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AMD「Ryzen 3 1300X」「Ryzen 3 1200」ベンチマーク速報レポート

AMDのデスクトップ向けCPU「Ryzen」のエントリーモデル「Ryzen 3」が7月28日に発売となる。ラインアップは、「Ryzen 3 1300X」「Ryzen 3 1200」の2モデルだ。今回、新CPU2モデルを試用する機会を得られたので、ベンチマークレポートをお届けしたい。

Ryzen 3

Ryzen 3

Ryzen 3はRyzen初のSMT非対応となるネイティブクアッドコアCPU

ベンチマークレポートをお届けする前に、まずはRyzen 3 1300XとRyzen 3 1200について簡単にご紹介しておこう。

今回ご紹介するRyzen 3 1300XとRyzen 3 1200は、いずれも4コア/4スレッドのCPUだ。すでに発売されているRyzen 7とRyzen 5は、マルチスレッド性能を高めるために、1つのCPUコアで2つのスレッド処理が可能な「Simultaneous Multi-threading(SMT)」をサポートしていたわけだが、Ryzen 3 1300XとRyzen 3 1200はこのSMTには対応しておらず、純粋なクアッドコアCPUとなっている。

Ryzen 3 1300X

Ryzen 3 1300X

Ryzen 3 1200

Ryzen 3 1200

定格/ブースト最大クロックは、Ryzen 3 1300Xが3.5GHz/3.7GHz、Ryzen 3 1200が3.1GHz/3.4GHz。いずれも、クロック倍率を解除した倍率可変仕様となっており、倍率変更によるオーバークロックにも対応する。

L2キャッシュは各コア512KB、L3キャッシュは8MB。メモリーコントローラーは、組み合わせるメモリーの実装方式によって異なるものの、最大でDDR4-2667のデュアルチャンネルまでサポートしているのは、これまでのRyzenシリーズ同様だ。CPUの対応ソケットはSocket AM4で、TDPはRyzen 3 1300X/Ryzen 3 1200ともに65W。付属のリテールクーラーは「Wraith Stealth」となる。

単純に型番をみると、ビジネス向けに先に発表された「Ryzen 3 PRO 1300」「Ryzen 3 PRO 1200」をほぼ踏襲したようなスペックにも見えるが、Ryzen 3 1300Xは、XFRによるオーバークロックの上昇マージンが通常の2倍に設定されているX付き型番であったり、Ryzen 3 1200はブースト最大クロックがRyzen 3 PRO 1200よりも0.1GHz高く設定されているなど、スペックは若干異なっている。

Ryzen 3のスペック概要

Ryzen 3のスペック概要

Ryzen最安値モデルの実力はいかに?

それでは、ここからは実際のベンチマーク結果をレポートしていこう。なお、今回はテスト時間があまり取れなかったため、通常のCPUレビューよりも項目を絞ってテストを行わせていただいている。

検証環境の基本構成は、以前掲載した「Ryzen 5」のレビュー記事と同じ構成を採用。CPUクーラーについては、リテールパッケージに付属のWraith Stealthを使用している。パフォーマンスの比較のため、今回は4コア/8スレッドの上位モデル「Ryzen 5 1400」を用意した。試用したCPUのスペックと、検証環境の細かな仕様・設定は以下の通りだ。

今回試用したCPU全3モデルの詳細スペック

今回試用したCPU全3モデルの詳細スペック

■検証環境詳細
マザーボード:GIGABYTE「GA-AB350M-Gaming 3」
メモリー:GeIL「GEX416GB3200C16DC(8GB×2)」※DDR4-2667に設定
CPUクーラー:Wraith Stealth
ビデオカード:ZOTAC「ZTGTX1060-GD5STD」
ストレージ:crucial「MX300 CT525MX300SSD1」
電源ユニット:Silverstone「SST-ST75F-PT(750W)」
OS:Windows 10 Pro(Creators Update適応済み、Windows電源プランは「AMD Ryzen Balanced」に設定)

CPUクーラーは、リテールパッケージに付属するWraith Stealthを使用した。背の低いトップフロー型のクーラーで、Ryzen 5 1400にも同様のモデルが付属する

まずはCPUの基礎体力を見るために、定番ベンチマークソフトのSiSoftware「Sandra 2017 SP1」と「CINEBENCH R15」を実行してみた。

グラフ1:Sandra 2017 SP1 Processor Arithmetic

グラフ1:Sandra 2017 SP1 Processor Arithmetic

グラフ2:Sandra 2017 SP1 Processor Multi-Media

グラフ2:Sandra 2017 SP1 Processor Multi-Media

グラフ3:CINEBENCH R15

グラフ3:CINEBENCH R15

グラフ1はCPUの演算能力を測る「Processor Arithmetic」、グラフ2はマルチメディア系の処理能力を測る「Processor Multi-Media」の結果だ。いずれも、SMTに対応し、8スレッド処理に対応したRyzen 5 1400が頭一つ抜け出し、その後ろにRyzen 3 1300XとRyzen 3 1200がほぼ横並びという結果となった。

グラフ3は、「CINEBENCH R15」の各スコアをまとめたものだ。面白いのがシングルコアの結果で、こちらはすべてのCPUがほぼ横並びという結果となった。スペック上は、ブースト最大クロックはRyzen 3 1300Xがもっとも高い。しかもXFRのマージンは2倍に設定されているので、熱量的に余裕のあるシングルスレッド時はXFRが効果的に効いてスコアが伸びてもいいものなのだが、今回の検証では何度やってもこれ以上スコアが伸びることがなかった。

マルチスレッドの処理能力は、Ryzen 5 1400が、Ryzen 3 1300XとRyzen 3 1200の約1.4倍の結果をたたき出し、SMT対応の実力をしっかりと見せつけた。やはり、マルチメディア性能という点では、ネイティブクアッドコアよりも、4コア/8スレッドのRyzen 5 1400のほうが有利のようだ。

続いては、3Dゲーミングまわりでのパフォーマンスを見ていこう。今回は、グラフィック性能を測る「3DMark」のほか、3Dゲームタイトルから、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」、「Rise of the Tomb Raider」「DOOM」をチョイスした。結果は以下の通りだ。

グラフ4:3DMark Time Spy Score

グラフ4:3DMark Time Spy Score

グラフ5:3DMark Fire Strike Score

グラフ5:3DMark Fire Strike Score

グラフ6:3DMark Fire Strike Ultra Score

グラフ6:3DMark Fire Strike Ultra Score

グラフ7:ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター

グラフ7:ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター

グラフ8:Rise of the Tomb Raider

グラフ8:Rise of the Tomb Raider

グラフ9:DOOM

グラフ9:DOOM

グラフ4〜6は、「3DMark」の「Time Spy」「Fire Strike」「Fire Strike Ultra」の各プリセットの結果だ。CPUのマルチスレッド性能を示す「Time Spy」のCPUスコアや、「Fire Strike」「Fire Strike Ultra」のPhysics scoreは、気持ちいいくらいにCPUの型番の順番通りに並んでおり、その結果がトータルスコアにもしっかりと反映していることがわかる。マルチスレッドへの最適化が進んでいるベンチマークということで、Ryzen 5 1400が一歩リードしている点も予想通りだ。

いっぽう、3Dゲームタイトルのベンチマーク結果は、タイトルによってまちまちだ。「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」は、マルチコアへの最適化が進んでいるタイトルということもあり、平均フレームレートがCPUの型番通りに並んでいるいっぽう、「Rise of the Tomb Raider」と「DOOM」は、ブーストクロックのもっとも高いRyzen 3 1300Xが一番高い平均フレームレートをたたき出した。このあたりは、インテルの4コア/8スレッドの「Core i7」と4コア/4スレッドの「Core i5」の関係性と似ている。3Dゲームは、CPUの動作クロックがパフォーマンスに直結するというタイトルはまだまだ多いので、そういった環境向けにはRyzen 3はいい選択肢になりそうだ。

最後に消費電力のチェックだが、こちらはいつもの通り、ラトックシステムの「Bluetoothワットチェッカー REX-BTWATTCH1」を使い、システム全体の消費電力を計測したものとなる。PC起動10分後の消費電力をアイドル時、「CineBench R15」でシングルコアを使用したテストを実行した際の瞬間最消費電力をCPUシングルスレッド高負荷時、同じくCPUコアをすべて使用したテストを実行した際の瞬間最高消費電力をCPUマルチスレッド高負荷時として採用している。

グラフ10:消費電力

グラフ10:消費電力

アイドル時の消費電力は多少の誤差はあるものの、ほぼ横並びとみて問題ないレベルだ。いっぽう、高負荷時の計測結果は瞬間最消費電力を採用しているため、型番末尾にXが付き、XFRのマージンが2倍に設定されているRyzen 3 1300Xがぶっちぎりの1位となっている。

これについては当然予想ができていたので、あまり驚きはしなかった。むしろ、瞬間消費電力よりも気になったのは、XFRの効き方のほうだ。消費電力をリアルタイムでモニタリングとわかるのだが、XFRが働く時間がまさに一瞬の出来事なのだ。先述したとおり、今回の「CINEBENCH R15」の検証では、Ryzen 3 1300XとRyzen 3 1200のスコア結果にそれほど大きな差はなかったわけだが、これはXFRの効果がかなり限定的だったからと思われる。

今回の検証では、CPUクーラーにリテールパッケージに付属するWraith Stealthを使用したわけだが、もしかしたらこれがXFRの効き目に影響していたのかもしれない。これについては、改めてくわしく検証してレポートしたいと思う。

まとめ

SMTを無効にし、Ryzen初となる4コア/4スレッドのネイティブクアッドコアCPUとして登場するRyzen 3。エントリー向けCPUだが内蔵GPUがないため、インテルのCore i3のようなとにかく安価にセカンドマシンを作りたいという人向けのCPUにはなれないものの、ネイティブクアッドコアCPUであること、アンロックかつSMT非対応でオーバークロックで高クロックが狙いやすいということから、そこそこ性能の高いGPUと組み合わせてゲーミング用PCのCPUとして使うという用途が考えられそうだ。

もともとこのポジションはライバルインテルのCore i5が担っていたわけだが、Core i5が最低でも2万円以上するのに対し、Ryzen 3は下位モデルのRyzen 3 1200が13,800円前後、上位モデルのRyzen 3 1300Xでも16,500円前後と、かなり安価となっている。特にRyzen 3 1300Xは、もともとの動作クロックの高さもあり、ゲーミングPC向けネイティブクアッドコアCPUの新たな選択肢として注目を集めそうだ。

遠山俊介(編集部)

遠山俊介(編集部)

PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。最近はもっぱらカスタムIEMに散財してます。

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