毎日の食事に欠かせない炊飯器。各メーカーがお米の甘みや旨みを引き出すべく、しのぎを削っており、こだわりの一杯が炊けるモデルに魅力を感じている人も多いでしょう。
ここでひとつ知っておいてほしいのは、今どきの炊飯器はご飯を炊くだけにとどまらず、実はおかずまで調理できるということ。価格.comマガジンの読者は「もちろん、知っているよ」という人が多いかもしれませんが、「興味はあるけれども大した調理ができると思っていない」「におい移りやお手入れが心配」などの理由から、実際に活用している人はあまり多くないかもしれません。しかし、もし本格的な料理が手軽に作れるとしたらどうでしょうか?
また、「ご飯と一緒に調理できないから不便」と考えて敬遠している人もいるかもしれません。しかし、物価高に拍車がかかる昨今、セールで食材をまとめ買いして、おかずの作り置きに活用したり、冷凍ご飯とあわせて食べたりすれば、結構役立つのではないでしょうか?
そこで今回は、炊飯器の調理メニューで、実際にどこまで本格的な調理ができるのかを徹底検証してみました。使用したのは、タイガー魔法瓶の「ご泡火炊き JRI-S100」(以下「JRI-S100」)。価格.com「炊飯器」人気売れ筋ランキングの第7位にランクイン(2026年10月27日時点)している「JRI-G100」の後継となる新モデルなので、既に注目している人も多いだろう1台です。
「JRI-S100」は、「ご泡火炊き JRI」シリーズのスタンダードモデル。ファミリー世帯にぴったりな5.5合炊きです
本機は、土鍋ご飯のおいしさを追求した同社の人気炊飯器ブランド「ご泡火炊き」シリーズのエントリーモデルです。上位モデルはリアルな土鍋釜を採用した高級モデルですが、「JRI-S100」は土鍋コーティングを施した金属釜を使用して、価格.com最安価格4万円台(2026年10月27日時点)という入手しやすい価格を追求しています。そして、今回注目する「調理メニュー」に対応しているのも、上位モデルにはない特徴のひとつです。なお、その他のタイガーのスタンダードな炊飯器にも、同様の「調理メニュー」が広く搭載されています。
「JRI-S100」の大きな特徴は、土鍋に近い遠赤効果と蓄熱性を再現した「遠赤9層土鍋かまどコート釜」を採用している点です。お米の甘みや旨みをしっかり引き出すだけでなく、段階的な圧力コントロールによって粒立ちのよいご飯に炊き上げます。
炊き分けの幅も広く、炊き加減は「しゃっきり」「標準」「もっちり」の3段階から選択可能。「玄米」「雑穀」「麦飯」「炊込み」といった多彩なメニューに対応しており、タイガーの「ご泡火炊き」シリーズのエントリーモデルながら、幅広い好みに応えられる懐の深さを備えています。また、「冷凍ご飯」メニューも備えており、冷凍ご飯と調理したおかずを一緒に食べるといった今どきの生活スタイルでも役立つでしょう。最上位モデルではなくても、十分においしく、さまざまなニーズに対応できるので、賢く炊飯器を買いたい人の有力な選択肢のひとつになり得ます。
上部に熱伝導性の高い銅素材を採用しつつ、下部に蓄熱性の高い土鍋素材をコーティングした「遠赤9層土鍋かまどコート釜」。上下の温度差によって生じる強い対流により、お米のひと粒ひと粒を芯までじっくりと加熱して炊き上げます
このポテンシャルは、炊飯だけでなく、おかずの調理にも生きてきます。高温で食材を煮込んだうえで、徐々に加熱温度を下げることで、味のしみ込みが促進され、柔らかく仕上がります。これなら、本格的な料理が作れるに違いありません。
そこで今回は、メーカーから製品をお借りして、40種類以上のメーカー公式レシピのなかから、いくつかの料理を作ってみました。
1品目は、調理工程が複雑で火加減が難しく、調理後のお手入れも手間がかかる「麻婆豆腐」。2品目は、柔らかく仕上げて味をしみ込ませるのにコツがいる「甘塩鮭と長芋の煮物」。3品目は、焦げ付きや吹きこぼれに気を遣う「りんごのプリザーブ」。通常なら手間のかかるこれらの料理を、「調理メニュー」でどこまで手軽においしく調理できるかが見どころです。
炊飯器での調理の仕方は、下ごしらえした食材を炊飯器の内なべに入れたら、「調理メニュー」を選択し、レシピに従って調理時間を指定するだけ。こんなに簡単な操作で、本当に本格的な料理が作れるのか、さっそく検証していきましょう
最初に調理するのは、麻婆豆腐。豆板醤や甜麺醤から作る本格レシピで、挽き肉を炒めたり、調味料を煮詰めたり、木綿豆腐を煮込んだりと、実際に鍋で作ろうとすると、思いのほか工程が込み入ってくるメニューです。通常の調理では、火加減もその都度調整しなければならず、うまく作るには慣れが必要ですが、「JRI-S100」の調理メニューでは、深く考えずに、レシピに従って食材や調味料を内なべに入れていけばOKでした。
食材は、木綿豆腐、豚挽き肉、ネギ。調味料は、豆板醤、甜麺醤、花椒、にんにく、しょうがなど
内なべに調味料を合わせた煮汁を入れたうえで、豚挽き肉を混ぜてほぐし、さいの目に切った木綿豆腐を加えます
食材が整ったら、お米の炊飯時と同じ要領で内なべを炊飯器にセット。「調理メニュー」で15分に設定すれば、自動で調理が進みます
調理が完了すると、アラームとともに保温に切り替わりました。水溶き片栗粉を混ぜてとろみを付けたら、ごま油を回し入れ、器に盛ってネギと花椒を振って完成です
色といい艶といい、文句なしの仕上がり。木綿豆腐は崩れずに中まで味がしみ込み、挽き肉がほどよくほぐれているのがわかります
出来上がりを見てください――中華料理店で出てくるような風格を感じませんか? 実際に口に運ぶと、それが見かけ倒しでないことがわかります。辛く濃厚な煮汁が木綿豆腐の中までしっかりとしみ込んで、噛むほどに旨みが口の中に広がりました。
普通の鍋では、つきっきりになって火加減を調整したり、食材投入のタイミングに神経を遣ったりして手間暇をかけないと、ここまでの深みはなかなか出ません。加熱しすぎて挽き肉が硬くなることもなく、ふっくらと仕上がっているのも印象的でした。自動で調理が進んでいる間の空き時間に、次の料理の下ごしらえを行うなどして、時間を有効活用できたのも便利に感じた点です。
最後に水溶き片栗粉を混ぜる工程が必要ですが、基本的にほったらかし調理でこれだけの味を実現できるのですから、1品目から感心しました。
次に調理していくのは、甘塩鮭と長芋の煮物です。この料理では、煮詰めると硬くなりがちな鮭がどこまでほぐれるかをチェックしてみたいと思います。また、火が通りにくい長芋がしっかりと柔らかくなり、素材の奥まで味がしみ込むかもポイントです。
このメニューも基本的には食材と調味料を内なべに入れるだけですが、鮭の臭みを取るため、あらかじめ酒を振りかける下ごしらえが必要です。また、アクセントの三つ葉を適度にしんなりさせるため、調理後に内なべに入れて少しだけ寝かせます。
食材はシンプルで、甘塩鮭と長芋。最後に添える三つ葉としょうがも用意
ひと口大に切って酒をふりかけた甘塩鮭と、長芋、細切りのしょうがを内なべに入れ、だしを中心とした煮汁を加えたら準備完了。「調理メニュー」で10分調理します
調理が終わったら、三つ葉を加えてフタをし、1分置いたら完成。お好みで柚子の皮も添えましょう
出来栄えはどうでしょう。鮭は見るからにほぐれていて、長芋にもしっかりと火が通っていることが伝わってきます。箸で軽く押すだけで崩れるほどホロホロでした。鍋で作る場合は、ここまで煮込むと煮崩れしたり、煮汁が飛びすぎて焦げたりすることもよくありますが、そうしたこともありません。おまけに食材の奥深くまでだしがムラなくしみわたっていて、家庭では再現しにくいような上品な味わいが楽しめました。
調理時間は、下ごしらえを合わせてわずか15分。鍋でここまでじっくり味をしみ込ませるには、煮た後で冷ます工程も必要になり、30分以上はかかります。焦げ付かないよう火や煮汁の加減を気にしなくていい点も含め、タイパまですこぶる秀逸です。
長芋の色合いを見れば、だし汁が奥までじっくりとしみ込んでいるのがよくわかるでしょう。鮭もとってもやわらかく、高温調理の真骨頂を目の当たりにした思いです
「JRI-S100」の「調理メニュー」は、デザートまでカバーしています。炊飯器で本当においしく作れるのか、「りんごのプリザーブ」を作ってみました。
プリザーブとは、果物の形を残しながら作る砂糖煮のことで、しっかりと砂糖をしみ込ませたうえで煮詰める必要があるため、普通の工程では1時間以上かかります。焦げ付きの可能性があるため、通常は鍋から目を離せないものですが――「JRI-S100」では、つきっきりになる必要はありません。材料を内なべに入れるだけです。下ごしらえを含め、約20分という短時間で手軽に作れました。
メインのりんごのほか、味付けにレモン、グラニュー糖、シナモンを使います
いちょう切りにしたりんごを内なべに入れ、グラニュー糖をまぶしてレモン汁をかけます。あとは「調理メニュー」で15分調理し、お好みでシナモンを振りかければ完成!
見ただけで柔らかさが感じられるほどトロトロに仕上がりました。甘みがギュッと凝縮されたその濃密な味わいは、まるでジャムのようです。しかも、焦げはまったくなく、硬く干乾びているような部分もありません。炊飯器でありながら、本格的なデザートまで手軽に作れるポテンシャルに驚かされました。
ひと目でわかるほどりんごがとろけていて、奥まで甘みがじっくり浸透。検証のラストにふさわしい、大満足の仕上がりでした
調理後のお手入れは、ご飯を炊いた後と変わらず手軽です。特に感心したのは、麻婆豆腐の調理後。通常、調理した後のフライパンや鍋は、頑固なこびりつきを落とすのに苦労するものですが、「JRI-S100」の内なべはサラサラとしたコーティングにより、こびりつきはありません。内ぶたにも目立つ油汚れがなく、通常の鍋よりずっと手軽にお手入れできました。
また、炊飯器は完全に密閉して調理するため、鍋のようにコンロ周辺に油が飛び散ることがなく、キッチンの掃除の手間まで減らせます。りんごのプリザーブでも、鍋での調理でありがちな焦げ付きは見られず、サッとスポンジで拭うだけで内なべがキレイになりました。
また、「炊飯器でおかずを調理すると、次にご飯を炊いたときににおいが移ってしまうのではないか」と心配になる人もいると思います。しかし、それほど心配は要りません。においが残りやすい麻婆豆腐の調理後に、内なべを洗浄してご飯を炊いてみましたが、におい移りは感じられませんでした。なお、圧力と高温で力強く洗浄する「圧力クリーニングコース」も備わっているので、もし頑固なにおいがついたとしても除去しやすいでしょう。
炊飯器をおかずの調理に使ってしまうと、ご飯と料理を同時に作ることができないというデメリットこそありますが、「冷凍ご飯」メニューであらかじめ炊いておいた冷凍ご飯とあわせて食べたり、おかずの作り置きに活用したりすれば、想像以上に頼りになると感じました。
洗浄するパーツは基本的に内なべと内ぶたの2つ。普段の炊飯後と同じ感覚でお手入れをすればいいので、お手入れが大変に感じることはありません。内ぶたがフラットで、汚れがこびりつきにくいのもよいと感じたポイントです
サブ機能のように受け止められがちな炊飯器の「調理メニュー」。実際に、「JRI-S100」の「調理メニュー」を活用してみて感じたのは、単なるオマケとは言えないほど本格的な調理性能を備えているということです。大いに活用すべき機能だと実感しました。
炊飯器での調理後にひと手間が必要なメニューもありますが、どのメニューも普通の鍋で作るより圧倒的に少ない手間で簡単に作れます。細かな調理工程を経たり、火加減を調整したりする必要がないので、料理の初心者でも気軽に挑戦でき、料理のハードルが下がると感じました。
鍋での調理のように、コンロに張り付いている必要がなく、その時間を有効活用できる点もメリットです。コーティングが効いた内なべとフラットな内ぶたのおかげで、調理後のにおいが炊飯に影響しにくいのもポイントでしょう。
こうなると、炊飯器の「調理メニュー」を活用しない手はありません。「JRI-S100」を手に入れたら、おいしいご飯を炊くだけでなく、料理をラクにするために「調理メニュー」もフル活用してみてほしいと思います。