夏の風物詩、うなぎ。
2023年夏は7月30日が土用の丑の日で、巷はうなぎ商戦真っ只中です。ただ、うなぎはなかなかの高級品で、気軽に手が出しづらいのも事実。そんなご時世だからこそ生まれたと思える、うなぎファンの救世主になりそうな製品があることをご存じでしょうか。
それが、2023年7月10日から8月末ごろまで期間限定で販売されているミツカンの「金のつぶ うな重納豆 3P」です。こちらは2022年も限定発売された納豆ですが、好評だったことから今年も発売されました。
ミツカン「金のつぶ うな重納豆 3P」。写真左はパッケージを真上から、右は側部を撮ったものです。小売参考価格は1個(3P)258円(税込)ですが、筆者が買った店では105円(税込)でした
同社の開発者によると、
2022年の発売時に、「何これw」「どーゆうこと?」と数多くの反響(ツッコミ)を頂いたことを受け、調子に乗って2023年もミツカン渾身のボケ商品「金のつぶ うな重納豆」を発売いたします
とのこと。
加えて
「うなぎのタレをかけただけなんでしょ?」というお声を昨年頂きましたが、こちらの商品、うなぎの脂の甘みと炭火で焼いた香ばしさを再現しておりますので、うなぎのタレをかけただけでは再現できないおいしさとなっております(ちなみに、コストも通常の納豆よりかけております!)
だそう。
であれば、その真価をじっくり確かめたい! ということで、本製品とリアルなうなぎ蒲焼きを比較して徹底検証。スタンダードな納豆との違いもレポートします。
この3製品を食べ比べ。蒲焼きは「価格.com」から「うなぎ」で検索して最も人気が高かったものを用意しました
まずは「金のつぶ うな重納豆 3P」の特徴を浮き彫りにするべく、同シリーズの定番「金のつぶ パキッ!とたれとろっ豆 3P」と比較していきます。
成分表示を比較すると、納豆とたれの分量を始め、さまざまな違いがあることがわかりました
主なスペックは、「金のつぶ うな重納豆 3P」の1P分容量が47.9g(その内たれが7.9g)で、納豆だけのエネルギーが82kcal、糖質は4.1g。「金のつぶ パキッ!とたれとろっ豆 3P」は容量が49.6g(その内たれが4.6g)で、納豆だけのエネルギーが87kcal、糖質は3.7g。
右の「金のつぶ パキッ!とたれとろっ豆 3P」は、独自構造の「パキッ!とたれ」が特徴のひとつで、納豆の表面を覆っているフィルムも存在しません
パッケージを開けてみると、豆のサイズが異なることもわかりました。「金のつぶ うな重納豆 3P」は中〜小粒ですが、「金のつぶ パキッ!とたれとろっ豆 3P」は極小粒。この粒の大きさがそれぞれの内容量にも関係しているのだと思いますが、これは気になるポイントです。
粒のサイズはご覧のとおり。また、たれも色味もかなり異なります
たれに関しては、やはり「金のつぶ うな重納豆 3P」のほうが独特。色がやや濃く、かすかにとろみがあり、甘香ばしい風味も感じます。そしてこの香りの奥にはうなぎ的なニュアンスも。そして混ぜてみると、さらなる違いが生まれました。
混ぜた回数は両商品ともに30回。たれの成分によるものか、豆のサイズや発酵度合いが違うからなのか、粘りの質感もかなり異なることがわかりました。「金のつぶ パキッ!とたれとろっ豆 3P」のほうが泡っぽく、粘りもきめ細かいです
そしていざ実食。
「金のつぶ うな重納豆 3P」は甘じょっぱい味付けですが、違和感はなく、これはこれでご飯が進みそうなおいしさ。香ばしい風味が絶妙で、その奥にはうなぎらしさを醸し出すダシも感じられました。
さらに特筆すべきは、うなぎの脂を思わせるニュアンスが、うまみの中に隠れていること。これはさすが、「味ぽん」を始め、さまざまな調味料を開発しているミツカン。表向きはノリ任せな製品に見えつつも、味作りはかなりマジメにやっていることがわかります。
たれは甘めながら、九州の甘い醤油とは異なる独特の香ばしさやダシの香りが印象的
いっぽうの「金のつぶ パキッ!とたれとろっ豆 3P」は、豆のやわらかさと、きめ細かな粘りの泡による、ふんわりとした食感が絶妙です。それでいて豆自体の旨味も豊かで、たれは甘さ控えめながらしっかりめの味。「金のつぶ うな重納豆 3P」に比べると、味と香りともにシャープさを感じる印象です。
味はしっかりめながら、食感は全体的にソフト。ふわとろの食感で、製品名にある「とろっ豆」にも偽りなしです
改めて双方を食べて感じたのは、ともに納豆特有の臭いがキツくないこと。ミツカンにはこの点に特化した「金のつぶ パキッ!とたれ におわなっとう3P」もありますが、この知見が生かされているのかもしれません。そして「金のつぶ うな重納豆 3P」に関しては、このにおいを抑えることで、よりうなぎらしさをアップしているのでは? とも思いました。
次はいよいよ、「金のつぶ うな重納豆 3P」と実際のうなぎを食べ比べます。
用意したのは「価格.com」で高い人気を誇る「浜名湖 うなぎのたなか」の蒲焼き。冷凍タイプで、電子レンジでも簡単に調理できます。
レンジなら1〜2分で調理可能。蒲焼きのたれも付いていました
納豆の製品名には「うな重」とあるので、ご飯と一緒に味わうのが推奨されるでしょうが、まずはそのまま食べ比べました。何となく感じたのは、「金のつぶ うな重納豆 3P」のサイズが極小粒ではなく、そこまでふわとろ食感にさせていないのは、やわらかすぎるとリアルうなぎの食感から遠ざかってしまうからではないかということ。
見た目はまったく別物ですが、味はどこまで近づいているのでしょうか
「浜名湖 うなぎのたなか」の蒲焼きは関東風仕上げなので、ふわっとしていながらも、表面は香ばしく弾力もしっかりあります。「金のつぶ うな重納豆 3P」では、このファーストバイトの噛み応えをも表現したいと考えたのではないか――。そんな洞察すら脳裏をよぎりました。
香ばしさの奥にある、力強い旨味と濃厚な脂のジューシーさ。これらを甘じょっぱいたれがまとめ上げ、ひと切れでも至福のおいしさ
ラストは、それぞれご飯にのせて食べ比べ。重箱を持ってないので「うな重」ではなく「うな丼」スタイルですがご容赦を。
本稿の本題である、うな重らしさをチェックします
食べて真っ先に「なるほど!」と驚かされたのは、ご飯とのコンビネーションのよさ。「金のつぶ うな重納豆 3P」の香ばしく甘じょっぱい納豆の味は、ご飯とひとつになることで、よりポテンシャルを発揮すると思います。
味にパンチがあり、ご飯が進みます
特に秀逸なのは、咀嚼(そしゃく)することで細かくなり、口内でご飯と混ざり合った際の納豆の味。これは同様に、リアルなうな重を咀嚼したときの味に近いもので、まさに“ウナ”らされるおいしさです。
やはり本物は絶品ですが、「金のつぶ うな重納豆 3P」も悪くありません
改めて振り返ると、だまされたような感じがなくて憎めないのは、「金のつぶ うな重納豆 3P」のおいしさと安さにあると思います。そもそも納豆とご飯の相性が抜群で、うなぎに近いかどうかを抜きにして絶品。それが100円程度で買えるのであれば、御の字と言えるのではないでしょうか。
総評として、「うなぎとしか思えない味」とまではいきませんが、「言われてみれば確かにうなぎ!」や「ぼんやりと、うなぎの面影がある」といったレベルには感じられるはず。商品コンセプトのクセが強いので、通年販売されるかどうかはわかりませんが、今後もうなぎシーズンには登場してほしいです。
価格的にもフレンドリーな「金のつぶ うな重納豆 3P」。見かけたらぜひお試しを!
また、うなぎに欠かせない山椒を「金のつぶ うな重納豆 3P」にかけたところ、こちらも美味でした。加えて、納豆は卵料理や麺類など、さまざまなメニューとの相性もいいので、「金のつぶ うな重納豆 3P」を使った「うな玉」や「う巻き」にそうめんなど、いろいろ試したいと思いました。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。