そばU.F.O.」。食事にはもちろん、酒のつまみにもぜひ活用を!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。