年会費2万円超のステータスカードとして、独自の路線を歩んできた「ダイナースクラブ」に、若年層(20〜39歳)を対象とした新カードが登場しました。
2026年10月1日から申し込みが始まった「ダイナースクラブ ゴールド」は、初年度の年会費が無料。年間100万円以上利用すれば、翌年度の年会費も無料になります。
券面デザインは2種類。ゴールドカラーの「グローブ」(左)と、星空をモチーフにした「スター」(右)
従来のダイナースクラブ プラチナ(※2027年1月に従来のダイナースクラブカードから名称変更予定)とは何が違い、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。このカードはどのような人に向いているのでしょうか?
年会費無料から高額なステータスカードまで100枚以上のクレジットカードを保有し、ポイント・カードのポータルサイト「ポイ探」を運営する菊地崇仁さんに解説してもらいました。
解説してくれた人:菊地崇仁さん
北海道札幌市出身。98年に法政大学工学部を卒業後、日本電信電話株式会社(現NTT東日本)に入社。02年に退社後、友人と起業したシステム設計・開発・運用会社を経て、06年にポイント交換案内サービス「ポイ探」の開発に携わり、11年3月代表取締役に就任。以後、ポイント、クレジットカード、マイレージに関する豊富な知識を生かし、テレビや雑誌などでも活躍中。
(以下、菊地崇仁さん語り。聞き手はライターの渡辺裕希子さん)
ダイナースクラブといえば、士業や企業オーナー、会社役員など、金銭的に余裕があるエグゼクティブ向けのイメージが強いブランドです。従来のダイナースクラブカードは年会費が2万9,700円(税込)と高額なこともあり、若い世代にとっては「自分には関係ないカード」と受け止められがちでした。
そこで、ブランドの若返りを目指して誕生したのが、20〜39歳(申し込み時)限定となるダイナースクラブ ゴールドです。開発にあたっては、数年前から社内の若手社員を中心としたプロジェクトを立ち上げ、若い世代へのヒアリングを重ねて設計。年会費のハードルを大きく下げつつ、若年層のライフスタイルに合わせた独自の特典を盛り込んでいるのが特徴です。
ダイナースクラブとしては、初年度無料のこのゴールドカードを若年層向けの「入口」として利用してもらい、将来的にダイナースクラブ プラチナや、さらに上位の招待制カードへと段階的にステップアップしてもらう道筋を作る狙いがあるようです。
ダイナースクラブ ゴールドを入口にライフステージの変化とともに上位カードへステップアップしてもらう道筋を想定しているとのこと(画像はプレスリリースより)
まず、ダイナースクラブ ゴールドの基本スペックを見ていきましょう。
・年会費は初年度無料。2年目以降は1万1,000円(税込)ですが、前年に100万円以上利用すると無料になります。
・家族カードは1枚まで年会費無料です。
・入会基準は20歳以上40歳未満で、所定の基準を満たす方です。入会後に40歳を超えても継続して利用できます。
今回登場したゴールドは、年会費2万9,700円(税込)のダイナースクラブ プラチナと比べて、どのような違いがあるのでしょうか。
決定的な違いは、「特典の取捨選択」にあります。 従来のダイナースクラブ プラチナには、世界1,500か所以上の空港ラウンジが利用でき、対象レストランで1名分が無料になる「エグゼクティブ ダイニング」が直接付帯するなど、国内外を問わず幅広く活躍する特典が付帯しています。
いっぽうのゴールドは、海外の空港ラウンジやエグゼクティブ ダイニングを省き、代わりに通信費やサブスクでの「ポイント10倍」や「食べログプレミアムの実質無料」など、日々の生活圏で確実にお得になる実用的な特典を充実させています。「いつか使うかもしれない豪華な特典」よりも「毎日の生活でタイパ・コスパが良い特典」を重視する若い世代のニーズを反映した形です。
ダイナースクラブ ゴールドには大きく次の3つの特典があります。
2. 有名店のコース料理が1名分無料になるなどの各種グルメ特典
ポイントが10倍にアップするサービス・ショップの例(画像はプレスリリースより)
最も特徴的なのが、ドコモ、ソフトバンク、au、楽天モバイルの通信大手4社でポイントが10倍になる特典です。携帯各社も自社ユーザー向けに高還元なクレジットカードを展開していますが、若い世代ではスマホの通信会社を短期間で乗り換えるケースが多く、そのたびにクレジットカードを作り直すのは非常に手間がかかります。この「ダイナースクラブ ゴールド」が1枚あれば、どの通信会社に乗り換えても高い還元率が維持されるため、利便性とポイント還元の「いいとこどり」が可能です。
特典を利用するうえで必ず理解しておきたいのが、ポイント還元の仕組みです。ダイナースクラブカードは通常「100円=1ポイント」のところ、携帯電話料金や公共料金に関しては「200円=1ポイント」に下がります。今回のゴールド限定特典は、この「200円=1ポイント」を基準に10倍となるため、実際の付与数は「200円につき10ポイント」となります。
通信費以外にも、ポイント10倍の対象には、Uber EatsやUberの配車サービス、U-NEXT、Hulu、スターバックス(スターバックス カードへのオンライン入金・オートチャージのみ)が含まれています。さらに、タッチ決済に対応した全国の公共交通機関でもポイントが10倍になるため、移動の機会が多い人にとってもポイントをためやすい仕組みです。通信費以外のポイント付与率は「100円につき10ポイント」となります。
なお、ポイントアップ特典には上限ルールが設けられています。ポイント10倍の対象サービスについては月額4万円の利用分までが上限となり、これを超えた分の決済は通常の還元率に戻ります。
ポイント5倍の対象店舗も、マツキヨココカラファイン、成城石井、TOHOシネマズ、マクドナルド、デニーズ、スシローなど多彩です。ロイヤルホストやコメダ珈琲店など、ほかのクレジットカードではポイント優遇の対象としてあまり見かけない店舗が含まれている点も大きな特徴です。
これらのポイント5倍の対象店舗には月額の上限がなく、使えば使うほどポイントが貯まる仕組みです。
また、これらのポイント優遇サービスを利用するには、オンライン明細確定通知サービスへの登録と、ダイナースクラブ公式アプリのダウンロードおよびサインオンが必要です。カードが手元に届いたら、まずはこれらの設定を忘れずに行うことがポイント獲得の第一歩となります。なお、対象店・サービスによってはポイントアップの条件があるものもありますのでよく確認しておきましょう。
付与されるダイナースクラブ リワードポイントは、何に交換するかによって1ポイントあたりの価値が異なります。
■主要なポイント活用先の移行レート
(1マイルの価値をいくらと換算するかにもよりますが)最もお得な交換先はANAマイルでしょう。ダイナースクラブ ゴールドの場合、10,000ポイント=2,500マイルのレートで交換でき、仮に1マイルを2円相当と仮定すると、10,000ポイント=5,000円相当となります。 前述の通り通信費は「200円につき10ポイント」なので、実質の還元率は2.5%となります。通信費以外のポイント10倍になるサービスや店舗なら付与率が「100円につき10ポイント」なので還元率は5%です。
ダイナースクラブカードと比べてマイル交換レートが低い(ダイナースクラブカードは、1,000ポイント=1,000マイル)のは残念なポイントですが、同カードでマイル移行に別途発生する「年間参加料6,600円(税込)」が、ダイナースクラブ ゴールドでは無料です。維持コストをかけずにマイルを貯められるのはメリットと言えます。ただし、年間の移行上限が「4万マイルまで」と定められていることには注意が必要です。
ダイナースクラブには、コンパニオンカードとしてMastercardブランドの「TRUST CLUB プラチナマスターカード」を年会費無料で追加できる特典があります。このカードは、ダイナースクラブカードが使えない店舗でもMastercardとして決済できるようにする便利な1枚です。ただし、コンパニオンカードでの決済時は200円につき1ポイント(一部100円につき1ポイント)となるため注意しましょう。
このコンパニオンカードにはMastercardの「Taste of Premium」という優待プログラムが付帯していて各種特典を利用できるのですが、なかでも人気なのが「ダイニング by 招待日和」です。国内外にある約250店の対象レストランで所定のコース料理を2名以上で利用すると、1名分のコース料金が無料になります(1か月あたり2回まで利用可能)。対象となるのは有名・高級店ばかりなので、たとえば1名1万円のコースを2名で予約した場合、1万円分が割引となるため、割引額が大きくなります。食にこだわりがある人や、会食の機会が多いビジネスパーソンにとって、非常にメリットの大きい特典です。
なお、前述のダイナースクラブ プラチナの特典「エグゼクティブ ダイニング」も、対象レストランで所定のコース料理を2名以上で予約すると1名分のコース料金が無料になる、という点では共通です。ただし、エグゼクティブ ダイニングの方が、対象店の数が多い(国内外で約500店舗以上)ほか、「同じ店舗は半年に1回まで」というルールはあるものの、サービス全体の月間利用回数に制限はありません。半年の期間内であれば、毎日違う対象店舗を利用することも可能です。
食べログの有料サービス「食べログプレミアム」が実質無料(画像はプレスリリースより)
月額330円(税込)の「食べログプレミアム」を実質無料で利用できます。ダイナースクラブ ゴールドで月額料金を決済すると、後日全額がキャッシュバックされる仕組みです(※スマートフォン料金との合算払いやアプリ決済は対象外)。
指定された店舗ではなく、自分の好きな店を選びたい若い世代のニーズに合わせた特典です。標準では使えない「ランキング検索」で人気店をタイパよく見つけられるほか、「お会計から20%OFF」など割引率の高いプレミアム限定クーポンも利用できるため、飲み会やデートの店選びに役立ちそうです。
ダイナースクラブが協賛する限定イベントでも特典があります。たとえば、高級レストランを税・サービス料込みのリーズナブルな定額コースでお得に楽しめる「フランス レストランウィーク」では、イベント自体はダイナース会員以外でも参加可能ですが、カード会員にはウェルカムドリンクが無料になるなどの優待がつくなど、普段は敷居の高い高級店をさらにお得に楽しむことができます。
会員本人は、国内主要空港のラウンジを無料で利用できます(※一部対象外の空港あり)。フライト前の時間を静かで快適な空間で過ごせるのはゴールドカードならではの魅力です。
いっぽう、海外の空港ラウンジは利用対象外となっています。年会費の高い通常の「ダイナースクラブカード」では、世界1,500か所以上の空港ラウンジを利用できるサービスが用意されています。それと比べると、海外の旅行・出張の頻度が高い人にとっては少し物足りない点と言えるかもしれません。国内の旅行・出張メインで利用する人向けの特典と割り切るのがよさそうです。
高級ホテルや旅館の予約サイト「一休.com」において、ワンランク上の「プラチナ会員」ステータスを6か月間体験できる特典も用意されています。通常、一休.comのプラチナ会員になるには「6か月間で10万円以上」の利用実績が必要ですが、ダイナースクラブ ゴールドの会員であれば無条件で利用可能。 専用サイトからエントリーするだけで、サービス利用時のポイント還元率が通常会員よりアップし、ちょっと贅沢なホテルステイなどをよりお得に楽しむことができます。
グルメ特典の項目で紹介した、無料で追加できる「TRUST CLUB プラチナマスターカード(コンパニオンカード)」に付帯するMastercardの「Taste of Premium」には、旅行に関する特典も含まれます。たとえば、国際線利用時の「国際線手荷物宅配優待サービス」なども優待価格で利用できます。ダイナース本体の特典だけでなく、Mastercard側の優待もフル活用することで、旅行時の快適さがさらに向上します。
海外旅行、国内旅行ともに最高3,000万円の補償が用意されています。 ただし、保険を適用させるには、パッケージツアーの料金や航空券、公共交通機関の運賃などの対象となる旅行代金を、事前にダイナースクラブ ゴールドで支払っておく必要があります。カードを持っているだけで適用される「自動付帯」ではないため、旅行の手配時には忘れずにこのカードで決済をすることが重要です。
ダイナースクラブ ゴールドの年会費は初年度は無料、2年目以降は1万1,000円(税込)がかかりますが、年間100万円以上の利用があれば翌年も無料になります。20〜30代で月額8万円以上の決済を一人で続けるのは、メインカードとしてあらゆる決済を集中させたとしても、少しハードルが高いと言えます。
しかし、このカードには「家族カードが1枚無料」で発行できるというメリットがあります。そのため、夫婦でメインカードとして利用金額を合算すれば、年間100万円をクリアできる可能性はグッと高まります。
また、「ダイナースブランドを使えるお店が限られていて100万円に届かないのでは?」と心配する方もいるかもしれませんが、前述のように「コンパニオンカード」としてMastercardを無料で追加発行できるため、世界中のMastercard加盟店で問題なく利用金額を積み上げることができます。
「初年度無料だから、とりあえず入会して特典だけ試してみよう」と考えている方は要注意です。このカードは、入会から14か月未満で退会した場合、3,300円(税込)の解約手数料が発生します。自分がどのくらい利用するか、特典を使いこなせるかなど、十分に考えてから入会することをおすすめします。
「ダイナースクラブ ゴールド」をおすすめしたい人、おすすめできない人をまとめてみました。
こんな人におすすめ!
・スマホの通信会社をよく乗り換える人(通信会社を問わず高還元)
・年間100万円以上カード決済をする人(2年目以降も年会費が無料)
・ANAマイルを効率よく貯めたい人(マイル還元率が〜2.5%)
・高級レストランを利用したい人(コース料理2名利用で1名分が無料)
・国内線を良く利用する人(国内線空港ラウンジが無料)
こんな人にはあまりおすすめできない
・年間のカード利用額が100万円に満たない人(2年目以降は年会費が必要)
・ANAマイルを貯めていない人(ANAマイル以外は交換レートが低め)
・海外旅行や海外出張の頻度が高い人(海外の空港ラウンジは利用不可)
ターゲットを20代・30代に絞った、これまでにない「ダイナースクラブ」。 上記の「こんな人におすすめ!」にあてはまる人はぜひ、検討してみてはいかがでしょうか。