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1秒で1年熟成できる? ワインの鍵「クレ・デュ・ヴァン」とは

デリケートな飲み物であるワインを良質な状態で保管しておくには、ワインセラーが欠かせません。ワインセラーで適切に保管すれば、記念日に飲むために購入したワインも、生まれ年ワインも、好きな銘柄のヴィンテージワインも、いつか飲むその日まで、熟成を助けつつ保管してくれます。最近では、ご家庭にワインセラーを購入される方も増えているんだとか。

そう、ワインは熟成したほうがおいしいとされる飲み物です。とはいえ、どのワインをどれくらい熟成させればおいしいのか、素人にはなかなかわからないもの。そんなときに使えるすごい商品を発見しましたので、ご紹介します。

「クレ・デュ・ヴァン トラベル」

「クレ・デュ・ヴァン トラベル」

こちらは「クレ・デュ・ヴァン」という、知る人ぞ知る魔法のアイテム。フランス語で「ワインの鍵」という意味です。何が魔法なのかというと、これをワインにつけるだけで、熟成した時の味に変化するという優れもの! 1秒つければ1年分、10秒つければ10年分熟成した場合の味になるそうです。いったいどういう代物なのでしょうか?

高級感あふれる梱包

高級感あふれる梱包

これが本体。魔法の杖のような形状です

これが本体。魔法の杖のような形状です

クレ・デュ・ヴァンは、ヨーロッパ最優秀ソムリエであるフランク・トマと、著名な科学者で研究者であるロレンザ・ザノンという2人が共同開発したものです。元々、ワインはある程度ワイナリーで熟成させて出荷しているもので、そのワインの飲み頃を予想して寝かせる年数などを決めていました。しかしそのワインがあと何年で飲みごろになるのか、そして何年でだめになってしまうのかは、なかなか見極めが難しいもの。専門書を読んでも、本当に未来の味がわかるものではありません。当時ワインコンサルタントをしていた2人は、その年数が正確にわかるアイテムが必要であると感じていました。

そこで彼らは研究を重ね、金、銀、銅の組み合わせがワインの熟成の鍵になることを発見。先端にある円形の銅部分がワインの分子構造に変化を与えることにより、香りの要素やタンニンの成分に影響し、1秒ワインにつけることで1年の熟成に相当する科学的計測ツール「クレ・デュ・ヴァン」を開発したのです! くわしい仕組みは後述しますが、その正確さはなんと95%。世界的な特許も取得し、クレ・デュ・ヴァンは2004年3月にフランスで発表されて以来、じわじわと世界中のソムリエやワイン愛好家に広まりつつあります。

銅の円形部分「パスティーユ」が、一番のキーポイント

銅の円形部分「パスティーユ」が、一番のキーポイント

それにしても、金属をワインにつけちゃうなんて大丈夫なの?! と思った方も多いはず。そこは安心してください。パスティーユをワインに浸しても、その金属成分がワインに溶け出すということはないそうです。実際にフランスの国立試験所で、10日間ワインにつけ続けても金属成分が溶け出すことはなかったという実験結果もありました。

ともかく、これがあれば、どのようにワインが熟成していくのかや、一番おいしいピークにワインを味わうには何年間セラーで保管するのがいいのかがわかるというわけです。ワインセラーを持ってない人でも、手軽に熟成ワインの味を楽しむのに使えますよ。本当ならすごいと思いませんか?

というわけで、実際に使ってみました。私はワインが飲めないので、見た目がソムリエっぽいお酒好きな同僚に味の違いをレビューしてもらいます。

ちょっとリッチなスーパーで買った赤ワインです(チリ産、辛口、ミディアムボディ)

ちょっとリッチなスーパーで買った赤ワインです(チリ産、辛口、ミディアムボディ)

使用方法はこうです。
1.ワイングラスにワインを注ぐ(100cc)…最初の味をテースティングします。

最初の味と熟成させた味を比較するために2つグラスを用意しました

最初の味と熟成させた味を比較するために2つグラスを用意しました

2.クレ・デュ・ヴァンをグラスにつける…タンニンが多い赤ワインには、まず2秒、辛口の白ワインには、まず1秒入れるのがおすすめだそう。

先っぽの「パスティーユ」がつかるようにします

先っぽの「パスティーユ」がつかるようにします

3.テースティングして最初の味と比較…ワインが好みの味になるまで、2秒刻みでつけて試飲する。

最初の味と比較します

最初の味と比較します

こうして数秒単位でクレ・デュ・ヴァンをつけてテースティングしていくことで、最終的に何秒後(何年後)にそのワインの味、香りが損なわれ始めるかがわかり、そのワインの熟成のピークを知ることができるというわけです。もし1、2回で味が落ちるようであれば、そのワインは若い時期においしいワインなので、早めに飲むのがベター。ちなみに、色はまったく変わりません。

さて、味に違いはでたのでしょうか? つけた秒数ごとに感想を聞いてみます。
0秒(最初の味)…「渋みと酸味がはっきり別れてる。飲み口が重めなので、結構ガツンとくる感じ」
1秒(1年)…「香りが少し柔らかくなったかも? でも味は変わらない」
3秒(3年)…「渋みがまろやかになった。香りも、キツい感じがなくなってきている気がする」
5秒(5年)…「絶対に軽くなってる!」
10秒(10年)…「香りが芳醇になった。味も、渋みと酸味のバランスがとれている」
20秒(20年)…「これはもうジュース。軽すぎて、好みじゃない」
50秒(50年)…「20秒の時とあまり変わらない」
100秒(100年)…「すっぱいというか、まずい。香りがまた最初に戻ってきた感じがして、渋みだけが残る嫌な感じ。酸化してしまっている?」

こんなに違いがでるものかと驚いていました。私もちょっと飲んでみましたが、素人でもわかるくらい味が変わっていましたよ! 熟成させたほうが、味がまろやかになっていたように感じます。今回テースティングしてくれた同僚は、20秒くらいからおいしくなくなってきたと感じたそうで、一番好きなのは3〜5秒だったようです。このワインは3〜5年熟成させるのが彼の舌には合っているということですね。今回買ったのは特別高いワインではありませんが、なかなか将来が楽しみなワインだったみたいです!

具体的に、どういう仕組みで熟成後の味への変化をもたらしているのかを解説いたします。ワインは保管されるうちに、還元(樽や桶の中でおこる発酵過程)から酸化(古すぎて飲めなくなったワインの状態)の状態へと移行してゆきます。その途中で均衡の取れた安定した状態になりますが、それを、ワインが最高状態であるといいます。クレ・デュ・ヴァンは、その移行の原因である酸化現象をコントロールすることができるんだそう。香りの要素やタンニン成分にも影響を与え、ワインの分子構造に変化を与えることにより、酸化を促します。それで熟成後の味へと変化させているというわけです。

注意していただきたいのは、クレ・デュ・ヴァンは安いワインを高級ワインに変化させるわけではないということ。もし熟成のポテンシャルがないワインを使った場合は、熟成の効果なく、ただ酸化するだけでおいしさが減少するでしょう。しかし、熟成のポテンシャルが高いワインに使用した場合は、おいしさは驚くほど増すはずです。クレ・デュ・ヴァンはワインの未来を表すツールであって、ワインのポテンシャルを変化させるものではないということをお忘れなく。

ちなみに、今回購入したのは一番安いトラベルモデル(それでも8,000円ほどしました)。ほかにもいろいろな形状があるので、ご自身のスタイルに合うものを選んでみてください。

トラベルモデルなので、持ち運びの際にパスティーユ部分を保護できるケースがついていました

トラベルモデルなので、持ち運びの際にパスティーユ部分を保護できるケースがついていました

ややお値段が張りますが、長く保管しすぎて味が悪くなったワインを処分することを考えると、クレ・デュ・ヴァン1つ購入することは、小さな投資です。ワイン1ケースのコストで償却できます。それに、年号の古い高級ワインを購入するよりも、熟成のポテンシャルのあるワインを若いうちに購入して、今、数年後の味を楽しむこともできますよ。効果は半永久的に続くそうですし、ワイン好きの方なら買って損はしないのでは? と感じたいい商品でした。

しえる(編集部)
Writer / Editor
しえる(編集部)
生活雑貨・食品に加え、ウォーターサーバーなど、サービス系商品の記事をメインに担当している2児の母。自称「ポテチマスター」。ポテトチップスを中心に1日3袋のスナック菓子をたいらげるお菓子狂です。
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