酒場ライターのパリッコです。
突然ですがみなさんは、料理、あぶってますか? 実は僕、意外とあぶってるんです。
たまに居酒屋で「あぶりシメサバ」なんてメニューを頼むと、店員さんがシメサバを席まで持ってきてくれて、仕上げにバーナーで、その場でゴーっとあぶってくれることがありますよね。その場にいる人たちから必ず歓声が上がる、楽しい瞬間です。そして実際、あぶりたての料理には、あぶりたてにしかないおいしさがある。
我が家のバーナーたち
あれを家でもやってみたいと思い、我が家には以前買ったこんなバーナーたちがあります。左はカセットボンベに付けるタイプで、料理はもちろん、バーベキューの着火や溶接などにも使えるという高火力なもの。右はガスライター用のガスを本体に注入するタイプで、火力は控えめなので、家でちょっとした料理をあぶるのに重宝します。
で、バーナーなんて家に2台もあれば十分ですよね。僕もそう思います。けれども先日、なんとも面白そうなバーナーの存在を知ってしまったんです。それが「あぶり師」という商品なんですけれども。
「あぶり師」
商品名や、パッケージの「クッキングバーナー」という文字からもわかるとおり、料理をあぶることに特化したミニサイズのバーナー。最大の特徴は“使い切りタイプ”であること。80年以上の歴史を持つライターメーカー、ライテックが作った“使い切りバーナーライター”です。なんと発売から2年で25万個も売れているんだとか。
本体
サイズ感はこのくらい
初めて存在を知ったときは、興味をそそられるとともに、一度使い終わってしまったら廃棄するしかない使い切りタイプってどうなんだろう? とも思ったんです。
けれどもよく考えてみると、市販のライターだって多くは使い切りですよね。そしてそもそも、料理をあぶるという行為、日々そこまでひんぱんにするわけではないから、そう簡単に燃料がなくなって、付け替えたり詰め替えたりするものでもないんです。たまに使う程度であれば、燃料の保管・管理のほうが面倒だったりします。また、火器なので、あまりに古い本体や燃料を長年にわたり使い続けるのも若干心配な気がします(もちろん、定期的にメンテナンスをするならば問題ないのでしょうが)。
と考えると、使い切りタイプの「あぶり師」は、税込550円という価格も含め、気軽に使えてむしろいいのかもしれない。と、購入にいたりました。
では、実際に使ってみましょう!
本体の構造はいたってシンプル。指でカチッと押す方式の着火ボタンに、小から大までの火力調整レバー、安全ロック、それからバーナーの口に、安全キャップという構成です。
使い方も、ロックを解除してボタンを押すだけと簡単。
こちらが火力「小」側
火力「大」側
ちなみに、同じ縮尺でカセットボンベタイプのバーナーの火を撮影してみると、弱めの火力でもこんな感じ。
ゴーッ!
家庭の食卓を想定した場合、むしろ「あぶり師」のほうが安心して使えそうですね。
さてここからは、実際に「あぶり師」でひたすら料理をあぶりまくっていきたいと思います。
まず、僕が最もあぶる意義が大きいと思っているのが、生の魚介類を使った料理なんですよね。たとえばお刺身の盛り合わせって、最初はすごくおいしいと思って食べ始めるんだけど、ある時点から急に食べ疲れてしまうことありません? 別にそこまでお腹がいっぱいなわけじゃないのに。僕はあれ、生魚に宿るパワーの強さのせいだと思っているんです。ところが、それを軽くあぶってやると、ほんのりと火が通り、かつ香ばしさが加わって、また新鮮な気持ちで食べられる。
というわけで、まずはお寿司をあぶってみようと思います。スーパーで、「寿司ってこんな値段で買えていいんだっけ?」っていうパックを買ってきてみましたよ。
8貫で税込430円
食卓で料理をあぶるということで、念のため食器の素材にも配慮したいところですが、ちょうど耐火性のありそうなストーンプレートがありました。そこに“あぶり映え”しそうな寿司を選んで並べ、醤油も先にかけてしまいましょう。
これだけでもパックに入った状態よりだいぶおいしそう
で、こいつらを、「あぶり師」であぶる!
じゅわーっ
初めての使用感としましては、まず、調整レバーを最大にしておいても火力は比較的弱め。お店のシメサバのように一気に仕上げる、ということはできません。1貫につき20秒くらいかけてじっくりという感じで、結構時間はかかるかな。そして連続してあぶっていると、数十秒に一度火が止まってしまいます。公式ページにて、10秒使ったらいったん火を止めて再開するという使い方が正解とあるので、ストッパー的な機能があるのかもしれません。
それと、安全性のためか着火ボタンが硬めで、寿司を5貫も連続であぶるとそこそこ疲れます。
なので、今回は絵的に全体をあぶってみましたが、むしろ1貫ずつあぶっては食べる、みたいな使い方がいいかもしれない。
とはいえ、この仕上がり
ほんのりとあぶった寿司は、そりゃあうまいですよ。市販のパック品であればなおさら、買ったままの状態より数倍おいしいです。焼けた醤油の香ばしさが加わったびんちょうまぐろやサーモンの半分レアな仕上がり。細かく切り込みが入っていたイカなんか、あぶったら想像以上に芸術点が上がり、食感も豊かに。
あぶらないで食べるのがもったいないくらい
ちなみに、火の当たる面積がかなりピンポイントなので、食器の耐火性にもそこまで神経質にならなくてよさそうですね(プラの器のままあぶるとかでなければ)。
こちらの写真はお刺身ですが、火の当たる面積はこんな感じ
続いて、やっぱりシメサバはあぶっておきたいでしょう。これまた、あえてリーズナブルな真空パックのものを買ってきてみました。
どこのスーパーにも大抵あるやつ
とろっとしたお刺身感はないですが、これはこれでお酒のつまみにいいんですよね。
お皿に盛る
ツマどころか大葉すらも用意していなかったので、現時点だと若干寂しいというか、寒々しい印象すらあるこの一皿。ところが、あぶりを入れてやると一変!
身から脂があふれだす
こりゃあごちそうだ
しっかりとしたシメ加減のサバの身にスモークっぽい香りが加わって口の中で広がり、贅沢感がぐんとアップしています。いいぞ、「あぶり師」!
続いては明太子。
大好物
僕、たらこや明太子をフライパンでレアめに焼いた「焼き明太子」をつまみにお酒を飲むのが大好きなんです。ただそれだとどうしても、素人が焼いた感丸出しになってしまって、居酒屋の一品にある「あぶり明太子」のような粋な仕上がりにはならないんですよね。今回は「あぶり師」の力で、あれを目指してみましょう。
明太子に切り込みを入れ
あぶる
うおー、これはテンション上がる見た目だ! 味はどれどれ……なるほど、フライパン焼き明太子とはまったく別ものですね。基本はレアな明太子。けれども香ばしさと、皮目のパリッとした食感がアクセントに加わって、まさにあぶり明太子だ。これが自宅で、しかも焼き明太子よりも気軽に作れるのはだいぶうれしいですよ。
ここからはもっと自由に、思いついたものをあぶっていってみます。
ちょうど冷蔵庫に、昨日の残りもののカレーがあったので、それをアレンジして「焼きチーズカレー」なんてどうかな。というわけで、耐熱皿にごはん、カレー、チーズを乗せて、まずはレンチン。
残りもので
パパッと
チーズカレー
通常ならこれを、オーブン、トースター、グリルなどで仕上げて焼きカレーにするわけですが、意外とそれらの工程が面倒だって方、多いんじゃないでしょうか。が、「あぶり師」ならこう。
直接焦がす!
うまいに決まってます
続いて、「あぶり師」のパッケージにも写真が載っていたプリン。表面をキャラメリゼするというやつですね。僕は酒飲みなので、正直、甘いものに対する興味や解像度がぐっと低いのですが、せっかくなので試してみましょう。とにかく、プリンを買ってきてみました。
わたなべ牧場「手造りプリン」
これを器に移して、付属のソースをかけてあぶってみたんですが、まったく焦げ目が付きません。そうか、キャラメリゼって確か、砂糖を直接加熱するんだったっけ。
ならば砂糖をかけて
あぶる
おお! これはいい感じなんじゃないでしょうか。加減がわからず控えめにしてしまったんですが、お砂糖をもっと思いっきりかけたら、さらに表面全体を覆えたかもしれない。とにかく、ほんのりパリッとして、甘くほろ苦い表面と、まろやかなプリンのハーモニーが、文句なくうまいです。
続いては、おにぎり。醤油味とみそ味、2種類のミニおにぎりをにぎってみました。
それぞれピンポン玉サイズ
焼きおにぎりというと、これまた酒場のシメの定番でありながら、家で作ろうとすると結構手間がかかるものですよね。あぶりでそれに近いものができるならうれしいけれど……どうでしょうか。
いけた!
それぞれ約30秒ずつあぶってこの仕上がり。あぶり始めた瞬間から、直火ならではの醤油やみその焦げる香りが立ち上り、写真からもそれが伝わってくるようじゃないですか?
今回は表面をあぶっただけなので、食感は普通のおにぎりっぽいふわりとしたものなんですが、鼻に抜ける香りはまさに焼きおにぎり! サイズの調整も自由自在だし、家晩酌のシメにかなりいい気がします。
さて最後は、家に常備しやすく、気が向いたときにぱっと開けておつまみにできる食品たちゾーン。
まずはその代表格である缶詰から、大定番、ホテイの「やきとり たれ味」いってみましょう。
こいつ
非常に優秀なおつまみであるものの、缶詰である以上、焼きたて感や焦げ目など、焼鳥本来の魅力が多少薄めなのは仕方ないところ。
ところが「あぶり師」にかかればこうですよ。
じゅーっ!
表面を焦がしている間、煙とともに立ち上ってくる香りは焼鳥そのもの! テンションの上がり方だけで言えば、今までの中でマックスかもしれません。そこに七味を振って、ビールを用意すれば、はい、もう焼鳥屋。
乾杯!
常温のままあぶってしまったので、正直、焼きたての焼鳥とは味わいが異なります。が、やはり口の中に広がる香ばしさは、あぶりならではのもの。もうひと手間かけて、中身をお皿に移してレンチンしてからあぶったら、さらに満足度が上がっていたかも。
また、最もお手軽に高い満足度を得られると感じたのが、乾きもの系。
カルパス&チーズを
あぶる!
サイズが小さいので一瞬で焦げ目が付き、チーズはとろとろ&香ばしく、カルパスは中から脂があふれだし、もはやバーベキュー! 笑っちゃうくらいに酒が進みます。
というわけで、本格的なバーナーと比べれば火力は劣るものの、それゆえに気軽に安心して使え、日々の晩酌満足度が上がることが確信できた「あぶり師」。ライター感覚で使えるので、あぶり生活を手軽に始められます。
また、見た目がかわいく、たとえばちょっとしたプレゼントなどにもいいなと感じました。カセットガス式のものやガス注入方式のバーナーを、興味があると言っていたわけでもない人にいきなりプレゼントするのは何となく違和感がありますが、「あぶり師」はそのハードルがなく、料理が好きな人ならば誰もがよろこぶんじゃないだろうかと。
ホームパーティーなどでも盛り上がること間違いなしだし、一家にひとつあって損はない品だと思います! ワンコインですし!
あ〜楽しかった