「ドラゴンボール」で言えば「気功砲(新気功砲)」――。そんな、痛みをともなう進化を遂げたカップうどんが誕生しました。それが、「日清のごんぶと」です!
名前を聞いて「あれ?」と思った方も多いはず
「日清のごんぶと」(以下、「ごんぶと」)といえば、日清食品が1993年から長年販売していた生麺カップうどんの人気ブランド。途中、電子レンジ調理も可能なタイプにリニューアルされるなど進化も遂げましたが、2017年に製造終了してしまいました。その背景には、同族のライバル「日清のどん兵衛」(以下、「どん兵衛」)の強さもあったことでしょう。
それが今回、まさかの復活! しかも主戦場は、乾麺のカップうどんコーナーではなく冷蔵棚に。そう、麺がチルドタイプとなって生まれ変わったのです。しかしチルドになった分、賞味期限は要冷蔵で20日間と、圧倒的な短命に。
都内のドン・キホーテにて。ちなみに、一般的なカップうどんの賞味期限は製造日から6か月程度です
つまり、破壊力は高い(うまい)が、寿命(賞味期限)は短くなる。これはまさに、「ドラゴンボール」に登場する天津飯の必殺技「気功砲(新気功砲)」じゃないですか! そんな刹那的な商品を食べずして、CHA-LA HEAD-CHA-LA(チャラ・ヘッチャラ/※)なわけないでしょう。ということで今回は、「どん兵衛」対「ごんぶと」の天下一武道会ならぬ、天下一うどん会をお届けします!
※テレビアニメ「ドラゴンボールZ」のオープニングソング
新発売されたのは、「日清のごんぶと きつねうどん」と「同 天ぷらうどん」。食べ比べ用の「どん兵衛」は、味が近い「日清のどん兵衛 きつねうどん [東]」と「同 鬼かき揚げうどん」を用意しました
まずは、「ごんぶと」の特徴解説からいきましょう。日清食品のプレスリリースによると、復活の背景には、単身世帯の増加や女性の就業率の高まりがあるとか。そのため、手軽に食べられるチルドタイプのカップ入り調理麺が人気になっており、「ごんぶと」をそのカテゴリーに投入したそうです。
“チルドタイプのカップ入り調理麺”とはおそらく、よくコンビニで販売されているPB(プライベートブランド)のことでしょう。
希望小売価格は1パック440円(税込)。コンビニのPBチルドうどんは400〜500円が相場ですが、「ごんぶと」はドン・キホーテでは322円(税込)で販売されていたので、コスパはいいかもしれません
なお、筆者が日清食品の「お客さま窓口」に問い合わせたところ、「ごんぶと」は都内周辺ではドン・キホーテ、ヤオコー、小田急OXの一部店舗で取り扱っているとのことで、問い合わせたタイミング(2024年9月中旬)ではコンビニには置いていないようでした。
「ごんぶと」の調理方法は、まず熱湯で麺をほぐして湯切りをします。次に、粉末スープと液体つゆを入れ、おあげを乗せてから熱湯を注ぐ、または熱湯を注ぎ天ぷらを乗せて完成です。「ごんぶと きつねうどん」はここからの待ち時間が1分、「同 天ぷらうどん」は待ち時間0秒(なし)なので、スピーディーである点はうれしいポイントと言えるでしょう。
袋に入ったチルド麺を付属の容器に入れ、熱湯を注いでほぐす作業は新鮮ですね
主要なスペックとしては、「ごんぶと きつねうどん」が201g(麺170g)あたり336kcalで、炭水化物56.9g、脂質5.9g。「同 天ぷらうどん」のほうは204g(麺170g)あたり373kcalで、炭水化物59.1g、脂質9.9gでした。「どん兵衛」と大きく異なるのは、揚げ麺ではなく茹で麺である(麺の水分が多い)ため質量が大きく、カロリーと脂質が少ないことです。
「どん兵衛 きつねうどん [東]」は96g(麺75g)あたり435kcalで、炭水化物57.3g、脂質18.6g。「同 鬼かき揚げうどん」のほうは96g(麺70g)あたり462kcalで、炭水化物56.6g、脂質22.8g
また、「ごんぶと」は上記でも触れたように、粉末スープと液体つゆの両方を使う重層的な構成であることも特徴。これがおいしさにどう影響してくるのか、気になるところです。
写真手前の「どん兵衛」の味付けは、粉末スープのみ。ただ「どん兵衛 きつねうどん [東]」には「ごんぶと きつねうどん」にない、かまぼこが入ります
ということで、ここからは食べ比べ。きつねうどんのほうからいきましょう。それぞれ完成させてみると、やはり麺の見た目からしてまったく異なります。
「どん兵衛」のかまぼこについては上記でも軽く触れましたが、こう見るとなかなかの好アクセントと言えるでしょう
麺だけにクローズアップして比較すると、その違いはより一目瞭然。「ごんぶと」のほうが縦横に立体的であるいっぽう、「どん兵衛」は平打ちです。まあ、これはわかりきったことですが、そのうえでもう1点付け加えると、「どん兵衛」は揚げ麺だからか、表面のテカりが強く、色も黄色がかっていました。
両者の麺はご覧のとおり。ちなみに、写真は天ぷらときつねでチグハグですが、お許しあれ。味による麺の違いはほぼありません
続いて食べてみると、「ごんぶと きつねうどん」は十分なもっちり感に加え、ふわりとしたニュアンスや、たくましいコシもあって実にリアル。茹でたて、とまではいきませんが、ヘタな立ち食いうどん店より食感のクオリティは高いと思いました。
うどん店のほか、コンビニのチルドカップうどんよりも麺は勝っているかも。どんな研究と開発を重ねてきたのか、日清食品恐るべしです
そして、つゆの味は円熟味を感じるまろやかな仕上がり。おあげの影響なのか少々甘めですが、インスタントというよりはうどん専門店に近づけたような本格感で、ハイクオリティです。
「ごんぶと」には少量ながらわかめが入っており(写真では見えづらいですが)、これが隠し味として想像以上にいい仕事をしています
いっぽう、おなじみの「どん兵衛 きつねうどん [東]」ですが、いやいやなんの。これはこれでアリですね。確かにリアル感では「ごんぶと きつねうどん」に軍配が上がるものの、麺のエアリーなふわもち食感は、どん兵衛ならではの魅力。揚げ麺由来のお菓子的なニュアンスはあっても、「カップヌードル」ほどジャンクではなく、ちょうどいい塩梅です。つゆの味は魚粉の風味が「ごんぶと きつねうどん」より豊かですが、甘さはそこまで感じませんでした。
「ごんぶと きつねうどん」のおあげ。「どん兵衛 きつねうどん [東]」とは、サイズも味も大きな違いは感じませんでした。ただ、つゆは前者のほうが甘いです
続いて、天ぷらうどんの食べ比べといきましょう。麺の食感は、前述のきつねうどん対決と同じ感想です。ただしこちらの対決は、具材となる天ぷらの構成が想像以上に異なり、それがつゆの味にも差を生んでいると感じました。
この2商品、実は天ぷらが結構違うのです!
天ぷらの違いは、どちらかというと「どん兵衛 鬼かき揚げうどん」の立ち位置が関係しています。同じ「どん兵衛」でも、定番「どん兵衛 天ぷらそば[東]」に使われている天ぷらは、今回の「ごんぶと」の天ぷらに近しい素材です。しかし、「どん兵衛」シリーズで天ぷらのうどんとなると、玉ネギと生姜のアクセントを効かせた「鬼かき揚げ」が採用されているものしかありません。
「鬼かき揚げ」は、「最強どん兵衛」(左)でもおなじみ(最強は厚め)。写真はかつて執筆した際のもので、右は通常の「日清のどん兵衛 天ぷらそば [東]」です
それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。「ごんぶと 天ぷらうどん」の天ぷらは、小海老や青のりの香ばしく磯っぽい風味が特徴。いっぽうの「どん兵衛 鬼かき揚げうどん」の「鬼かき揚げ」は今秋リニューアルしたばかりで、玉ネギが大切りサイズとなり、甘みやシャキシャキがアップしたとのこと。確かに、甘みやコクが強いです。さらに、麺が揚げ麺なので、よりこってりした味わいに感じられます。全体的に「ごんぶと 天ぷらうどん」のほうが、上品に仕上がっていると言えるでしょう。
「ごんぶと 天ぷらうどん」のかき揚げは、香ばしい味わい
具材がおあげではないからか、つゆは両者ともにきつねうどんほど甘くありません。また、つゆのだしに関しては、きつねうどん同様、「どん兵衛 鬼かき揚げうどん」のほうに魚粉的な風味を強く感じました。
前段で天下一武道会とはしゃぎましたが、そもそも価格差があり、味に関してもそれぞれのよさがあるため、結果は引き分けとさせてください。ただ、リアルなうどんの味や上品さを求めるなら「ごんぶと」、カップ麺らしいわんぱくでこってりした味を求めるなら「どん兵衛」がおすすめです。
湯切りの手間はあるものの、スピーディーに食べられるタイパは「ごんぶと」の勝ち。同商品は、チルド麺業界に対するNB(ナショナルブランド)の新提案としても注目です
しかし天下一武道会のルールに厳密に従うのなら、引き分けはありません。勝敗の答えは食べ手の中にあり、比べてみて「優勝したもんねー」と思ったほうが勝ちです。なお、筆者は今回「ごんぶと」を買うにあたり、なかなか店舗に売っておらずかなり苦労しましたが、今はネット通販で買えるようになりました。ぜひご活用を!